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第二十話 夏の終わりと、収穫の唄 第3部『初めての収穫祭と、未来への唄』
しおりを挟む祭り当日。郷には、朝から、これまでで一番の賑わいが訪れていた。
国境の村からは、長老たちが、村で採れた最高の麻布と、美しい絵柄が描かれた陶器の皿を土産に。森からは、ドガたちオークの一団が、巨大な猪を丸々一頭担いで、陽気な歌声と共に。
小さな郷が、かつてないほどの活気と、温かい友情に包まれていた。
だが、その光景に、ほんの少しだけ、緊張が走る。
村の長老たちと、オークのドガが、初めて顔を合わせたのだ。
かつて、森の覇権を争い、互いに牙を剥き出しにしていた二つの種族。その間に、まだ見えない壁があるのを、僕は感じ取っていた。
だが、そんなぎこちない空気を、最高の香りが打ち破った。
「さあさあ、みんな!腹いっぱい食ってくれ!今日は無礼講だ!」
ガラクが、厨房から、大皿にてんこ盛りにされた、人生最高の料理を次々と運び出してくる。
猪肉のエール煮込み、巨大カボチャの甘い焼き菓子、そして、初めての卵を使った、ふわふわのプリン。
その、あまりの美味しさに、最初は警戒していた村人も、オークも、ただただ笑顔になる。
そして、祭りの主役が登場する。
ギムレットさんが、ズボラが作った特製のジョッキに、琥珀色に輝く「マウンテンゴールド・エール」を、なみなみと注いでいく。
僕は、そのジョッキを、仲間たち全員に配って回った。人間、ドワーフ、オーク、リザードマン、ゴブリン、そして竜たち。
僕は、その中心に立ち、高らかにジョッキを掲げた。
「最高の収穫と、最高の仲間に!乾杯!」
「「「乾杯!!!」」」
種族を超えた仲間たちの声が、一つになる。
その瞬間、村人とオークの間にあった、見えない壁が、エールの泡と共に、綺麗さっぱり消え去ったのが分かった。
夜。僕たちは、大きな焚き火を囲んでいた。
ガラクとギムレットさんは、次の料理と酒の相性について熱く語り合い、ズボラと村の若者は、互いの木工技術について教え合っている。ドガは、ユイちゃんを肩車して、満面の笑みを浮かべていた。
やがて、僕が教えた素朴な歌が、誰からともなく始まる。それは、収穫への感謝と、仲間たちとの出会いを祝う、この郷で生まれた、最初の「文化」だった。
その温かい光景を、僕は少し離れた場所から、コハクとハグレと共に、胸がいっぱいになりながら見つめていた。
『ガラクタの郷』が、本当の意味で、皆の「故郷」になった。
その確かな実感と共に、郷の夜は、幸せに更けていった。
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