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19.侵食されている
そんなことをされたら、確実に心が壊れてしまう。今すぐ舌を噛み切ってでも、死んだ方がマシになっちまう。だから拒否したのに、神崎は淡々と話してくる。
「こんなに淫乱になっているなら、バイブでも人間のペニスでも、たいして変わらないでしょう。むしろ弘樹さんの場合、何人もの男に無理矢理犯されてなじられた方が、興奮して快楽を得そうなものです」
神崎がジーパンからスマホを出した瞬間、ぶわっと涙が溢れた。
どれだけ酷いことをされても耐えられたのは、相手が神崎だからだ。命を賭けたギャンブルで俺を負かし、しかも死ぬはずだった命を救ってくれたから。それにどれだけみっともない姿を晒しても、心から馬鹿にしてくることも、貶してくることもない。
何より俺にとって神崎は、ギャンブラーとして畏怖している人物である。だからまだ耐えられた。
だが神崎以外の人間にこんな姿を見られたら……そう考えるだけで、屈辱を通り越して死にたくなる。
「ゆ、許してくれ……それだけは。誰かに、犯されるのだけは……い、嫌だ……っ」
「ですが、我慢出来無いのでしょう?」
「するっ、するから。……だからっ」
必死に訴えたのが通じたのか、神崎はわかりましたと呟いて、スマホを戻してくれた。ホッとして涙が零れていく。ヒクヒクとしゃくり上げてしまう。
良かった。神崎がわかったと言ってくれるなら、絶対に誰かを呼ぶことはない。そう信頼出来るくらいには、この男を見てきている。
「ふ……、んん……ん、ん……ぅ?」
熱に侵されながらグズグズ泣いていると、神崎は背中で拘束している鎖を外してくれた。自由にしてくれたことに疑問に思いながらも、風呂マットにどうにか手を付く。肩が変な感じだ。でもそれ以上に、身体が熱い。
ぼんやりしていたら、いつものように手錠の片方を、風呂の手すりに付けられた。
「弘樹さん、お風呂に入りましょうか。身体を洗ってあげます」
抱き上げられると、神崎はズボンが濡れるのも構わず浴室に足を入れて、浴槽に俺を下ろした。開かれている胎内に湯が入ってきて、気持ち良さに震えてしまう。
「はう……ん、んっ……あう……」
「お腹は大丈夫ですか? 先程のように奥まで無理矢理入れるわけではないので、腹痛になることはないと思いますが。もし出したくなったら、教えてくださいね。そうすれば抱き上げますので」
そんなことを言いながら、いつものようにシャワーで髪を濡らされながら、頭を揉まれる。
両手が自由になっても、胎内の金具を抜くことはしなかった。抜いたら、誰かを呼ばれてしまう。でも言われたとおり我慢していれば、きっといつもみたいに優しくしてくれる。だから勃起しているチンコを弄ることすらせずに、じっと耐え続けた。
「はっ……、う……んん」
風呂から上がり、部屋に戻ってから、1時間以上が経過していた。何度も浅い呼吸を繰り返しながら、壁に掛かっている時計が1秒1秒刻んでいくのを見つめる。
いつものように全裸だし手錠で繋がれているけど、両足には包帯が巻かれていた。きちんと手当てしてくれたのだ。しかし風呂場からずっと、金具は入れられたままである。いまだ媚薬も切れてくれず、熱がぐるぐると全身を回り続けていて、どうしても震えるし喘ぎも漏れてしまう。
ただ、ここに初めて来た時のように独りで放置されているわけではなく、すぐそこに神崎がいた。
外気に触れて乾いてしまいそうになるアナルに、何度かローションを塗ってくれたり。チンコを時々弄ってくれて、射精するとタオルで拭いてくれる。熱に浮かされてぐずぐず泣いていると、頭を撫でてあやしてくれる。
こんなことを強制しているのが神崎自身だというのに、側にいてくれるだけで安心しちまうなんて。ああ、こんなにも俺は、神崎に侵食されている。
……どうしても認めたくなくて目を背けていたけど、心の片隅では気付いていたこと。もしこれからも、快感に溺れながら神崎と生活していくとしても、きっと悪い日々ではないんだろうと。
神崎に買われる前だって、褒められた生活を送っていたわけじゃない。まともに働いてないし、ギャンブルしている以外の時間は、煙草を吸ってるかスマホを触っているか、パチンコの椅子に座りながらぼんやりしていることが多かった。そんなクズみたいな生活だった。
ならば外界から遮断されて人間らしくない生活を強いられ、毎日喘いでいる生活であろうと、たいして変わらないんじゃないか? むしろ生きるのが楽になるかもしれない。
そして俺がそんなふうになったとしても、神崎はきっと許してくれる。快感に溺れているうちに、いつしか精神がおかしくなり、人間としての普通の生活というものを忘れる日が来るかもしれない。それでもきっと、神崎は傍にいてくれる。
『だが、だからこそ貴方の精神を、粉々に壊してみたくなったんです。理不尽な苦痛を与えられ続けて、必死に抗い続けて……いつしか耐えられず、死を望む瞬間が来るのであれば、見てみたい』
『さぁ、長いギャンブルの始まりです。弘樹さん、貴方はどこまで抗い続けられるのでしょうね。これから始まる、果てなき生き地獄に。せいぜい、愉しませてくださいね?』
果てなき生き地獄。
確かにそのとおりだ。ぬるま湯のような生活から抵抗し続けると永遠につらく、受け入れたら人として生きることを忘れていくなんて。
だがそうして俺という自我が消えた時、神崎はこのギャンブルに勝つのだ。そして彼は――そう、無敗の天才なのである。
「んあ……は、ぅ……ん……ぁ、ん」
「ふふ、可愛いですね」
頬を優しく撫でてくる手を取り、握る。そうして掌を合わせたり、指を絡めたり、握ったり。熱くて、熱くて。とにかくぐるぐる回っている熱から少しでも意識を遠ざけたくて、神崎の手にじゃれ付く。
それからまたしばらく経つと、神崎がポツリと呟いた。
「そろそろ2時間経ちますね」
「ぁ……」
ようやくこの苦痛から開放される。そう期待を込めて、神崎を見上げる。すると。
「まだ耐えられるようですし、もう1時間我慢してみましょうか?」
「やっ、な、なんでっ……」
ずっと我慢してきたのに、ようやく終わったと思ったとたん、また我慢しろなんて酷すぎる。そんなの出来るわけがないのに。
しかし彼は微笑を浮かべたまま、こともなげに言ってくる。
「無理ですか? 無理ならば人を呼びましょうか」
「や……やだ、それはっ、やだ……っ」
「では、我慢出来る?」
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