愛されなかった少女は溺愛王太子についていけない

小端咲葉

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第二章

35.令嬢達の花園

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「リリアナ様、トリードル伯爵令嬢よりお茶会のご招待状が届いております。」

招待状らしき綺麗な真っ白な手紙を片手にニケが私室へと入ってきた。いつの間にか隣で会話していたノアはどこかへと消えている。

トリードル伯爵令嬢はアルに片想いをしていた令嬢だった。
私はずっと嫌われていると思っていた。いや、確かに嫌われているはずだ。彼女からの視線は好む相手へ送るものではなかったのだから。

「あ……」

確かに招待状はトリードル伯爵令嬢からだった。

「アリア・メル・トリードル……」

トリードル伯爵家の長女からだった。トリードル伯爵家は王家の信頼が厚かった家柄

王妃様のお茶会で少しだけ言葉を交わした程度だったけれど、こうして律儀に招待状を送ってくれたのだろうか。そのほんの僅かな会話だけれど、彼女はとても優しい人という印象が強かった。そんな人柄が滲み出ていた。このような人がアルにふさわしいのではないかとも思った程だ。

そんな彼女からの招待ならばと参加するとの返事を出した。

________________________________________

「お待ちしておりましたわ。リリアナ様。」
「ご招待頂きありがとうございます。」

腰から膨らんだドレスを少しだけつまみ挨拶をする。目の前にいるアリア様は濃いめのストロベリーブロンドの髪を風に靡かせながら、綺麗な琥珀色の目を細め、歓迎してくれた。


お茶会までの日はとても早かった。何せ返事を送ってから3日後の開催であったからだ。


お茶会にはアリア様と私を含め5人のご令嬢達が優雅に楕円形のテーブルを囲い紅茶と洋菓子を嗜んでいた。
クレア様は参加されてないようだった。

話の内容は主に趣味の話や社交界の噂話や少しの愚痴大会といった形だ。社交界の噂話は実際に社交界デビューは15からなので誰一人デビューはしていないため、自身の親達から聞いた話である。

「リリアナ様、どうかされましたか?」
「そうですわ。先程からあまり話に参加されていませんでしたし……」

アリア様の言葉に続いたのは、淡い橙色の髪と同じ色の瞳を持ったカタリナ様だった。

「申し訳ございません。お気になさらないでください。お恥ずかしながらあまり誰かとお話するのは得意ではありませんので、皆様にご心配をお掛けしてしまいましたわ。」

素直に言って置くのが一番である。
他にどう返事をしたらいいのか分からないからというのもあるが、前世から人と会話をするというのを避けてきたせいでもある。

お茶会にくるべきではなかったかもしれない。
けれど、せっかくのお誘いを無下にするにも嫌だった。

「可愛いですわっ!」

私の言葉に反応したのは、カタリナ様の横に座っていたシェイラ様だった。

「ふふ、噂には聞いていましだが、本当に可愛らしい方ですのね。カタリナ様今の見ておりましたか?リリアナ様ったら頬を赤く染めて微笑むだなんて……」
「えぇ、見ましたとも。アリア様にリリアナ様も招待してはと言ったかいがありましたわ。」

どうやら、私を招待状が送られてきたのはカタリナ様がアリア様に頼んだものらしい。

「私、リリアナ様に初めてお会いしたけれど、カタリナお姉様のおっしゃる通り可愛らしい方ですのね!!」

私の隣に座ったドロシー様だった。ドロシー様は私と同じ年齢である。


「あの…その……」

ドロシー様以外の参加者は年齢差もあり私よりもだいぶ背が高く自然と上目遣いになってしまう。

「そうだわ。私、妹が欲しかったの。リリアナ様良ければ私のことをお姉様と呼んで下さらない?」
「それは、ずるいですわ。リリアナ様、私のこともお姉様と。」
「それならば私もっ!!」

シェイラ様が身を乗り出すようにするとそれに負けじとカタリナ様とドロシー様もこちらに身体を向けてくる。

「あら、ドロシーは同じ歳でしょう?」

カタリナ様の躊躇のない突っ込みに仲の良さが伺える。

「むー…それならドロシーと呼んで欲しいですわ!様はいりません!!他のお姉様方も私のことをドロシーと呼びますし!!どうかしら?」

カタリナ様に向かって頬を膨らませたドロシー様は随分と可愛らしかった。

「ふふふふ。」

思わず笑ってしまった。別に全員を怖い人たちだと思っていた訳では無いが、少し身を強ばらせていたのは事実だ。本当に暖かい人達だった。優しかった。自然と心も身体も解れていく。

「もちろんです。シェイラお姉様。カタリナお姉様。ドロシー。」

彼女達の名前を呼び、頬緩め微笑んだ。
それと同時に他の方々も頬を緩ませ赤らめていた。

「______っ!」
「可愛いですわ…」
「うぅ……っ!」

カタリナ様とシェイラ様はお互いの手を握りあって口をはくはくと動かし、ドロシー様は口許に両手を当て、顔を赤くしぷるぷると小刻みに震えている。

「リリアナ様、ゆっくりと慣れていけばいいのですわ。私もリリアナ様のお年くらいの頃は人見知りが激しく喋れませんでしたもの。……それと、私のこともお姉様と……呼んで下さるかしら…?」

アリア様は少し恥ずかしそうに口許を隠し頬を赤らめていた。

前世ではこんなに優しい人達には出会えなかった。
こんな人達に出会えてたらもっと素敵な人生が送れていたのではないだろうか。
類は友を呼ぶという諺があるけれど本当みたい。

「はい!アリアお姉様!!」

このお茶会に参加して本当に良かったと思った。
少し涙が出そうになったのは秘密である。

その後に話はより弾み、私も会話の中に少しずつ入っていった。時間など忘れ、私に友達という存在が一気に4人増えたのだ。


彼女達との出会いはきっと一生宝物になる。



___________________________________________

後書き


遅くなり申し訳ございません。
定期試験が終わり順々に更新していきます。
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