異世界ほのぼのクッキングロード ~元フードコーディネーター、不思議な食材で今日も一皿~

はぶさん

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第47話 弟子たちの賄いと、初めての“創作”料理 (47-2)

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「黙れ!」

レオの一喝が、混沌としていた厨房に響き渡った。弟子たちが、はっと息を呑んで、彼を見る。
「師匠は、どちらかを選べとは言っていない。『一つの皿の上に表現しろ』とおっしゃったんだ」
レオの瞳には、かつてのような傲慢さはない。リーダーとしての、静かで、しかし揺るぎない決意の光が宿っていた。
「俺たちは、ドワーフでも、エルフでもない。日向耕介の弟子だ。…ならば、答えは一つ。両方を、俺たちの技術で、調和させてみせる!」

レオが提案したのは、**『ローストポークのサラダ仕立て、森と山のソースを添えて』**だった。力強い火入れの技術が試される肉料理(ドワーフ)と、素材の生命力を活かすサラダ(エルフ)を、一つの皿に盛り付ける。その、あまりにも大胆な発想に、弟子たちは、最初は戸惑いながらも、次第にその瞳を輝かせていった。

調理が始まった。厨房は、完璧なオーケストラのように、それぞれの役割を奏で始める。
レオは、豚の塊肉と向き合っていた。王都で学んだ緻密な火入れの技術に、ドワーフの国で見た、素材の力を信じる豪快さを加える。表面は力強く焼き固め、中は、低温でじっくりと、ロゼ色に火を通していく。

他の弟子たちは、サラダ作りを担当する。エルフの森で学んだ通り、野菜をただの水で洗うのではない。一枚一枚の葉の声を聞くように、マナを損なわないよう、清らかな泉の水で、優しく、丁寧に汚れを落としていく。

そして、この料理の心臓部、ソース作りが始まった。
「ドワーフの国でいただいた、この燻製ナッツの油を使おう!」
「いや、それだと香りが強すぎる! エルフの森の、この花の酢の繊細さが死んでしまう!」
再び、意見がぶつかる。力強い燻製の香りと、繊細な花の香り。水と油のように、混じり合わない。

その時だった。
「きゅいん!」
厨房の隅で、彼らの奮闘をずっと見守っていたモグモグが、カウンターの上に、一つの小さな果実を、ことり、と置いた。それは、街の子供たちがよくおやつにしている、何の変哲もない**『しずくの実』だった。
「モグモグ…? これは…」
レオが、その実を手に取り、潰してみる。すると、中から、無味無臭だが、驚くほどに旨味の強い、とろりとした果汁が出てきた。
レオは、何かに閃いたように、その果汁を、対立していた油と酢の中へと、一滴、落とした。
その瞬間。奇跡が起きた。
分離していたはずの二つの液体が、すうっと、美しい乳白色のソースへと「乳化」**し、一つに溶け合ったのだ。燻製の香ばしさと、花の香りが、互いの良さを殺すことなく、完璧な調和を奏でている。

「…そうか。繋ぐのは、技術だけじゃない…。こういうことだったのか、師匠…!」
レオの目から、一筋の涙がこぼれ落ちた。

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