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ゆっくり話しましょう
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もう少しゆっくり話がしたい意見が合致したが、夜遅かったのでどこかで飲み直すよりも、なんとなくそのまま舞琴の家に向かうことになった。
「しばらく忙しかったから、かなり散らかってるけど」
「いいよ別に。お邪魔します」
煌耶がこの部屋に来るのは、あの失態を含めて2度目だ。そのことを急に思い出して気まずくなるが、舞琴は咳払いをするとキッチンに立って、コンビニで買った物を袋から出す。
「ねえ、これ洗濯機に入れていいやつ?」
「そんなのいいよ、その辺に寄せて置いといて。後でやるから」
「大丈夫だって。洗濯機回すくらいするよ。突然押し掛けて来たのはこっちだし」
片付け始める煌耶に苦笑すると、じゃあお願いと声を掛けて、ツマミや飲む用意を進める。
「それにしても、今日は急だったからびっくりしたよ」
「ん?ああね。俺も友永さんから突然連絡もらって。前からお願いはしてたけど、まさか今日になるとは思ってなくて」
勝手知ったる様子でそう言いながら、煌耶はフロアモップやコロコロで手早く掃除すると、洗濯物を集めてバスルームに消える。
そう言えば1日ダウンして、家のことを任せたのを思い出した。急に羞恥で舞琴の顔が真っ赤になる。
「ねえ舞琴」
「ヒェっ?」
「なにその声。ついでにお風呂洗っといたから」
可笑しそうに肩を揺らすと、そう言って隣に立った煌耶はさりげなく舞琴を手伝って、皿に盛り付けたツマミをテーブルに運ぶ。
飲む支度が整うと、舞琴もリビングに移動してソファーに座って煌耶とグラスを合わせる。
「お疲れ」
「お疲れ様」
何気なくテレビをつけてスマホをチェックすると、真凜から仲直りしなさいとメッセージが届いていて苦笑する。
「どうかしたの」
「なんでもない」
真凜にメッセージを返すとスマホを置いて、ツマミを食べながら今後どうするのか煌耶と話し合う。
「正直なところ今日みたいな機会がなかったら、そのまま離婚して欲しいって言ってたと思う」
「そっか」
「あんまり驚かないんだね」
「色々事情があったとは云え、4年も音沙汰なく離れてたからね。覚悟はしてた」
煌耶は思ったよりも落ち着いた様子でそう答えた。その様子に、舞琴の方も驚きは少ない。
「でも実際会ったら、そんな覚悟は脆かったけどね」
煌耶が可笑しそうに笑うのは、あの夜のことを言っているのだろう。舞琴にしてもそれは同じことなので、あえてそれには触れずに咳払いすると、煌耶と目が合う。
「結局のところ、私も変わらなかったんだと思う」
「そっか」
その一言で意味を理解したのか、煌耶は舞琴の手を握ると、嬉しそうに笑ってその手にキスをする。
そのまま熱っぽい目が向けられて、舞琴は久々に胸が高鳴る感覚に戸惑い顔を背けると、スッと伸びた煌耶の手がそんな舞琴の頬を撫でた。
「舞琴はやっぱり可愛いね」
「はあ?またそんなこと言って」
なんとか手を払うと、チーズを口に放り込んでビールを流し込んでから、思い出したように煌耶を見つめる。
「お義母さんたちは?このこと知ってるの」
「一応電話で報告はした。ずっと裁判とか続いてて色々片付いてない事情も説明して、納得はしてないだろうけど、兄貴たちにも色々迷惑掛かってたみたいだから」
「やっぱり。嫌がらせは私だけじゃなかったのね」
「まあね。全部なんとか方がついたから、結果オーライかな」
2本目の缶ビールを開けると、時間が取れなくて直接は会えていないと言う煌耶に、義父母の顔が頭をよぎる。
「なら明日行こうよ」
「え?」
「なに、仕事なの?」
「いや別にそうじゃないけど」
「夫婦で一からやり直す報告もしないといけないし。謝るのはやっぱり直接じゃないと。お義母さんたちずっと心配してたんだから」
「親のことまで、任せ切りになってごめんね」
「本当にね」
「でもお義母さんは、俺のこと許してくれないんじゃないかな」
テレビに視線を向けながら缶ビールを握りしめると、顔向けできないことをしたと煌耶が呟く。
「なら殴られる覚悟で。まあそんなことないだろうけど、お母さんだってずっと煌耶のこと心配してたし。なんで支えてやらないんだって、私は怒られたくらいだからね」
「そうなの?」
「そうなの」
煌耶と離れてからの舞琴側の事情を話すと、少し驚いた様子で煌耶はその話を聞いた。
「しばらく忙しかったから、かなり散らかってるけど」
「いいよ別に。お邪魔します」
煌耶がこの部屋に来るのは、あの失態を含めて2度目だ。そのことを急に思い出して気まずくなるが、舞琴は咳払いをするとキッチンに立って、コンビニで買った物を袋から出す。
「ねえ、これ洗濯機に入れていいやつ?」
「そんなのいいよ、その辺に寄せて置いといて。後でやるから」
「大丈夫だって。洗濯機回すくらいするよ。突然押し掛けて来たのはこっちだし」
片付け始める煌耶に苦笑すると、じゃあお願いと声を掛けて、ツマミや飲む用意を進める。
「それにしても、今日は急だったからびっくりしたよ」
「ん?ああね。俺も友永さんから突然連絡もらって。前からお願いはしてたけど、まさか今日になるとは思ってなくて」
勝手知ったる様子でそう言いながら、煌耶はフロアモップやコロコロで手早く掃除すると、洗濯物を集めてバスルームに消える。
そう言えば1日ダウンして、家のことを任せたのを思い出した。急に羞恥で舞琴の顔が真っ赤になる。
「ねえ舞琴」
「ヒェっ?」
「なにその声。ついでにお風呂洗っといたから」
可笑しそうに肩を揺らすと、そう言って隣に立った煌耶はさりげなく舞琴を手伝って、皿に盛り付けたツマミをテーブルに運ぶ。
飲む支度が整うと、舞琴もリビングに移動してソファーに座って煌耶とグラスを合わせる。
「お疲れ」
「お疲れ様」
何気なくテレビをつけてスマホをチェックすると、真凜から仲直りしなさいとメッセージが届いていて苦笑する。
「どうかしたの」
「なんでもない」
真凜にメッセージを返すとスマホを置いて、ツマミを食べながら今後どうするのか煌耶と話し合う。
「正直なところ今日みたいな機会がなかったら、そのまま離婚して欲しいって言ってたと思う」
「そっか」
「あんまり驚かないんだね」
「色々事情があったとは云え、4年も音沙汰なく離れてたからね。覚悟はしてた」
煌耶は思ったよりも落ち着いた様子でそう答えた。その様子に、舞琴の方も驚きは少ない。
「でも実際会ったら、そんな覚悟は脆かったけどね」
煌耶が可笑しそうに笑うのは、あの夜のことを言っているのだろう。舞琴にしてもそれは同じことなので、あえてそれには触れずに咳払いすると、煌耶と目が合う。
「結局のところ、私も変わらなかったんだと思う」
「そっか」
その一言で意味を理解したのか、煌耶は舞琴の手を握ると、嬉しそうに笑ってその手にキスをする。
そのまま熱っぽい目が向けられて、舞琴は久々に胸が高鳴る感覚に戸惑い顔を背けると、スッと伸びた煌耶の手がそんな舞琴の頬を撫でた。
「舞琴はやっぱり可愛いね」
「はあ?またそんなこと言って」
なんとか手を払うと、チーズを口に放り込んでビールを流し込んでから、思い出したように煌耶を見つめる。
「お義母さんたちは?このこと知ってるの」
「一応電話で報告はした。ずっと裁判とか続いてて色々片付いてない事情も説明して、納得はしてないだろうけど、兄貴たちにも色々迷惑掛かってたみたいだから」
「やっぱり。嫌がらせは私だけじゃなかったのね」
「まあね。全部なんとか方がついたから、結果オーライかな」
2本目の缶ビールを開けると、時間が取れなくて直接は会えていないと言う煌耶に、義父母の顔が頭をよぎる。
「なら明日行こうよ」
「え?」
「なに、仕事なの?」
「いや別にそうじゃないけど」
「夫婦で一からやり直す報告もしないといけないし。謝るのはやっぱり直接じゃないと。お義母さんたちずっと心配してたんだから」
「親のことまで、任せ切りになってごめんね」
「本当にね」
「でもお義母さんは、俺のこと許してくれないんじゃないかな」
テレビに視線を向けながら缶ビールを握りしめると、顔向けできないことをしたと煌耶が呟く。
「なら殴られる覚悟で。まあそんなことないだろうけど、お母さんだってずっと煌耶のこと心配してたし。なんで支えてやらないんだって、私は怒られたくらいだからね」
「そうなの?」
「そうなの」
煌耶と離れてからの舞琴側の事情を話すと、少し驚いた様子で煌耶はその話を聞いた。
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