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主と式神
しおりを挟む小寿郎は、大人の男の迫力のある観月や真矢にも喰ってかかる。
まさに、怖い物知らずの王…いや、男だが…女王様な猫そのものだ。
だが優は、何故かそんな小寿郎が憎めない。
優にとっては、中学生の時の同級生のような、そんな親しみやすさもあるからだ。
それにさっき、人形をあげたのは小寿郎かと千夏に聞いたら、千夏はコクリとうなずいて、人形を本当に大事そうに抱き締めた。
小寿郎は、そんな優しい所がある。
「その…神官ふぜいは、お前のような桜の精霊一人位…簡単に消せるがな…今はそんな事をして身内で争ってる場合じゃ無いぞ、小寿郎…」
真矢の真剣な声が、静かな居間に
ひりつく緊張感を与えた。
まだ畳の上で腕を組み胡座で座り、冷静にどっしりと構える大人の真矢を本気で怒らせたら大変だろうし…
それと何より、千夏が折角豆丸と遊んでいたおはじきを中断し、小寿郎と真矢の様子をじっと凝視しているのを、優は気にかける。
千夏は無表情だが、優は千夏が内心怯えてるのではと察し、小寿郎が真矢に言い返しかけたのを間に入り止めた。
「小寿郎!俺が変な事言ったから悪かった…お前と俺は、主と式神になる契約をするんだ。名前を書くから紙、貸してくれ」
優は、小寿郎から紙を取り上げ、
学校の授業でしか使わない慣れない墨と毛筆で…
観月春光で無く、摩耶優と名前を書いた。
そして、ふと、気付き実感する。
やはり優は、どうしても摩耶優なのだ。
優の前世の観月春陽、江戸時代の観月春光であるのも確かだが、又違う。
優には、自分の前世の春陽の記憶は無い。
だから優には、今の春陽の朝霧への気持ちが分からなかった。
どう言う気持ちで朝霧と、今朝離れ離れになったのかが。
だが優自身も、生まれ変わりの朝霧への気持ちがどう言うモノなのかハッキリしない。
でも今は離れ離れになってしまった事が、ただ、悲しくて、苦しくて…苦しくて…
「優!どうした?」
名前を書き終えボーっと朝霧の事を考えていた優に、真矢が優しい声をかけた。
「ううん!何でも!」
優は真矢に微笑むと、契約書を、真矢と目を合わせないようプイと横を向いて立っていた小寿郎に渡した。
小寿郎はそれを両手に挟み込むと、ブツブツと何かを唱え始めた。
優と真矢、千夏と豆丸がそれを凝視していると、小寿郎がその手を開いた。
すると突然、手の上の紙が火に包まれた。
そして、その火が小寿郎の両手にも移り、更に全身に回る勢いだ。
「小寿郎!!!」
優が驚き絶叫し立ち上がり、小寿郎を助けようと向かおうとした。
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