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第一章 復讐の少女。
第十七話 旅立ち
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眠っていた俺は、何かを打ち付けるような大きな音で起きた。
多少寝ぼけ気味な思考のまま何とかベッドから降り、よたよたと窓から音のする場所を探す。
日は既に上りきっており、今が昼なのだと気づく。
音のする場所では崩れた建物の破片をどかして、新たに補強している人や、新しい家を建てる人など....村人たちが働いていた。
炎帝がエルフの集まるこの村を襲撃してきてから一週間たった。
あの日の爪跡はまだあちこちに残っているが、皆の働きにより大分綺麗になっていた。むしろ襲撃前よりも、皆で村を復興するという目的意識が纏まっているからか活気がいい。
「駄目だな....真昼じゃん。大寝坊だよ」
俺も手伝おうかと考えた......が、大事なことを思い出した。まだ頭が覚醒仕切れてないな。
大事なこと。前から考えていたことだけど....。
今日魔王討伐とヒロイン探しの為、俺は村を出る。
あの日、死んだ俺は一つの約束を思い出した。
謎の声の人物と交わした、魔王討伐の約束。
あの約束を交わしたあと、あの魔王軍の幹部《炎帝》の襲撃だ。偶然なのだろうが、見逃せないことだ。
それに魔王討伐はどの主人公だって目指すことだし、旅の中でヒロインとの出会いがあるかも知れないからな!!
まぁ言っちゃ悪いけど、この村のなかに留まっていても仕方ない。のんびりと異世界を満喫するなら、ゆっくりしていてもよかったかもだけどな。
外出用の服に着替え、黒色の毛皮で出来たコートを羽織る。
俺は昨日のうちに荷造りしておいたリュックの中を確認する。
硬貨に少量の着替え、干し肉などの保存の効く食べ物などが纏まって入っているのを見た俺はリュックを背負い、腰に片手剣を下げる。
装備に不備はないか確認した俺は、約二月ほど暮らした部屋を後にした。
宿を出ると建物を修理する音があちこちからきこえてきた。
暫くは村には帰らないからな、ここを出る前に散歩でもするか。
そう思いながら歩き出した。
村の中を歩いていると、皆の目線が俺に集中する。
「おおッ、村を救ったレインちゃんじゃないか!!」
「こんにちは、レイン様ッ」
「クレインさん、もう村を出るんですか!?」
炎帝を倒した後、村人達が俺を見る目が変わった。
皆俺を村を救った勇者という認識しているのだ。
正直、俺が炎帝を討伐しなくてもステーデを追っていたため戻っては来なかっただろうから微妙な心境だ。
「様付けは止めてくれよ....。村はちょっと散歩してから出るつもりだよ。まぁそのうち村には戻ってくるからな、ちょっとした遠出とも考えてあまり重く考えるなよ」
俺がそう言うと、村人達が旅の餞別とでも言うのだろうか、色んな食べ物や道具をくれた。
余裕のあったリュックの中がパンパンになってしまった。
「色々貰って悪いな。さっきも言ったけれどちゃんと戻ってくるからな、お土産楽しみにしてろよッ」
そう言い、その場を後にした。ここの人たちにはお世話になったからな、帰ってくるときには礼をしないと。
村全体を見回り、俺は村から出るために出入り門に向かっていた。
「クレインさん、やっと見つけました」
自分を呼ぶ声に振り向いてみると、そこにはフードを被るステーデが立っていた。
「クレインさん酷いですよッ。僕も連れていく話でしたよね、忘れてたんですかッ!?」
あー....そう言えば何かそんなこといってた気がするなぁ。確か昨日の夜に俺がステーデとエレンに村を出る事を伝えたときに....。
