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14.再会と答え②
「なに? コーヒー豆?」
「うん。駅の近くの喫茶店」
「へえ。ありがとう」
にっこり笑う顔がやっぱり整いすぎてて、思わず引き攣った笑い方になってしまう。
「明日は休み?」
「へ? あ、うん。休みだけど」
「じゃあ、晩飯食べてゆっくり話す時間はありそうかな」
「大丈夫」
「何系が食べたいとか、希望はあるかな」
「特にはないよ」
「分かった。じゃあ飲み終わったら出ようか」
「了解」
思ってたよりも緊張せずに反応できてることに安堵しつつ、たわいない話を続けていると、ここのカフェはランチの時に会社近くで路上販売をしているらしく、エルバも店に来るのは初めてだそうだ。
話を聞いていると、特に手捏ねハンバーグは安くて凄く美味しいらしく、機会があったら是非食べてみたくなって、思わず喉が鳴ってしまった。
「よし。じゃあ移動しようか」
「そうだね」
私が気にしていることに気付いたのか、カフェの代金は素直に払わせてくれて店を出ると、大通りまで歩いてから、エルバがタクシーを拾った。
移動中もたわいない話ばかりで、エルバもさすがにここでは核心に触れるつもりはないのだろう。
そしてどこかの駅前でタクシーを降りると、商店街を抜けて少し外れの路地の先にある小料理屋の暖簾をくぐった。
「あら、いらっしゃい」
「こんばんは。個室って空いてるかな」
「ええ、どうぞ」
エルバと親しげな様子の女将さんに軽く会釈すると、彼に続いて靴を脱ぎ、店の奥の個室に入った。
掘りごたつの座席は暖かくて、少し冷えた体がじんわり温まってほっこりする。
「ここにはよく来るの」
「そうだね。友だちのお母さんなんだよ、あの女将さん」
「そうなんだ」
「学生時代、しょっちゅう入り浸ってた」
「へえ。思い出のある場所なんだね」
「まあね」
そんな話をしていると、女将さんがおしぼりとお通しの小鉢を運んできた。
「夜になって冷え込むわね。温かいものにしましょうか」
「うん、お任せで。あとビールをお願い」
「はいはい」
慣れた様子でやり取りするエルバを見ていると、どうかしたかと首を傾げるので、なんでもないと答える。
そしてすぐに運ばれてきたビールで乾杯すると、次々と運ばれてくる料理をつまみながら、しばらくはそのまま当たり障りのない話を続ける。
「里中さんっていくつくらい?」
「あの人はね、確か四十五だったかな」
「へえ、もっと若く見えるね。里中さんといえば、今日は会議が長引いてたね」
「営業会議はいつも時間が押すんだよ。かなり待たせたみたいだね」
「ううん。それは仕事だから仕方ないよ」
トロッとした揚げ出し豆腐をレンゲで掬うと、よく冷ましてから口に放り込む。
「本当に美味しそうに食べるよね」
「そうかな。美味しそうじゃなくて、本当に美味しいからじゃない?」
「ね。ここの料理、本当に美味いんだよ」
鱈の煮付けを食べながら、こっちも美味しいよとエルバが笑う。
案外このまま本題にならないんじゃないかなんて、自分に都合よく笑顔を返してから、それは儚い妄想なんだというエルバの言葉が耳に入る。
「さて。そろそろ本題に移ろうか」
「あ、やっぱりその話する?」
「そのために頑張って仕事片付けたからね」
「そっか。そうだよね」
「それで? 真剣に考えてくれたのかな」
「うん」
「返事を聞いてもいいかな」
「その前にエルバは……違うね。慶弥さんは、本当にまだ私と付き合う気持ちでいるのかな」
「うん。駅の近くの喫茶店」
「へえ。ありがとう」
にっこり笑う顔がやっぱり整いすぎてて、思わず引き攣った笑い方になってしまう。
「明日は休み?」
「へ? あ、うん。休みだけど」
「じゃあ、晩飯食べてゆっくり話す時間はありそうかな」
「大丈夫」
「何系が食べたいとか、希望はあるかな」
「特にはないよ」
「分かった。じゃあ飲み終わったら出ようか」
「了解」
思ってたよりも緊張せずに反応できてることに安堵しつつ、たわいない話を続けていると、ここのカフェはランチの時に会社近くで路上販売をしているらしく、エルバも店に来るのは初めてだそうだ。
話を聞いていると、特に手捏ねハンバーグは安くて凄く美味しいらしく、機会があったら是非食べてみたくなって、思わず喉が鳴ってしまった。
「よし。じゃあ移動しようか」
「そうだね」
私が気にしていることに気付いたのか、カフェの代金は素直に払わせてくれて店を出ると、大通りまで歩いてから、エルバがタクシーを拾った。
移動中もたわいない話ばかりで、エルバもさすがにここでは核心に触れるつもりはないのだろう。
そしてどこかの駅前でタクシーを降りると、商店街を抜けて少し外れの路地の先にある小料理屋の暖簾をくぐった。
「あら、いらっしゃい」
「こんばんは。個室って空いてるかな」
「ええ、どうぞ」
エルバと親しげな様子の女将さんに軽く会釈すると、彼に続いて靴を脱ぎ、店の奥の個室に入った。
掘りごたつの座席は暖かくて、少し冷えた体がじんわり温まってほっこりする。
「ここにはよく来るの」
「そうだね。友だちのお母さんなんだよ、あの女将さん」
「そうなんだ」
「学生時代、しょっちゅう入り浸ってた」
「へえ。思い出のある場所なんだね」
「まあね」
そんな話をしていると、女将さんがおしぼりとお通しの小鉢を運んできた。
「夜になって冷え込むわね。温かいものにしましょうか」
「うん、お任せで。あとビールをお願い」
「はいはい」
慣れた様子でやり取りするエルバを見ていると、どうかしたかと首を傾げるので、なんでもないと答える。
そしてすぐに運ばれてきたビールで乾杯すると、次々と運ばれてくる料理をつまみながら、しばらくはそのまま当たり障りのない話を続ける。
「里中さんっていくつくらい?」
「あの人はね、確か四十五だったかな」
「へえ、もっと若く見えるね。里中さんといえば、今日は会議が長引いてたね」
「営業会議はいつも時間が押すんだよ。かなり待たせたみたいだね」
「ううん。それは仕事だから仕方ないよ」
トロッとした揚げ出し豆腐をレンゲで掬うと、よく冷ましてから口に放り込む。
「本当に美味しそうに食べるよね」
「そうかな。美味しそうじゃなくて、本当に美味しいからじゃない?」
「ね。ここの料理、本当に美味いんだよ」
鱈の煮付けを食べながら、こっちも美味しいよとエルバが笑う。
案外このまま本題にならないんじゃないかなんて、自分に都合よく笑顔を返してから、それは儚い妄想なんだというエルバの言葉が耳に入る。
「さて。そろそろ本題に移ろうか」
「あ、やっぱりその話する?」
「そのために頑張って仕事片付けたからね」
「そっか。そうだよね」
「それで? 真剣に考えてくれたのかな」
「うん」
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「その前にエルバは……違うね。慶弥さんは、本当にまだ私と付き合う気持ちでいるのかな」
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