異世界ほのぼのクッキングロード ~元フードコーディネーター、不思議な食材で今日も一皿~

はぶさん

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第56話 港町うまいもの祭りと、魂の焼きそばパン (56-1)

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祭りの日の朝。港町の広場は、まだ夜明け前の静けさの中、ただならぬ熱気に包まれていた。広場の中央には、弟子たちが夜通し準備した、巨大な鉄板を備え付けた屋台が、まるで砦のようにそびえ立っている。その顔には、緊張と、寝不足と、そして、それらを遥かに上回る、武者震いのような興奮が浮かんでいた。

夜が明けると、彼らの仲間たちが、次々と集まってきた。
「よう、若造ども! 持ってきたぜ、わしの魂をな!」
パン職人のクラウスさん が、荷車に山と積んだ、この日のために特別に焼き上げた、ふかふかのコッペパンを運び込んできた。その顔には、失意の底にいた頃の影は微塵もない。
「おう、兄ちゃんたち! 一番いいとこ、獲ってきたぞ!」
漁師のギルさん も、朝獲れの、まだぴちぴちと跳ねている新鮮なイカやエビを、氷を敷き詰めた桶に入れて担いできた。

対する『黒船亭』は、その巨大な扉を静かに開け、店の前に「本日全品半額」という、無言の宣戦布告とも言える挑発的な看板を掲げた。その圧倒的な資本力と、合理的な戦略の前に、街の人々の心は一瞬、揺らいだ。

屋台で、弟子たちがごくりと喉を鳴らす。その時だった。
人垣をかき分けるようにして、俺 が、彼らの元へとやってきた。弟子たちの顔が、緊張に強張る。彼らは、最後の助言を、師である俺に求めていた。
俺は、何も言わなかった。ただ、彼らが夜通しかけて作り上げた、秘伝のソースの壺を手に取り、その香りを確かめ、一口だけ、味見をする。そして、静かに、しかし、心の底からの信頼を込めて、微笑んだ。
「…美味いじゃないか」
俺は、レオ の肩を、ぽんと叩いた。
「行ってこい。お前たちの『物語』を、存分に、この街の皆に、聞かせてやるんだ」
その一言が、彼らの最後のスイッチを入れた。レオの瞳に、揺るぎない決意の炎が、赤々と灯った。

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