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第16話 裏切り者の使用人を捕まえた!
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俺に憑依したまま、エルラムがアリスちゃんの頭を優しく撫でる。
「どうしたんじゃ。ワシにもわかるように説明してみよ」
『あのね……ユーリンお姉ちゃんとリアお姉ちゃんがそろそろ寝ると言って、その前にワインでも飲もうということになったの。それで部屋に持ってきてくれたワインを二人で飲んでたの。するといきなり、リアお姉ちゃんが苦しみながら倒れちゃったの』
アリスちゃんは腕で涙を拭きながら、必死に訴えてくる。
そういえばクエンオット商会の邸で、ロマリオが言っていたな。
金を掴ませて、ロックウェル商会の使用人を寝返らせたって。
ということは、その使用人がユーリンとリアのワインに、ロマリオから託された毒を混入させたのか。
倒れているリアの方へ視線を向けると、ベッドの上に寝ている彼女の体を、ユーリンさんが必死に抱きかかえていた。
その様子を見たエルラムは、アリスちゃんを連れてゆっくりと二人の元へ歩み寄る。
「ワシに任せるがよい。リアのことは治癒してみせよう」
「え? アナタはトオル君よね? 以前に倒れた者達は治癒師でも治せなかったのよ。リアを治療できるの?」
「この毒は通常の毒ではない。おおよその見当はついておる。毒に呪術を付与しているのじゃろう」
呪術と聞いて、ユーリンさんの顔色が青くなる。
エルラムは大きく頷くと、リアの額に手を置いて、ブツブツと詠唱を始めた。
「この世を統べる女神よ。この者に清浄の光を。邪悪なる鎖を断ち切りたまえ。ホーリークリーン」
その言葉に応えるように、リアの体からどす黒いドロドロとした液体が抜け出し、空気中に霧散していく。
それと呼応するように真っ白だったリアの顔色が徐々に赤味を帯び始め、彼女の呼吸は落ち着いた寝息へと変わっていった。
それを確かめた後、エルラムは穏やかに微笑んで、憑依を解いて俺の体から抜けて出る。
すると一気に体が重くなり、力が入らない感覚が蘇る。
どうやら、オランとエルラムが大量に魔力を使った影響が体に及んでいるようだ。
俺がヨロヨロと立ち上がると、エルラムが声をかけてくる。
『ワシは毒を持った使用人を探して捕まえてくるとしよう』
『使用人の顔を知ってるよ、私もエルラムお爺ちゃんを手伝う』
アリスちゃんは元気よくエルラムの手を握り、二人は部屋の壁をすり抜けて去っていった。
ドッと体の疲れがでてソファでグッタリしていると、対面のソファにユーリンさんが座る。
「リアさんの容態は、随分と落ち着いたわ。トオル君、先ほどはいったい何をしたの?」
「俺がしたんじゃないですよ。俺と一緒にいる幽霊が、俺の体に憑依して、魔法を使ったんですよ」
「ネクロマンサーって、そういうこともできるのね」
神妙な表情でユーリンさんが大きく頷く。
ネクロマンサー、死霊魔術がどんな魔術なのか詳しくは知らない。
だって、そんな異能は最初から持ってないからね。
するとユーリさんが、両手を両ひざに添えて頭を深々と下げる。
「できれば、その幽霊さんの力を借りて、特殊な毒で倒れている皆を助けてほしいの。追加の報酬なら出しますから、どうかお願いするわ」
「わかりました。俺も死人が出るのは嫌いだし、エルラムにお願いしてみますよ」
「エルラム……その名を聞いたことがあるわ。古代文明の頃に魔法を極めた賢者という言い伝えがあったり、魔法士の祖とも言われる神話の中に登場する人物よ。まさか、そんな神話級の霊を使役しているの?」
「それは何かの勘違いでしょう。エルラム自身は元賢者とか言っていますけど、ただのオッパイ好きのエロジジイの幽霊ですよ」
エルラムが、自分が霊であることを利用して、浴室へ入っているリアを覗いることを俺は知っている。
あの興奮してニヤニヤしている姿は、ただのエロい爺さんだ。
そんなことを話していると、いきなり背中の後ろからエルラムの声が聞こえてくる。
『女性であれば、誰もよいわけではないぞ。ワシが愛でるのはスタイルの良い美少女と美女だけじゃ』
「変態な主張を大声でするな!」
俺とエルラムが言争っていると、突然に扉が猛烈な勢いで開き、使用人であろう少女が、カクカクと変な動きをしながら、部屋の中へ入ってきた。
「私の体、どうなってるの? どうして勝手に動いてるの? 気持ち悪いから、誰か私を止めて!」
パニックを起こして錯乱する少女を見て、俺はエルラムに声をかける。
「彼女に何をしたんだ?」
『ワシは何もしておらん。アリスが彼女の体に憑依して、この部屋まで連れてきただけじゃよ』
意識まで憑依せずに、体の制御だけを奪ったのか。
自分の意志に反して体が勝手に動くのは、すごく怖いだろうな。
少女の心を挫くにはいいかもしれない。
俺はソファから立ち上がり、少女に向けて人差し指を向ける。
「これはネクロマンサーである俺の魔法だ。死霊魔術を使ってお前の体を乗っ取った。素直に従わなければ、お前をゾンビに変えてしまうぞ。そうなりたくなかったら、素直に従え」
「「「「ヒーーー!」」」」
少女が悲鳴をあげるのはわかるけど、どうしてユーリンさんとエルラムまで悲鳴を上げてるんだよ。
それにアリスちゃんまで泣きながら、少女の体から飛び出してくるなんて、ちょっと脅し過ぎたのかも。
よほど怖かったのか、アリスちゃんはエルラムの体にしがみ付き、頭を撫でられている。
フーっと大きく息を吐いて、気持ちを切り替えた俺は少女に問いかける。
「ユーリさんを裏切り、これまで毒を盛った経緯を話してもらおうか」
「申し訳ありません。母と妹が突然に病で倒れて……治癒師に治療してもらう資金と、薬師に薬を作ってもらう資金がどうしても必要だったんです。家族のためとはいえ、大金に目が眩んでユーリン様を裏切りました。申し訳ありません」
あれ? 家族が病で突然に倒れる?
