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第3章 これから、変わる
第44話 プチ水族館
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「あら、まいまいじゃない」
「ご無沙汰しております、アナさん」
唖然とする俺らをそっちのけでカウンターに出てきた女性と話す古瀬さん。
そうか、この女性の名前がアナさんだから【アナちゃんのあ・な・ば】なんて看板が掛かっていたのか。という事は十中八九、この女性がこのお店のオーナーなのだろう。
・・・にしても綺麗な人だなぁこの女性。若干赤みがかったショートボブの髪に、カラコンを付けているのか真紅の瞳が会場の群青色に反射している。女性にしては長身なその身の丈に、白色のニットと黒パンツを着させている。まさしく、大人な女性って感じだ。
「ん?そちらの二人はお友達?」
「はい」
「へぇ、珍しいわね。まいまいがお友達を連れてうちにくるなんて。初めてじゃない?」
「そう、なりますかね」
やっぱり古瀬さんボッチだったのではなかろうか。
それより、さっきからアナさんが言っている”まいまい”とは一体。古瀬麻衣さんの名前を弄った呼び名だろうが、彼女のいつもの印象と違い過ぎて、すこし面白い。
「そう、じゃあまいまいは大丈夫だろうけれど、2人は初めてだろうからこのお店の事を紹介しましょうかね」
あぁ、さっきからずっと気になっているこの光景。
古瀬さんがめっちゃスムーズに話を進めるから説明がないかと思ったじゃん。見てよ隣の若山さん。さっきからずっと固まってるからね。
「あなた達も最初は驚いたろうけれど、このお店は一応”カフェ”よ」
「か、かふぇ?」
若山さんが困惑の声を上げる。動揺し過ぎて声が裏返っていた。
「ええ、信じられないかもしれないけれど、そうなの」
「決して怪しいお店なのではありませんよ?」
古瀬さんがそう付け足す。
「で、では、これは・・・」
そう言いながら目線を横に向ける若山さん。その方向には沢山の水槽が並んでいた。
水槽の中には綺麗な鱗をした魚たちが元気よく泳いでいるのが見てわかる。淡い光と青色に照らされた壁がさらにそれを反射して、幻想的な空間を作り上げている。
「見て分かるように、これがうちの目玉よ」
「水族館、ですか」
「ええ、常連客は”プチ水族館”なんて言ってるらしいけれどね」
プチ水族館・・・なんかいいね、それ。
「綺麗ですね」
「そうでしょ?このお店はあまり知られていないんだけど、私が昔から水族館が好きでね。元々は趣味でやってたけれどやっていく内に、ね」
「そうですか、凄いですね・・・」
趣味を仕事にするのは難しいことだが、実際にしている人はいる。この女性のように。
俺も何かしらの趣味を持ちたいものだ。俺は読書やアニメが趣味だが、これを仕事にすることはできないと思う。才能がないからね。
「ま、副業だけどねこのカフェは。本業はそこら辺にどこでも居るアラフォーよ」
「え、そうなんですか・・・?」
・・・この女性まじでアラフォーなのか?俺から見たら20代にしか見えないんだけど。厚化粧とかではないだろうし・・・こんな人がいるんだね。
「なによ?もっと年上だと思ったのかしら?」
「っ、いいえその逆です」
慌てて否定する。
「冗談よ、ふふ」
マダムの冗談は時折本気になるから怖いんですよ。俺の母さんなんて、自分から「最近老けたわぁどう思うたける?」と聞いてきたので「あぁ確かに」と素直に返したらその日の晩飯抜かれたからね。あの人ヤバいわ。
「あら、話が少し長くなったわね。用事があって来たのでしょう?あとはお若い同士でくつろいでいってくださいな」
そう言って踵を返したマダム。
「中々個性的な方でしたね」
「はい。アナさんは誰にでもあのような砕けた感じで接します」
「そうなんですか」
その光景が目に浮かぶから不思議である。
「き、綺麗な方、でした・・・」
