ぼっちの俺にはラブコメは訪れないんですか?

最東 シカル

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第3章 これから、変わる

第45話 色々と間違ってるカフェ

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「ここはこの方程式を使うんですよ」

「す、すごい麻衣ちゃんっ・・・!」

 俺を対面にして、彼女達は隣り合わせで座りながら勉強をしている。
 学年1位と言うのは誇張ではないらしく、古瀬さんはやはり頭が良かった。問題集を解く手が止まらない止まらない。スラスラと解いていくその光景は、見ているこっちが気持ちいくらいだ。

「ふふっ、ただ暗記しているだけですよ?」

「それがすごいんだよっ」

 確かに。

「武流さんは何か分からない問題ありましたか?」

「殆ど分かりませんね」

 呆れた顔された。

「・・・ではなぜ、黙っていたのですか?」

「2人の勉強をする姿が微笑ましいな、って思って・・・」

「はぁ、そんな事だろうなと思いました。どの問題が分からないのですか?」

 呆れた顔をしながらもしっかりと教えてくれるその姿勢に、思わず感激してしまう。やっぱり優しいね、この子。


 ◇


 そんなこんなで2時間が経過した時、若山さんが唐突に声を上げた。

「あぁ~疲れたー」

 座りながら背伸びをし、背中の凝りをほぐしている。
 
 ・・・ふと思った。若山さんのこういう姿を今まで見たことが無かったな、と。今までと言えば語弊がでるかもしれないが、正確には古瀬さんと友達になった時からか。
 古瀬さんとの自然体な話し方や、立ち居振る舞い。どれをとっても以前の彼女からは想像もできない姿であることは間違いない。あまり意識せずにいたが、いざ考えてみるとこれは物凄い進歩なのではなかろうか。いつも教室の隅でオドオドしている姿とは見違えるようだ。ただそれ程古瀬さんが”良い人”という事が分かる。
 だって普通、ぼっちの子にこんな淑女的な対応しないでしょ。いきなり「友達になってください!」なんて言われたら困るだろうし、仮になったとしても、その縁は持って3日の関係だろう。まぁ、俺が吹っ掛けた事なので、何とも言えないが・・・。
 一番間近で若山さんの成長を見届けることができて、至って何もしていないのになんだが誇らしい気分だ。ああ、これが母性を擽るってやつか(迷信)
 
 だが、たった一つ若山さんの欠点を挙げるとするならば・・・

「っ!」

 これである。 
 俺が彼女のだらしなく背伸びしている姿を見ていたら、その視線に気づいた若山さんが急に手を引っ込めて顔を俯けた。隠している腕の隙間から、赤面している彼女の顔が見え隠れする。

 まぁ、恥ずかしいのだろう。俺に背伸びしている姿を見られたのが。・・・うん?もしかして彼女、暗に俺の存在は空気だと言っているのではなかろうか。実際、「あ、いたのお前。ごめん気付かなかったわ」と中学生の頃クラスメイトの男子に言われたことがある。あの時は苦笑して笑い流したが、内心のダメージ量は計り知れないものであった。結構メンタルにきた。

「?どうしました詩音ちゃん。お腹の具合が悪いのですか?」

 古瀬さんが心配そうに、俯いている若山さんに声を掛ける。

「な、なんでもないよっ麻衣ちゃん」

「?そうですか」

 まだ少し朱色に染まった頬を見せながら、古瀬さんに向かって苦笑いする若山さん。 

「そろそろ2時間経ちましたし、一先ず休憩しましょうか」

「だねっ」

 休憩と聞いて、俺はずっと疑問に思っていたことをまいまいに投げかける。

「あの古瀬さん、ここってカフェなんですよね?メニュー表などが一切無い気がするんですが・・・」

 この水族館、アナさん曰くカフェらしいが、メニューらしきものが何もないのだ。アナさんが飲み物などを持ってきてくれるようなサービス形式のお店なのかな、なんて思っていたが2時間待っても来ないのでその考えはとっくに捨てた。
 
「はい、それは今から説明しようと思っていました」

 再びニッコリと笑って、席を立った古瀬さん。付いてきてください、というので困惑気味の若山さんと一緒に付いていく。

「実はこのお店、”セルフサービス”なのです」

 こちらに背を向けたまま、歩きながらそんなことを言った古瀬さん。

「え?」

「なるほど・・・」

 そういう事か。だからメニュー表などがなかったのか。
 ・・・いや待てよ、そもそもセルフサービスのカフェってなんだ?まずそれはカフェとして成り立っているのかね。

「ただ、一般的に言われるセルフサービスとは少し異なります」

「?」

 カフェの時点で異なり過ぎの気がします。

「このカフェでは・・・・・お魚を食べるのです」

 ・・・は?

「さ、さかなっ!?」

「はい、もう既に気付いたとは思いますが」

 そう言いながら視線を横に向ける古瀬さん。
 そしてその方向にあるのは当然、

「・・・この魚たちですか」

 水槽で元気に泳いでいる魚たちである。

「はい。そうです」

 はぁ、なんか溜息出そう。

「はぁ」

 あぁ出たわ。

「着きましたよ」

 何もしていないのにやたら疲れたなと思っていたら、とうとうセルフサービスの場に着いたようだ。
 鯉の絵の刺繍の入った暖簾が掛かった、スライド式の扉の前に立つ俺と彼女達。一見その風貌は回らない寿司屋とも言うべきか。なんとも高級そうな雰囲気が窺える。

 この扉を開いたら、俺の中の常識が一気に崩れそうで怖い。そして何より、何があるのか何となく想像できるのが既に怖い。

 そして、古瀬さんが何の躊躇いもなく開いたその扉の先には・・・・


「「・・・・・・・・」」

 
「あら、勉強は終わったのかしら?」

 右手に柳刃やなぎば包丁、左手にうなぎを持ったアナさんが居た。
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