ちょっと酒飲んでたからかな、忘れてた(未成年でもお酒は可。どうやら俺は酒に弱いらしく直ぐに酔ってしまうみたいだ)。
「ごめんごめん。酒のせいでな......」
「置いて行ったら、こも爪でどうしてやろうか考えていましたよ」
「怖ッ」
ステーデは今までの生きる理由だった炎帝への復讐という目的を失い、これからどうするべきか分からなかったらしい。
種族を復興させるにも、まだ金も権力も何もない状態。これではなにもできない。
だから自分も俺について、少しずつ力を溜めていきたいらしい。
ただ、同族の復興だけが目的では無いらしく......。
「クレインさんは僕の生きる意味なんですッ。余り遠くへ離れないでください」
そう言い、彼女が体に引っ付き、腕を絡ませてくる。
彼女はずっとこうだ。
あの日の夜、村で炎帝を討伐したことと村の危機を回避できたことを祝う宴が行われた。
その最中にステーデに呼ばれ、いわゆる....告白と言うものされてしまったのだ。
流石に俺も戸惑ったさ。これまで誰かと付き合った事はなかったから....。
ステーデには出会ってまだ数日だからと、やんわりその場をおさめたのだが......。
ずっとこんな風に引っ付いてくるわ、それを見てエレンが何故か泣くわキレるわで......仲良くしていたステーデとエレンがギスギスしている。
主にステーデがエレンに挑発的な態度を取って。
「あのさステーデ、もう少し離れてくれ....」
「いいじゃないですか。今は少し肌寒いですし」
そう言って離れようとしないステーデ。
端から見れば、前世基準で女子中学生がじゃれてるようにしか見えてないだろうけど....このステーデはガチだ。
「あのさ、ステーデ。俺は女だぞ?」
「別に女が女を好きじゃいけないルールなんて無いですよ」
それにと言葉を続ける。
「クレインさんの中身は男ですよね? なら問題ないですよ」
「いやそう言う問題じゃ......もういいよ........」
これ以上何を言っても無駄だろうな....。確かに感情や精神は男のまま、今でもステーデを意識してますけどそう言う問題じゃないだろ。
俺は深い溜め息を付き、そのまま出入り門を目指した。
出入りに付くと、そこには小さな人混みができていた。
何か合ったのだろうかと心配になり、ステーデを引き剥がしてそこに向かうと村長や顔見知りの村人たちが集まっていた。
どうやら俺の見送りに来てくれたらしい。
「皆見送りに来てくれたのか、ありがとな」
礼を述べると、皆見送りの言葉を送ってくれた。やはり二ヶ月しか滞在しなかったが寂しく感じる。
いつか戻るといってもしばらくはこの村の光景を見れないのだから。
なんとなくエレンの姿を探してみたがどこにも見当たらない。散歩中にも見かけなかったな。家の中に引き込もってんのかな、ステーデとなんか喧嘩してたし。エレンがいないとなんか寂しいな。
そんなことを考えていると村長が俺の前に進み出てきた。
「お主には言いきれぬ感謝がある。本当にありがとうの」
「いいですよ別にッ。こちらこそ、色々世話になりました。ありがとうございます」
互いに礼を言い合うと、村長が隣のエルフの戦士に指示をだす。
「炎帝討伐の礼をしておらんかったからの。これを持っていきなさい」
戦士から手渡されたのは小さな袋と、大きなやたらとずっしりとした袋だった。中身を確認すると、小さな袋には数枚の金貨と数十枚の銀貨。大きな袋にはとても大きく、純度が高い魔石が入っていた。
「こ、こんなの貰えませんよッ。これを売れば村の復興の費用に使っても釣りがでる程のお金が貰えるのにッ」
通常、拳大の魔石一つで金貨10枚ほどの価値があるが、この魔石は岩と呼べるほど大きく、純度が高いせいか僅かに発光している。これだけ希少な物はそう無い。