若山さんがふぅと息を吐きながら言う。
「それは、確かに」
「アナさんは先ほど仰っていた通り40代なのですが、それを感じさせないほどの美貌をお持ちです。いつか聞いたのですが、本業は美容系のお仕事をされているそうです」
だからあんなに綺麗なのか。
「それでは、席に着きましょうか」
「そうですね」
「は、はいっ」
◇
この水族館カフェは予想に反して結構な広さを有しているようで、4人席の様な個室が10個程度あった。現在俺と彼女達はそのうちの一つの個室に入っている。
「きれーい・・・」
若山さんが首を横に向けながら言う。
エントランスの光景も素晴らしかったが、個室にまで凝っているとは思いもしなかった。
水槽の透き通った水の中に居る小さな魚たちに見守られながらのこの空間は、言いようない落ち着ける雰囲気がある。暗すぎず、明るすぎず。本当に”落ち着ける”とはこういう事を言うんだなと思った。
古瀬さんの言ったことはどうやら正解だったようだ。
「どうですか?」
「麻衣ちゃんっ、すごいよここっ!こんな綺麗なの初めて見たよ!」
「ふふっ、そうですか。それは良かったです」
若山さんが興奮気味に答える。目がキラっキラっしてる。まるで小動(以下略)
「武流さんは、どうですか?」
少し心配そうに俺に質問する古瀬さん。
俺が何も発さないのがいけなかったかもしれない。
「俺も、こんな綺麗な場所来たことありません。とにかく、綺麗です」
「良かったです・・・」
ふぅと安堵の息を吐いた古瀬さん。
「それにしても、麻衣ちゃんいつこのカフェの事知ったの?」
「・・・・・知り合いから、教えてもらいました」
うん?なんか、ぴくっと古瀬さんの体が反応していた気がしたが気のせいかな。
「へぇーそうなんだ。確かにここは文字通り穴場だね」
「はい、ここを知っている方は私たちの高校でもあまり居ないと思います」
だろうね。こんな路地裏を潜り抜け来れるような場所誰も知らないでしょ普通。古瀬さんの知り合いが一体どんな人なのか少し気になる。
「それでは、勉強しましょうか」
古瀬さんが開始の音頭として手を叩いた。
「ご無沙汰しております、アナさん」
唖然とする俺らをそっちのけでカウンターに出てきた女性と話す古瀬さん。
そうか、この女性の名前がアナさんだから【アナちゃんのあ・な・ば】なんて看板が掛かっていたのか。という事は十中八九、この女性がこのお店のオーナーなのだろう。
・・・にしても綺麗な人だなぁこの女性。若干赤みがかったショートボブの髪に、カラコンを付けているのか真紅の瞳が会場の群青色に反射している。女性にしては長身なその身の丈に、白色のニットと黒パンツを着させている。まさしく、大人な女性って感じだ。
「ん?そちらの二人はお友達?」
「はい」
「へぇ、珍しいわね。まいまいがお友達を連れてうちにくるなんて。初めてじゃない?」
「そう、なりますかね」
やっぱり古瀬さんボッチだったのではなかろうか。
それより、さっきからアナさんが言っている”まいまい”とは一体。古瀬麻衣さんの名前を弄った呼び名だろうが、彼女のいつもの印象と違い過ぎて、すこし面白い。
「そう、じゃあまいまいは大丈夫だろうけれど、2人は初めてだろうからこのお店の事を紹介しましょうかね」
あぁ、さっきからずっと気になっているこの光景。
古瀬さんがめっちゃスムーズに話を進めるから説明がないかと思ったじゃん。見てよ隣の若山さん。さっきからずっと固まってるからね。
「あなた達も最初は驚いたろうけれど、このお店は一応”カフェ”よ」
「か、かふぇ?」
若山さんが困惑の声を上げる。動揺し過ぎて声が裏返っていた。
「ええ、信じられないかもしれないけれど、そうなの」
「決して怪しいお店なのではありませんよ?」
古瀬さんがそう付け足す。
「で、では、これは・・・」
そう言いながら目線を横に向ける若山さん。その方向には沢山の水槽が並んでいた。
水槽の中には綺麗な鱗をした魚たちが元気よく泳いでいるのが見てわかる。淡い光と青色に照らされた壁がさらにそれを反射して、幻想的な空間を作り上げている。
