49 / 60
第3章 これから、変わる
第47話 正解とは
しおりを挟む
「・・・」
「はぁ・・・麻衣、ごめんなさい。余計な事言ったわね・・・」
俯いたまま何も発さない古瀬さんに向かって、頭を抱えながら謝るアナさん。
「・・・さぁ、他に何か食べたいものあるかしら?私はまだまだいけるわよ」
唖然とする俺と若山さんに向かって、先程の調子に戻した声で呼びかけるアナさん。
・・・何とか冷静さを取り戻したが、一体どういう事だろうか。アナさんが何か言いかけたところで古瀬さんがいきなり金切り声を上げ、それを中断させた。
アナさんの言おうとした内容が彼女にとって何か不都合な事だったと考えるのが一番妥当だが、古瀬さんの反応を見る限りでは、彼女は明らかに何かに対して怯えていた。
古瀬さんのそのような反応を見た事が無かったので、俺と若山さんはかなり動揺した。彼女はいつだって冷静で物事を冷静に判断しているような人だ。それは間違っていないのだが、今回の古瀬さんのあの反応はあまりにも予想外だったのだ。若山さんなんて、最初は目ん玉が飛び出んばかりに目をひん剥いて驚いていたが、今となっては何故か目をウルウルさせて泣きそうな顔になっている。
・・・若山さん優しいからなぁ。古瀬さんの痛ましい姿を見ていたら感情移入してしまったのかもしれない。
「・・・そうですね、何かデザート的なものはありますか?」
折角アナさんが話題を切り替えようとしているので、赤の他人の俺がそれを無碍にするわけにもいかない。それにこんな雰囲気のままずっと過ごすなんて嫌だしね。
「・・・えぇ、あるわよ」
そしてまたアナさんは一瞬驚いた顔を見せ、俺に向かって優しく微笑んだ。
小さな声で、ありがとうと聞こえた気がする。
「「・・・」」
「・・・」
アナさんがデザートを取りに奥の部屋に入っていったので、この空間には想像を絶する程の気まずい雰囲気が流れている。
はぁ・・・俺こういうの一番苦手なんだよ・・・。こういう時、陽キャは一体どうするのだろう。慰める?いいや、そんなの俺の柄じゃないし、そもそもそんな勇気無い。だったら全く関係ない話題をぶち込んで場を少しでも和ませる?・・・いいや、それだと根本的な解決にならない。そんな適当な話をしたところで、話が途切れ途切れになって余計気まずい空間の助長になるだけだろう。
頭の中でぐだぐたとそんなことを考えていた時、またもや唐突に彼女が発言した。
「・・・先程は、すみませんでした。とんだ醜態を晒してしまいました。本当にすみません・・・」
「だ、大丈夫だよっ!私は全然全くこれっぽちも気にしてないからっ!!」
テンパり過ぎて、日本語が若干怪しくなった若山さん。
彼女なりに古瀬さんを励ましているのだろう。彼女の心配そうに古瀬さんを励ます、その瞳を見れば分かる。こういう時、俺も何か言った方が良いのかもしれないが、やはり俺には厳しいようで当たり障りのない言葉しか思いつかない。
「・・・ふふっ、ありがとうございます、詩音ちゃん・・・」
いつものその洗練された”ふふっ”にキレがない。決して馬鹿にしてるわけでは無く、古瀬さんの今の”ふふっ”はまるで無理をして笑ったかのようだった。
「ごめんなさい、少し遅くなったわ」
少し速足で戻ってきたアナさん。
「い、いいえ、丁度話終わった所です」
「そう、なら良かったわ。ちょっとお客さんと話しをしててね。とっても可愛らし子だったわ」
へぇー、このお店案外知られてるんだ。路地裏にある本当に穴場と言って差し支えないお店なのに。知る人ぞ知るってか。
「持ってきたわ、羊羹よ」
「・・・ありがとうございます」
・・・曲がりなりにもカフェなら、もうちょっと若者受けしそうなデザートを出すべきかと思います。今のままじゃ和食料理店ですよアナさん。口が裂けても言えませんけどね。
「食べたくないならいいのよ?お坊ちゃま?」
「っ!い、いいえ、羊羹大好きなので、本当に嬉しいです、ははっ・・・」
「そう、ならいいのよ」
こ、こえぇ・・・なぜ俺の考えていることが分かったのか。俺って結構顔に出やすいのかな?もしくはアナさんはエスパーかなんかか。
「あ、美味しい・・・」
「でしょ?といっても私が作った訳じゃないけどね」
お茶もあるわよ、と言って暖かい緑茶を提供してくれたアナさん。
・・・ここは、カフェだ(迷信)
「・・・ほら、まいまい、あなたも食べなさい」
「ありがとうございます・・・」
その後羊羹を食べ終わり、アナさんに感謝を述べて再び勉強をしていた個室に戻った俺と彼女達。
会話は終始絶えなかったが、明らかに3人の中で違和感が生まれていたのはみんな気付いていただろう。ただその中でも、さっきの件については一度たりとも触れなかった。古瀬さんはその話題について触れられたくないだろうし、そもそも彼女について何も知らない人間が立ち入っていい領域の問題ではない。
気にならないと言えば嘘になるが、俺がそこまで入り込める資格はない。誰だって人に知られたくない秘密は一つや二つあるものだ。もちろん俺にもあるし、それが今回あの件だっただけの事だ。
