異世界ほのぼのクッキングロード ~元フードコーディネーター、不思議な食材で今日も一皿~

はぶさん

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第21話 王都への招待状と、旅立ちのおにぎり (21-3)

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朝日が昇る頃。
「木漏れ日の食卓亭」には、街中の人々が集まっていた。
漁師のギルさん、老学者のエルドリン教授、織物師のエララさんと孫娘のアーニャ、騎士団の若い衆、そして、数え切れないほどの、常連客たち。

テーブルの上には、俺が握った、ほかほかのおにぎりが、山のように並べられていた。
皆、何も言わずに、そのおにぎりを、一つずつ、手に取っていく。

そして、一口。

その刹那。
食堂は、静寂に包まれた。
聞こえるのは、時折、鼻をすする音だけ。

それは、ただの塩むすびではなかった。
米の一粒一粒に、俺からの「ありがとう」という想いが、確かに込められていた。
食べた者の心に、この街で過ごした、温かい日々の記憶が、走馬灯のように蘇る。

「……うめえなあ……」
誰かが、ぽつりと呟いた。
「……ただの、塩むすびなのになあ……」

その時だった。
「……日向さんだけ、ずるい」

リリィアが、涙でぐしゃぐしゃの顔のまま、そう言った。
そして、彼女は、おもむろに、俺が使っていた米と塩の桶の前に立つと、おぼつかない手つきで、ご飯を握り始めた。

「あんたこそ、これから、一人で、遠い場所に行くんでしょ……! お守りが必要なのは、日向さんの方じゃない……!」

そのリリィアの姿を見て、ベアトリスも、そして、食堂にいた他の女将さんたちも、次々と、桶の周りに集まってきた。

「そうだとも! あんたに腹を空かせられちゃ、この街の恥だからね!」
「わしらの感謝の気持ち、受け取ってもらうぞ!」

女将さんたちは、慣れた手つきで、次々と、おにぎりを握り始めた。
形は、いびつだった。
塩加減も、きっと、バラバラだろう。
だが、そこには、この街の皆からの、「ありがとう」と「いってらっしゃい」、そして「必ず帰ってこいよ」という、数え切れないほどの温かい想いが、たっぷりと、たっぷりと、込められていた。

やがて、俺の手には、ずっしりと重い、おにぎりの包みが、握らされていた。
俺は、もう、涙を堪えることができなかった。

馬車の窓から、俺は、見えなくなるまで、手を振り続けた。
手の中にある、まだ温かい、不格好なおにぎりを、固く、固く、握りしめながら。

ありがとう、みんな。
俺は、決して一人じゃない。
この、世界で一番温かいお守りがある限り。

日向耕介の、新しい旅が、今、始まる。
たくさんの「ただいま」を言うべき、愛しい家族を残して。
そして、いつか、必ずここに帰ってくるという、固い誓いを胸に。
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