アンダー(底辺)アルファとハイ(上級)オメガは、まずお友達から始めます!

みゃー

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 明人と佐々木は、面談室でパイプ椅子に座ったまま長机を挟んで話しを続けた。明人は視線を真向かいの佐々木に向け、意思の強そうな声で言った。

 「俺はまだ収容所に入ると決まってない。それに俺は、収容所に入る位なら一人暮らしをして一生家から外に出ないつもりだ」

 途端に佐々木の明人への視線と声音が厳しさを増した。
   
 「確かに抑制剤の効かないハイオメガの中には、国から生活支援金が出るから一人暮らしして死ぬまで家に閉じこもるのもいる。ヒートが来るたびに一人でヒートが終わるまで苦しみに耐えるのも確かにいるにはいる。だが!ずっと一人でヒートを我慢し続けるオメガの精神崩壊者が多いのも、明人お前は知ってるだろ?」

 「…」

 明人は、その恐ろしい現実を勿論知っていたが、返事をせず顔色も変えずただ佐々木を見詰めた。
 だがそれを見て、いつも余裕ぶっている佐々木が珍しく我を忘れて立ち上がり、机に両手を着き声を荒げた。

 「お前もオメガなら、抑制剤無しで一人でヒートを過ごす事がどんなに苦しいか地獄か分かってるはずだ!分かってるだろ?明人?」

 それでも明人は、佐々木の怒声に驚くでもなく視線の方向も変えなかった。
 佐々木は感情を抑えられないのか、増々まくしたてるように言った。
 
 「普通、抑制剤の効かないハイオメガは皆一生外には出られないが、支援金は減るが相思相愛のアルファの番になり結婚するか、国の支援金を満額受け取りながら、好きでは無い特定か不特定多数のアルファの愛人になりヒート発散を頼るか、それとも……生活と個室が保証された収容所に入り、ヒートが来れば毎回毎回違う保健員アルファにヒートの相手してもらうかしか道は無いんだ。薬無しでずっと一人でヒートを乗り切るなんて無理なんだよ!」

 佐々木の言ってる事は、嘘でも誇張でも無い。そして現実は厳しいのも重々承知で明人は、佐々木を見たまま両手に拳を握り言った。

 「大河。俺は一人暮らしして、ヒートを一人で耐える道を選ぶ。でもそれ以前に、俺はまだ西島君を諦めた訳じゃ無い。俺はまだ西島君の番になり、将来は西島君と結婚したいと思ってる」

 一瞬にして佐々木の顔から表情が無くなりその体が固まった。
 そして又、2人の間にしばし静寂が訪れて、やがて佐々木が大きく息を吸いそれを口から一気に吐いた。
 しかし突然、薬で程良く香る位に強固に抑えられていたはずの佐々木のアルファフェロモンが強くなった。アルファやオメガにフェロモンの乱れはよくある事で薬の効果ですぐ元に戻り大抵大事にはならないが、それだけ佐々木の気持ちが荒れていると言えた。
 普通この程度のアルファフェロモンの上下でも、普通のオメガやべータは威圧され恐れ慄く。佐々木は能力の高いフェロモンの濃いハイアルファなので尚更だ。
 しかし、ハイオメガの明人は全く気にかける様子も無く、佐々木がどう返すか待った。
 すると…
 佐々木の声のトーンが、不気味な位急転直下穏やかになった。
 だが、発せられた言葉の内容は決してそうでは無かった。

 「突然だが明人、俺と賭けをしないか?」

 「賭け?…」

 明人は、不審そうに呟いた。
 
 「そう、賭けだ。俺は、明人お前が修学旅行に行けるように校長にも上手く交渉してやるし、修学旅行中お前が無事に過ごせるよう力を貸す。そして、お前がここを卒業するまでの間、お前がここで自由に好きなように過ごせるよう学園を整えてやる。だがもし、卒業までに西島がやはりお前の事を好きにならなかったり、修学旅行や卒業前にお前が抑制剤が効かない体になったら、明人、お前は黙って俺の番になれ!」

 佐々木の賭けの内容に、明人は顔をしかめた。
 たが、佐々木は構わず微笑み話しを続ける。

 「明人、良く考えろ。卒業までに西島がお前に振り向かないならどう考えてもこの先もお前に振り向く事は無いぞ。それに、一人でヒートに苦しんだり、今から探して全然知らないアルファの愛人に無理やりなったり、収容所で毎回違うアルファに抱かれる事になるなら、俺の番になり俺に抱かれる方がいいに決まってる」

 「大河…」

 正直明人は、ここで賭けを持ってきた佐々木に内心かなり腹が立った。子供の頃から佐々木に助けてもらった事も沢山あり本当に感謝しているし、この賭けの提案が佐々木のその場の怒りの勢いだけで発せられたのでは無いだろう事も充分分かっていたが。
 そして、元々アルファと言うモノは、兎に角他人との賭けや勝負が好きで、他人との立ち位置をハッキリさせたがるのも知っている。
 しかし恒輝も佐々木もアルファだが、恒輝なら絶対にこんな賭けをオメガに提案したりしないと明人は思った。
 だがその反面、恒輝と修学旅行に行ったり、卒業までの数ヶ月を恒輝と自由に過ごせると言うのは甘美な誘惑だった。しかもこれを逃せば、もう自分には悲惨な将来しか待ってないかも知れない。
 恒輝が絡むと、珍しく明人は判断に迷う。
 そこに佐々木が更に、ぞっとする様な優しい声を明人に向けた。

「明人……もしお前が俺の番になってくれれば、俺はお前に一生優しくするし、一生大切にする。俺は子供の頃からこの言葉を何回もお前に言ってるからもう何回目か分からないが、今俺はここでお前に俺の番になって結婚して欲しいと、賭けと同時にこれは正式にお前にプロポーズしてるんだ!」

 明人には佐々木に対する恋愛感情は子供の頃から一切無いし「一生優しくする!一生大切にする!」の言葉も正直言われ慣れしていたが、正式なプロポーズだと言われたのは初めてだったから驚愕して佐々木を見上げてしばらく唖然とした。
 しかし…
 
 ガラっっ!

 不意にノックの一つも無く、面談室の引き戸が無作法に失礼極まりなく思っ切り開いた。

 明人と佐々木が何事かとそちらを見ると、開いた入り口に、とっくに帰宅したはずの恒輝が西日を背に受けて無言で立っていて、キレイな切れ長の目を眇めて明人と佐々木をじっと見詰めていた。

 
 

 
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