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しおりを挟むなら、一度家に帰ってから、恒輝と明人と御崎の三人で勉強する件を御崎にメールするかと、渡り廊下で立ち止まったままの恒輝が思い横に立つ明人を見た時、恒輝も明人も全然面識の無い後輩の女子二人が背後から来た。
二人ともスカート短めで見た目派手系だったが、片方がうれしそうに明人の背中に声をかけた。
「あっ!彩峰先輩、お疲れ様です!」
「ああっ!お疲れ!」
不特定多数に好意を向けられる状況に慣れてる明人は何気に振り返り、いつもの甘い笑顔で事もなげに返す。
だが恒輝の方は、もうそんな明人は見慣れてるはずだが、違和感は消えない。それ所か、明人が周りの人間にチヤホヤされるのを見ると胸の辺りがモヤモヤして明人を恒輝以外が見られない場所に隠したくなる衝動が湧いてきて、フイっと明人から顔を背け遠くに視線をやった。そしてこの感情は、恒輝よりアルファらしい素質を持つオメガの明人に対しての恒輝のひがみかも知れないと恒輝は考えてしまい、もしそうなら恒輝自身があまりにアルファとして情けなく感じてしまう。
すると、もう片方の女子が緊張気味にチラリと、そんな恒輝の横顔を見て言った。
「西島先輩、お疲れ様です!」
普段、恒輝に声をかけてくる特に女子はいないので、恒輝は顔に出さないで、一瞬、何故自分が声を掛けられたか分からなて驚くが、無視もアレなので彼女の方を見て真顔でボソっと答えた。
「よう!お疲れ!」
「キャーっ!」
女子達は黄色い歓声を上げると二人並んで体を寄せ合い、今いた渡り廊下を猛ダッシュで校舎の中へと走って行った。
「何だよ、アレ?」
恒輝は表情を歪めたが、それを見て明人は小さくため息を着くと言った。
「あのさ……西島君、西島君って…」
恒輝は、その表情のまま明人を見た。
「何だよ?」
「ううん……何でも無い」
明人は、首を左右に振ると小さく笑った。
でも本当は、「西島君って、自分の顔、どう思ってる?」と、恒輝に聞きたかった。
恒輝を自分の運命の番だと思っている明人の贔屓目では無く、実際に恒輝の顔はかなりイケメンだ。
ただ恒輝は、自分のフェロモンの病気と、その為に恒輝を馬鹿にする家族や周囲との関係から恒輝自身に自信を持っていない。そして、そんな恒輝自身を守る為に恒輝は周りになめられないよう壁を作ってる。そして、明人が恒輝のそばにいて初めて実際分かった真実は、学校のベータの女子の中の多くが、恒輝を恐れ距離を取りながらも恒輝の顔を遠巻きに恋愛感情を持って見ていると言う事だった。
しかし当の恒輝は、それに全く気付いて無いし、恒輝は、自分がポンコツアルファだからベータの女子全てにも軽蔑されてると勘違いしている。
明人はそんな事を考えていると、明人の胸の辺りがモヤモヤして、恒輝を明人以外が見られない場所に隠したくなる。
そんな明人に、恒輝がボソっと言った。
「所で、御崎には、家帰ってから3人で勉強の件メールするわ…」
「…」
何故か、明人は黙りこんだ。
それを恒輝は不審に思うと、西日に照らされている明人の顔をじっと見た。
すると、明人は真剣な顔つきで恒輝に懇願した。
「今ここで、スマホ出して俺の目の前で御崎君に電話して」
「はぁ?!何?」
恒輝の声は思わず裏返る。
「だから……今ここで、俺の目の前で御崎君に電話して。西島君と御崎君がただの友達なら、別に俺に聴かれてもいいはずだろ?」
「…」
恒輝は、思わず絶句してすぐに言葉を返せない。
でも、明人のあまりに真剣に懇願するような顔付きを暫く見詰めていると、恒輝は複雑な感情になる。
(彩峰。いつもの凄く聞き分けのいい冷静なお前じゃないじゃないか。お前は、そこらへんにいる普通のだだキレイなだけのオメガじゃなくて、容姿も頭脳も運動神経も全部がいい全部持ってる、アルファさえもが跪く優性のハイオメガだ。なんで……俺なんだよ?……お前は、俺じゃなくても、どんなアルファでも選びたいだけ好き放題選べる立場なのに……なんで、俺?)
明人を見詰める恒輝の顔も、切ない色の西日に染まっている。
そんな恒輝の胸の辺りが何故か今度はギュっとした感じがして、恒輝の鼓動が速くなった。
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