ぼっちの俺にはラブコメは訪れないんですか?

最東 シカル

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第3章 これから、変わる

第52話 母と母 

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 メイド喫茶の方は順調に客を呼び込むことができた。やはり綺麗どころが多い2Dは、沢山のお客が寄ってたかって入店した。絵里奈をはじめとする、神咲さんやその他友達、委員長、そして若山さん。彼女達の2Dへの貢献度は凄まじいものだろう。
 見た感じ、勿論一番人気は絵里奈だったが、若山さんも結構人気のようだった。
 そして案の定、若山さんは終始オドオドしていた。 

――す、すみませんっ。しゃ、写真は学校の方針でダメなんですっ

――お、お一人様30分までとなっています!

――きゃっ!それはダメっ!

 などなど、彼女は落ち着きがなくお客に優しい目で見られていた。やっぱり変わってないな、と思う反面、若山さんが成長した様子を今一度、再確認できた。

 そして残念なことに、途中若山さんに対して痴漢紛いな事をした人物が居たため、速攻男子勢みんなで注意しに行き、退場してもらった。
 先生に報告しようと思ったが、それはダメだったと気付いた。何故ならこの【メイド喫茶】は最初、学校側から否認されていたからだ。

――はしたない。
――高校生がそのような事をするのは危険だ。
――最近の若者はメイド喫茶に行ってんのか・・・

 だがそれでも、何とか許可を貰った我々2D。”自己責任”というパワーワード付きで何とか強行突破ができた。こういう痴漢が現れることも、先生方は想定していたのだろう。
 

「いやー、繁盛繁盛。まじで凄いわメイド喫茶」

 昼休み――

 文化祭2日目である今日は、午前中が”クラス展示”、午後が【トーソーモデルズ】とやら行われるらしい。そして先程、2Dのクラス展示であるメイド喫茶が無事終了したため、あとは昼食をとり午後の【トーソーモデルズ】だけだ。

「多分1位取れるじゃないか?」

「ああ恐らくな、どのクラスより客呼び込めたろあれは」

 最初はお一人様30分間という制約で行っていたのだが、途中余りにもお客の列が出来ていた為、お一人様10分に縮めるという事になった。そのお陰でスムーズにお客の回転が良くなったので、呼び込めた数もより多くなった。

「それに、絵里奈さんのメイド姿も拝めたしな・・・最高」

「・・・そう」

 メイド姿だった女子は既に制服に着替えていたが、未だ余韻に浸っている西条は全く関係ないらしい。その光景を頭の中で反芻しているのか分からないが、口元と目元がにやけた気持ち悪い顔になっている。
 未だにやけた顔のまま、ぐふふっと笑う西条を横目に、俺はそっとその場から離れた。

 ◇


「・・・思ったよりいっぱいあんのね」

 昼休みという事でお腹がすいた俺は、文化祭特有の”出し物”を”求め広場に出た。
 
 腹の足しになるようなものを探そうと思っていたのだが、案外店の種類が多くてびっくりした。ぱっと目に入るものでも、フランクフルトやフライドポテト、焼きそば、カレーなどなどオーソドックスなものがある。

 まぁ、適当に買って食べようかな。

「焼きそば一つ」

「はーい、待ってねぇ」

 恐らくPTAの女性だろう。バンダナを巻いて、まさしく主婦って感じな女性だ。

「はい、400円ね」

 既に手中に収めていた400円を渡す。
 プラスチックの容器に入った焼きそばを持ち、早速何処かで食べようと思っていた、その時。



「あら?武流君じゃない?」

「?・・・ッ」

「武流君よねぇ?久しぶりねぇ」

「・・・お久しぶりです。川添さん」

 祐樹の母・・・焼きそば作ってたのか・・・奥で焼きそばを作っていたから全然気づかなかった。

「3年ぶりくらいかしらぁ、こんなに大きくなっちゃてぇ」

「はは、ありがとうございます」

「あ、ごめんなさい。早く食べたいわよね。私が作ったから味は保証するわ」

「はい。それは知ってます」

 そんなの、

「フフフ、それもそうねぇ」

「・・・すみません」

 このタイミングでそれを言うのは、物凄く変なことだって、分かってる。

「・・・武流君、何度も言うようにあなたをこれっぽちも悪くないわ。の為にあなたが一番頑張ってくれたもの。感謝すれこそすれ咎める気持ちなんて全くないわ」

「・・・」

 それっきり奥に戻った祐樹の母。

「はぁ・・・」

 そう、言われてもなぁ・・・
 忘れていた不穏を思い出し、俺はまた、小さく溜息を吐いた。

 ◇


 あの後、フライドポテトとから揚げを買った俺は食べる場所を探し、丁度良いスポットのベンチを見つけたためそこで座って昼食を食べている。
 お、やっぱこの焼きそばうまい。流石だな。
 
 なんて呑気に考えていると

「申し訳ありません。この学校の方でしょうか?」

「あ、はい」

 焼きそばを食べている俺に声を掛けてきたのは、綺麗な女性だった。
 ショートボブの少し茶色がかった黒髪に、ぽつぽつと白髪が混じっている。ブロンド色の瞳は、俺を捉えて離さない。

「そうでしたか。一つ、聞きたいのですが、今日は文化祭なのでしょうか?」

「ええ、そうですが・・・」

 うん?文化祭と知らずに来たって事か・・・?普通そんなこと無いと思うけど。

「ああ、申し訳ありません。私の名前を名乗っておりませんでした」

 そっちの疑問じゃないんだけどね。

「私は唯蝶いちょう佳子と申します。以後、お見知りおきを」

 丁寧に名前を名乗る女性、唯蝶さん。さっきから分かってはいたが、この女性は俺みたいなガキにも物腰がとても低い。丁寧な話し方といい、その佇まいから品位が見て取れる。

「俺は芦田武流と言います。高校2年生です」

「芦田さん、ですね。教えていただき、ありがとうございました」

「あ、はい・・・」

 そう言って、もう一度礼をする唯蝶さん。そしてそのまま校舎の方へ杖をつきながら歩いて行った。

 一体何だったんだ・・・?

 多分、ここの学生の親なのだろうが、親が文化祭の日にちを知らないとも思えない。そして何より気になったのは、あの女性がとても異様な雰囲気を纏っていた事だ。言葉には言い表せない何か。
 だが、一つ言えるするならば、。申し訳ないが、あの女性からはそのような感じが伝わってきた。
 目の下の隈。ロングコート越しにも分かる、余りにも芯の細い体。血色の悪い顔。確かに美人だった。だが、とても幸薄そうな女性だった。杖をついていることから、足が悪いのだろう。
 
 だが一方で、俺の中では言いようがない既視感があった。どこかで似たものを見た気がしてならないのだ。
 あと少しで思い出せそうなんだけど・・・。あぁ、ダメだ。どうしても思い出せない。
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