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第一章
閑話 女官長の心配事
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「女官長!王太子殿下がお部屋にいらっしゃいません!!」
私の元へかけてきたのは王太子殿下の側仕えの女官の1人であった。
「近衛兵達は何をしていたの?」
「それが……一瞬だけ…目を離してしまったみたいで…」
はぁ…殿下は最近ちょくちょくとどこかへ出かけている。この間も部屋を抜け出しある場所で見つかった。
「あれほど…勝手にいなく無くならないようお申し付けしたというのに」
「あの…それで殿下がどちらに行ったか心当たりは…」
「きっと第一魔法騎士団訓練場でしょう。申し訳ないけど念の為確認してきてくださるかしら?急にいなくなったとなると、安全面のため確認しなくてはならないの。」
「はい!わかりました!!」
案の定、訓練場にいたみたいだった。
理由は聞かずともわかっている。
私は女官長であり、殿下の側仕えではないが、こうして時々対処出来なくなった時に頼られるのだ。
王族の恋は苦労する。
詳しくは分からないが、それだけは知っている。
何せ私は陛下の側仕えをしていたからだ。
私の母は陛下の乳母であり、その縁もあって側仕えを任されていた。
陛下と王妃様が出会ったのは陛下が30近くなってからである。
それは本当に本当に苦労した。いい大人が何やってるんだと突っ込みたくなるほどに…
「殿下。私は前回の時もお願いしたはずですが…もうお忘れに?」
「すまない。だが仕方ないだろう。彼女の父上に許しを頂かねば近づくことさえ出来ぬのだから。」
殿下は謝るような素振りを見せるが、実際悪いとはあまり思っていないのだろう。何せ今回が5度目。
思わず溜め息がでる。
「出かけるにしても、手順を踏んでいただきたいのですが…さほど難しいことではないでしょう。前迄は殿下はそのようなことをするお方ではなかったと、この私は自負しています。」
「はぁ…アウラー。お前たちがうるさいからだろう。」
殿下は前は勉学に励み、陛下から請け負った仕事も溜めず、その日のうちに精算していた。
王妃様からのブティックの件も毎回必ず呼ばれればきちんと来ていた。
「それは、殿下が陛下からの請け負いはギリギリにまで回し、王妃様とのお約束を破られるからでございます。」
「父上の仕事はきちんと期限には出しているだろう。母上は……まぁ、私がいなくたって何とかなるだろう。しかも母上の店の件は女物の店だ。男の私がどうこう口出す話ではだな…」
「いいえ、期限に間に合っていたとしても、何か問題がございましたらどうするおつもりですか?余裕を持ち提出すべきなのでございます。それと女物とは言いますが、男性の意見もとても貴重なのでございますよ。」
私が言う度に少しずつたじろいでいく殿下はやはり年相応の子供である。
「もういい。今回の件は私の責任だ。アウラーが言うようにきちんと手順を踏んでからにするよ。」
「それは何よりでございます。それと、本日も王妃様よりお店の件で用事があるのでこちらに来るようにとお伝えするよう仰せつかっております。」
殿下は溜息をつき項垂れる。目頭に手を当てぐりぐりと手を押し付けていた。
「もういい。わかった。下がってくれ。」
「畏まりました。失礼致します。」
殿下の部屋を出ると、先程私の方へ報告に来てくれた女官が立っていた。
「すみません。女官長のお手を煩わせてしまって…」
「いいのよ。陛下の時とさほど変わらないわ。」
「陛下とですか……?」
「えぇ…本当に親子そっくりだわ。では、私は残っている仕事を片付けるので、ここはよろしくね。」
「はい!ありがとうございました。」
私ももう、60近くであり結構な歳である。
女官長としては10年近く務めていて、引退もそろそろ近そうだ。けれど、今の殿下を見ていたら、引退は出来そうにない。
子供のいない私にとって失礼に当たるが殿下はまるで自分の子供のよう。
