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―――戻れた。
戻って、これた。
そう実感したら、ガクガクと足が震えた。
―――ああ、自分で思っていた以上に怖かったっぽい。正直、もう戻ってこれなくなるんじゃないかって思ったから、メチャクチャ怖かった。
「! ―――岩本さん? 戻ったの?」
小刻みに震え始めたあたしの違和感に喜多川くんが気付いて、そう言いながらあたしの顔を覗き込んだ。
「……あ、ごめん! 勝手に触ったりして―――」
慌てた様子で、遅まきながらあたしの頭から手をどかした彼にあたしは首を振って、その顔を見、涙腺を決壊させながら、震える声で訴えた。
「うっ、うう~……怖かった……、怖かったよー……! うわーん……!」
ボロボロ、ボロボロ涙が溢れて、止まらない。身体の震えも、心臓の動悸も治まらない。目の前の喜多川くんの姿も、あっという間に涙で霞んでよく見えなくなってしまった。
「そうだよね、怖かったよね……」
霞む視界の向こうから喜多川くんが慰めの声をかけてくれるけど、ひっくひっく止まらない自分の嗚咽にかき消されて、よく聞き取れない。
―――ノラオ共々面倒臭いヤツで、ごめんね。
喜多川くんがあたしの為にノラオに色々言ってくれてたの、ちゃんと聞いていたよ。スゴくスゴく、嬉しかったよ。ありがとう、言葉に出来ないくらい感謝しているよ。
本当はまずそうお礼を言いたいのに、涙も震えも止まらなくて―――ダメダメでごめんね。悪いけど落ち着くまで、もう少しだけ待って―――。
「……ごめんね。オレ口下手だし、ノラオにも言われちゃったけど気が利かないから―――こういう時、どういう言葉をかけたらいいのか、どうするのが正解なのか、分からなくて―――」
そんなことないよ。喜多川くんは充分すぎるくらい気が利くし、たくさん嬉しいこと言ってくれているよ。
単に、あたしがダメダメなだけで―――。
泣きながらかぶりを振るあたしに一歩歩み寄った彼は、少しためらいがちに、でも意を決したように口を開いた。
「不快だったら、すぐ言って。やめるから―――」
喜多川くんの気配がまた少し近付いた、と思ったら、背中に控え目な手が回って、そのまま軽く手前に引き寄せられた。額がとん、と彼の胸に当たって、抱き寄せられているような格好になり、あたしは小さく息を飲んで、涙に濡れた瞳を見開いた。
ビックリした。
それが正直な感想だ。
けれど、それ以上に嬉しかった。
あたしはおずおずと手を伸ばし、彼の腹部の辺りのシャツを緩く握り込むようにして、胸を貸してくれるその厚意を受け入れる姿勢を示した。
自分とは違う体温がそっと包み込んでくれる安心感―――喜多川くんの匂いに包まれて目を閉じていると、少しずつ震えが治まっていって、心が落ち着きを取り戻していくのが分かった。
―――多分これ、大正解だよ、喜多川くん。
まだ涙は止まらなかったけど、気持ちがぽかぽか温かい。
一人じゃないんだって、寄り添って支えてくれる人がいるんだって、全身で感じることが出来る。
こんなの、不快なワケがない。
むしろ、最高だよ―――。
戻って、これた。
そう実感したら、ガクガクと足が震えた。
―――ああ、自分で思っていた以上に怖かったっぽい。正直、もう戻ってこれなくなるんじゃないかって思ったから、メチャクチャ怖かった。
「! ―――岩本さん? 戻ったの?」
小刻みに震え始めたあたしの違和感に喜多川くんが気付いて、そう言いながらあたしの顔を覗き込んだ。
「……あ、ごめん! 勝手に触ったりして―――」
慌てた様子で、遅まきながらあたしの頭から手をどかした彼にあたしは首を振って、その顔を見、涙腺を決壊させながら、震える声で訴えた。
「うっ、うう~……怖かった……、怖かったよー……! うわーん……!」
ボロボロ、ボロボロ涙が溢れて、止まらない。身体の震えも、心臓の動悸も治まらない。目の前の喜多川くんの姿も、あっという間に涙で霞んでよく見えなくなってしまった。
「そうだよね、怖かったよね……」
霞む視界の向こうから喜多川くんが慰めの声をかけてくれるけど、ひっくひっく止まらない自分の嗚咽にかき消されて、よく聞き取れない。
―――ノラオ共々面倒臭いヤツで、ごめんね。
喜多川くんがあたしの為にノラオに色々言ってくれてたの、ちゃんと聞いていたよ。スゴくスゴく、嬉しかったよ。ありがとう、言葉に出来ないくらい感謝しているよ。
本当はまずそうお礼を言いたいのに、涙も震えも止まらなくて―――ダメダメでごめんね。悪いけど落ち着くまで、もう少しだけ待って―――。
「……ごめんね。オレ口下手だし、ノラオにも言われちゃったけど気が利かないから―――こういう時、どういう言葉をかけたらいいのか、どうするのが正解なのか、分からなくて―――」
そんなことないよ。喜多川くんは充分すぎるくらい気が利くし、たくさん嬉しいこと言ってくれているよ。
単に、あたしがダメダメなだけで―――。
泣きながらかぶりを振るあたしに一歩歩み寄った彼は、少しためらいがちに、でも意を決したように口を開いた。
「不快だったら、すぐ言って。やめるから―――」
喜多川くんの気配がまた少し近付いた、と思ったら、背中に控え目な手が回って、そのまま軽く手前に引き寄せられた。額がとん、と彼の胸に当たって、抱き寄せられているような格好になり、あたしは小さく息を飲んで、涙に濡れた瞳を見開いた。
ビックリした。
それが正直な感想だ。
けれど、それ以上に嬉しかった。
あたしはおずおずと手を伸ばし、彼の腹部の辺りのシャツを緩く握り込むようにして、胸を貸してくれるその厚意を受け入れる姿勢を示した。
自分とは違う体温がそっと包み込んでくれる安心感―――喜多川くんの匂いに包まれて目を閉じていると、少しずつ震えが治まっていって、心が落ち着きを取り戻していくのが分かった。
―――多分これ、大正解だよ、喜多川くん。
まだ涙は止まらなかったけど、気持ちがぽかぽか温かい。
一人じゃないんだって、寄り添って支えてくれる人がいるんだって、全身で感じることが出来る。
こんなの、不快なワケがない。
むしろ、最高だよ―――。
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