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六十八、応酬
しおりを挟む「それで?何故、貴公がこの地に居るのか、説明してもらおうか。クロフォード公爵子息」
「はい。こちらの王家より、至急登城するようにとの連絡をいただき、ご指示に従いましたところ、今回の伝令が来た次第にございます」
え。
カシムどうした?
いつも、そんな尊大な感じじゃないだろ?
それにカルヴィンも。
敬虔な信徒みたいな表情で話をしているけれども、絶対内心は違うだろ。
その腹黒な目、ぼくには隠せないんだからな。
挨拶さえ済めば、年齢も近いふたりのこと。
すぐに打ち解けた雰囲気になると思っていたぼくは、予想外の展開におろおろしてしまう。
「ほう。ヘリセの国王より登城要請?クロフォード公爵家に直接か?」
「はい。我が公爵家は、ヘリセ王家と親交がございますゆえ」
へえ。
カルヴィンの家って、他国の王家とも繋がりがあるのか。
凄いな。
「自国の王家も通さず、か。まるで、密偵。密告者だな」
「国を裏切るような真似は、いたしません」
ぼくが呑気に感心している間にも、ふたりの応酬は続いていく。
なんだ、この異様な空気。
それとも。
他国の者同士、しかも高位貴族と王族だから、これも外交の一環で、普通なのか?
「ふっ。それは、吾に弁明することではないな。だが、あい分かった。つまりヘリセ国王は、個人的な繋がりのある公爵家に、吾の情報を流したということか・・・そこな使者。申し開きはあるか?」
単純に『他国の王族と繋がりがあるなんてクロフォード公爵家凄い』なんて思っているぼくと違い、カシムの表情はとても硬くて、鋭い視線を向け、顎で指し示すように使者さんを促す姿なんて、まるでラスボスの如き迫力があった。
まあ、カシムは王族だからな。
その移動を知られるとなると、色々支障もあるんだろうな・・・って。
全部、ぼくのせいじゃん!
「か、かちむ!ヴぃ、じぇいみぃ、しゃがしゅ、しょいで!らから!」
今更ながら、この現状を生み出している根源が自分だと悟ったぼくは焦りまくり、カルヴィンの腕を掴んで、身を乗り出すようにしてそう言った。
だって、おかしいから!
ぼくを探して、それで王家から連絡をもらったんだろうカルヴィンが窮地に立つなんて、絶対駄目に決まっている。
「ジェイミー。大丈夫だ。事実関係を、はっきりさせるだけだよ」
「そうだぞ、ジェイ。何も心配要らない」
けれど、そんなぼくにカシムはいつもの優しい笑顔を向けてくれ、カルヴィンも、安心させるように背中をとんとんしてくれる。
なんか、きょろきょろとふたりを見て、落ち着きないぼくがおかしいみたいだ。
え。
ぼく、おかしくないよね?
このおっそろしい空気を生み出しちゃっている原因、ぼくなんだから。
国交に亀裂寸前、ってやつなんじゃないの?
責任の在りかを問うところでは?
「噂には聞いておりましたが、ジェイミー様は、本当にお可愛らしいですね」
「ふぇ?」
そんな、ひとりおろおろしているぼくの前で、少し膝を落とした使者さんが、人好きのする顔でにこりと笑った。
ぼくを見る目も、へにょりと下がっていて、本当の笑みだとすぐ分かる。
なんか、優しそうなひとだな。
「わたくしは、ヘリセ国王の側近をしております、アギヨンと申します。以後、お見知りおきくださいませ、ジェイミー様」
側近なのに若くて優しそうなアギヨンさんに、ぼくも自然と笑みを浮かべた。
「う・・よろちく、おねぎゃい、ちましゅ」
そして丁寧に挨拶されて、ぼくも丁寧に頭を下げる。
カルヴィンにだっこされている時は、どんなに頭を下げても絶対に支えてくれるから安心なんだよな。
あ、それ言ったらカシムもか。
「ヴぃ、かちむ、いっちょ。じぇいみぃ、しゅごく、あんちん!」
今はそのふたりが揃っているんだから無敵だと、ぼくは両手両足をばたばたさせた。
まあ。
そのふたりの睨み合いで、凍り付きそうにもなっているんだけどさ。
国を背負っているんだから、仕方ないんだろうな。
ぼくとしては、仲良くしてほしいけど。
~・~・~・~・~・
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