ぼっちの俺にはラブコメは訪れないんですか?

最東 シカル

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第2章 ぼちお君、奮闘

第28話 嵐の前の・・・

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「さっきはごめんね・・」

「別に絵里奈が悪いわけじゃないよ。それに、誤解を解いてくれてたしね」

 バスケの試合を観戦していると、絵里奈が寄って来てそんな事を言ってきた。
 現在3時限目。別に、得意でも苦手でもない体育の時間である。サッカーは少しできるけど、今日はバスケだ。そしてずっとパスばっかり出していたら、案の定またクラスメイトに笑われた。何がツボなのかが全く分からん・・・

「・・・私たちの関係は美南達に言ってないよ」

「そうか」

「うん・・・目にゴミが入ったって誤魔化しておいた」

「そう」

 言っても何かが変わるような話でもないし、得する話でもない。ただ単に、困惑させるだけだ。くだらないいざこざに、友人を巻き込む訳にはいかないのだろう。ただ、目にゴミが入ったっていう言い訳はちょっと如何なものだろうか。



 ボールを突く音、クラスメイトのはしゃぎ声、先生の掛け声、色んな音が耳から耳へ通り抜けて行く。

「・・・」

「・・・」

「・・・ねぇ・・・や」

「えりっちー!!何してんのー試合始まるよー」

 絵里奈の言葉を遮る形で、ギャルっ娘こと神咲さんが大声で絵里奈を呼んだ。

「・・・・・またね」

「ああ、がんばれ」

「っ・・・」

 バスケを頑張れ、と受け取ったか、あるいは・・・・
 絵里奈は自分で成長するしかない。過去を振り切るのには勇気が伴うが、それをどう乗り越えるかだ。
 取り敢えず、頑張れ。

 ◇


―― 1週間後 ――
 

 朝のHR、先生のいつもと違う雰囲気の中話された内容に、皆固唾を飲んで耳を傾けていた。

「えっとー、なんだ、お前らはそんな事していないとは思うが、これは犯罪だ。いかなる理由があってもしてはいけないことだ。日頃から自分の行動を今一度、見直すように。はいっ、委員長号令」

「・・・起立、礼」

「・・・ありがとうございました」

 そして先生が教室から出た途端、生徒たちは一気にざわつき始めた。
 飢えたハイエナのように、新しく入荷されたそのネタに一目散に走る姿は、現代の日本を如実に表しているかのようだ。

「おいまじかっ誰だよ、退学した奴っ」

「誰だろ?」

「探しに行かね?」

「ガチ犯罪とか草(笑)」

 ・・・退学したか。

 先生は、今回の件の内容を掻い摘んで、しかし、重要な部分は抜き取りながら話した。名前や具体的な行為の内容を端折はしょり、ある生徒が犯罪行為を犯した、とだけ言った。

「おいおいまじか・・・犯罪ってことは刑務所か?」

 隣の西条が、動揺した様子で言ってくる。

「いや、刑務所に入るレベルの犯罪を犯したなら、そもそも俺達生徒に報告しないはずだし、もう既にマスコミに取り上げられているはずだ」

「そうか・・・」

 俺は内容の全貌を知っているからいいが、生徒たちは知らないので変な憶測を立てていきそうだな・・・
 そして何より一番不可解なのが、この件を生徒たちに教えたことだ。高校の退学レベルなら、一々生徒に報告しなくてもいいはずだし、学校の沽券にも大きく関わってくる。この報告には先生にとって不利な状況になると思うのだが・・・何か狙いがあるのかもしれん。

「でも一体誰なんだろうな?」

「さぁ」

 いずれバレる。あいつはイケメンで学校でもそこそこ顔の知れた人物だ。クラスから急に消えたらそりゃバレるに決まってる。それが分かってた上で先生たちは報告したのか。・・・分からん。


「あ、芦田君。今廊下歩いてたら那須先生に会ったんだけど、先生が昼休み理科準備室に来いだって・・」

 槻谷の退学の件について考えていたら、若山さんが伝言を伝えに来た。

「・・・そう」

 まさに今、俺の中での渦中の人物だ。聞きたいことは沢山あるが・・・

「・・・何か、あったんですか?」

「どうだろう。まぁでも、十中八九さっきの件でしょ」

「ですよね・・・」

 若山さんは今回の件を知る、数少ない人物の一人だ。気になるのも仕方ないか。

「若山さんも一緒に行かない?」

「えっ、わ、私もですか?」

「うん、若山さんも無関係じゃないしさ」

「・・・そう、ですね、お友達の古瀬さんの事ですもんねっ」

 おおっ、友達ができた若山さんはひと味違うな・・・・なんか成長した気がする。これがお友達効果か・・・・俺も欲しい。

「さっきから何の話してんだお前ら・・・?」

 訝しげな眼で問うてくる西条。小さな声で話していたから内容は聞こえてないはずだ。

「ただの世間話」

「な、なんでもないでしゅっ」

 その慌てようは逆に怪しまれる気がするよ若山さん・・・

「・・・やっぱりお前らできて「ない」

「・・・怪しい」

「だから変な解釈するな、若山さんが困るだろうが」

 ほんと、ようやく誤解が解けたってのに・・・ね、若山さん。

「・・・」

「・・・どした?」

「な、なんでもないです・・・」

「そう・・・」

 なんか上の空だったけど、大丈夫だろうか。今日の昼休みの事を考えて緊張してたのかもしれんな。こんなお呼ばれみたいな経験は彼女には少ないのだろう。緊張するのも分かる。

 ◇


 昼休みになったので、若山さんと一緒に理科準備室へ向かう。

「緊張してるの?」

「は、はい。すこし、ですが・・・」

「別に怒られに行くわけじゃないし、大丈夫でしょ」

「そ、そうですよね」

 確かに、別に悪いことしてないのに先生に呼ばれると少し委縮する。そんな感じだろう。陽キャと陰キャの関係みたいだ。



「2年D組の芦田です。那須先生に用事があって来ました。入ってもよろしいでしょうか?」

 理科準備室の扉をたたき、常套句を言う。

「ああ、入れ」

「失礼します」

 そう言って扉を開ける。

「・・・」

 
 ・・・・・・そうか。ここでその話し合いをするのか。

 理科準備室には那須先生以外に、既に先客がいた。

「古瀬さんも居たんですね」

「ええ・・・那須先生に呼ばれましたので・・・」

「そうですか」

 そしてもう一人、

「・・・」

 那須先生の横で俯きながら座っている、イケメンストーカー君こと槻谷である。
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