愛されなかった少女は溺愛王太子についていけない

小端咲葉

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第二章

37.迫られる決断 -侯爵閣下視点-

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剣の鉄が響く音が森の中に響き渡る。

人数的には有利なはずだが、何故か魔法が上手く働かず劣勢な状況が続いていた。

「くそっ。」

いつになく、苦しげな声を吐き出すのはマイルだ。

《 団長どうしますか?》
《 聖獣様の状態は?》
《怪我をしているようだがここからでは上手く判断的ない》


「うわっ」

目の前のやつとの剣の混じり合う音と共にアンドレイクの声がきこえた。
その声に気を取られ、地面に生えた蔓に足を取られてしまったが、なんとか振りかぶられた剣を避けることができた。
そのまま背後に周り相手を切りつける。深くは入らず、致命傷とまでは行かなかったが、返り血が飛び散ったことにより、ある程度の傷を相手に与えられたと判断する。

その判断通り相手は体制を崩す。黒いローブには、深い黒いしみができていた。

「団長…」

アンドレイクの声がする方に振り向く。
視界に入ったのはアンドレイクの喉元に触れるか触れないかの状態で後ろから拘束されている姿だった。アンドレイクは入団したばかりのため実力は騎士団ではきっと下位の方であろう。けれど騎士団に入るにはそれ相応の実力者でないと入れはしない。そしてここにいる5人は、少なくとも私が信頼を置いている。

黒い奴らは相当の実力者なのかもしれない。

「動かないでもらおうか…」

黒いローブに付属しているフードを被った者がずっしりとした重みのある声を発する。
声からでさえ禍々しい存在感を伝えてくる。

「くそっ。全員動くな。」

剣を持たない左手を広げ、仲間全員を静止させるように声を上げた。

「……パッフェルトの国のものか。」

アンドレイクを拘束している黒い奴は、静かに口を開く。剣に刻まれたパッフェルトの騎士団の紋章に目をやっている。

「あぁ…そういうお前達は一体何者だ…」

言葉を交わしながら、周りに神経を巡らせる。
隊員達は全員きちんと戦闘態勢になりつつも私の指示通りに静止していた。
しかし、無情なことにも聖獣の腹の上下の動きがないことから息絶えているのがわかる。

くそっ………

聖獣を救えなかった上に隊員を人質に取られるという最悪の判断ミスを犯したのは明白だった。


……………っ!


この最悪な状態の中、周りに張り巡らせていた魔力に、ここにいる連中とは別の魔力反応が近づいてきた。誰かはわからぬが、パッフェルトに所属騎士ではないことは、反応からもこの状況からも明確にわかる。

さらに最悪の状況に陥り、為す術もないかと思われた時だった。

「ぐは………っ」


苦痛の声とともに倒れたのはアンドレイクを拘束していた黒いローブの1人だった。
何事かと見ていれば、黒いローブの奴らは次々と倒れいった。どうやら気絶しているようで、死んではいないようだ。

「何者だ。」

気絶した奴らの後ろには騎士と思われる格好の男性達が10人程立っていた。

どうやら我々が向き合ってお互いに集中しあっているところを不意を着いたらしい。奴らも不意の攻撃には対応しきれなかったようだ。

「我々は、パッフェルト王国第一魔法騎士団だ。そちらは?」

パッフェルト王国の紋章と第一魔法騎士団の紋章が入った剣を相手にかざす。

「こちらは、スルビアナ王国第三騎士団だ。陛下からパッフェルト王国の騎士団については報告が来ている。怪我はないか?」

そう言って第三騎士団の団長とも思われる人物が私と同じように剣に入った紋章をかざす。

スルビアナ王国の騎士団は、対応する事件や事故で部署が別れている。
今回こちらにいる第三騎士団は他国間で起こった事件や自国の魔法による事件、事故を担当しており、その他第一騎士団は主にスルビアナ王国の王族の護衛や王宮内の警備であり、第二騎士団は王都やスルビアナ王国に属する街の警備や市民のいざこざなどを対応している。
故にこの第三騎士団は、スルビアナ王国内で1番自由に動ける部隊と言われている。

「ああ。大丈夫だ、助かった。ありがとう。第一魔法騎士団団長ルードヴィッヒだ。」

手を差し出すと、相手は私の手を握った。

「それは良かった。第三騎士団団長モルガンだ。我国のための協力に感謝するよ。」

 手を離すと、気絶している黒い奴に近づく。

「気にしないでくれ。それよりこいつらだ。」
「それなんだが、そちらには悪いが、こっちに預けてくれないか。まだ確証や証拠がなく名前も言えぬが、どうやらこちらの高位貴族が関わってそうでね 。そちらを巻き込んでしまったのに申し訳ない。」

会話を続けながら、黒いローブのフードをそっと外そうとちらりと見た。

「いや、いいさ。わかった。そちらに任せよう。……だが、なにかそいつらの情報を得たら、こちらにも情報をくれないか。どうやらそちらだけの問題でもなさそうでな。」
「もちろんだ、ありがとう。そちらの協力を無下にはしないと約束しよう。あとはどうする?スルビアナへ寄っていくか?」
「いや、こちらはパッフェルトに帰ろう。陛下にも報告しないと行けないしな。」

そう報告しなければいけない。

奴らの顔と頬の印を……

「わかった。帰路の無事を。」
「ありがとう。そちらも。」

お互いの健闘を祈り、パッフェルト王国に帰ることにした。



______________________________

後書き

お久しぶりです。
長く開けてしまいすみません。

これからも不定期ですが
ご了承くださいませ( ᵕ̩̩ㅅᵕ̩̩ )
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