18 / 56
18
しおりを挟む
明人が、止めるか否か悩む内に、
恒輝と佐々木の乱取りが始まってしまう。
(西島君!西島君!)
明人は、そう心の中で呼びながら
胸の鼓動を早め、座ったまま、まるで自分が闘っているかのように額に汗をかき始めた。
正式な試合では、体重などにより級分けがあり、体格の差がある者同士の乱取りは無い。
しかし、今回はあくまで長身の佐
々木が低身長の恒輝を指導するという体なので、2人の体格差は無視している。
それに、佐々木の意図など知らない体育教師は、特に何事もないように、「始め!」と号令を掛け
た。
恒輝が、勉強とスポーツで何かを考え始めると変に焦って頭が回らなくなるのは、5歳からだ。
当時の勉強の家庭教師の男が、恒輝が答えを出すのを急かした。
そして、間違えれば、恒輝と兄とを比較し、他にも暴言を吐いたり恒輝の座る椅子や机を何度も蹴ってきた。
その男は、恒輝の両親のお気に入り。
だから、どんなに恒輝が両親に訴えた所で両親は、男の厳しい指導は正しいと取り合ってはくれなかった。
いつまでも、そんな子供の頃の事を言い訳にしたく無い…
恒輝は、早くそんなトラウマを捨て去りたかった。
そして長年藻搔いたが、そうすればそうする程…
底無しの沼に深く沈んでいくようで…
幼い頃のトラウマはそう簡単には消えてはくれない。
恒輝と佐々木は、互いに礼をして、互いに間合いを測り出す。
そして、先に手を出したのは、恒輝だった。
恒輝は上半身を折り、佐々木と組む格好で佐々木の道着の袖を取ろうとした。
だが、佐々木も同じ姿勢で、それを巧妙に避ける。
何度か恒輝がそれを繰り返すが、
今度は、反対に佐々木が恒輝の袖を取ろうとしてきた。
一瞬…恒輝の中に…
(ここで、佐々木にあっさりやられた方がいいんじゃねえか?)
と言う考えが浮かんだ。
見るも無惨に思い切りダサく佐々木に投げ飛ばされてやって、佐々木に花を持たす。
彩峰の、佐々木への評価が上が
り、恒輝には少なからず失望するだろう。
(彩峰の横には、佐々木のような男が合うのだ…)
(第一、俺はフェロモン出てねぇのに、彩峰に俺が運命の番だって分かる訳ねぇだろうが…)
(俺に早く失望してくれ!彩峰!)
恒輝は、上手く投げ飛ばされる覚悟を決めた。
しかし、最後にチラッと横目で明人を見た。
明人は、ずっと、恒輝だけを一途に見詰めていた。
その瞳が余りにキレイで…
そしてほんの秒、たったそれだけ見ただけでも…
恒輝には、明人がどれだけ恒輝を心配しているのが分かってしまった。
恒輝と佐々木の乱取りが始まってしまう。
(西島君!西島君!)
明人は、そう心の中で呼びながら
胸の鼓動を早め、座ったまま、まるで自分が闘っているかのように額に汗をかき始めた。
正式な試合では、体重などにより級分けがあり、体格の差がある者同士の乱取りは無い。
しかし、今回はあくまで長身の佐
々木が低身長の恒輝を指導するという体なので、2人の体格差は無視している。
それに、佐々木の意図など知らない体育教師は、特に何事もないように、「始め!」と号令を掛け
た。
恒輝が、勉強とスポーツで何かを考え始めると変に焦って頭が回らなくなるのは、5歳からだ。
当時の勉強の家庭教師の男が、恒輝が答えを出すのを急かした。
そして、間違えれば、恒輝と兄とを比較し、他にも暴言を吐いたり恒輝の座る椅子や机を何度も蹴ってきた。
その男は、恒輝の両親のお気に入り。
だから、どんなに恒輝が両親に訴えた所で両親は、男の厳しい指導は正しいと取り合ってはくれなかった。
いつまでも、そんな子供の頃の事を言い訳にしたく無い…
恒輝は、早くそんなトラウマを捨て去りたかった。
そして長年藻搔いたが、そうすればそうする程…
底無しの沼に深く沈んでいくようで…
幼い頃のトラウマはそう簡単には消えてはくれない。
恒輝と佐々木は、互いに礼をして、互いに間合いを測り出す。
そして、先に手を出したのは、恒輝だった。
恒輝は上半身を折り、佐々木と組む格好で佐々木の道着の袖を取ろうとした。
だが、佐々木も同じ姿勢で、それを巧妙に避ける。
何度か恒輝がそれを繰り返すが、
今度は、反対に佐々木が恒輝の袖を取ろうとしてきた。
一瞬…恒輝の中に…
(ここで、佐々木にあっさりやられた方がいいんじゃねえか?)