「見て分かるように、これがうちの目玉よ」
「水族館、ですか」
「ええ、常連客は”プチ水族館”なんて言ってるらしいけれどね」
プチ水族館・・・なんかいいね、それ。
「綺麗ですね」
「そうでしょ?このお店はあまり知られていないんだけど、私が昔から水族館が好きでね。元々は趣味でやってたけれどやっていく内に、ね」
「そうですか、凄いですね・・・」
趣味を仕事にするのは難しいことだが、実際にしている人はいる。この女性のように。
俺も何かしらの趣味を持ちたいものだ。俺は読書やアニメが趣味だが、これを仕事にすることはできないと思う。才能がないからね。
「ま、副業だけどねこのカフェは。本業はそこら辺にどこでも居るアラフォーよ」
「え、そうなんですか・・・?」
・・・この女性まじでアラフォーなのか?俺から見たら20代にしか見えないんだけど。厚化粧とかではないだろうし・・・こんな人がいるんだね。
「なによ?もっと年上だと思ったのかしら?」
「っ、いいえその逆です」
慌てて否定する。
「冗談よ、ふふ」
マダムの冗談は時折本気になるから怖いんですよ。俺の母さんなんて、自分から「最近老けたわぁどう思うたける?」と聞いてきたので「あぁ確かに」と素直に返したらその日の晩飯抜かれたからね。あの人ヤバいわ。
「あら、話が少し長くなったわね。用事があって来たのでしょう?あとはお若い同士でくつろいでいってくださいな」
そう言って踵を返したマダム。
「中々個性的な方でしたね」
「はい。アナさんは誰にでもあのような砕けた感じで接します」
「そうなんですか」
その光景が目に浮かぶから不思議である。
「き、綺麗な方、でした・・・」
若山さんがふぅと息を吐きながら言う。
「それは、確かに」
「アナさんは先ほど仰っていた通り40代なのですが、それを感じさせないほどの美貌をお持ちです。いつか聞いたのですが、本業は美容系のお仕事をされているそうです」
だからあんなに綺麗なのか。
「それでは、席に着きましょうか」
「そうですね」
「は、はいっ」
◇
この水族館カフェは予想に反して結構な広さを有しているようで、4人席の様な個室が10個程度あった。現在俺と彼女達はそのうちの一つの個室に入っている。
「きれーい・・・」
若山さんが首を横に向けながら言う。
エントランスの光景も素晴らしかったが、個室にまで凝っているとは思いもしなかった。
水槽の透き通った水の中に居る小さな魚たちに見守られながらのこの空間は、言いようない落ち着ける雰囲気がある。暗すぎず、明るすぎず。本当に”落ち着ける”とはこういう事を言うんだなと思った。
古瀬さんの言ったことはどうやら正解だったようだ。
「どうですか?」
「麻衣ちゃんっ、すごいよここっ!こんな綺麗なの初めて見たよ!」
「ふふっ、そうですか。それは良かったです」
若山さんが興奮気味に答える。目がキラっキラっしてる。まるで小動(以下略)
「武流さんは、どうですか?」
少し心配そうに俺に質問する古瀬さん。
俺が何も発さないのがいけなかったかもしれない。
「俺も、こんな綺麗な場所来たことありません。とにかく、綺麗です」
「良かったです・・・」
ふぅと安堵の息を吐いた古瀬さん。
「それにしても、麻衣ちゃんいつこのカフェの事知ったの?」
「・・・・・知り合いから、教えてもらいました」
うん?なんか、ぴくっと古瀬さんの体が反応していた気がしたが気のせいかな。
「へぇーそうなんだ。確かにここは文字通り穴場だね」
「はい、ここを知っている方は私たちの高校でもあまり居ないと思います」
だろうね。こんな路地裏を潜り抜け来れるような場所誰も知らないでしょ普通。古瀬さんの知り合いが一体どんな人なのか少し気になる。
「それでは、勉強しましょうか」
古瀬さんが開始の音頭として手を叩いた。
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