ちなみに貨幣の価値は銅貨一枚で十円、銀貨一枚で千円、金貨一枚で十万円相当だ。銅貨百枚で銀貨一枚、銀貨百枚で金貨一枚と計算できる。
その基準で考えればこれらすべての価値は百十数万はある。簡単には受け取れないが....。
「いいんじゃよ、村を救った恩人に出来ることといったらこれぐらいじゃからな」
「でも俺が炎帝を討伐しなくても村は安全だったはずですよ」
「それなら旅にでる若者への餞別、これから助けを借りる場合の前金として貰ってくれの」
ん、さらっと助けろと言われた気もするが......。
そこまで言われれば断るのは野暮だ。有りがたく貰うことにする。
「それとこの手紙をその名前のドワーフに渡してくれれば魔石で魔装を作ってくれるじゃろう。旅のついでによろしく伝えておいてくれ」
そう言い俺に一枚の手紙を渡してくる。場所はシノネア王国という人間の国の近くにあるドワーフなどが住む、工業の発達した里らしい。
因みに魔装とは、魔石を加工して作られる魔鉱を鍛冶士がさらに加工して作る魔剣と魔防具のことを指している。スキルが付与された武器で、多少は所持者の使いやすいように形状が変化するそうだ。
これだけの量と純度があれば強力なスキルを持たせ、形状も大きく変化出来るだろう。世話になってばかりでこの村長には頭が上がらない。
その手紙を懐に納めて改めて礼を言う。
「お主よ。魔王を討伐にいくのじゃな」
「え? はい、そのつもりです。まだまだ先の事になるでしょうけどね」
俺がそう答えると、村長は真剣な眼差しで俺の眼をみる。
「....魔に呑まれぬ様に気をつけるのじゃぞ。怒りや悲しみ、嫉妬の負の感情に呑まれぬよう......」
村長はステーデにも話をふる。
「そこのお主も、クレイン殿を頼むぞ。何か合ったときは支えてあげるんじゃ」
「は、はい。分かりました」
魔に呑まれるな....? 確かに炎帝も似たようなこと言っていたな。
どういう事なのか詳しく聞こうと村長に話しかけようとしたが、それを遮り村長が送りの言葉をくれたら。
「行ってくるがよい、旅人よ。お主達の安全を祈りながら帰りを待ち続けるからの」
それに続いて集まった村人達が騒ぎ出す。
「......行くか、ステーデ」
「そうですね、行きましょうか」
二人で相槌を打ち、村に別れを告げる。
「今まで本当にありがとうッ。行ってきますッ!!」
皆に手を振りながら村を出る。
━━━━━━━━━━━━━━
村長は一人思う。
不死存在、強力なユニークスキル、そして魔王を討伐するという目的。
これ等を持つ者は皆......。
あの歴史を繰り返さぬ様に願う。微力だろうが、あの魔石が力になってくれれば幸い....。
英雄か、新たな魔の王か......。
頑張るんじゃぞ、クレイン殿。戻ってくる時はちゃんとお主のままで....
━━━━━━━━━━━━━━
村から出たあとの道。森の中、俺とステーデは歩いていた。
今はまだ知っている道だが、これからは知らない場所へ行かなければならない。
どの様な町があるのか楽しみでもあり、怖くもある。なにせ本当の意味で知らない世界だ、田舎人が都会へ行くのとは訳が違う。
「これからどうするんですか」
隣で腕を再び抱いてきたステーデが聞いてくる。
「まずは村長さんのお言葉に甘えて武器を作らせてもらうつもりだよ」
「といことはドワーフの里ですね」
「ああ、その後は道中考えよう」
「分かりました」
魔王討伐。転生ものの主人公の大半が目指す目標。
皆、順調に仲間を集めて、運と策で最後は討伐に成功しているがそんなに簡単に達成出来るとは思っていない。
まずはどうするか。どこかで魔王討伐の仲間を募るか?
そんなことしても一笑されて終わりかもな。
なら、何処かの集団に所属するか?
