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第三部 小さな国の人質王子は大陸の英雄になる
第321話 戦いが始まる
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「・・・ぐっ。いっつ」
腹を押さえたセンシーノの傷口が痛み出した。
「セン。そういや、お前。銃弾」
「ええ。まだあります」
「クソ。医療道具があれば・・・」
ジュードがセンシーノの様子を見ていると、光が現れた。
レベッカの影から現れたのである。
「いやいや、ここは厳しいですね。私は次世代を見守る側でしたが、さすがに医療となると必要でしょう」
「だ、誰だ・・・」
ジュードは知らない人間に驚くが、レベッカの手を握っているレオナは気付いた。
「あ。タイローさん」
「ええ。あなたに何かあったら、お守りする予定でしたが、ここで私が出ましょうかね。これからの戦い。センシーノ殿は重要な方です。あなたにとっても、この国にとってもね」
医療知識のあるタイローが、ここで参戦となった。
「どれ。センシーノ殿。見せてください」
「あ、あなたは?」
「私は、アーリア十三騎士の一家。スカラ家のタイローです。まあ、この役職よりも、私の誇りは、アーリア王の盟友ですね」
貴族の名よりも、アーリア王の友。
こちらの方がしっくり来る。
タイローの想いは、フュンの友であることだ。
「友人ですか・・・なるほど。配下ではなくか」
センシーノはその思いをすぐに理解した。
なぜなら、センシーノの祖父リカルドも、ジャックスの友であるからだ。
王と家臣じゃなくて、戦友同士。その関係性が素敵である事をよく知っている。
「では、失礼しますよ皇子」
傷口を見たタイローは、即座に判断。
「これは大丈夫です。治せますね。撃たれてはいますが、致命傷じゃない。素晴らしい剣技だ。致命傷を避けるように動きましたね。では、みなさんは作戦を練っていてください。少々治療に時間をもらいます」
今ある道具で完治は可能。
タイローは、センシーノの治療に取り掛かった。
「わかりました。私たちは話し合いましょう。良い案を持って、これからを進みます」
ここに来て、レオナが立ち直ったのが大きい。
全体のバランスが良くなったのだ。
これが彼女の力。調整力だった。
話し合いは、次々と良案が出てきて、最終案が決定する。
◇
レオナの下した判断は、ノスタールで線を引くであった。
ここジャンバルドは放棄して、防衛に入らずに、ノスタールにて、兵士を集合させる。
ビクストン地域の兵士たちも終結させることも決めていた。
それはウーゴ王の進撃が上手くいっていて、連携関係が出来ているので、背後が敵となっていないからだ。
フュンからの連絡のおかげであった。
ウーゴの元にはフュンの手紙があり。
『もしも、ルヴァン大陸が戦時状態になった場合。
ウーゴ君が支援するのはレオナ姫にしてください。
彼女がオスロ帝国の皇帝になるべきだからです。
それに僕は、マリアさんの支援に入っているので、こうなるとちょうどいいです。
あなたは今の彼女を支えて、あとで彼女に支えられてください。
相互で協力し合う。これが理想の世界ですよ。
それと兵を出せそうなら逆に援軍を出してあげて下さい。
まあ、それはサイリン家の動き次第で良いですよ。
基本は自国の為に動きましょう』
という連絡があった。
だから、彼女らは防衛を基準に動いて、来るべきタイミングで、前へ出る選択をした。
それは、ギーロン。ルスバニアも動いてくれることが確約されているから、急いでの攻撃に出なくてもいいからだった。
勝てる機会を見逃さない。
むしろ勝てる機会を作り出す。
積極的防衛戦術を取る気だった。
「では、引きましょう。センシーノの傷が良くなった時に・・・」
「いいえ。それはいけない。この処置が終わったらでいいです。姉上」
「センシーノ?」
「急ぎましょう。俺一人の傷よりも、全体が素早く防衛行動に入った方がいい」
「・・・わかりました。そうしましょう」
いつもは緩いセンシーノが真剣。
だから、レオナは彼の意思を尊重した。
引く時は速やかに引く。
兵法通りの展開で、彼らは大移動を果たす。
◇
アーリア歴7年1月15日。
ロビンは、たったの二週間で、王宮内を掌握した。
事前に内部にも味方を作っていた事も、この電光石火の掌握劇に繋がっていたが、それだけじゃなくて、マチルダやテルトなどの重臣たちや、レオナを応援していた者。
その他の派閥に所属していた要人たちなどが軒並みいなくなっていたことで、内部を容易に掌握できたという事が大きい。
それにレックスを手に入れているので、軍部も独り占め状態だった。
ジュード。エレンラージ。
双方がいないので、最大権限はレックスとなっていた。
大将軍のレックスが、ロビンを支援する形となっているから、軍部のほとんどが残る形となる。
それが一番手痛い。
彼の強さは、強烈であるのに、その他の将たちも残るのであれば、二人の大将軍が抜けたとしても、戦力ダウンはそれほどないのだ。
そして、ロビンが第一に狙ったのが・・・・。
◇
アーリア歴7年1月28日。
ギーロン王国誕生からずっと見守っていると言われている霊峰ハザン。
監視所から兵を見下ろすメイファは、優雅な雰囲気を醸し出しながら笑顔になる。
「あら。こちらに来るのが早いと見える。この速度でです。じゃあ、ここが一番でしょうね」
秘密の小屋にある無線を取り出した。
「こちらに来たわ。聞こえるお嬢さん」
「はいでありんす」
無線相手は、レイ。
彼女は王都ニャルコメルで連絡をもらう。
ギーロン王国は、西と北の海岸線も、山に囲まれている。
この霊峰ハザンが南東にあるので、山がないのは、南と東となっていた。
平坦な場所からしか侵入が出来ない難しい地域。
ここを落とせたジャックスは、軍事的センスがあった。
「お嬢さん。この国も戦う時は旗を使用するのよね」
「はい。そうでありんす。鳳凰の旗でありんすか?」
「いいえ。違うわね。あれは、獅子でしたわ」
メイファが見たのは、獅子の旗だった。
レイが鳳凰を気にしているのには理由がある。
「それは、ジュード兄様の軍でありんす」
「なるほど。獅子はジュード皇子ですのね。じゃあ、エレンラージ殿は、何の旗でしたの?」
「大将軍は、蛇でありんす」
「蛇・・・なるほどね。たしかに、エレンラージ殿にピッタリですわ」
エレンラージの印象通りだと、メイファは笑った。
搦め手のエレン。
不死鳥のレックス。
獅子奮迅のジュード。
三大将軍はこのように呼ばれている。
「しかし。ジュード皇子がいないのに、ジュード皇子の軍をこちらに出す・・・どういう展開でしょうかね」
「そこは、わからないでありんす。しかし、兄様の軍は猪突猛進。猛攻の軍でありんす」
「そうでしたわ」
性格から軍の本質が出て来る。
意外にも軍は、将の性格の特色が出やすい。
ゼファーだったら、武人色が強く。
ネアルだったら、バランス的で。
タイローであれば、柔軟で。
レベッカであれば、突撃特化。
メイファは、バランス型でネアルに近い。
これらのように人によって、特色は出やすい。
ただフュンだけは違う。
彼は攻撃にも出るけど、守れる。
守りを固めるように見えても、攻撃を仕掛けている。
掴みどころがないのがフュンの特徴だ。
だから、メイファの興味が尽きない。
彼の生態系を探りに行こうかと、冗談を言いたいくらいである。
「いいでしょう。エレンラージ殿に連絡をしますわ。お嬢さん、心配はしなくていいわよ。私に任せてね」
「はい。当然でありんす。わっちはここで、お二人のお帰りを待っているでありんす」
「ええ。そうしてください」
自信のある答えに、メイファは満足して、エレンラージに連絡を入れた。
「エレンさん」
「ん・・・おお。メイファ殿」
渋い低めの声が無線から流れる。
「敵が来ましたわ」
「そうですか。どこの軍で」
「ジュード軍らしいです」
「彼はおらずで?」
「おそらく、レオナ姫と共に逃げているはずですから」
「・・・じゃあ、奴か。バングだな」
「バング?」
「ええ。副将バング・ニルラですな」
「ジュード皇子の片腕?」
「いや、彼の片腕はレックス大将軍。バングは足ですな」
レックスも同じ地位にあるが、ジュードがいなければ、大将軍レックスは誕生しなかった。
だから片腕と言っていい存在なのだ。
「足ですか。どういう意味で?」
「その名の通りです。ジュード皇子の足となり移動を担当する将です。なので戦略面がどうなるか。そこが読めませんな」
