第四創世主は殺人衝動を性欲で捻じ伏せるらしい~最強の力を得た凡人、仕方なくイヤイヤ成り上がっていったら世界を救うことになりました~

文場凡

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第四章:武林迷宮

五十一話:武林迷宮 萌芽の予感

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 「しかしどうやらここまでの動きを見るに……シカイとやらがお前の限界だったようだな」
 「我が道の極致すら其処元そこもとにとっては稚技ちぎに過ぎなかったか。すまぬな――が、その様子だとお気に召しては頂けたのかな」

 キュウカクが、そのプックリと膨らんだピンク色の唇から真っ赤な舌をチロリと出して、舌なめずりをする。

 「大変な美味だったぞ」
 「それは何より。では、この続きはイマイ殿に頼むとしよう」
 「なに……?」

 構えを解いて姿勢を正したゲンカイが、折れた刀を鞘へと納めた。
 それを見たキュウカクが俺へと視線を向け――両手を頬へと当てながら嗜虐しぎゃく的な笑みを浮かべた。

 「ああゲンカイ……健気にも、あの愚か者が回復するまでの時間稼ぎをしていたのか?」
 「その通りだ」
 「ウフフフ、これはこれは。お前が切り開き歩んできた剣の道を、健気にも犠牲にしたその先に……よもやこれほどの愉悦ゆえつがあろうとは。さっきは思わず我を忘れて殺しかけてしまったが、そうだな。こんなことはまた数千年、数万年以上待たねば起きぬのだろうからな――」

 と、隣にいたはずのメリシアが消え、突然、キュウカクによって抱きかかえられていた。

 「すべてを味わい尽くさねばもったいないというものだ」
 「ッ!?」

 一瞬遅れて、自分の置かれた状況に気が付いた様子のメリシアが息を飲んだ。
 俺はというと、先ほどまでキュウカクから受けていた拷問ともいえる仕打ちを思い出し、その魔の手がメリシアにも及ぼうとしていることに肌が泡立つのを感じていた。

 「人間は良い……動物や虫はもちろん、植物にすら生命は宿っているにも拘わらず、人間という有機生命体だけがさも尊い存在であるかのように思いあがっている」

 キュウカクの白く細い指がゆっくりとメリシアの肢体を這っていく。

 「草花を手折たおる時、悪戯に虫の羽をぐ時、動物の肉を食らう時、その存在や尊さに想いを馳せることが無いのにも関わらず……ただ同種だからという理由だけで、人間の生命に危険が及ぶと途端にそれを守ろうとする。なんとも傲慢で、醜く――それゆえに愛しい」
 「くっ……ふあっ!?」

 そして少女の手がワンピースをたくし上げ、薄水色の下着の中へと滑り込んでいく。
 自らに訪れる運命に覚悟を決めたように目を固く閉じていたメリシアが一瞬驚愕の表情を浮かべ……すぐに眉を寄せて吐息を漏らしはじめた。
 やがて、上気させた頬を隠すように顔を伏せたメリシアに気を良くしたのか、キュウカクが動きを封じるように抱きしめていた右手を離して、豊満な双丘を労わるように撫でつつ時折指を肉に埋めて揉みしだく。

 「妾には繁殖のための肉欲というものは無いが、女の悦びなら知っておるぞ」
 「ぁ……んぅっ……」

 一体何がはじまったのか。
 キュウカクは何を言おうとしているのか。
 ……皆目見当もつかないが、先ほどから俺の心は――やっぱりこの少女は殺さなければならない。という暗い決意を表すように、目の前で繰り広げられている熱を帯びた情事とは反対に凍てついていた。

 「やめろ」

 その静止の言葉は、キュウカクの左手がメリシアの中へと侵入しようと、さらに深く下着の奥に手を挿し入れたことを咎めるものなのか……それとも、自分自身へのものなのか。
 俺の言葉を受けてピタリと手を止めたキュウカクの瞳から、急速に熱が失われていく。

 「創世の救主ごときが妾に命令するな。それとも、この遊戯に加わりたいのか? なるほど、オスならばそれも無理からぬこと……妾は寛容だから特別に許可してやろう。遠慮するな、二人とも同時に可愛がってやる」

 平時ならば喜んで飛び込んでいきそうな誘いだが、ある意味、キュウカクでさえその表層までしか到達していないことわり――力の調和の真の意味を、まるで萌芽するかのように理解しつつある今、俺の返答はイエスでもノーでも無かった。

 「キュウカク、今すぐにメリシアを解放して盟約を結ぶなら、俺はお前を許そう」
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