と言う考えが浮かんだ。
見るも無惨に思い切りダサく佐々木に投げ飛ばされてやって、佐々木に花を持たす。
彩峰の、佐々木への評価が上が
り、恒輝には少なからず失望するだろう。
(彩峰の横には、佐々木のような男が合うのだ…)
(第一、俺はフェロモン出てねぇのに、彩峰に俺が運命の番だって分かる訳ねぇだろうが…)
(俺に早く失望してくれ!彩峰!)
恒輝は、上手く投げ飛ばされる覚悟を決めた。
しかし、最後にチラッと横目で明人を見た。
明人は、ずっと、恒輝だけを一途に見詰めていた。
その瞳が余りにキレイで…
そしてほんの秒、たったそれだけ見ただけでも…
恒輝には、明人がどれだけ恒輝を心配しているのが分かってしまった。
43
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます
猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」
「いや、するわけないだろ!」
相川優也(25)
主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。
碧スバル(21)
指名ナンバーワンの美形ホスト。自称博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。
「絶対に僕の方が美形なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ!」
「スバル、お前なにいってんの……?」
冗談?本気?二人の結末は?
美形病みホス×平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。
※現在、続編連載再開に向けて、超大幅加筆修正中です。読んでくださっていた皆様にはご迷惑をおかけします。追加シーンがたくさんあるので、少しでも楽しんでいただければ幸いです。
劣等アルファは最強王子から逃げられない
東
BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。
ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。
アイドルくん、俺の前では生活能力ゼロの甘えん坊でした。~俺の住み込みバイト先は後輩の高校生アイドルくんでした。
天音ねる(旧:えんとっぷ)
BL
家計を助けるため、住み込み家政婦バイトを始めた高校生・桜井智也。豪邸の家主は、寝癖頭によれよれTシャツの青年…と思いきや、その正体は学校の後輩でキラキラ王子様アイドル・橘圭吾だった!?
学校では完璧、家では生活能力ゼロ。そんな圭吾のギャップに振り回されながらも、世話を焼く日々にやりがいを感じる智也。
ステージの上では完璧な王子様なのに、家ではカップ麺すら作れない究極のポンコツ男子。
智也の作る温かい手料理に胃袋を掴まれた圭吾は、次第に心を許し、子犬のように懐いてくる。
「先輩、お腹すいた」「どこにも行かないで」
無防備な素顔と時折見せる寂しげな表情に、智也の心は絆されていく。
住む世界が違うはずの二人。秘密の契約から始まる、甘くて美味しい青春ラブストーリー!
【完結】帝王様は、表でも裏でも有名な飼い猫を溺愛する
綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
BL
離地暦201年――人類は地球を離れ、宇宙で新たな生活を始め200年近くが経過した。貧困の差が広がる地球を捨て、裕福な人々は宇宙へ進出していく。
狙撃手として裏で名を馳せたルーイは、地球での狙撃の帰りに公安に拘束された。逃走経路を疎かにした結果だ。表では一流モデルとして有名な青年が裏路地で保護される、滅多にない事態に公安は彼を疑うが……。
表も裏もひっくるめてルーイの『飼い主』である権力者リューアは公安からの問い合わせに対し、彼の保護と称した強制連行を指示する。
権力者一族の争いに巻き込まれるルーイと、ひたすらに彼に甘いリューアの愛の行方は?
【重複投稿】エブリスタ、アルファポリス、小説家になろう
【注意】※印は性的表現有ります
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜
COCO
BL
「ミミルがいないの……?」
涙目でそうつぶやいた僕を見て、
騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。
前世は政治家の家に生まれたけど、
愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。
最後はストーカーの担任に殺された。
でも今世では……
「ルカは、僕らの宝物だよ」
目を覚ました僕は、
最強の父と美しい母に全力で愛されていた。
全員190cm超えの“男しかいない世界”で、
小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。
魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは──
「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」
これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる