20 / 25
第二章 半蜥蜴人間と擬人刀。
第十八話 意外な弱点
しおりを挟む
場所は《アノーリ大森林》。
人間と魔王の国の境界線に当たる巨大な森林だ。
エルフやドワーフ、獣人種やオークなど多彩な種族が住んでいる。
森林の中心には巨大な山脈があり、その先には魔王の君臨するラグロア城が存在する。
山脈にはランクAを超える危険な魔獣が住み着いており、誰も積極的に越えようとはしない。
俺達は山脈で作られた境界線、ラグロア城とは反対側....人間が栄える方面にいる。
村を出て二週間たった。
俺達は木々に囲まれた森の中という終わらない景色の中を延々と歩く。
今俺たちが目指しているのはドワーフの里だ。
ドワーフの里はアノーリ大森林の外れに存在しているらしく、すぐ近くには人間の国の一つが在るらしい。
村をでて直ぐはどうやって里に向かおうか迷っていた。
道がわからなかったからな。
しかしエルフとドワーフは多く交流しているため、エルフであるエレンが道案内を申し出てくれてその問題は解決できた。
エレンによるとあと三日もすれば里に付くという。
里につけば暖かい宿やご飯、そして新たな武器を作れる。
半日もすればこの森から出れると聞き、木々に囲まれるだけという飽きた景色とおさらばできると考えると気が楽になる....普段なら。
正直気分は物凄く重い....。
原因は俺の旅の仲間の二人だ。
「コイツの事を一番理解出来てるのは私よッ!! 私ならクレインのしてほしい事を何だって叶えてあげれるッ」
と、俺の頭に豊満な胸を乗せて体に手を回すエルフ、エレン。
「僕はクレインさんの力になれます。僕がクレインさんを守りますし、クレインさんも僕を守るといってくれました。これは僕に対しての告白と同義ですッ」
と、俺の腕にしがみ付いてエレンに噛み付くように叫ぶ黒狼族、ステーデ。
歩きづらいわ、喧しいわ......もっと仲良く出来ないのかこの二人は。
「あのさ、とりあえず俺を放してくれ。歩きづらいからさ」
そう言うと二人はしぶしぶと解放してくれた。......少し頭の上が寂しくなったな。
俺はすたすたと先を急ぐ。
「クレインは......どっちがいいのよ」
「そうですよッ、クレインさんは僕とエレンさん、どっちの方が好きなんですかッ!?」
「ええ....」
突然の無茶ぶり。これ、パターン的にどう答えてもバッドコースしか見えない負けイベントじゃん。
「い、いや。どっちも同じくらい好きだぞ。仲間としてな?」
「そうじゃなくて、異性としてッ」
「俺とお前らは同性だよッ」
「心は男ですよねッ」
「そうだけどな、そうじゃなくて....ああーッもう!!」
どう答えるべきか頭を抱えたくなる。
前世では羨ましく思っていたイベントに今遭遇している。
感想は、今まで羨ましいと思っていてすみませんでした許してください何でもしま(ry
思考が暴走し始めたその時、俺の【索敵】に反応があった。恐らくは魔獣だろう。
心のなかでガッツポーズを決めるッ。ナイス、これでこの沼から抜けれる。
「ま、魔獣が近づいてきてるぞッ。ほら戦闘準備ッ!!」
「逃げましたね、クレインさんは意気地無しなんですね」
「ダサいわね、あなた」
うるせえッ、その意気地無しでダサい奴に勝手に惚れたのはお前らだろうがッ。
後ろから半眼で見られてる気がするが無視無視。
「さーッ、かかってこいやぁッ!!」
ランクDの魔獣《パラライズアント》の群れと交戦しはじめて数分、数十匹いた大きな蟻は残り十匹に減った。
パラライズアントが上体を大きく反らし、口の中から【麻痺液】を出してくる。
それを軽くかわし、蟻の間接部分に剣を突き立てて切断する。
「風よ、我が呼び掛けに答え、その力を今、障害を捕らえる籠となれッ【ウインドウゲージ】!」
エレンのスキルにより蟻達が風の籠に囲まれ、一ヶ所に固まる。
「幾本もの凶器と化し、敵を刺し貫けッ【影針殺域】!!」
一箇所にまとまった蟻達の足元にステーデの影が広がり、生えてきた針に刺し貫かれて絶命する。
「これで全部か....」
初めて相手にする魔獣だったが知識として知っていたことと、ランクが低く弱かったため問題なく狩る事ができた。
《報告。【可能性獲得】の効果により、パラライズアントの固有スキル【麻痺液】【毒液 】【歩道記憶】を獲得しました》
新しいスキルを獲得したようなので早速確認してみる。
【麻痺液】と【毒液】は名前の通り、体から特殊な液体を生成するパッシブスキルだ。
【歩道記憶】は自分の歩いた道を記憶して忘れないといったスキルらしい。地味なスキルだがこう言った森の中を歩く場合には便利だな。
「よし、さっさといくぞッ」
またどっちが良いかとか聞かれる前に行こう。
「うん、それでクレインはどっちがいいの?」
「早く教えてくださいッ」
聞かれたよ。もううんざりですよ....。
「あのさ、まだ告白を了解した覚えないし....」
どっちが好きとか決めなくてもいいだろ、と続けようとした。が、また【索敵】が魔獣に反応した。
僅か数匹だが、すこしづつ近づいてくる。その内一匹はそこそこ強そうだ、多分ランクCぐらいじゃないだろうか。
その魔獣は草木を掻き分けて姿を現した。
それは......巨大な蜘蛛だった。そのうち一匹は蜘蛛の胴体に女性の上半身が生えていたが知性を持たないのか、野生的な唸り声を上げている。
あれは確か......