多分それが一番現実的だろうけど....うーん、軍隊みたいにかっちりしてるのはやだな。
ていうかヒロインも探さないと....。空から女の子が降ってきてもおかしくない世界だ。チャンスはそこら中あるだろう。どこかの町か....いや、国がいいな。国のなかでそのヒロインと出会ってフラグがたって......。
「ヒロイン探しと魔王討伐。どっちも難しいな....順序的にはヒロインが先だろうけど」
「ヒロインなら僕が居るじゃないですか」
「それを堂々と言えるお前がすごいですよ。でもなぁ......うーん、なんか違う。こんなんでいいのか....?」
「こんなんて....」
露骨に肩を落とし、落ち込むステーデ。
「ふんッ、やっぱりあなたじゃ駄目なのよッ」
突然前方から聞き覚えのある声がし、道の先の木の影から人影が現れた。
その人影はエルフ特有の若葉色の髪に長い耳。見覚えのあるデカイ胸、勝ち気そうな少女......エレンだ。
「エレン? なんでお前がここに居るんだ」
俺がそう聞くと背中の鞄を指した。
「私も着いていく」
「......はい?」
「私もあなた達に着いていくっていってるのよッ。クレインはこの世界に疎いし、スティだって自分の里のこと意外は頼りないしね。私ならスティに回復スキルを使うこともできるし役に立てるわよ」
そういい、俺達に並ぶ。
「そうは言っても....」
俺が魔王討伐についてもう一度話そうとするが、エレンがステーデのことを横目で睨み付ける。
「それにスティに任せていたらクレインに何するか分からないしッ」
「いいじゃないですか。クレインさんは誰のものでもないですし」
「そういう問題じゃないのッ」
そう言うとエレンはステーデから俺の体を奪い、抱いてきた。あのエレンさん、身長的に丁度俺の後頭部にやーらかいものが押し当てられてるんですが....ッ。
「私もコイツの事が好きなのッ。あなたには絶対に取らせないからッ!!」
..............はぁ? 今コイツ何て言った? 誰が誰を好きだって?
......もう、流れに身を任せよう。修羅場には巻き込まれたくない....あ、俺が中心かよ。
色々考えるのを止め、俺は歩を進めだした。
エレンとステーデも後ろから口論しながら着いてくる。
「私の方が長くアイツといるのよ、アイツの好みや癖も私のほうが知ってるからッ」
「時間は関係ないですッ。問題はどれだけクレインさんが好きかです」
「私の方が好きに決まってるッ」
「そんなこと口でなら私も言えますよッ。私はあれです、今すぐキスしてもいいレベルで好きですッ」
「な、ななッ!? キ、キキキキスッ!? そ、それなら私は....その、あれよ。あれが出来るぐ、ぐら....ぐりゃあぁ......」
なんか後ろで頭が茹でてる奴いるけど俺は関係ないです。真っ赤な赤の他人ですよー。
逃げるように歩を進める。後ろのやり取りに反応したら敗けです。
....まぁ、これはこれで賑やかでいいか。
初期メンバーはこの三人。
この後、どう俺達の物語が紡いでいくか......考えていると楽しみになるな。
多少寝ぼけ気味な思考のまま何とかベッドから降り、よたよたと窓から音のする場所を探す。
日は既に上りきっており、今が昼なのだと気づく。
音のする場所では崩れた建物の破片をどかして、新たに補強している人や、新しい家を建てる人など....村人たちが働いていた。
炎帝がエルフの集まるこの村を襲撃してきてから一週間たった。
あの日の爪跡はまだあちこちに残っているが、皆の働きにより大分綺麗になっていた。むしろ襲撃前よりも、皆で村を復興するという目的意識が纏まっているからか活気がいい。
「駄目だな....真昼じゃん。大寝坊だよ」
俺も手伝おうかと考えた......が、大事なことを思い出した。まだ頭が覚醒仕切れてないな。
大事なこと。前から考えていたことだけど....。
今日魔王討伐とヒロイン探しの為、俺は村を出る。
あの日、死んだ俺は一つの約束を思い出した。
謎の声の人物と交わした、魔王討伐の約束。
あの約束を交わしたあと、あの魔王軍の幹部《炎帝》の襲撃だ。偶然なのだろうが、見逃せないことだ。
それに魔王討伐はどの主人公だって目指すことだし、旅の中でヒロインとの出会いがあるかも知れないからな!!
