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14.再会と答え①
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居心地のいいカントリー風の内装はとても可愛らしく、こんな素敵なカフェが住宅街にあるのが珍しくて、ついつい店内を見渡す。
(エルバはよくここに来るのかな)
会社の近くとはいえ、彼からは想像出来ない雰囲気のカフェに意外性を感じていると、注文したほうじ茶ラテが運ばれてきて、店員さんに軽く頭を下げる。
そしてあたたかいほうじ茶ラテを飲みながら、急がなくて大丈夫だとメッセージを打ち、エルバ宛に送信する。
異動の打診については、事前に高橋さんからそれっぽい話を聞いてはいたけれど、まさか本当にそんな話になるとは正直なところ思っていなかったので、まだどこか現実味がない。
だけど早ければ来月の下旬には引き継ぎが始まる可能性があるというので、バッグから取り出した手帳を開くと、人事から説明された転居についての内容を改めて確認する。
「えっと、とりあえず家探しだよね」
家賃のことは気にしなくていいとはいえ、社員寮扱いで会社が借りる物件なのだから、少しでもリーズナブルな物件に越したことはないだろう。
東京店の近くとなると、立地がいいし物価もそれなりに高いだろうから、どんな物件があるのか早速ネットで調べてみる。
「うわ、やっぱり高いな」
今の社員寮の間取りと同じくらいの部屋を何気なく検索して、相場の価格帯にちょっと驚いてしまう。
前職まで実家暮らしだったし、ルサルカでは社員寮があるので、一人暮らしの家賃相場をちゃんと意識したことがなかったことが恥ずかしい。
とりあえず、めぼしい物件をブックマークして保存すると、周辺をマップで調べて街の様子も見てみることにする。
「繁華街が近いから便利だけど、住むとなると、ちょっと外れた場所でもいいかもしれないな」
今までなら、もしかしたら実家に戻る選択肢もあったかもしれないけれど、前回あんなことがあったので、親と顔を突き合わせる生活に戻ることはもう出来ない。
誰が悪いという話ではないのかもしれないけれど、近しい間柄だからこそ、適度な距離は必要になるんだと嫌でも実感した。
そうしてスマホと睨めっこしていると、不意に気配を感じて顔を上げる。
「こんばんは」
「あ。お疲れ様です」
「はは。随分と他人行儀だね」
「ごめん。ついさっきのことだから、自然と仕事の雰囲気に」
「まあ、そりゃそうか」
そう言ってエルバは私の正面に座ると、険しい顔してたねと揶揄うように笑顔を見せる。
「引越し先、急いで探さないといけないからね。でも家賃が高くて驚いてる」
「まあね、あの辺りは相場が高いから」
「やっぱりそうなんだ」
何事もなかったように雑談が始まると、エルバも飲み物を注文して、そのまま仕事の話を中心に会話が続く。
「ルサルカは三年だっけ」
「そうだよ」
「寂しいんじゃない?」
「そうだね。凄くいい環境でのびのびさせてもらってるからね」
「こっちも慣れれば楽しくやれると思うよ」
「そうだといいな」
苦笑して答えると、大丈夫だよと不意をつくように優しい目がこちらを見ていてドキッとする。
「どうかした?」
「ううん。大丈夫」
決して大丈夫ではないけれど、そう答えて視線を外す。やっぱりこの人の綺麗な顔には、どうしてもドキドキしてしまう。
エルバが頼んだコーヒーを見て、そういえば来る前に喫茶店でコーヒー豆を買ったことを思い出し、バッグの中から紙袋を取り出して手渡す。
「来る前に寄った喫茶店で、美味しかったからお裾分け」
(エルバはよくここに来るのかな)
会社の近くとはいえ、彼からは想像出来ない雰囲気のカフェに意外性を感じていると、注文したほうじ茶ラテが運ばれてきて、店員さんに軽く頭を下げる。
そしてあたたかいほうじ茶ラテを飲みながら、急がなくて大丈夫だとメッセージを打ち、エルバ宛に送信する。
異動の打診については、事前に高橋さんからそれっぽい話を聞いてはいたけれど、まさか本当にそんな話になるとは正直なところ思っていなかったので、まだどこか現実味がない。
だけど早ければ来月の下旬には引き継ぎが始まる可能性があるというので、バッグから取り出した手帳を開くと、人事から説明された転居についての内容を改めて確認する。
「えっと、とりあえず家探しだよね」
家賃のことは気にしなくていいとはいえ、社員寮扱いで会社が借りる物件なのだから、少しでもリーズナブルな物件に越したことはないだろう。
東京店の近くとなると、立地がいいし物価もそれなりに高いだろうから、どんな物件があるのか早速ネットで調べてみる。
「うわ、やっぱり高いな」
今の社員寮の間取りと同じくらいの部屋を何気なく検索して、相場の価格帯にちょっと驚いてしまう。
前職まで実家暮らしだったし、ルサルカでは社員寮があるので、一人暮らしの家賃相場をちゃんと意識したことがなかったことが恥ずかしい。
とりあえず、めぼしい物件をブックマークして保存すると、周辺をマップで調べて街の様子も見てみることにする。
「繁華街が近いから便利だけど、住むとなると、ちょっと外れた場所でもいいかもしれないな」
今までなら、もしかしたら実家に戻る選択肢もあったかもしれないけれど、前回あんなことがあったので、親と顔を突き合わせる生活に戻ることはもう出来ない。
誰が悪いという話ではないのかもしれないけれど、近しい間柄だからこそ、適度な距離は必要になるんだと嫌でも実感した。
そうしてスマホと睨めっこしていると、不意に気配を感じて顔を上げる。
「こんばんは」
「あ。お疲れ様です」
「はは。随分と他人行儀だね」
「ごめん。ついさっきのことだから、自然と仕事の雰囲気に」
「まあ、そりゃそうか」
そう言ってエルバは私の正面に座ると、険しい顔してたねと揶揄うように笑顔を見せる。
「引越し先、急いで探さないといけないからね。でも家賃が高くて驚いてる」
「まあね、あの辺りは相場が高いから」
「やっぱりそうなんだ」
何事もなかったように雑談が始まると、エルバも飲み物を注文して、そのまま仕事の話を中心に会話が続く。
「ルサルカは三年だっけ」
「そうだよ」
「寂しいんじゃない?」
「そうだね。凄くいい環境でのびのびさせてもらってるからね」
「こっちも慣れれば楽しくやれると思うよ」
「そうだといいな」
苦笑して答えると、大丈夫だよと不意をつくように優しい目がこちらを見ていてドキッとする。
「どうかした?」
「ううん。大丈夫」
決して大丈夫ではないけれど、そう答えて視線を外す。やっぱりこの人の綺麗な顔には、どうしてもドキドキしてしまう。
エルバが頼んだコーヒーを見て、そういえば来る前に喫茶店でコーヒー豆を買ったことを思い出し、バッグの中から紙袋を取り出して手渡す。
「来る前に寄った喫茶店で、美味しかったからお裾分け」
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