「あれはビッグスパイダーとアラクネッ。アラクネはランクC-の魔物ですが....知性はないですね、あれは魔獣と判断していいでしょう」
ステーデが説明でそれがなんと言う魔獣なのか教えてくれるが頭に入ってこない。体がへたりこんでしまった。
ダメなんだよ....あれだけはマジ無理....ッ。
「クレインッ!?」
座り込んだ俺に二人が驚きの声を上げる。
その時、二人の注意が俺にそれ、俺は何の構えもとっていなかった。
数匹のビッグスパイダーが俺めがけてとんできた。
「なッ!?こ、こっちくんにぁああああ!!」
思わず【炎帝】発動。もとから使えこなせてないスキルを混乱した状態での使用。
勿論暴走しました。
森の中で大きな爆発と火柱は生まれた。
《報告。【可能性獲得】の効果により、ビッグスパイダー、アラクネの固有スキル【粘糸】、【鋼糸】を獲得しました》
「まさかクレインにあんな弱点が合ったなんてね」
あの後、俺の周りの木々と一緒にアラクネ達を吹き飛ばした俺は、幾つかの新しいスキルを手にいれて、身体中煤まみれで座っていた。
因みに新しいスキルは粘性のある糸を出す【粘糸】と鉄のように硬い糸を出す【鋼糸】、【毒物耐性】だ。
粘糸と鋼糸を組み合わせて巣を作るのだとかなんとか。
「仕方ないじゃないか。あんなグロテスクな姿してるのが悪い」
ちなみにステーデがエレンを掴んで避難したため仲間には被害はなかった。
「もう二度とあんな魔獣には遭遇したくない」
「なら、何かクレインさんにお願いがある時は蜘蛛を使って脅迫でもしましょうかエレンさん」
「そうね、私もっと丈夫で可愛い服が欲しいな」
「お前らも燃やすぞッ。ていうか何でこう言う時は仲がいいんだッ!?」
謎だ。あんなに歪みあっていた二人のこの共感のしかた。
「それにしてもあなた汚れたわね」
改めて自分の今の出で立ちを確認してみる。
中に着てる服もコートも破けたり燃えたりはしてないが、汚れてしまっている。
服に限らず、俺の肌も髪の毛にも砂やら燃えた木の灰やら積もってる。
「そうだな....どっかで着替えるなり何なり出来ればいいんだけどな」
「それならあちらの方に水の流れる音がしますよ。そこで水でも浴びたらどうですか」
さすが黒狼族、いい耳をお持ちですね。いやスキルか?