まぁ言っちゃ悪いけど、この村のなかに留まっていても仕方ない。のんびりと異世界を満喫するなら、ゆっくりしていてもよかったかもだけどな。
外出用の服に着替え、黒色の毛皮で出来たコートを羽織る。
俺は昨日のうちに荷造りしておいたリュックの中を確認する。
硬貨に少量の着替え、干し肉などの保存の効く食べ物などが纏まって入っているのを見た俺はリュックを背負い、腰に片手剣を下げる。
装備に不備はないか確認した俺は、約二月ほど暮らした部屋を後にした。
宿を出ると建物を修理する音があちこちからきこえてきた。
暫くは村には帰らないからな、ここを出る前に散歩でもするか。
そう思いながら歩き出した。
村の中を歩いていると、皆の目線が俺に集中する。
「おおッ、村を救ったレインちゃんじゃないか!!」
「こんにちは、レイン様ッ」
「クレインさん、もう村を出るんですか!?」
炎帝を倒した後、村人達が俺を見る目が変わった。
皆俺を村を救った勇者という認識しているのだ。
正直、俺が炎帝を討伐しなくてもステーデを追っていたため戻っては来なかっただろうから微妙な心境だ。
「様付けは止めてくれよ....。村はちょっと散歩してから出るつもりだよ。まぁそのうち村には戻ってくるからな、ちょっとした遠出とも考えてあまり重く考えるなよ」
俺がそう言うと、村人達が旅の餞別とでも言うのだろうか、色んな食べ物や道具をくれた。
余裕のあったリュックの中がパンパンになってしまった。
「色々貰って悪いな。さっきも言ったけれどちゃんと戻ってくるからな、お土産楽しみにしてろよッ」
そう言い、その場を後にした。ここの人たちにはお世話になったからな、帰ってくるときには礼をしないと。
村全体を見回り、俺は村から出るために出入り門に向かっていた。
「クレインさん、やっと見つけました」
自分を呼ぶ声に振り向いてみると、そこにはフードを被るステーデが立っていた。
「クレインさん酷いですよッ。僕も連れていく話でしたよね、忘れてたんですかッ!?」
あー....そう言えば何かそんなこといってた気がするなぁ。確か昨日の夜に俺がステーデとエレンに村を出る事を伝えたときに....。
ちょっと酒飲んでたからかな、忘れてた(未成年でもお酒は可。どうやら俺は酒に弱いらしく直ぐに酔ってしまうみたいだ)。
「ごめんごめん。酒のせいでな......」
「置いて行ったら、こも爪でどうしてやろうか考えていましたよ」
「怖ッ」
ステーデは今までの生きる理由だった炎帝への復讐という目的を失い、これからどうするべきか分からなかったらしい。
種族を復興させるにも、まだ金も権力も何もない状態。これではなにもできない。
だから自分も俺について、少しずつ力を溜めていきたいらしい。
ただ、同族の復興だけが目的では無いらしく......。
「クレインさんは僕の生きる意味なんですッ。余り遠くへ離れないでください」
そう言い、彼女が体に引っ付き、腕を絡ませてくる。
彼女はずっとこうだ。
あの日の夜、村で炎帝を討伐したことと村の危機を回避できたことを祝う宴が行われた。
その最中にステーデに呼ばれ、いわゆる....告白と言うものされてしまったのだ。
流石に俺も戸惑ったさ。これまで誰かと付き合った事はなかったから....。
ステーデには出会ってまだ数日だからと、やんわりその場をおさめたのだが......。
ずっとこんな風に引っ付いてくるわ、それを見てエレンが何故か泣くわキレるわで......仲良くしていたステーデとエレンがギスギスしている。
主にステーデがエレンに挑発的な態度を取って。
「あのさステーデ、もう少し離れてくれ....」
「いいじゃないですか。今は少し肌寒いですし」
そう言って離れようとしないステーデ。
端から見れば、前世基準で女子中学生がじゃれてるようにしか見えてないだろうけど....このステーデはガチだ。
「あのさ、ステーデ。俺は女だぞ?」
「別に女が女を好きじゃいけないルールなんて無いですよ」
それにと言葉を続ける。
「クレインさんの中身は男ですよね? なら問題ないですよ」
「いやそう言う問題じゃ......もういいよ........」
これ以上何を言っても無駄だろうな....。確かに感情や精神は男のまま、今でもステーデを意識してますけどそう言う問題じゃないだろ。
俺は深い溜め息を付き、そのまま出入り門を目指した。
出入りに付くと、そこには小さな人混みができていた。
