現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~

はぶさん

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第149話:二人の設計図と、陽だまりの証明

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#### 創造主の最初の仕事

目覚めた創造主の、最初の朝が訪れた。
だが、その朝は、かつてのように世界を救うための壮大な設計図を描くことから始まるのではなかった。それは、兄が淹れてくれた、少し味の濃いハーブティーをゆっくりと啜り、窓から差し込む陽光に目を細め、そして、足元ですり寄ってくるウルの、温かい毛皮の感触を確かめることから始まった。
「……美味いな、この茶」
「そうかよ。セーラに淹れ方を叩き込まれたんだ」
ぶっきらぼうに答えながらも、アルフォンスの口元は、隠しきれない喜びに綻んでいる。
弟が、帰ってきた。ただそれだけの事実が、この陽だまりの街の全てを、昨日までよりも、さらに温かく、輝かせているようだった。

だが、その穏やかな時間は、長くは続かなかった。
書斎の机に広げられた、ディアナからの緊急報告書。そこに記された『偽りの陽だまり』という、新たなる時代の病巣。
「……連中は、俺たちの物語を歪め、『富を独占する貴族を打倒せよ』と民衆を扇動しているらしい。すでに、いくつかの街では暴動まで起きている、と」
アルフォンスは、苦々しげに吐き捨てた。「俺の騎士団を派遣して、首謀者を叩き、力でねじ伏せるしか……」

「……それじゃ、ダメだよ、兄さん」
静かな、しかし、揺るぎない声が、その言葉を遮った。アークだった。
「力で抑えつけても、火種は残る。それは、僕らが忌み嫌った、旧い教会のやり方と同じだ。僕らが戦うべきは、偽物を生み出す人間じゃない。偽物が生まれてしまう『仕組み』そのものだ」
彼は、兄の隣に立つと、報告書を、創造主の瞳で見つめた。
「問題は、シンプルだよ。僕らの『陽だまり』が、あまりにも温かすぎて、その光に集まってくる虫と、本物の蛍の区別が、他の人にはつかないんだ。だったら、僕らが、教えてあげなくちゃ」

「――本物の陽だまりには、『形』があるんだってことをね」

#### 陽だまりの証明

その日の午後、『盟約の館』の円卓には、再び連合の仲間たちが集結していた。アルフォンスの隣には、まだ少し顔色は白いものの、その瞳に絶対的な自信の光を宿したアークの姿があった。
彼は、一枚の真っ白な『ライナス和紙』を広げると、驚くべき速度で、そこに、新たなる時代の、最初の『防衛』の設計図を描き始めた。

「僕が提案するのは、二つ。まず一つは、**『陽だまりの証明印(サンシャイン・シール)』**の創設です」
アークは、懐から、小さな、光る種子を取り出した。
「これは、『契約の木』と、僕の髪を少しだけ合成して創った、特別な種子です。この種子から作った特殊なインクで、僕らの製品に、この紋章を印刷する」
彼が描いたのは、寄り添う二本の世界樹を、七つの花が囲む、美しい紋章だった。
「この紋章は、僕、あるいは、僕と魂を繋いだ仲間が触れることで、陽だまりのような、温かい光を放ちます。偽物には、決して真似のできない、魂の証明印です」

その、あまりにもアークらしい、そして、あまりにも完璧な偽造防止策に、ディアナは光の姿で、歓喜の声を上げた。
『素晴らしい!素晴らしいですわ、アーク様!これこそ、わたくしが夢見た、究極のブランド戦略!(これはただの偽造防止ではない。ブランドの『信頼』そのものを、魔法的に保証し、可視化する…!金貨の価値すら揺るがしかねない、文化の『本位制』!)「本物」の価値を、これほどまでに詩的に、そして絶対的に証明する方法が、この世にあったなんて!』

