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第19話 試験勉強と、賢者のカレーライス (19-3)
しおりを挟む「さあ、みんな、お待たせ! 特製『賢者のカレーライス』、できたぞ!」
俺が、湯気の立つ黄金色のカレーを、炊き立てのご飯の横にかけた皿を運ぶと、子供たちから「わああ!」という歓声が上がった。
スパイシーで、食欲をそそる香り。艶やかに輝く、美しい黄金色のソース。
それは、彼らがこれまで見たこともない、魔法の料理だった。
「いただきます!」
子供たちは、元気よくそう言うと、スプーンを手に取り、大きな口で、カレーを頬張った。
そして、一口。
その刹那。
子供たちの、疲れてどんよりとしていた顔が、まるで太陽が昇ったかのように、ぱあっと明るくなった。
「……おいしいっ!!」
「なにこれ! ちょっとだけピリッとするけど、すっごく美味しい!」
「なんだか、頭の中のモヤモヤが、すっきり晴れていくみたい……!」
『七色の賢者スパイス』の魔法は、絶大だった。
『目覚めの根』が、疲れた脳をシャキッと覚醒させ、『安らぎの種』が、緊張した心を優しくほぐし、『記憶の葉』が、学んだ知識を整理するのを助けてくれる。
そして何より、その複雑で、奥深いスパイスの味わいが、失いかけていた食欲と、明日への元気を、体の奥底から、ぐんぐんと湧き上がらせてくれる。
子供たちは、我を忘れたように、夢中でカレーをかきこんだ。
スプーンが止まらない。
額にうっすらと汗をかきながら、一心不乱に食べるその姿は、見ていて実に気持ちが良かった。
「お母さん! おかわり!」
食堂のあちこちから、元気な声が響き渡る。
その光景を、子供たちを心配そうに見守っていた親たちも、目を丸くして、そして、心の底から安堵したような、優しい笑顔を浮かべていた。
やがて、大きな鍋にたっぷりと作ったカレーが、綺麗に空になった頃。
子供たちの顔にはもう、疲れの色はなかった。
お腹いっぱいの満足感と、「よし、やるぞ!」という、新しいエネルギーに満ち溢れていた。
「日向さん、ごちそうさまでした! なんだか、すごく元気が出たよ! これなら、明日の試験も頑張れそう!」
最初にうたた寝していた少年が、満面の笑みで、俺にそう言った。
「おう。頑張れよ。でも、無理はするな。疲れたら、いつでも、ここにカレーを食べにおいで」
俺は、少年の頭を、わしゃわしゃと撫でた。
その夜、「木漏れ日の食卓亭」は、遅くまで、子供たちの活気で賑わったという。
そして、後日談。
その年の学力試験では、なぜか、街の子供たちの成績が、軒並み過去最高を記録したらしい。
その秘密が、一杯の黄金色のカレーにあったことを、知っているのは、ごく一部の人間だけだったという。
食は、時に、最高の応援歌となる。
一人の料理人が、知恵と愛情で煮込んだ一皿は、街の未来を担う、小さな学者たちの心を、見事に救ったのだった。
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