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第40話 漁師の結婚式と、祝福のクロカンブッシュ (40-1)
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ドワーフの国から帰還し、街が祝祭の熱気に包まれてから、一月が過ぎた頃。
港町に、久しぶりの、心からの祝福ムードをもたらす、一つの吉報が舞い込んだ。
あの、無口で、しかし誰よりも海の男としての誇りに満ちた漁師、ギルさんの一人息子、フィンが、結婚するというのだ。
相手は、隣の山村から嫁いできた、アニエスという、花のように可憐な娘さんだった。
街中が、二人の門出を祝う、温かい空気に包まれる中、『木漏れ日の食卓亭』は、その結婚披露宴の会場として、大役を仰せつかることになった。
「日向さん! すごいよ、結婚式だって! 私、お料理、いっぱい手伝うね!」
リリィアが、自分のことのように、目を輝かせている。
厨房でも、弟子たちが「俺たちの腕の見せ所だ!」と、今から息巻いていた。
だが、その幸せな雰囲気の中、主役であるはずの花嫁アニエスの表情が、時折、ふっと曇るのを、俺は見逃さなかった。
式の準備の合間、彼女が一人、窓の外を眺めながら、寂しそうにため息をついている。
その日の午後、俺は、意を決して彼女に声をかけた。
「アニエスさん。何か、悩み事でも?」
俺の言葉に、彼女は一瞬、驚いたような顔をしたが、やがて、ぽつり、ぽつりと、その胸の内を、打ち明けてくれた。
彼女には、幼い頃に亡くなった、大好きだった母親との、大切な約束があったのだという。
「……母様と、約束したんです。『アニエスが、お嫁に行く日には、二人で、塔のような、甘いお菓子を作りましょうね』って……」
彼女は、涙を堪えながら、おぼろげな記憶をたどる。
「でも、そのお菓子の名前も、作り方も、もう誰も知らなくて……。母様との、たった一つの約束だったのに……」
その、あまりにも切ない告白に、俺は、胸が締め付けられるのを感じた。
その時だった。
「……師匠」
俺の後ろで、静かに話を聞いていた、一番弟子のレオが、一歩前に進み出た。
その顔には、いつものような、自信に満ちた表情はない。ただ、一人の女性の悲しみに、心を痛める、一人の料理人としての、真摯な表情が、そこにはあった。
「……日向さん。どうか、その大役を、俺たち弟子に、任せてはいただけないでしょうか」
「レオ……?」
「俺たちの力で、彼女の、失われた約束を、最高の形で、叶えてみたいんです。……いえ、叶えてみせます!」
その、力強い言葉。
それは、もはや、師である俺に、実力を示すためのものではなかった。
ただ純粋に、目の前で悲しむ人を、自分たちの料理で、笑顔にしたい。
その、温かい想いだけが、そこにはあった。
俺は、静かに、そして、最高の笑顔で、頷いた。
「……ああ。分かった。お前たちに、任せたぞ」
弟子たちの、初めて自分たちの力で挑む**「祝福の課題」**。
それは、誰かの問題を解決するためではない。
誰かの、新しい「幸せ」を、自分たちの手で、創造するための、最高に温かい挑戦だった。
港町に、久しぶりの、心からの祝福ムードをもたらす、一つの吉報が舞い込んだ。
あの、無口で、しかし誰よりも海の男としての誇りに満ちた漁師、ギルさんの一人息子、フィンが、結婚するというのだ。
相手は、隣の山村から嫁いできた、アニエスという、花のように可憐な娘さんだった。
街中が、二人の門出を祝う、温かい空気に包まれる中、『木漏れ日の食卓亭』は、その結婚披露宴の会場として、大役を仰せつかることになった。
「日向さん! すごいよ、結婚式だって! 私、お料理、いっぱい手伝うね!」
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厨房でも、弟子たちが「俺たちの腕の見せ所だ!」と、今から息巻いていた。
だが、その幸せな雰囲気の中、主役であるはずの花嫁アニエスの表情が、時折、ふっと曇るのを、俺は見逃さなかった。
式の準備の合間、彼女が一人、窓の外を眺めながら、寂しそうにため息をついている。
その日の午後、俺は、意を決して彼女に声をかけた。
「アニエスさん。何か、悩み事でも?」
俺の言葉に、彼女は一瞬、驚いたような顔をしたが、やがて、ぽつり、ぽつりと、その胸の内を、打ち明けてくれた。
彼女には、幼い頃に亡くなった、大好きだった母親との、大切な約束があったのだという。
「……母様と、約束したんです。『アニエスが、お嫁に行く日には、二人で、塔のような、甘いお菓子を作りましょうね』って……」
彼女は、涙を堪えながら、おぼろげな記憶をたどる。
「でも、そのお菓子の名前も、作り方も、もう誰も知らなくて……。母様との、たった一つの約束だったのに……」
その、あまりにも切ない告白に、俺は、胸が締め付けられるのを感じた。
その時だった。
「……師匠」
俺の後ろで、静かに話を聞いていた、一番弟子のレオが、一歩前に進み出た。
その顔には、いつものような、自信に満ちた表情はない。ただ、一人の女性の悲しみに、心を痛める、一人の料理人としての、真摯な表情が、そこにはあった。
「……日向さん。どうか、その大役を、俺たち弟子に、任せてはいただけないでしょうか」
「レオ……?」
「俺たちの力で、彼女の、失われた約束を、最高の形で、叶えてみたいんです。……いえ、叶えてみせます!」
その、力強い言葉。
それは、もはや、師である俺に、実力を示すためのものではなかった。
ただ純粋に、目の前で悲しむ人を、自分たちの料理で、笑顔にしたい。
その、温かい想いだけが、そこにはあった。
俺は、静かに、そして、最高の笑顔で、頷いた。
「……ああ。分かった。お前たちに、任せたぞ」
弟子たちの、初めて自分たちの力で挑む**「祝福の課題」**。
それは、誰かの問題を解決するためではない。
誰かの、新しい「幸せ」を、自分たちの手で、創造するための、最高に温かい挑戦だった。
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