「そうだな、なら軽く汚れを落としてくるよ」
おれが歩き出すと何故か二人も着いてこようとする。
「どうしたんだ?」
「僕達も一緒に水浴びでもしようかと....」
「決してクレインの裸を見たいとかじゃないわよ」
「腹心丸見えだ、ここで待ってろッ」
それに、俺の体は女でも精神は男。お前らがいたら嫌でも意識してしまう。
「な、なら御背中を流しますッ」
「いらんッ」
今さっき手にいれた【粘糸】と【鋼糸】をあちこちに張り巡らせ、逃げるようにその場を離れた。糸を上手く操るのは難しく少し手間取るが、動きを妨害できればいいから少し適当に張っておいた。
【索敵】で二人の動きを確認すると、どうやら諦めたらしく、その場から動いていない。
蜘蛛は嫌いだが、蜘蛛のスキルは大分役に立つようだ。これから糸の扱いも覚えていこう。
ステーデの指した方角へ進んでしばらくたつと、小さな綺麗な池があった。
服を脱ぎ、池の中に入って水を浴びる。なんか外で裸になる機会多すぎじゃないか、俺。
てか今更だけど、【水生成】で良いんじゃないかと思った。
こう、スキルと言うのはやっぱり便利だなー、と改めて考える。今まで何気に使っているスキルを俺は上手く使えているかどうか、効率のいい使い方が無いか考える。
炎帝戦の最中【連続詠唱】というパッシブスキルをてにいれた。このスキルは一度発動したスキルを続けて発動するとき、詠唱文を簡略化できるらしい。
これをでアサルトスキルを続けて発動すれば火力が上昇できる。
さっき手にいれた【粘糸】は粘性の糸を出すことができる為簡単なトラップにもなるだろう。
これが可燃性なら、糸を燃やして捕まえた獲物を焼いたり。
【鋼糸】は強度の高い糸を出すスキルだ。
こちらは所持者の各種耐性が反映され強度も変わるらしい。強度の割に普通の糸と変わらない柔らかさを持つため、工芸や衣服の素材に使えるかな。何処かに売るのもアリだな。
......個人的には漫画やアニメでよくみる糸使い見たいな真似をしてみたいな。
こう、シュッと捕まえてバラバラバラバラァ、みたいな。ちょっとこっそりと練習しよう。
体と服の汚れを落とした俺は、洗うときに濡らした服を【炎帝】の練習がてらに炎を調整しながら乾かしていた。
このスキルだって俺が使いこなせてないだけだ。少しずつ練習していかないと。
......そうだ、確か魔剣はスキルを持ってて所有者に使いやすく形状が変化するんだったか。
「なら....ああいう魔剣もいいな」
俺のスキルに合うだろうな。頼んでみるかな。
俺がこれから手に入るかもしれない武器を妄想していると、金属が弾かれる音が聞こえてきた。
丁度エレン達を置いてきたあたりからだ。おそらく何者かの武器が弾かれる音。
「おいおい....こんな森のなかで誰だよッ」
魔王軍の追ってだったら面倒だな。
俺は半乾きの服を急いで着て音のする方、二人の元へ走り出した。
人間と魔王の国の境界線に当たる巨大な森林だ。
エルフやドワーフ、獣人種やオークなど多彩な種族が住んでいる。
森林の中心には巨大な山脈があり、その先には魔王の君臨するラグロア城が存在する。
山脈にはランクAを超える危険な魔獣が住み着いており、誰も積極的に越えようとはしない。
俺達は山脈で作られた境界線、ラグロア城とは反対側....人間が栄える方面にいる。
村を出て二週間たった。
俺達は木々に囲まれた森の中という終わらない景色の中を延々と歩く。
今俺たちが目指しているのはドワーフの里だ。
ドワーフの里はアノーリ大森林の外れに存在しているらしく、すぐ近くには人間の国の一つが在るらしい。
村をでて直ぐはどうやって里に向かおうか迷っていた。
道がわからなかったからな。
しかしエルフとドワーフは多く交流しているため、エルフであるエレンが道案内を申し出てくれてその問題は解決できた。
エレンによるとあと三日もすれば里に付くという。
里につけば暖かい宿やご飯、そして新たな武器を作れる。
半日もすればこの森から出れると聞き、木々に囲まれるだけという飽きた景色とおさらばできると考えると気が楽になる....普段なら。
