嘘つき同士は真実の恋をする。

濘-NEI-

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9.俺はどうしたいのか① ◇

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 ロッソを送った帰り道、どうしてあんな風に衝動的に言葉が出たのかずっと考えている。
(いい奴すぎるんだよな、あの子)
 今にして思うと、恋人役を引き受けてくれた時点で、きっと俺の親や彼女の親を前にしたら、罪悪感に押し潰されてしまうのではないかという懸念はあった。
 だって、俺のことなんてろくに知りもしなかったクセに、他のゲームユーザーやギルマスの清次郎に話を持ち掛けられて、断り切れないようなお人好しだ。
 だけど俺も、ロッソに恋人役を頼むことをどこか楽観的に考えてたところはあった。
 俺は三十八で、もうすぐ誕生日が来ればもう三十九。
 この歳まで好きにしてきたのだから、恋人さえ紹介すれば、親からとやかく言われることはないとタカを括っていたところはある。
 でも現実は違っていて、この歳までフラフラして心配させた分、息子はようやく現実を見て腰を据える覚悟をしたんだと、親に安堵を与える結果になるのは明白だった。
 あの場で俺以外にそれに気付いたのは、ロッソも同じだったのだろう。彼女は体を震わせて、泣くのを必死で堪えながら俺の手を握っていた。
「酷いことをさせたな」
 俺以上に、俺の両親に対して申し訳なさそうにしていたし、嘘をつくことへの抵抗と罪悪感に耐えられなかったんだろうと思うと、軽はずみに酷いことをした申し訳なさが込み上げる。
(あんな顔をさせるつもりじゃなかったのに)
 堪え切れずに涙を溢れさせたロッソを見た時、覚悟はしていたけど、やっぱり心が痛んだ。
 俺に対して、ロッソが個人的な好意を持っているかどうかは分からない。
 だけどどうにかして俺が彼女を癒してやりたいという、身勝手な気持ちから、本当に付き合ってみることを提案してしまった。
 正直なところロッソは好きだけど、はっきり言えば贖罪のような気持ちの方がまだ大きい気はしている。
 彼女に伝えた通り、見た目も好みだし、一緒にいて凄く楽しいし退屈しないのも本当だけど、親に紹介したような関係性にまで発展出来るかどうかは分からない。
 そもそも俺は長い間ずっと恋愛から遠ざかってきたし、恋をして胸が高鳴るような経験も、俺の中にはない。
 だけどロッソは不思議な子で、ドキドキとときめく刺激よりも、じんわりと心が温まるような安堵感と安らぎを与えてくれる部類の人間だ。とにかく優しくて人を気遣える人なんだろう。
(そんなに彼女のことを知らないクセに……)
 たったの一日、僅かな時間を一緒に過ごしただけなのに、あまりにも自分勝手で溜め息が出る。
 別れ際、ロッソが拒まないことをいいことにキスをしてしまったのも、自分勝手な気持ちを抑えられなくて、彼女がうんと言ってくれるのを期待した打算的なものだった。
「卑怯だな」
 一人で考え込んでいるとモヤモヤしてしまうので、気分転換に音楽を流す。
 そして不意にロッソが好きだと言っていたバンドの曲が流れ始めると、俺はまた女々しく彼女のことを考えてしまう。
「ロッソが付き合うって答えたら、俺はどうしたいんだろう」
 純粋な好きという気持ちじゃない、申し訳なさや罪悪感から口をついて出た言葉。
 そう思っていたはずだけど、ロッソが楽しそうに笑う顔、照れたように怒ってそれを誤魔化す表情。そんな動作一つ一つが可愛くて、彼女と過ごした短い時間は楽しくて仕方なかった。
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