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第1章 ぼっち君の日常
第1話 ままならない
しおりを挟む「はぁはぁはぁ、やめて!来ないで!!」
「なんだよ嬢ちゃん。俺たちと楽しいことしようぜ」
「さっきはああだこうだ言って、散々馬鹿にしてきやがった癖にほんと無様だよなぁー」
男たちは路地裏で一人の可憐な美しい女の子を囲っていた。
まるで、馬鹿にするような笑い方で男たちは女の子に野次を飛ばす。
「ほんとのこと言ったまででしょ!いったい私が何をしたと言うんですか!」
「そういう態度が気に食わないんだよ!!」
「ッ!」
一人の男が飛ばす怒号にたじろぎ、少女は再度、この状況の恐ろしさに怯える。
「お前は、いつだってそうだ!俺の告白を断った時だって!傲慢な態度やいつも人を見下すようなその視線っ!楽しいだろうなぁ。そうやって自分より下の者を嘲り、馬鹿にして、楽しんでるんだろぉっっ!!」
「えーお嬢ちゃん見た目にそぐわず、そんなに怖いんだー。女は見た目で判断しちゃいけねぇな(笑)」
「俺そういうやつを嬲るのが好きなんだよっ。やべぇー興奮してきたっっ。高志、今日は呼んでくれて感謝するわ」
高志と呼ばれる他の男たちより少し幼げで、高校生のような少年はバツの悪そうな顔をした。だが、それもほんの数秒。
「沙耶。お前が悪いんだぞ。俺はお前が好きなんだ。けど、お前は俺を振った。あんな最低で、最悪な断り方でな・・・最後だ。最後にもう一度聞く。俺と・・・付き合ってくれないか?」
その少年はどこか縋るような、それでいて酷く悲しそうな眼を向けて言った。
「・・・っご、ごめんなさい。私はあなたと交際する気はありません」
少女は、小さい声で震えながらもハッキリと拒絶の意を示した。
「・・・そうか」
その声に驚きはない。分かっていたかのように薄く笑う高志。
「なぁ高志。もうそろいいだろー」
「・・・はい」
「よっうしゃー!じゃあいきますかね。おじょーちゃん?」
ぴくっと体を震わす可憐な少女。その姿はまるで、大きな獣を前にし怯える子犬さながら。
◇◇◇◇
――どうしてこうなったのか。
その自問自答はとうに何百回を超えるだろう。
だけど分かっている。私が悪い。彼を酷く悲しませたのは・・・分かっている、彼だけではない。これまで私は沢山の男性に告白されてきた。その度に、私は強く拒絶し非難し、そして何より私を傷つけた。
言いたくもない言葉を並べそして放ち、傷つける。あと何回繰り返せばいいのか。でも、仕方ないじゃないか。こんなやり方じゃいけないことくらい分かっている。でも、でもっ、これが一番効率的な方法だったんだ。
好きでもない人に、ただ顔が良いからと近寄られ、愛想良くすると勘違いされ、告白される。そんなループ。だから、私は試してみた。今まではやんわりと断っていからいけないのではないか。強く拒絶する。これが最適解なのではないかと。
はじめは功を奏した。だが、どんどんと私の周りには人が減っていった。親しくしていた女友達。気づけば5人、4人、3人、2人、、1人。そして誰もいなくなった。
人間はそう簡単に変われない。"冷徹美女"そんな名がついたのはいつだったか。みんなの中の私は、そのイメージで定着してしまった。だが、取り返しのつかない事をしてしまったと思うと同時に安堵している自分もいる。告白してくる人は目に見えて減ったし、実際楽だった。まぁ冷やかしで告白してくる人はいましたが。
けど、唯一私をそんな眼で見てこないクラスメイトの男の子がいたね。まぁあれはどっちかっていうと興味がないって感じだったかな。物凄く彼と話をしてみたい。
・・・だけどもう、無理かも。
「よっうしゃー!じゃあいきますかね。おじょーちゃん?」
◇◇◇◇
じりじりと少女に近づく男たち。高志は後ろの方で俯いたまま立っている。
この袋の鼠のような状況ではもはや凌辱は免れないかとみえた。しかし、
「何してるんですか?」
この場に場違いのような、どこか気の抜けた声が言う。
「あ?なんだテメー」
「だから、こんなところで何してるんですか?」
「お前には関係ないだろ」
「確かに関係はありませんが、女性が襲われてるのを黙ったまま素通りできるほど、腐ってはいませんので」
「きもちわりぃな」
髪の毛がボサボサで片手に何か袋を提げている高校生のようなその少年は、ひどく落ち着いた声で話を続ける。
「先に言っときますげど、これ何かの撮影とかじゃないですよね?」
「おまえアホか?(笑)」
「では、遠慮なく」
その刹那――
「ゲホッッ」
あろうことかその少年は、いきなり勢いよく飛び出し、一番間近の男の鳩尾を殴った。
殴られた男は、その場で倒れこみ腹を抱えながら喘ぐ。
「テメーッッ!!!」
余りにも一瞬の出来事だったので、もう一人の男は呆気に取られていたがすぐ正気に戻り、少年に向かって大振りで殴ってきた。
だが、
「ガハッ」
その少年は詰まらなそうにその拳をよけると、相手の腕をつかみ、腹へ向がけて勢いよく膝蹴りを入れた。
「こんな最低なことしてる割には、幼稚な動きですね」
あっという間にその男たちをいなした少年は、驚愕に打ちひしがれて目を見開く高志に言った。
「あなたは俺と同じクラスの人ですよね。高校生だからといって、このようなことをしていいと思っているんですか?」
「・・・」
「俺はあなたに何もしない。後日この人にしっかりと謝罪ををしてください」
高志は覚束ない足取りで、目に雫を蓄えながらその場から背を向けて駆けて行った。
「・・・はぁ、大丈夫ですか?」
取り残された少年は、倒れている2人の男を見ながら大きな溜息をつく。
「前田くん?ですか・・・?」
「?はい。そうですが」
なんで知っているんだ、と言わんばかりな顔で頷く少年。
そしてその少年が前田と分かったその瞬間、少女は勢いよく少年に抱き着き、体を震わせた。
「っ!」
「こ、こわかったよ・・・ぐすッ。こわかったよ・・・うぅ、」
「だ、大丈夫ですか?」
「ぐすッ、ほんとうに、ぐすッ・・・ありがとうっ・・」
☆
パタンっ
「こんな都合のいい展開、実際あんのかね」
現在、夜の12時。読み終えたラブコメ小説を本棚にしまう。
「なんで主人公全員強いんだよ。俺にもその能力分けてください、お願いします」
思ってもないことを言ってみる。
別に現状に不満が有るわけでもないし、変えようとは全く思わない。ただ、なんか噛み合わない。自分にはもっと何かできる。そういうお年頃。
「ままならないなあぁ」
また明日から、平凡でつまらない日常の幕開けだ・・・・・・・・・・・・・・・なんかいいな、このセリフ。
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