正直気分は物凄く重い....。
原因は俺の旅の仲間の二人だ。
「コイツの事を一番理解出来てるのは私よッ!! 私ならクレインのしてほしい事を何だって叶えてあげれるッ」
と、俺の頭に豊満な胸を乗せて体に手を回すエルフ、エレン。
「僕はクレインさんの力になれます。僕がクレインさんを守りますし、クレインさんも僕を守るといってくれました。これは僕に対しての告白と同義ですッ」
と、俺の腕にしがみ付いてエレンに噛み付くように叫ぶ黒狼族、ステーデ。
歩きづらいわ、喧しいわ......もっと仲良く出来ないのかこの二人は。
「あのさ、とりあえず俺を放してくれ。歩きづらいからさ」
そう言うと二人はしぶしぶと解放してくれた。......少し頭の上が寂しくなったな。
俺はすたすたと先を急ぐ。
「クレインは......どっちがいいのよ」
「そうですよッ、クレインさんは僕とエレンさん、どっちの方が好きなんですかッ!?」
「ええ....」
突然の無茶ぶり。これ、パターン的にどう答えてもバッドコースしか見えない負けイベントじゃん。
「い、いや。どっちも同じくらい好きだぞ。仲間としてな?」
「そうじゃなくて、異性としてッ」
「俺とお前らは同性だよッ」
「心は男ですよねッ」
「そうだけどな、そうじゃなくて....ああーッもう!!」
どう答えるべきか頭を抱えたくなる。
前世では羨ましく思っていたイベントに今遭遇している。
感想は、今まで羨ましいと思っていてすみませんでした許してください何でもしま(ry
思考が暴走し始めたその時、俺の【索敵】に反応があった。恐らくは魔獣だろう。
心のなかでガッツポーズを決めるッ。ナイス、これでこの沼から抜けれる。
「ま、魔獣が近づいてきてるぞッ。ほら戦闘準備ッ!!」
「逃げましたね、クレインさんは意気地無しなんですね」
「ダサいわね、あなた」
うるせえッ、その意気地無しでダサい奴に勝手に惚れたのはお前らだろうがッ。
後ろから半眼で見られてる気がするが無視無視。
「さーッ、かかってこいやぁッ!!」
ランクDの魔獣《パラライズアント》の群れと交戦しはじめて数分、数十匹いた大きな蟻は残り十匹に減った。
パラライズアントが上体を大きく反らし、口の中から【麻痺液】を出してくる。
それを軽くかわし、蟻の間接部分に剣を突き立てて切断する。
「風よ、我が呼び掛けに答え、その力を今、障害を捕らえる籠となれッ【ウインドウゲージ】!」
エレンのスキルにより蟻達が風の籠に囲まれ、一ヶ所に固まる。
「幾本もの凶器と化し、敵を刺し貫けッ【影針殺域】!!」
一箇所にまとまった蟻達の足元にステーデの影が広がり、生えてきた針に刺し貫かれて絶命する。
「これで全部か....」
初めて相手にする魔獣だったが知識として知っていたことと、ランクが低く弱かったため問題なく狩る事ができた。
《報告。【可能性獲得】の効果により、パラライズアントの固有スキル【麻痺液】【毒液 】【歩道記憶】を獲得しました》
新しいスキルを獲得したようなので早速確認してみる。
【麻痺液】と【毒液】は名前の通り、体から特殊な液体を生成するパッシブスキルだ。
【歩道記憶】は自分の歩いた道を記憶して忘れないといったスキルらしい。地味なスキルだがこう言った森の中を歩く場合には便利だな。
「よし、さっさといくぞッ」
またどっちが良いかとか聞かれる前に行こう。
「うん、それでクレインはどっちがいいの?」
「早く教えてくださいッ」
聞かれたよ。もううんざりですよ....。
「あのさ、まだ告白を了解した覚えないし....」
どっちが好きとか決めなくてもいいだろ、と続けようとした。が、また【索敵】が魔獣に反応した。
僅か数匹だが、すこしづつ近づいてくる。その内一匹はそこそこ強そうだ、多分ランクCぐらいじゃないだろうか。
その魔獣は草木を掻き分けて姿を現した。
それは......巨大な蜘蛛だった。そのうち一匹は蜘蛛の胴体に女性の上半身が生えていたが知性を持たないのか、野生的な唸り声を上げている。
あれは確か......
