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初夜に「君を愛することはない」と涙目で言われました
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「君を愛することはない」
そう言った夫はその大きな瞳に今にも溢れそうなほど涙を溜めており、私は言葉を失った。
私、アルミ・ニーム。昨日まではアルミ・カンノーエ。
昨日まではカンノーエ伯爵家の次女、そして今日からは次期ニーム伯爵夫人。
夫であるストロ・ニームとは初等部からの同級生。ではあるが当時はあまり接点はなく、三年前、婚約者となってから改めてはじめましての挨拶をして交流を始めた仲である。
ストロは本を読むのが好きで、暇さえあればなにか読んでいる。お気に入りは国の英雄譚らしい。大きな瞳が特徴的だが、優れてもない、劣ってもない、至って平凡で真面目な、時々抜けてる次期伯爵。
私はおしゃべりとお洒落が好きな、ごく普通の伯爵令嬢。ストロはおしゃべり上手ではないが、私の話を静かに聞いてくれるので今のところ特に問題はない。ストロが歴史書を読みふける隣で私が流行りのロマンス小説を読むのは、デートのありふれたワンシーンである。
話を戻そう。
今のところストロとは燃えるような愛、はないけれどもそれなりに友好的な関係を築いてきたつもりだったけれど、「愛することはない」なんて言われてしまうとは驚きだ。
他に好きな令嬢がいるのだろうか?この前読んだ「私の事を愛さないはずの夫にこっそり仕返ししていたつもりが溺愛されていました」は浮気相手を探っていたら実は生き別れの姉で密会の内容は惚気話(もちろんヒロインに対する)だったというオチだったわね。「君を愛することはない」は愛しの妻に緊張し過ぎて言ってしまったという…ちょっと残念なヒーローのお話だったわ。
もう少し前のブームだった「愛されない妻は夫の呪いを解き明かす」では誰かを愛するとその人が死んでしまう呪いを受けた旦那様に恋した令嬢が聖なる力で呪いを解き改めて夫婦になるというお話で、こちらは「君を愛することはない」が「君を死なせたくない」という意味を持っていたわ。
さらに前に流行った「戦死するなんてとんでもない!」では戦地へ行く直前に結婚した二人が愛の力で生き延びる話で…この話の「君を愛することはない」とは今から死地へ向かうヒーローが自分が死んでも悲しまないようにという言葉がけなのよね。「それでも私は、貴方と生きていくと決めたのです」というヒロインの返しは最高だったわ…。
と言うところまで考えて気付く。
この物語達は全て昔私がストロに熱く語った物語。
共通点として「君を愛することはない」とヒーローが伝えて、ラストは二人が心から結ばれ、ハッピーエンドで終わる。
ストロは時々「なんでそうなる?」という大ボケをかますことがある。
「…ねえ、ストロ」
「…なんだ」
「君を愛することはない、って、初夜に必ず言わなくてはいけない台詞ではないのよ?」
ストロは大きめをさらに大きく開く。ついでとばかりに溜まっていた涙が一粒こぼれ落ちた。
「そうなのか? どんな物語にも出てくるから、てっきり夫婦仲睦まじく過ごすための呪文かなにかかと…」
「それで泣くほど嫌なのに言ってくれたの?」
「…嘘をつくのは思ったより辛くて…」
私とストロの間には燃えるような愛はないと思っていたけれど。
どうやら彼は泣くほど、私を愛してくれているようだ。
「もう…」
そして私もこのちょっと抜けている旦那様が、とても可愛く見えてきた。
それから私たちは社交界でも密かに憧れられるほどの仲睦まじい夫婦となった。
「君を愛することはない」、もしかしたら本当に、ハッピーエンドの呪文だったかもしれないわ。
なんてね。
そう言った夫はその大きな瞳に今にも溢れそうなほど涙を溜めており、私は言葉を失った。
私、アルミ・ニーム。昨日まではアルミ・カンノーエ。
昨日まではカンノーエ伯爵家の次女、そして今日からは次期ニーム伯爵夫人。
夫であるストロ・ニームとは初等部からの同級生。ではあるが当時はあまり接点はなく、三年前、婚約者となってから改めてはじめましての挨拶をして交流を始めた仲である。
ストロは本を読むのが好きで、暇さえあればなにか読んでいる。お気に入りは国の英雄譚らしい。大きな瞳が特徴的だが、優れてもない、劣ってもない、至って平凡で真面目な、時々抜けてる次期伯爵。
私はおしゃべりとお洒落が好きな、ごく普通の伯爵令嬢。ストロはおしゃべり上手ではないが、私の話を静かに聞いてくれるので今のところ特に問題はない。ストロが歴史書を読みふける隣で私が流行りのロマンス小説を読むのは、デートのありふれたワンシーンである。
話を戻そう。
今のところストロとは燃えるような愛、はないけれどもそれなりに友好的な関係を築いてきたつもりだったけれど、「愛することはない」なんて言われてしまうとは驚きだ。
他に好きな令嬢がいるのだろうか?この前読んだ「私の事を愛さないはずの夫にこっそり仕返ししていたつもりが溺愛されていました」は浮気相手を探っていたら実は生き別れの姉で密会の内容は惚気話(もちろんヒロインに対する)だったというオチだったわね。「君を愛することはない」は愛しの妻に緊張し過ぎて言ってしまったという…ちょっと残念なヒーローのお話だったわ。
もう少し前のブームだった「愛されない妻は夫の呪いを解き明かす」では誰かを愛するとその人が死んでしまう呪いを受けた旦那様に恋した令嬢が聖なる力で呪いを解き改めて夫婦になるというお話で、こちらは「君を愛することはない」が「君を死なせたくない」という意味を持っていたわ。
さらに前に流行った「戦死するなんてとんでもない!」では戦地へ行く直前に結婚した二人が愛の力で生き延びる話で…この話の「君を愛することはない」とは今から死地へ向かうヒーローが自分が死んでも悲しまないようにという言葉がけなのよね。「それでも私は、貴方と生きていくと決めたのです」というヒロインの返しは最高だったわ…。
と言うところまで考えて気付く。
この物語達は全て昔私がストロに熱く語った物語。
共通点として「君を愛することはない」とヒーローが伝えて、ラストは二人が心から結ばれ、ハッピーエンドで終わる。
ストロは時々「なんでそうなる?」という大ボケをかますことがある。
「…ねえ、ストロ」
「…なんだ」
「君を愛することはない、って、初夜に必ず言わなくてはいけない台詞ではないのよ?」
ストロは大きめをさらに大きく開く。ついでとばかりに溜まっていた涙が一粒こぼれ落ちた。
「そうなのか? どんな物語にも出てくるから、てっきり夫婦仲睦まじく過ごすための呪文かなにかかと…」
「それで泣くほど嫌なのに言ってくれたの?」
「…嘘をつくのは思ったより辛くて…」
私とストロの間には燃えるような愛はないと思っていたけれど。
どうやら彼は泣くほど、私を愛してくれているようだ。
「もう…」
そして私もこのちょっと抜けている旦那様が、とても可愛く見えてきた。
それから私たちは社交界でも密かに憧れられるほどの仲睦まじい夫婦となった。
「君を愛することはない」、もしかしたら本当に、ハッピーエンドの呪文だったかもしれないわ。
なんてね。
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