そして、古瀬さんの友達である若山さんは、敢えて何もなかったのように振舞っていた。・・・それが俺にとっては何故か一番ショックだった。若山さんの無理して明るく振舞うその姿に俺はとても悲しい気持ちになった。古瀬さんもそれには気づいていたはずだ。だがそれでも、彼女は自分の口から吐かなかった。もしかして彼女は・・・・・あるいは”待っていた”のか。
仮にそうであるとしても、それは俺が立ち入っていい場所ではない事は確かだ。
◇
「兄ちゃん、いかがわしいお店行ったらダメだよ」
「・・・は?」
俺が家に着き玄関に入った途端、最初に言われたのはそんな言葉だった。
「どういう事だ・・・?」
「なーんでも」
そう言って踵を返し、特に興味が無さそうにリビングに入った千恵。
千恵は時々、意味が分からない事を言う。今回もその類なのだろう。・・・というかあいつ、なんで玄関に居たんだ?ずっと居たってことは流石に無いと思うが、我が妹ながら相変わらず変な奴である。
「はぁ・・・麻衣、ごめんなさい。余計な事言ったわね・・・」
俯いたまま何も発さない古瀬さんに向かって、頭を抱えながら謝るアナさん。
「・・・さぁ、他に何か食べたいものあるかしら?私はまだまだいけるわよ」
唖然とする俺と若山さんに向かって、先程の調子に戻した声で呼びかけるアナさん。
・・・何とか冷静さを取り戻したが、一体どういう事だろうか。アナさんが何か言いかけたところで古瀬さんがいきなり金切り声を上げ、それを中断させた。
アナさんの言おうとした内容が彼女にとって何か不都合な事だったと考えるのが一番妥当だが、古瀬さんの反応を見る限りでは、彼女は明らかに何かに対して怯えていた。
古瀬さんのそのような反応を見た事が無かったので、俺と若山さんはかなり動揺した。彼女はいつだって冷静で物事を冷静に判断しているような人だ。それは間違っていないのだが、今回の古瀬さんのあの反応はあまりにも予想外だったのだ。若山さんなんて、最初は目ん玉が飛び出んばかりに目をひん剥いて驚いていたが、今となっては何故か目をウルウルさせて泣きそうな顔になっている。
・・・若山さん優しいからなぁ。古瀬さんの痛ましい姿を見ていたら感情移入してしまったのかもしれない。
「・・・そうですね、何かデザート的なものはありますか?」
折角アナさんが話題を切り替えようとしているので、赤の他人の俺がそれを無碍にするわけにもいかない。それにこんな雰囲気のままずっと過ごすなんて嫌だしね。
「・・・えぇ、あるわよ」
そしてまたアナさんは一瞬驚いた顔を見せ、俺に向かって優しく微笑んだ。
小さな声で、ありがとうと聞こえた気がする。
「「・・・」」
「・・・」
アナさんがデザートを取りに奥の部屋に入っていったので、この空間には想像を絶する程の気まずい雰囲気が流れている。
はぁ・・・俺こういうの一番苦手なんだよ・・・。こういう時、陽キャは一体どうするのだろう。慰める?いいや、そんなの俺の柄じゃないし、そもそもそんな勇気無い。だったら全く関係ない話題をぶち込んで場を少しでも和ませる?・・・いいや、それだと根本的な解決にならない。そんな適当な話をしたところで、話が途切れ途切れになって余計気まずい空間の助長になるだけだろう。
頭の中でぐだぐたとそんなことを考えていた時、またもや唐突に彼女が発言した。
「・・・先程は、すみませんでした。とんだ醜態を晒してしまいました。本当にすみません・・・」
「だ、大丈夫だよっ!私は全然全くこれっぽちも気にしてないからっ!!」
テンパり過ぎて、日本語が若干怪しくなった若山さん。
彼女なりに古瀬さんを励ましているのだろう。彼女の心配そうに古瀬さんを励ます、その瞳を見れば分かる。こういう時、俺も何か言った方が良いのかもしれないが、やはり俺には厳しいようで当たり障りのない言葉しか思いつかない。
「・・・ふふっ、ありがとうございます、詩音ちゃん・・・」
いつものその洗練された”ふふっ”にキレがない。決して馬鹿にしてるわけでは無く、古瀬さんの今の”ふふっ”はまるで無理をして笑ったかのようだった。
「ごめんなさい、少し遅くなったわ」
少し速足で戻ってきたアナさん。
「い、いいえ、丁度話終わった所です」
「そう、なら良かったわ。ちょっとお客さんと話しをしててね。とっても可愛らし子だったわ」
へぇー、このお店案外知られてるんだ。路地裏にある本当に穴場と言って差し支えないお店なのに。知る人ぞ知るってか。
「持ってきたわ、羊羹よ」
「・・・ありがとうございます」
・・・曲がりなりにもカフェなら、もうちょっと若者受けしそうなデザートを出すべきかと思います。今のままじゃ和食料理店ですよアナさん。口が裂けても言えませんけどね。
「食べたくないならいいのよ?お坊ちゃま?」
「っ!い、いいえ、羊羹大好きなので、本当に嬉しいです、ははっ・・・」
「そう、ならいいのよ」
こ、こえぇ・・・なぜ俺の考えていることが分かったのか。俺って結構顔に出やすいのかな?もしくはアナさんはエスパーかなんかか。
「あ、美味しい・・・」
「でしょ?といっても私が作った訳じゃないけどね」
お茶もあるわよ、と言って暖かい緑茶を提供してくれたアナさん。
・・・ここは、カフェだ(迷信)
「・・・ほら、まいまい、あなたも食べなさい」