「あれはビッグスパイダーとアラクネッ。アラクネはランクC-の魔物ですが....知性はないですね、あれは魔獣と判断していいでしょう」
ステーデが説明でそれがなんと言う魔獣なのか教えてくれるが頭に入ってこない。体がへたりこんでしまった。
ダメなんだよ....あれだけはマジ無理....ッ。
「クレインッ!?」
座り込んだ俺に二人が驚きの声を上げる。
その時、二人の注意が俺にそれ、俺は何の構えもとっていなかった。
数匹のビッグスパイダーが俺めがけてとんできた。
「なッ!?こ、こっちくんにぁああああ!!」
思わず【炎帝】発動。もとから使えこなせてないスキルを混乱した状態での使用。
勿論暴走しました。
森の中で大きな爆発と火柱は生まれた。
《報告。【可能性獲得】の効果により、ビッグスパイダー、アラクネの固有スキル【粘糸】、【鋼糸】を獲得しました》
「まさかクレインにあんな弱点が合ったなんてね」
あの後、俺の周りの木々と一緒にアラクネ達を吹き飛ばした俺は、幾つかの新しいスキルを手にいれて、身体中煤まみれで座っていた。
因みに新しいスキルは粘性のある糸を出す【粘糸】と鉄のように硬い糸を出す【鋼糸】、【毒物耐性】だ。
粘糸と鋼糸を組み合わせて巣を作るのだとかなんとか。
「仕方ないじゃないか。あんなグロテスクな姿してるのが悪い」
ちなみにステーデがエレンを掴んで避難したため仲間には被害はなかった。
「もう二度とあんな魔獣には遭遇したくない」
「なら、何かクレインさんにお願いがある時は蜘蛛を使って脅迫でもしましょうかエレンさん」
「そうね、私もっと丈夫で可愛い服が欲しいな」
「お前らも燃やすぞッ。ていうか何でこう言う時は仲がいいんだッ!?」
謎だ。あんなに歪みあっていた二人のこの共感のしかた。
「それにしてもあなた汚れたわね」
改めて自分の今の出で立ちを確認してみる。
中に着てる服もコートも破けたり燃えたりはしてないが、汚れてしまっている。
服に限らず、俺の肌も髪の毛にも砂やら燃えた木の灰やら積もってる。
「そうだな....どっかで着替えるなり何なり出来ればいいんだけどな」
「それならあちらの方に水の流れる音がしますよ。そこで水でも浴びたらどうですか」
さすが黒狼族、いい耳をお持ちですね。いやスキルか?
「そうだな、なら軽く汚れを落としてくるよ」
おれが歩き出すと何故か二人も着いてこようとする。
「どうしたんだ?」
「僕達も一緒に水浴びでもしようかと....」
「決してクレインの裸を見たいとかじゃないわよ」
「腹心丸見えだ、ここで待ってろッ」
それに、俺の体は女でも精神は男。お前らがいたら嫌でも意識してしまう。
「な、なら御背中を流しますッ」
「いらんッ」
今さっき手にいれた【粘糸】と【鋼糸】をあちこちに張り巡らせ、逃げるようにその場を離れた。糸を上手く操るのは難しく少し手間取るが、動きを妨害できればいいから少し適当に張っておいた。
【索敵】で二人の動きを確認すると、どうやら諦めたらしく、その場から動いていない。
蜘蛛は嫌いだが、蜘蛛のスキルは大分役に立つようだ。これから糸の扱いも覚えていこう。
ステーデの指した方角へ進んでしばらくたつと、小さな綺麗な池があった。
服を脱ぎ、池の中に入って水を浴びる。なんか外で裸になる機会多すぎじゃないか、俺。
てか今更だけど、【水生成】で良いんじゃないかと思った。
こう、スキルと言うのはやっぱり便利だなー、と改めて考える。今まで何気に使っているスキルを俺は上手く使えているかどうか、効率のいい使い方が無いか考える。
炎帝戦の最中【連続詠唱】というパッシブスキルをてにいれた。このスキルは一度発動したスキルを続けて発動するとき、詠唱文を簡略化できるらしい。
これをでアサルトスキルを続けて発動すれば火力が上昇できる。
さっき手にいれた【粘糸】は粘性の糸を出すことができる為簡単なトラップにもなるだろう。
これが可燃性なら、糸を燃やして捕まえた獲物を焼いたり。
【鋼糸】は強度の高い糸を出すスキルだ。
こちらは所持者の各種耐性が反映され強度も変わるらしい。強度の割に普通の糸と変わらない柔らかさを持つため、工芸や衣服の素材に使えるかな。何処かに売るのもアリだな。
......個人的には漫画やアニメでよくみる糸使い見たいな真似をしてみたいな。
こう、シュッと捕まえてバラバラバラバラァ、みたいな。ちょっとこっそりと練習しよう。
体と服の汚れを落とした俺は、洗うときに濡らした服を【炎帝】の練習がてらに炎を調整しながら乾かしていた。
このスキルだって俺が使いこなせてないだけだ。少しずつ練習していかないと。
......そうだ、確か魔剣はスキルを持ってて所有者に使いやすく形状が変化するんだったか。
「なら....ああいう魔剣もいいな」
俺のスキルに合うだろうな。頼んでみるかな。
俺がこれから手に入るかもしれない武器を妄想していると、金属が弾かれる音が聞こえてきた。
丁度エレン達を置いてきたあたりからだ。おそらく何者かの武器が弾かれる音。
「おいおい....こんな森のなかで誰だよッ」
魔王軍の追ってだったら面倒だな。
俺は半乾きの服を急いで着て音のする方、二人の元へ走り出した。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
129
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる