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第17話 占師は夢占いを信じない6

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たどたどしく鳴るキラキラ星のもと、式は進んでいく。

誰も居ないけど、バージンロード歩いたり、

誰も居ないけど、ブーケ投げてみたり、

最後には誰も居ないのに披露宴まで始まった。

もはや、結婚式は終わったのだが、未だにこの夢は続いていた。

「えー、続きまして、新婦のご両親からのお言葉でございます」

司会はさっきまで神父をやっていた副会長だ。服装もタキシードに蝶ネクタイとそれらしい支度になっている。

そして、その横に凪とはじめが座る席がある。凪は両親からの手紙に目を潤ませている。が、もちろん、凪のおばさんたちがいる訳ではない。だから、手紙も言葉もないなのに、凪は泣いている。

「はい、必ず幸せにします」

そして、はじめが何もないところに返答したところで、新郎家族へ移る。もちろんこちらも居ない。

ここまでくるとBGMも慣れてきて、土砂降りのキラキラ星から、ところにより雨くらいのキラキラ星へと成長遂げていた。あっち3人は、真剣にやっているようだが、私には何も見えないので、暇つぶしがこれくらいしかなかったのだ。

「あー、唇ヒリヒリしてきた」

と、口を挟みながらも私は生真面目にリコーダーを吹き続けた。

ーー自分の夢の中だというのに。

そう!ここは夢なのだ!だから、前みたいに夢の中で寝てしまえば、起きられる理論を使えばいいのだ!っと、思ったのが2時間前それから実行はしているものの全く変化がなかった。

「あー、こんなことなら授業受けてた方がましだぁ」

ぼやいても、起きれるわけでも、式が終わるわけでもなかった。ここまでくると何か変化が欲しいところだ。

変化なんてなんでもいい、例えば、弟が助けに来てくれるとか、弟が目覚めのキスをしてくれるだとか、弟が女装に目覚めて妹にもなってくれて一石二鳥とか……おっと、よだれが出てしまった。せっかく、自分の夢なのだから、自分の得する夢が見たい!

「二次会くる人ー?」

おっと、披露宴が終わって二次会が始まるらしい。ようやく変化じゃんと思うけど、この結婚式、披露宴、二次会は三週目なんだよね。なんなら、二次会の後、三次会もあるし、それに締めのラーメンまで。

これからのことを考えるとため息が出てきた。

ーー帰りたい。

「その結婚待ったぁ!」

三週目の披露宴が終わったところに、大遅刻で私の待っていた変化は訪れた。

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