「なるほど・・・」
軍の移動を担当する将でも重要であることに変わりない。
メイファは気を引き締めた。
「メイファ殿。どの程度の規模で来ましたかな?」
「ええ。おそらくは10万かと」
「ほう。揃えてはいるが、ここをその数で落とせると思っているのか」
「ええ。私とエレンさんがいないという想定でしょうね」
「なるほど。敵は、私がセブネス殿下の元にいると睨んでいると」
「はい」
「・・・という事は、殿下はさらに難しい量が・・・」
「そうかもしれません。あちらの方が厳しいのかもしれませんよ」
「・・・早めに倒したいですな。でも無理もいけませんな」
「ええ。そうですわね。まあ、倒すことが出来なくとも、こちらにひきつけるだけでも。楽になるはずですから、頑張りどころですね」
「よし。では私は南を。メイファ殿は東をお願いします」
「了解です。このまま無線は秘密回線を使いましょう。いいですか」
「もちろんです。では、準備します」
「はい。こちらも」
エレンラージも頼りになる将である。
フュンが、彼も素晴らしい人ですと、評価したので、メイファも信頼して背中を預けていた。
エレンラージ・トルート。
従属三人衆の仲間たちの中で、フュンたちよりも年上の将は、彼一人。
どっしり構えているタイプに見えるが、策略家。
ありとあらゆる手を使い、敵を罠に嵌める戦略を取るのはフュンと似ている。
だから、搦め手のエレンと呼ばれている。
無線を切った後。
二人はほぼ同時に。
「「さて、勝負はこれからだ」」
敵を待ち構えた。
腹を押さえたセンシーノの傷口が痛み出した。
「セン。そういや、お前。銃弾」
「ええ。まだあります」
「クソ。医療道具があれば・・・」
ジュードがセンシーノの様子を見ていると、光が現れた。
レベッカの影から現れたのである。
「いやいや、ここは厳しいですね。私は次世代を見守る側でしたが、さすがに医療となると必要でしょう」
「だ、誰だ・・・」
ジュードは知らない人間に驚くが、レベッカの手を握っているレオナは気付いた。
「あ。タイローさん」
「ええ。あなたに何かあったら、お守りする予定でしたが、ここで私が出ましょうかね。これからの戦い。センシーノ殿は重要な方です。あなたにとっても、この国にとってもね」
医療知識のあるタイローが、ここで参戦となった。
「どれ。センシーノ殿。見せてください」
「あ、あなたは?」
「私は、アーリア十三騎士の一家。スカラ家のタイローです。まあ、この役職よりも、私の誇りは、アーリア王の盟友ですね」
貴族の名よりも、アーリア王の友。
こちらの方がしっくり来る。
タイローの想いは、フュンの友であることだ。
「友人ですか・・・なるほど。配下ではなくか」
センシーノはその思いをすぐに理解した。
なぜなら、センシーノの祖父リカルドも、ジャックスの友であるからだ。
王と家臣じゃなくて、戦友同士。その関係性が素敵である事をよく知っている。
「では、失礼しますよ皇子」
傷口を見たタイローは、即座に判断。
「これは大丈夫です。治せますね。撃たれてはいますが、致命傷じゃない。素晴らしい剣技だ。致命傷を避けるように動きましたね。では、みなさんは作戦を練っていてください。少々治療に時間をもらいます」
今ある道具で完治は可能。
タイローは、センシーノの治療に取り掛かった。
「わかりました。私たちは話し合いましょう。良い案を持って、これからを進みます」
ここに来て、レオナが立ち直ったのが大きい。
全体のバランスが良くなったのだ。
これが彼女の力。調整力だった。
話し合いは、次々と良案が出てきて、最終案が決定する。
◇
レオナの下した判断は、ノスタールで線を引くであった。
ここジャンバルドは放棄して、防衛に入らずに、ノスタールにて、兵士を集合させる。
ビクストン地域の兵士たちも終結させることも決めていた。
それはウーゴ王の進撃が上手くいっていて、連携関係が出来ているので、背後が敵となっていないからだ。
フュンからの連絡のおかげであった。
ウーゴの元にはフュンの手紙があり。
『もしも、ルヴァン大陸が戦時状態になった場合。
ウーゴ君が支援するのはレオナ姫にしてください。
彼女がオスロ帝国の皇帝になるべきだからです。
