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香水の君 2
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ザワザワとしたざわめきに、何があったのかと、声のする方へ近付いてみると。
そこには、先程の女性達とはまた違う、別の女性貴族数人が、香水の君に対して、何とも醜悪な笑みを浮かべているが目に入った。
そして、手には空のワイングラス。
まさかと思い、香水の君のドレスを見れば、彼女のドレスの胸元には、真っ赤な赤ワインが染み込んでいた。……なんて事を……。
「ごめんなさいね。手が滑ってしまったの。怪我はなかったかしら」
声色はいかにも申し訳なさそうにしているが、表情は愉しそうにしており、一緒にいる他の女性も扇で口を隠してはいるが、笑みを浮かべているのが、丸わかりだ。
なんともまあ、ベタな嫌がらせを……。これが、淑女の、貴族令嬢のする事だろうか。
対して、香水の君は、ゆっくりとした動作で一礼を取ると、怒るでもなく泣くでもなく、変わらず穏やかな表情を浮かべていた。
「いえ、ドレスに掛かっただけですので」
「まぁ、怪我が無くて何よりだわ。それに貴女は、素敵な香りをいつも纏ってるもの。赤ワインの香りも、きっと優雅に纏えるわよね」
その言葉に、周りの者は、扇を口元に当てたままクスクス小さく笑った。
その笑い声にも表情を変えず、彼女は手許からハンカチを取り出し、静かにドレスに染み込んでしまった赤ワインを、ハンカチに吸わせようとしていく。
エスコートしていた兄が、自分がやるよと、彼女からハンカチを取ろうとするが、その手を彼女が止める。
「大丈夫ですわ、お兄様。自分でやりますから、どうぞ気になさらないで」
「しかし……」
「私なら、大丈夫ですから。それよりも、お兄様の服に掛からなくて、良かったわ」
「でもベル、君は……」
兄は妹を、妹は兄を気遣うその姿に、周囲は、ほぉとなり、その微笑ましいやり取りを、皆暖かな眼差しで見つめていた。
ワインを掛けた件の女性は、面白くないのか、グラスにヒビが入りそうな程、強く握っている。
誰もそんな彼女には声をかけようともしないし、気遣おうともしない。せいぜいが、一緒になって笑っていた取り巻き達が、声をかけている位だった。
俺としても、気に掛ける相手ではないので、香水の君の方に再度視線を向けると、おや? となった。
互いを想い合う兄妹愛に癒されるが、先程に比べて、やや顔色が悪い気がする。……2人共、体があまり強くないのだから、もしかして、気分でも悪くなって来たのだろうか?
そこまで考えてから、俺はある事に気が付きハッとなる。先程、彼女の胸元には赤ワインが、アルコールが、掛けられたという事に。
俺は周囲の視線に目もくれず、カッカッと音を立てながら、2人の傍へと向かった。
そこには、先程の女性達とはまた違う、別の女性貴族数人が、香水の君に対して、何とも醜悪な笑みを浮かべているが目に入った。
そして、手には空のワイングラス。
まさかと思い、香水の君のドレスを見れば、彼女のドレスの胸元には、真っ赤な赤ワインが染み込んでいた。……なんて事を……。
「ごめんなさいね。手が滑ってしまったの。怪我はなかったかしら」
声色はいかにも申し訳なさそうにしているが、表情は愉しそうにしており、一緒にいる他の女性も扇で口を隠してはいるが、笑みを浮かべているのが、丸わかりだ。
なんともまあ、ベタな嫌がらせを……。これが、淑女の、貴族令嬢のする事だろうか。
対して、香水の君は、ゆっくりとした動作で一礼を取ると、怒るでもなく泣くでもなく、変わらず穏やかな表情を浮かべていた。
「いえ、ドレスに掛かっただけですので」
「まぁ、怪我が無くて何よりだわ。それに貴女は、素敵な香りをいつも纏ってるもの。赤ワインの香りも、きっと優雅に纏えるわよね」
その言葉に、周りの者は、扇を口元に当てたままクスクス小さく笑った。
その笑い声にも表情を変えず、彼女は手許からハンカチを取り出し、静かにドレスに染み込んでしまった赤ワインを、ハンカチに吸わせようとしていく。
エスコートしていた兄が、自分がやるよと、彼女からハンカチを取ろうとするが、その手を彼女が止める。
「大丈夫ですわ、お兄様。自分でやりますから、どうぞ気になさらないで」
「しかし……」
「私なら、大丈夫ですから。それよりも、お兄様の服に掛からなくて、良かったわ」
「でもベル、君は……」
兄は妹を、妹は兄を気遣うその姿に、周囲は、ほぉとなり、その微笑ましいやり取りを、皆暖かな眼差しで見つめていた。
ワインを掛けた件の女性は、面白くないのか、グラスにヒビが入りそうな程、強く握っている。
誰もそんな彼女には声をかけようともしないし、気遣おうともしない。せいぜいが、一緒になって笑っていた取り巻き達が、声をかけている位だった。
俺としても、気に掛ける相手ではないので、香水の君の方に再度視線を向けると、おや? となった。
互いを想い合う兄妹愛に癒されるが、先程に比べて、やや顔色が悪い気がする。……2人共、体があまり強くないのだから、もしかして、気分でも悪くなって来たのだろうか?
そこまで考えてから、俺はある事に気が付きハッとなる。先程、彼女の胸元には赤ワインが、アルコールが、掛けられたという事に。
俺は周囲の視線に目もくれず、カッカッと音を立てながら、2人の傍へと向かった。
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