お見合いから本気の恋をしてもいいですか

濘-NEI-

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29.あなたと二人で②

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 握った手を口元に寄せて、おまじないみたいにまた結婚指輪の上からキスをすると、本当に綺麗だとうっとりした顔で呟いてウインクしてくる。
「眩しすぎて目が痛いです」
「バカ言ってないで。ほら、そろそろだよ」
 スタッフの合図で扉が開くと、スポットライトの中、披露宴会場に足を踏み入れる。BGMに流れているのは、初めてドライブした時に二人で聴いた思い出の曲。
 サプライズのクラッカーが鳴り響く中を歩いて高砂に辿り着くと、会場を見回してみんなの笑顔と目が合う。ようやくこの日を迎えた喜びで、早くも目頭が熱くなってきた。
 高砂から一番離れたテーブルに家族の姿があり、お見合いを企画してくれた母たちに感謝する。
 乾杯から始まり、ケーキ入刀をしてちょっぴりふざけたケーキバイトで会場が盛り上がった。
 ゆっくりと食事や歓談の時間を設けて、ゲストが代わる代わる高砂に挨拶に来てくれる。その度に写真を撮ってお祝いの言葉にほろりとさせられてしまった。
 お色直しのために一度会場出ると鮮やかなブルーのドレスに着替え、千颯くんもネイビーのタキシードに着替えて再び会場へ。
 テーブルラウンドではプチギフトを配って周り、専属のカメラマンに記念撮影もしてもらうフォトラウンドを兼ねた演出にした。
 それから友人からのスピーチや、それぞれの職場の同僚からのお祝いのメッセージを受け、友人たちが用意してくれた余興を楽しむと、披露宴も終盤に差し掛かり両親への花束贈呈で今までの感謝を伝える。
 両家の父親が代表して挨拶をすると、最後に千颯くんが新郎からの謝辞を伝え、あっという間に披露宴は幕を閉じた。
 ゲストのお見送りでは、改めてお祝いの言葉をかけられて何度も幸せすぎて泣きそうになる私を千颯くんが抱き寄せる場面があった。
 全てを終えてホテルの自室に戻ると、ようやく強張っていた力が抜けてベッドに倒れ込んだ。
「幸せだけど疲れた」
「泣きじゃくってたもんね」
「だって嬉しかったんだもん」
「これからもっと幸せになるんだよ」
「そうだね」
 このあと二次会が開かれるので、その支度をしなければいけない。友人だけではなく、身内も参加するので披露宴の延長戦に近いものがある。
 当然、二次会のみの参加者もいるので、それはそれで楽しみでもある。ちなみに井口さんや同僚も来てくれる予定だ。
 なかでも、千颯くんのおばあちゃんがフラメンコを踊ると息巻いていたので、それがかなり楽しみだったりする。
「母さんたちの勝ち誇った顔、凄かったね」
「私たちのおかげって言い回ってたね」
 結婚式を振り返りながら着替えを済ませると、メイクを直して千颯くんに確認してもらう。
「泣きすぎたからアイメイク崩れてない? 大丈夫かな」
「バッチリ。すごく綺麗だよ」
「ちぃちゃん今日それしか言わないじゃん」
「本当に綺麗なんだから仕方ないよ。本当だって」
「はいはい。ありがとう」
 笑いながらあしらうように手をひらひらさせると、その手をパッと掴まれてグッと引き寄せられて腕の中に閉じ込められる。
「スズ、俺本当に幸せだよ」
「どうしたの」
「俺と出逢ってくれてありがとう」
「……こちらこそ。選んでくれてありがとう」
 どちらからといわず顔を寄せ合い、唇を重ねてキスをする。
 今日この日を迎えられたことに感謝しつつ、これからまだまだ続いていく二人の、これからの家族の人生を精一杯幸せに過ごしていきたい。
「さあ、行こうかスズ」
「うん。行こう、ちぃちゃん」
 幼かった淡い初恋は、こんな形で芽吹いて花が咲いた。色んな偶然が重なって訪れたこの喜びを、色褪せないように噛み締めて二人で歩いて行こう。二人で——。

【完】
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