それに僕は、マリアさんの支援に入っているので、こうなるとちょうどいいです。
あなたは今の彼女を支えて、あとで彼女に支えられてください。
相互で協力し合う。これが理想の世界ですよ。
それと兵を出せそうなら逆に援軍を出してあげて下さい。
まあ、それはサイリン家の動き次第で良いですよ。
基本は自国の為に動きましょう』
という連絡があった。
だから、彼女らは防衛を基準に動いて、来るべきタイミングで、前へ出る選択をした。
それは、ギーロン。ルスバニアも動いてくれることが確約されているから、急いでの攻撃に出なくてもいいからだった。
勝てる機会を見逃さない。
むしろ勝てる機会を作り出す。
積極的防衛戦術を取る気だった。
「では、引きましょう。センシーノの傷が良くなった時に・・・」
「いいえ。それはいけない。この処置が終わったらでいいです。姉上」
「センシーノ?」
「急ぎましょう。俺一人の傷よりも、全体が素早く防衛行動に入った方がいい」
「・・・わかりました。そうしましょう」
いつもは緩いセンシーノが真剣。
だから、レオナは彼の意思を尊重した。
引く時は速やかに引く。
兵法通りの展開で、彼らは大移動を果たす。
◇
アーリア歴7年1月15日。
ロビンは、たったの二週間で、王宮内を掌握した。
事前に内部にも味方を作っていた事も、この電光石火の掌握劇に繋がっていたが、それだけじゃなくて、マチルダやテルトなどの重臣たちや、レオナを応援していた者。
その他の派閥に所属していた要人たちなどが軒並みいなくなっていたことで、内部を容易に掌握できたという事が大きい。
それにレックスを手に入れているので、軍部も独り占め状態だった。
ジュード。エレンラージ。
双方がいないので、最大権限はレックスとなっていた。
大将軍のレックスが、ロビンを支援する形となっているから、軍部のほとんどが残る形となる。
それが一番手痛い。
彼の強さは、強烈であるのに、その他の将たちも残るのであれば、二人の大将軍が抜けたとしても、戦力ダウンはそれほどないのだ。
そして、ロビンが第一に狙ったのが・・・・。
◇
アーリア歴7年1月28日。
ギーロン王国誕生からずっと見守っていると言われている霊峰ハザン。
監視所から兵を見下ろすメイファは、優雅な雰囲気を醸し出しながら笑顔になる。
「あら。こちらに来るのが早いと見える。この速度でです。じゃあ、ここが一番でしょうね」
秘密の小屋にある無線を取り出した。
「こちらに来たわ。聞こえるお嬢さん」
「はいでありんす」
無線相手は、レイ。
彼女は王都ニャルコメルで連絡をもらう。
ギーロン王国は、西と北の海岸線も、山に囲まれている。
この霊峰ハザンが南東にあるので、山がないのは、南と東となっていた。
平坦な場所からしか侵入が出来ない難しい地域。
ここを落とせたジャックスは、軍事的センスがあった。
「お嬢さん。この国も戦う時は旗を使用するのよね」
「はい。そうでありんす。鳳凰の旗でありんすか?」
「いいえ。違うわね。あれは、獅子でしたわ」
メイファが見たのは、獅子の旗だった。
レイが鳳凰を気にしているのには理由がある。
「それは、ジュード兄様の軍でありんす」
「なるほど。獅子はジュード皇子ですのね。じゃあ、エレンラージ殿は、何の旗でしたの?」
「大将軍は、蛇でありんす」
「蛇・・・なるほどね。たしかに、エレンラージ殿にピッタリですわ」
エレンラージの印象通りだと、メイファは笑った。
搦め手のエレン。
不死鳥のレックス。
獅子奮迅のジュード。
三大将軍はこのように呼ばれている。
「しかし。ジュード皇子がいないのに、ジュード皇子の軍をこちらに出す・・・どういう展開でしょうかね」
「そこは、わからないでありんす。しかし、兄様の軍は猪突猛進。猛攻の軍でありんす」
「そうでしたわ」
性格から軍の本質が出て来る。
意外にも軍は、将の性格の特色が出やすい。
ゼファーだったら、武人色が強く。
ネアルだったら、バランス的で。
タイローであれば、柔軟で。
レベッカであれば、突撃特化。
メイファは、バランス型でネアルに近い。
これらのように人によって、特色は出やすい。
ただフュンだけは違う。
彼は攻撃にも出るけど、守れる。
守りを固めるように見えても、攻撃を仕掛けている。