「そして、二つ目」
アークは、仲間たちを見回した。
「証明印だけでは、足りない。僕らは、製品だけを売るんじゃない。僕らの**『文化』そのもの**を、世界に届けるんです。連合の主要な交易都市に、小さな**『陽だまりの宿木(ヒダマリ・パーチ)』**を創設します」
「そこは、ただの出張所じゃない。セーラさんのレシピで焼いたパンが食べられ、ミカエラさんの教会の絵本が読め、そして、アルフォンス兄さんの物語を語り聞かせる吟遊詩人がいる、小さな、小さな陽だまりの街そのものです。人々は、そこで、本物の陽だまりの温もりに触れる。そうすれば、もう誰も、偽物の、冷たい光に騙されることはなくなるはずです」

証明(シール)と、体験(宿木)。
それは、偽りの物語を力でねじ伏せるのではなく、本物の物語の、圧倒的な温もりで、世界を優しく包み込む、あまりにも壮大で、あまりにも心躍る、逆襲の設計図だった。

#### 二人の盟主

「……アーク」
アルフォンスは、弟が描き上げた完璧な設計図を前に、誇らしげに、そして、少しだけ悪戯っぽく笑った。
「お前の設計図は、完璧だ。だが、一つだけ、穴がある」
彼は、立ち上がると、盟主として、その設計図に、最後のピースをはめ込んだ。
「その『宿木』を守り、育てるのは、俺たち連合の役目だ。だが、そこを訪れる人々をもてなし、俺たちの物語を語るのは、吟遊詩人だけじゃない。**俺たち自身だ**」
彼は、カエランとヴォルカンに向き直った。
「カエラン殿、ヴォルカン殿。あなた方の国の、最高の職人、最高の農夫を、その『宿木』の、最初の『語り部』として、派遣してはいただけないだろうか。彼らの、泥と汗にまみれた、本物の言葉こそが、どんな英雄譚よりも、人々の心を打つはずだ」

その、あまりにも温かい提案。カエランとヴォルカンは、顔を見合わせると、これ以上ないほどの誇りを込めて、力強く頷き返した。
創造主が描く、完璧な理想の設計図。守護者が、そこに、人の温もりという名の、現実的な血肉を与える。二人の英雄が、初めて、共作した、完璧な設計図が、そこに完成した瞬間だった。

#### 最初の証明印

その夜。
アークとアルフォンスは、二人きりで、工房にいた。
アークは、まだ本調子ではない体で、精神を集中させ、最初の『陽だまりの証明印』を、木製の版木へと刻み込んでいく。額には、玉のような汗が浮かび、その肩は、僅かに震えていた。
「……無理すんなよ」
アルフォンスが、その背中を、大きな手で、優しく支える。
「大丈夫だよ、兄さん。……久しぶりに、楽しいんだ。こうして、二人で、ものづくりをするのが」

やがて、版木が完成する。
アルフォンスが、緊張した面持ちで、それに、特殊なインクを塗り、一枚の『陽だまりマルカ』紙幣に、その最初の印を、ゆっくりと、押し当てた。
紙幣の上に、美しい世界樹の紋様が、黒々と浮かび上がる。
アークは、その紋章に、そっと指で触れた。
すると、紋章は、まるで兄の想いに応えるかのように、ふわり、と、陽だまりそのもののような、温かい光を放った。

二人は、その、あまりにも美しく、あまりにも希望に満ちた光を、ただ、黙って見つめていた。
「……すごいな」アルフォンスが、静かに呟いた。「これが、俺たちの、新しい時代の、最初の光か」
「ううん」アークは、首を横に振ると、最高の笑顔で、兄を見上げた。
「これが、兄さんと僕の、最初の『作品』だよ」

創造主と、守護者。二人の英雄が創り出した、たった一つの小さな光。それは、偽りの闇を払い、世界中に、本物の陽だまりの温もりを届ける、新たなる時代の、あまりにも力強い、最初の狼煙だった。

***

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