何か合ったのだろうかと心配になり、ステーデを引き剥がしてそこに向かうと村長や顔見知りの村人たちが集まっていた。
どうやら俺の見送りに来てくれたらしい。
「皆見送りに来てくれたのか、ありがとな」
礼を述べると、皆見送りの言葉を送ってくれた。やはり二ヶ月しか滞在しなかったが寂しく感じる。
いつか戻るといってもしばらくはこの村の光景を見れないのだから。
なんとなくエレンの姿を探してみたがどこにも見当たらない。散歩中にも見かけなかったな。家の中に引き込もってんのかな、ステーデとなんか喧嘩してたし。エレンがいないとなんか寂しいな。
そんなことを考えていると村長が俺の前に進み出てきた。
「お主には言いきれぬ感謝がある。本当にありがとうの」
「いいですよ別にッ。こちらこそ、色々世話になりました。ありがとうございます」
互いに礼を言い合うと、村長が隣のエルフの戦士に指示をだす。
「炎帝討伐の礼をしておらんかったからの。これを持っていきなさい」
戦士から手渡されたのは小さな袋と、大きなやたらとずっしりとした袋だった。中身を確認すると、小さな袋には数枚の金貨と数十枚の銀貨。大きな袋にはとても大きく、純度が高い魔石が入っていた。
「こ、こんなの貰えませんよッ。これを売れば村の復興の費用に使っても釣りがでる程のお金が貰えるのにッ」
通常、拳大の魔石一つで金貨10枚ほどの価値があるが、この魔石は岩と呼べるほど大きく、純度が高いせいか僅かに発光している。これだけ希少な物はそう無い。
ちなみに貨幣の価値は銅貨一枚で十円、銀貨一枚で千円、金貨一枚で十万円相当だ。銅貨百枚で銀貨一枚、銀貨百枚で金貨一枚と計算できる。
その基準で考えればこれらすべての価値は百十数万はある。簡単には受け取れないが....。
「いいんじゃよ、村を救った恩人に出来ることといったらこれぐらいじゃからな」
「でも俺が炎帝を討伐しなくても村は安全だったはずですよ」
「それなら旅にでる若者への餞別、これから助けを借りる場合の前金として貰ってくれの」
ん、さらっと助けろと言われた気もするが......。
そこまで言われれば断るのは野暮だ。有りがたく貰うことにする。
「それとこの手紙をその名前のドワーフに渡してくれれば魔石で魔装を作ってくれるじゃろう。旅のついでによろしく伝えておいてくれ」
そう言い俺に一枚の手紙を渡してくる。場所はシノネア王国という人間の国の近くにあるドワーフなどが住む、工業の発達した里らしい。
因みに魔装とは、魔石を加工して作られる魔鉱を鍛冶士がさらに加工して作る魔剣と魔防具のことを指している。スキルが付与された武器で、多少は所持者の使いやすいように形状が変化するそうだ。
これだけの量と純度があれば強力なスキルを持たせ、形状も大きく変化出来るだろう。世話になってばかりでこの村長には頭が上がらない。
その手紙を懐に納めて改めて礼を言う。
「お主よ。魔王を討伐にいくのじゃな」
「え? はい、そのつもりです。まだまだ先の事になるでしょうけどね」
俺がそう答えると、村長は真剣な眼差しで俺の眼をみる。
「....魔に呑まれぬ様に気をつけるのじゃぞ。怒りや悲しみ、嫉妬の負の感情に呑まれぬよう......」
村長はステーデにも話をふる。
「そこのお主も、クレイン殿を頼むぞ。何か合ったときは支えてあげるんじゃ」
「は、はい。分かりました」
魔に呑まれるな....? 確かに炎帝も似たようなこと言っていたな。
どういう事なのか詳しく聞こうと村長に話しかけようとしたが、それを遮り村長が送りの言葉をくれたら。
「行ってくるがよい、旅人よ。お主達の安全を祈りながら帰りを待ち続けるからの」
それに続いて集まった村人達が騒ぎ出す。
「......行くか、ステーデ」
「そうですね、行きましょうか」
二人で相槌を打ち、村に別れを告げる。
「今まで本当にありがとうッ。行ってきますッ!!」
皆に手を振りながら村を出る。
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村長は一人思う。
不死存在、強力なユニークスキル、そして魔王を討伐するという目的。
これ等を持つ者は皆......。
あの歴史を繰り返さぬ様に願う。微力だろうが、あの魔石が力になってくれれば幸い....。
英雄か、新たな魔の王か......。
頑張るんじゃぞ、クレイン殿。戻ってくる時はちゃんとお主のままで....
