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ヒロインと悪役令嬢のお茶会(二)
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「あんなことをしておきながら、白を切るなんて随分ですわ」
「……言いがかりもいいところですわ。それに、私はなにも覚えていないんです」
ルドからは嫉妬のあまり、アーシエがユイナ令嬢に毒を飲ませたと聞いていた。
しかしその記憶を持つアーシエ自体がいないのだから、どうとでも言い逃れ出来る。
普通に考えてアーシエの中に私という意識が入っている時点で、アーシエ自体は亡くなったと考えるのが筋だ。
アーシエが亡くなるようななにか。
おそらくその直前の出来事としては、その毒殺しか考えられない。
ユイナ令嬢を毒殺しようとして、自らも毒を口にした。
あるいは、毒をあえて一緒に飲んでしまった。
さもなくば、一番妥当なのが毒を飲んだのはユイナ令嬢ではなくアーシエだったか。
毒を飲んだはずの人間が生きていて、しかも殿下に寵愛されている。
その真偽を確認したかったという方が、なんとなくしっくりくる。
「だいたい、毒だなんて……」
「貴女のせいで、わたくしは酷い目にあったのですよ、アーシエ様」
「でも、毒を飲んだ私もユイナ様も、こうして何事もないではないですか。初めから、毒なんてなかったのではないですか?」
毒を飲んだアーシエは死んだ。
でもユイナ令嬢は生きている。
それ以上の答えなどないはずだ。
「そ、それは」
「私もユイナ様も同じ毒を同じように飲んでいたのなら、きっと二人とも儚く死んでしまっていたに違いありませんわ。だって、私たちは強靭な男の方たちとは違い、そういう生き物でしょ?」
「そ、そうですわね」
バツの悪そうにユイナ令嬢は扇子を開くと、仰ぎながら口元を隠した。
言いたいことがあるとその顔には書いてあったが、それ以上この件についての会話はユイナ令嬢からかけられることはなかった。
当たり障りのない社交界での話、流行のドレスの話。
いつも令嬢たちがするような表面だけの会話に切り替わる。
そんなお茶会がしばらく続き、そろそろユイナ令嬢にお帰りになってもらいたいと思う頃、勢いよくこの応接間への扉が開いた。
「アーシエ」
やや顔面が蒼白で、息を切らしたルドが飛び込んでくる。
「ルド様」
「ルド殿下」
私よりも先にユイナ令嬢は立ち上がると、ルドの元へ近寄る。
そして先ほどまでとは全く違い瞳をうるうるとさせながら、ルドを見上げていた。
しかしそんな彼女を見ても、どこか冷静な自分がいる。
昔の会社にもいたなぁ。
こうやって、男の前でだけぶりっ子して豹変する子。
男受けはいいんだけど、女受けは最悪なのよね。
「アーシエ、これは一体」
「ルド様、ユイナ様が、私が毒を飲んで体調を崩してこの離宮で養生しているとお聞きになったそうで、わざわざお見舞いに来て下さいましたの」
「そうなのか、ユイナ令嬢」
「え、あ、はい……そうです。殿下」
私が毒と言ったために、ルドの表情は更に険しく怒りを含んだその声は低い。
おそらくこの話は、王宮ではタブーとなっているのだろう。
令嬢二人が毒を飲んだのだ。
ただの箝口令だけではなく、調査もしてはいるのだろうけど。
「ルド様、私疲れてしまいましたので、ベッドまで運んでくださいませんか?」
そう言って甘えるように私が手をルドに差し伸べれば、もう先ほどまでの怖い表情はどこにもなかった。
もっとも助け船を出してあげたというのに、ユイナ令嬢は両手に作った拳を握りしめている。
「そうだな、アーシエ」
ルドに抱きかかえられた私は後ろ手でそっと、ユイナ令嬢にしっしと手を振った。
「……言いがかりもいいところですわ。それに、私はなにも覚えていないんです」
ルドからは嫉妬のあまり、アーシエがユイナ令嬢に毒を飲ませたと聞いていた。
しかしその記憶を持つアーシエ自体がいないのだから、どうとでも言い逃れ出来る。
普通に考えてアーシエの中に私という意識が入っている時点で、アーシエ自体は亡くなったと考えるのが筋だ。
アーシエが亡くなるようななにか。
おそらくその直前の出来事としては、その毒殺しか考えられない。
ユイナ令嬢を毒殺しようとして、自らも毒を口にした。
あるいは、毒をあえて一緒に飲んでしまった。
さもなくば、一番妥当なのが毒を飲んだのはユイナ令嬢ではなくアーシエだったか。
毒を飲んだはずの人間が生きていて、しかも殿下に寵愛されている。
その真偽を確認したかったという方が、なんとなくしっくりくる。
「だいたい、毒だなんて……」
「貴女のせいで、わたくしは酷い目にあったのですよ、アーシエ様」
「でも、毒を飲んだ私もユイナ様も、こうして何事もないではないですか。初めから、毒なんてなかったのではないですか?」
毒を飲んだアーシエは死んだ。
でもユイナ令嬢は生きている。
それ以上の答えなどないはずだ。
「そ、それは」
「私もユイナ様も同じ毒を同じように飲んでいたのなら、きっと二人とも儚く死んでしまっていたに違いありませんわ。だって、私たちは強靭な男の方たちとは違い、そういう生き物でしょ?」
「そ、そうですわね」
バツの悪そうにユイナ令嬢は扇子を開くと、仰ぎながら口元を隠した。
言いたいことがあるとその顔には書いてあったが、それ以上この件についての会話はユイナ令嬢からかけられることはなかった。
当たり障りのない社交界での話、流行のドレスの話。
いつも令嬢たちがするような表面だけの会話に切り替わる。
そんなお茶会がしばらく続き、そろそろユイナ令嬢にお帰りになってもらいたいと思う頃、勢いよくこの応接間への扉が開いた。
「アーシエ」
やや顔面が蒼白で、息を切らしたルドが飛び込んでくる。
「ルド様」
「ルド殿下」
私よりも先にユイナ令嬢は立ち上がると、ルドの元へ近寄る。
そして先ほどまでとは全く違い瞳をうるうるとさせながら、ルドを見上げていた。
しかしそんな彼女を見ても、どこか冷静な自分がいる。
昔の会社にもいたなぁ。
こうやって、男の前でだけぶりっ子して豹変する子。
男受けはいいんだけど、女受けは最悪なのよね。
「アーシエ、これは一体」
「ルド様、ユイナ様が、私が毒を飲んで体調を崩してこの離宮で養生しているとお聞きになったそうで、わざわざお見舞いに来て下さいましたの」
「そうなのか、ユイナ令嬢」
「え、あ、はい……そうです。殿下」
私が毒と言ったために、ルドの表情は更に険しく怒りを含んだその声は低い。
おそらくこの話は、王宮ではタブーとなっているのだろう。
令嬢二人が毒を飲んだのだ。
ただの箝口令だけではなく、調査もしてはいるのだろうけど。
「ルド様、私疲れてしまいましたので、ベッドまで運んでくださいませんか?」
そう言って甘えるように私が手をルドに差し伸べれば、もう先ほどまでの怖い表情はどこにもなかった。
もっとも助け船を出してあげたというのに、ユイナ令嬢は両手に作った拳を握りしめている。
「そうだな、アーシエ」
ルドに抱きかかえられた私は後ろ手でそっと、ユイナ令嬢にしっしと手を振った。
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