掴みどころがないのがフュンの特徴だ。
だから、メイファの興味が尽きない。
彼の生態系を探りに行こうかと、冗談を言いたいくらいである。
「いいでしょう。エレンラージ殿に連絡をしますわ。お嬢さん、心配はしなくていいわよ。私に任せてね」
「はい。当然でありんす。わっちはここで、お二人のお帰りを待っているでありんす」
「ええ。そうしてください」
自信のある答えに、メイファは満足して、エレンラージに連絡を入れた。
「エレンさん」
「ん・・・おお。メイファ殿」
渋い低めの声が無線から流れる。
「敵が来ましたわ」
「そうですか。どこの軍で」
「ジュード軍らしいです」
「彼はおらずで?」
「おそらく、レオナ姫と共に逃げているはずですから」
「・・・じゃあ、奴か。バングだな」
「バング?」
「ええ。副将バング・ニルラですな」
「ジュード皇子の片腕?」
「いや、彼の片腕はレックス大将軍。バングは足ですな」
レックスも同じ地位にあるが、ジュードがいなければ、大将軍レックスは誕生しなかった。
だから片腕と言っていい存在なのだ。
「足ですか。どういう意味で?」
「その名の通りです。ジュード皇子の足となり移動を担当する将です。なので戦略面がどうなるか。そこが読めませんな」
「なるほど・・・」
軍の移動を担当する将でも重要であることに変わりない。
メイファは気を引き締めた。
「メイファ殿。どの程度の規模で来ましたかな?」
「ええ。おそらくは10万かと」
「ほう。揃えてはいるが、ここをその数で落とせると思っているのか」
「ええ。私とエレンさんがいないという想定でしょうね」
「なるほど。敵は、私がセブネス殿下の元にいると睨んでいると」
「はい」
「・・・という事は、殿下はさらに難しい量が・・・」
「そうかもしれません。あちらの方が厳しいのかもしれませんよ」
「・・・早めに倒したいですな。でも無理もいけませんな」
「ええ。そうですわね。まあ、倒すことが出来なくとも、こちらにひきつけるだけでも。楽になるはずですから、頑張りどころですね」
「よし。では私は南を。メイファ殿は東をお願いします」
「了解です。このまま無線は秘密回線を使いましょう。いいですか」
「もちろんです。では、準備します」
「はい。こちらも」
エレンラージも頼りになる将である。
フュンが、彼も素晴らしい人ですと、評価したので、メイファも信頼して背中を預けていた。
エレンラージ・トルート。
従属三人衆の仲間たちの中で、フュンたちよりも年上の将は、彼一人。
どっしり構えているタイプに見えるが、策略家。
ありとあらゆる手を使い、敵を罠に嵌める戦略を取るのはフュンと似ている。
だから、搦め手のエレンと呼ばれている。
無線を切った後。
二人はほぼ同時に。
「「さて、勝負はこれからだ」」
敵を待ち構えた。
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ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。
追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。
だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。
『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』
不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。
そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。
その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。
前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。
但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。
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