━━━━━━━━━━━━━━
村から出たあとの道。森の中、俺とステーデは歩いていた。
今はまだ知っている道だが、これからは知らない場所へ行かなければならない。
どの様な町があるのか楽しみでもあり、怖くもある。なにせ本当の意味で知らない世界だ、田舎人が都会へ行くのとは訳が違う。
「これからどうするんですか」
隣で腕を再び抱いてきたステーデが聞いてくる。
「まずは村長さんのお言葉に甘えて武器を作らせてもらうつもりだよ」
「といことはドワーフの里ですね」
「ああ、その後は道中考えよう」
「分かりました」
魔王討伐。転生ものの主人公の大半が目指す目標。
皆、順調に仲間を集めて、運と策で最後は討伐に成功しているがそんなに簡単に達成出来るとは思っていない。
まずはどうするか。どこかで魔王討伐の仲間を募るか?
そんなことしても一笑されて終わりかもな。
なら、何処かの集団に所属するか?
多分それが一番現実的だろうけど....うーん、軍隊みたいにかっちりしてるのはやだな。
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「ヒロイン探しと魔王討伐。どっちも難しいな....順序的にはヒロインが先だろうけど」
「ヒロインなら僕が居るじゃないですか」
「それを堂々と言えるお前がすごいですよ。でもなぁ......うーん、なんか違う。こんなんでいいのか....?」
「こんなんて....」
露骨に肩を落とし、落ち込むステーデ。
「ふんッ、やっぱりあなたじゃ駄目なのよッ」
突然前方から聞き覚えのある声がし、道の先の木の影から人影が現れた。
その人影はエルフ特有の若葉色の髪に長い耳。見覚えのあるデカイ胸、勝ち気そうな少女......エレンだ。
「エレン? なんでお前がここに居るんだ」
俺がそう聞くと背中の鞄を指した。
「私も着いていく」
「......はい?」
「私もあなた達に着いていくっていってるのよッ。クレインはこの世界に疎いし、スティだって自分の里のこと意外は頼りないしね。私ならスティに回復スキルを使うこともできるし役に立てるわよ」
そういい、俺達に並ぶ。
「そうは言っても....」
俺が魔王討伐についてもう一度話そうとするが、エレンがステーデのことを横目で睨み付ける。
「それにスティに任せていたらクレインに何するか分からないしッ」
「いいじゃないですか。クレインさんは誰のものでもないですし」
「そういう問題じゃないのッ」
そう言うとエレンはステーデから俺の体を奪い、抱いてきた。あのエレンさん、身長的に丁度俺の後頭部にやーらかいものが押し当てられてるんですが....ッ。
「私もコイツの事が好きなのッ。あなたには絶対に取らせないからッ!!」
..............はぁ? 今コイツ何て言った? 誰が誰を好きだって?
......もう、流れに身を任せよう。修羅場には巻き込まれたくない....あ、俺が中心かよ。
色々考えるのを止め、俺は歩を進めだした。
エレンとステーデも後ろから口論しながら着いてくる。
「私の方が長くアイツといるのよ、アイツの好みや癖も私のほうが知ってるからッ」
「時間は関係ないですッ。問題はどれだけクレインさんが好きかです」
「私の方が好きに決まってるッ」
「そんなこと口でなら私も言えますよッ。私はあれです、今すぐキスしてもいいレベルで好きですッ」
「な、ななッ!? キ、キキキキスッ!? そ、それなら私は....その、あれよ。あれが出来るぐ、ぐら....ぐりゃあぁ......」
なんか後ろで頭が茹でてる奴いるけど俺は関係ないです。真っ赤な赤の他人ですよー。
逃げるように歩を進める。後ろのやり取りに反応したら敗けです。
....まぁ、これはこれで賑やかでいいか。
初期メンバーはこの三人。
この後、どう俺達の物語が紡いでいくか......考えていると楽しみになるな。
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息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
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敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
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