陛下の時のようにならなければいいのだけれど…
まだまだ、私の心配事は耐えない。
私の元へかけてきたのは王太子殿下の側仕えの女官の1人であった。
「近衛兵達は何をしていたの?」
「それが……一瞬だけ…目を離してしまったみたいで…」
はぁ…殿下は最近ちょくちょくとどこかへ出かけている。この間も部屋を抜け出しある場所で見つかった。
「あれほど…勝手にいなく無くならないようお申し付けしたというのに」
「あの…それで殿下がどちらに行ったか心当たりは…」
「きっと第一魔法騎士団訓練場でしょう。申し訳ないけど念の為確認してきてくださるかしら?急にいなくなったとなると、安全面のため確認しなくてはならないの。」
「はい!わかりました!!」
案の定、訓練場にいたみたいだった。
理由は聞かずともわかっている。
私は女官長であり、殿下の側仕えではないが、こうして時々対処出来なくなった時に頼られるのだ。
王族の恋は苦労する。
詳しくは分からないが、それだけは知っている。
何せ私は陛下の側仕えをしていたからだ。
私の母は陛下の乳母であり、その縁もあって側仕えを任されていた。
陛下と王妃様が出会ったのは陛下が30近くなってからである。
それは本当に本当に苦労した。いい大人が何やってるんだと突っ込みたくなるほどに…
「殿下。私は前回の時もお願いしたはずですが…もうお忘れに?」
「すまない。だが仕方ないだろう。彼女の父上に許しを頂かねば近づくことさえ出来ぬのだから。」
殿下は謝るような素振りを見せるが、実際悪いとはあまり思っていないのだろう。何せ今回が5度目。
思わず溜め息がでる。
「出かけるにしても、手順を踏んでいただきたいのですが…さほど難しいことではないでしょう。前迄は殿下はそのようなことをするお方ではなかったと、この私は自負しています。」
「はぁ…アウラー。お前たちがうるさいからだろう。」
殿下は前は勉学に励み、陛下から請け負った仕事も溜めず、その日のうちに精算していた。
王妃様からのブティックの件も毎回必ず呼ばれればきちんと来ていた。
「それは、殿下が陛下からの請け負いはギリギリにまで回し、王妃様とのお約束を破られるからでございます。」
「父上の仕事はきちんと期限には出しているだろう。母上は……まぁ、私がいなくたって何とかなるだろう。しかも母上の店の件は女物の店だ。男の私がどうこう口出す話ではだな…」
「いいえ、期限に間に合っていたとしても、何か問題がございましたらどうするおつもりですか?余裕を持ち提出すべきなのでございます。それと女物とは言いますが、男性の意見もとても貴重なのでございますよ。」
私が言う度に少しずつたじろいでいく殿下はやはり年相応の子供である。
「もういい。今回の件は私の責任だ。アウラーが言うようにきちんと手順を踏んでからにするよ。」
「それは何よりでございます。それと、本日も王妃様よりお店の件で用事があるのでこちらに来るようにとお伝えするよう仰せつかっております。」
殿下は溜息をつき項垂れる。目頭に手を当てぐりぐりと手を押し付けていた。
「もういい。わかった。下がってくれ。」
「畏まりました。失礼致します。」
殿下の部屋を出ると、先程私の方へ報告に来てくれた女官が立っていた。
「すみません。女官長のお手を煩わせてしまって…」
「いいのよ。陛下の時とさほど変わらないわ。」
「陛下とですか……?」
「えぇ…本当に親子そっくりだわ。では、私は残っている仕事を片付けるので、ここはよろしくね。」
「はい!ありがとうございました。」
私ももう、60近くであり結構な歳である。
女官長としては10年近く務めていて、引退もそろそろ近そうだ。けれど、今の殿下を見ていたら、引退は出来そうにない。
子供のいない私にとって失礼に当たるが殿下はまるで自分の子供のよう。
陛下の時のようにならなければいいのだけれど…
まだまだ、私の心配事は耐えない。
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