「ありがとうございます・・・」
その後羊羹を食べ終わり、アナさんに感謝を述べて再び勉強をしていた個室に戻った俺と彼女達。
会話は終始絶えなかったが、明らかに3人の中で違和感が生まれていたのはみんな気付いていただろう。ただその中でも、さっきの件については一度たりとも触れなかった。古瀬さんはその話題について触れられたくないだろうし、そもそも彼女について何も知らない人間が立ち入っていい領域の問題ではない。
気にならないと言えば嘘になるが、俺がそこまで入り込める資格はない。誰だって人に知られたくない秘密は一つや二つあるものだ。もちろん俺にもあるし、それが今回あの件だっただけの事だ。
そして、古瀬さんの友達である若山さんは、敢えて何もなかったのように振舞っていた。・・・それが俺にとっては何故か一番ショックだった。若山さんの無理して明るく振舞うその姿に俺はとても悲しい気持ちになった。古瀬さんもそれには気づいていたはずだ。だがそれでも、彼女は自分の口から吐かなかった。もしかして彼女は・・・・・あるいは”待っていた”のか。
仮にそうであるとしても、それは俺が立ち入っていい場所ではない事は確かだ。
◇
「兄ちゃん、いかがわしいお店行ったらダメだよ」
「・・・は?」
俺が家に着き玄関に入った途端、最初に言われたのはそんな言葉だった。
「どういう事だ・・・?」
「なーんでも」
そう言って踵を返し、特に興味が無さそうにリビングに入った千恵。
千恵は時々、意味が分からない事を言う。今回もその類なのだろう。・・・というかあいつ、なんで玄関に居たんだ?ずっと居たってことは流石に無いと思うが、我が妹ながら相変わらず変な奴である。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
幼馴染に告白したら、交際契約書にサインを求められた件。クーリングオフは可能らしいけど、そんなつもりはない。
久野真一
青春
羽多野幸久(はたのゆきひさ)は成績そこそこだけど、運動などそれ以外全般が優秀な高校二年生。
そんな彼が最近考えるのは想い人の、湯川雅(ゆかわみやび)。異常な頭の良さで「博士」のあだ名で呼ばれる才媛。
彼はある日、勇気を出して雅に告白したのだが―
「交際してくれるなら、この契約書にサインして欲しいの」とずれた返事がかえってきたのだった。
幸久は呆れつつも契約書を読むのだが、そこに書かれていたのは予想と少し違った、想いの籠もった、
ある意味ラブレターのような代物で―
彼女を想い続けた男の子と頭がいいけどどこかずれた思考を持つ彼女の、ちょっと変な、でもほっとする恋模様をお届けします。
全三話構成です。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』
まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。
朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。
「ご主人様の笑顔が見たいんです」
その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。
全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!?
甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。
失恋中なのに隣の幼馴染が僕をかまってきてウザいんですけど?
さいとう みさき
青春
雄太(ゆうた)は勇気を振り絞ってその思いを彼女に告げる。
しかしあっさりと玉砕。
クールビューティーで知られる彼女は皆が憧れる存在だった。
しかしそんな雄太が落ち込んでいる所を、幼馴染たちが寄ってたかってからかってくる。
そんな幼馴染の三大女神と呼ばれる彼女たちに今日も翻弄される雄太だったのだが……
病み上がりなんで、こんなのです。
プロット無し、山なし、谷なし、落ちもなしです。
彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。
遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。
彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。
……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。
でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!?
もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー!
ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。)
略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる