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第四章:武林迷宮
エピローグ:不穏な空気
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四十階層でエンゴクと、入り口でスイリョウと盟約を終え――それぞれの階層まではチゴウに転送して貰った――迷宮から出たところで後ろを振り返る。
無駄にでかい門がゆっくりと閉まっていく、その地響きにも似た重い音を聞きながら、この約一週間のことを思い返す。
何度かヤバイ目にもあったが、それに見合う収穫は得ることができた。
六体の守護武神。その力は、まさに想像を超えるものだった。
中でも――
「ソウタ様、さっそく転移いたしますか?」
先ほどまでとは打って変わって従順なキュウカクの存在はでかい。
あの土壇場でメリシアをもてあそんでくれたから、性欲が力を調和させるということに気付けたものの、あれが無ければ確実に二人とも殺されていたであろうその力は、味方にさえつけてしまえばかなり頼もしい。
そんな、間違いなくこの世界でも一、二を争うであろう存在が……居心地悪そうに眉をひそめるメリシアの隣を、フリフリのスカートを揺らしながら優雅に歩いていた。
「あの……キュウカクさん。転移は帝都から迎えの者がやってくる手筈になってますので……そろそろ戻っては頂けないでしょうか……?」
「ソウタ様の警護をせねばならぬというのに、なぜ戻らねばならないのだ」
「……帝都の者がキュウカクさんを見たら驚いてしまいます。それに、警護なら私が――」
「元戒にすら及ばぬお前では無理だ。聞けば、奴が盟約を結んだのもソウタ様の御力によるものだそうではないか。そんな者が警護など、たわごとも大概にしろ」
チゴウもゲンカイも、盟約を結んだ守護武神達は、みなメリシアのことを尊重し、その身の安全を優先してくれているというのに、キュウカクは盟約を結んでも変わらないどころか、むしろ結ぶ前より邪険に扱うようになったとすら思える。
そんな相手が一緒では、居心地が悪くて当然だろう。
「うぅ……」
打ちのめされ過ぎてもはや半泣きのメリシアに救いの手を差し伸べる。
「キュウカク、俺よりも弱いお前が俺を警護してどうする。お前の仕事はメリシアの警護と俺の補佐だ。さっきも言ったが、盟主の指示と俺の指示には絶対に従え、いいな」
敢えて多少強めの口調でそう言うと、キュウカクが両腕で自分のことを抱きしめながらブルブルと身震いし始めた。
「はっ、はぃ! 仰せの通りに致しますっ!」
「よし、それでいい」
「そんな……お褒めのお言葉などもったいないっ……!」
いや、褒める言葉なんて一言も使ってねえ。
あれ……ていうか、なんかこういうシーン……SM調教系のエロゲで見たことあるぞ……。
気のせいかな……現実にそんなことあるわけないもんな……。
「妾のことは是非ザリガニとでもお呼びくださいませっ……!!」
気のせいじゃなかった!
っていうかザリガニ! ザリガニの正体気になる!
「コホン……でも、そろそろ迎えが来てもいい頃ですが、遅いですね……」
メリシアが咳払いを一つおいて、あからさまに話題を逸らす。
話の内容はともかくとして、ザリガニについては聞きたかった……。
「……まぁ、こっちから行けるんだから別に待つ必要もないだろ。キュウカク、帝都の王宮へ転移頼む」
「――到着しました」
「っ!?」
気が付くと、王宮の広間にいた。
早いなんてもんじゃない……チゴウが迷宮内で行っていた転送並みの、まさにノータイム転移だ。
「……ん?」
キュウカクの爆速魔術に驚愕したのも束の間、辺りの様子がおかしいことに気が付き慌てて周囲を見回す――と、衛兵はおろか、平時なら一人二人は必ずせわしなく掃除をしている使用人の姿が見当たらない。
たまたまか……?
「いや、それにしても静かすぎる」
「ソウタ様……」
異変を察知した様子のメリシアが不安そうにしがみついてきた。
それをキュウカクが横目で恨めしそうに見ているが、今はそこに触れてやるほどの余裕はない。
すぐにスローモーション状態へと移行して、執務室……厨房……議会場……と、王宮内を見て回る。
「い、いない……」
――王宮の中には、ただの一人も残っている者がいなかった。
無駄にでかい門がゆっくりと閉まっていく、その地響きにも似た重い音を聞きながら、この約一週間のことを思い返す。
何度かヤバイ目にもあったが、それに見合う収穫は得ることができた。
六体の守護武神。その力は、まさに想像を超えるものだった。
中でも――
「ソウタ様、さっそく転移いたしますか?」
先ほどまでとは打って変わって従順なキュウカクの存在はでかい。
あの土壇場でメリシアをもてあそんでくれたから、性欲が力を調和させるということに気付けたものの、あれが無ければ確実に二人とも殺されていたであろうその力は、味方にさえつけてしまえばかなり頼もしい。
そんな、間違いなくこの世界でも一、二を争うであろう存在が……居心地悪そうに眉をひそめるメリシアの隣を、フリフリのスカートを揺らしながら優雅に歩いていた。
「あの……キュウカクさん。転移は帝都から迎えの者がやってくる手筈になってますので……そろそろ戻っては頂けないでしょうか……?」
「ソウタ様の警護をせねばならぬというのに、なぜ戻らねばならないのだ」
「……帝都の者がキュウカクさんを見たら驚いてしまいます。それに、警護なら私が――」
「元戒にすら及ばぬお前では無理だ。聞けば、奴が盟約を結んだのもソウタ様の御力によるものだそうではないか。そんな者が警護など、たわごとも大概にしろ」
チゴウもゲンカイも、盟約を結んだ守護武神達は、みなメリシアのことを尊重し、その身の安全を優先してくれているというのに、キュウカクは盟約を結んでも変わらないどころか、むしろ結ぶ前より邪険に扱うようになったとすら思える。
そんな相手が一緒では、居心地が悪くて当然だろう。
「うぅ……」
打ちのめされ過ぎてもはや半泣きのメリシアに救いの手を差し伸べる。
「キュウカク、俺よりも弱いお前が俺を警護してどうする。お前の仕事はメリシアの警護と俺の補佐だ。さっきも言ったが、盟主の指示と俺の指示には絶対に従え、いいな」
敢えて多少強めの口調でそう言うと、キュウカクが両腕で自分のことを抱きしめながらブルブルと身震いし始めた。
「はっ、はぃ! 仰せの通りに致しますっ!」
「よし、それでいい」
「そんな……お褒めのお言葉などもったいないっ……!」
いや、褒める言葉なんて一言も使ってねえ。
あれ……ていうか、なんかこういうシーン……SM調教系のエロゲで見たことあるぞ……。
気のせいかな……現実にそんなことあるわけないもんな……。
「妾のことは是非ザリガニとでもお呼びくださいませっ……!!」
気のせいじゃなかった!
っていうかザリガニ! ザリガニの正体気になる!
「コホン……でも、そろそろ迎えが来てもいい頃ですが、遅いですね……」
メリシアが咳払いを一つおいて、あからさまに話題を逸らす。
話の内容はともかくとして、ザリガニについては聞きたかった……。
「……まぁ、こっちから行けるんだから別に待つ必要もないだろ。キュウカク、帝都の王宮へ転移頼む」
「――到着しました」
「っ!?」
気が付くと、王宮の広間にいた。
早いなんてもんじゃない……チゴウが迷宮内で行っていた転送並みの、まさにノータイム転移だ。
「……ん?」
キュウカクの爆速魔術に驚愕したのも束の間、辺りの様子がおかしいことに気が付き慌てて周囲を見回す――と、衛兵はおろか、平時なら一人二人は必ずせわしなく掃除をしている使用人の姿が見当たらない。
たまたまか……?
「いや、それにしても静かすぎる」
「ソウタ様……」
異変を察知した様子のメリシアが不安そうにしがみついてきた。
それをキュウカクが横目で恨めしそうに見ているが、今はそこに触れてやるほどの余裕はない。
すぐにスローモーション状態へと移行して、執務室……厨房……議会場……と、王宮内を見て回る。
「い、いない……」
――王宮の中には、ただの一人も残っている者がいなかった。
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