それってリアのケースと似ているような?
俺は首を傾げながら、少女に問いただす。
「大金を貰ったんだから、治療師に診察してもらったんだろ。母親と妹の容体は治ったのか?」
「それが……原因不明の病らしく、治療師でも完治させることは無理だと言われて……」
やはり、そういうことか。
まずは使用人を裏切らせるために、少女の家族を狙って、呪術を付与した毒を飲ませたんだろうな。
厳重に警備されている邸で、ユーリさんを狙うより、庶民の家で暮らす使用人を狙うほうが簡単だもんな。
人の命を何とも思わない、こんな汚い手段をしてくる連中は大嫌いだ。
少し懲らしめてやったほうがいいかもしれないな。
「どうしたんじゃ。ワシにもわかるように説明してみよ」
『あのね……ユーリンお姉ちゃんとリアお姉ちゃんがそろそろ寝ると言って、その前にワインでも飲もうということになったの。それで部屋に持ってきてくれたワインを二人で飲んでたの。するといきなり、リアお姉ちゃんが苦しみながら倒れちゃったの』
アリスちゃんは腕で涙を拭きながら、必死に訴えてくる。
そういえばクエンオット商会の邸で、ロマリオが言っていたな。
金を掴ませて、ロックウェル商会の使用人を寝返らせたって。
ということは、その使用人がユーリンとリアのワインに、ロマリオから託された毒を混入させたのか。
倒れているリアの方へ視線を向けると、ベッドの上に寝ている彼女の体を、ユーリンさんが必死に抱きかかえていた。
その様子を見たエルラムは、アリスちゃんを連れてゆっくりと二人の元へ歩み寄る。
「ワシに任せるがよい。リアのことは治癒してみせよう」
「え? アナタはトオル君よね? 以前に倒れた者達は治癒師でも治せなかったのよ。リアを治療できるの?」
「この毒は通常の毒ではない。おおよその見当はついておる。毒に呪術を付与しているのじゃろう」
呪術と聞いて、ユーリンさんの顔色が青くなる。
エルラムは大きく頷くと、リアの額に手を置いて、ブツブツと詠唱を始めた。
「この世を統べる女神よ。この者に清浄の光を。邪悪なる鎖を断ち切りたまえ。ホーリークリーン」
その言葉に応えるように、リアの体からどす黒いドロドロとした液体が抜け出し、空気中に霧散していく。
それと呼応するように真っ白だったリアの顔色が徐々に赤味を帯び始め、彼女の呼吸は落ち着いた寝息へと変わっていった。
それを確かめた後、エルラムは穏やかに微笑んで、憑依を解いて俺の体から抜けて出る。
すると一気に体が重くなり、力が入らない感覚が蘇る。
どうやら、オランとエルラムが大量に魔力を使った影響が体に及んでいるようだ。
俺がヨロヨロと立ち上がると、エルラムが声をかけてくる。
『ワシは毒を持った使用人を探して捕まえてくるとしよう』
『使用人の顔を知ってるよ、私もエルラムお爺ちゃんを手伝う』
アリスちゃんは元気よくエルラムの手を握り、二人は部屋の壁をすり抜けて去っていった。
ドッと体の疲れがでてソファでグッタリしていると、対面のソファにユーリンさんが座る。
「リアさんの容態は、随分と落ち着いたわ。トオル君、先ほどはいったい何をしたの?」
「俺がしたんじゃないですよ。俺と一緒にいる幽霊が、俺の体に憑依して、魔法を使ったんですよ」
「ネクロマンサーって、そういうこともできるのね」
神妙な表情でユーリンさんが大きく頷く。
ネクロマンサー、死霊魔術がどんな魔術なのか詳しくは知らない。
だって、そんな異能は最初から持ってないからね。
するとユーリさんが、両手を両ひざに添えて頭を深々と下げる。
「できれば、その幽霊さんの力を借りて、特殊な毒で倒れている皆を助けてほしいの。追加の報酬なら出しますから、どうかお願いするわ」
「わかりました。俺も死人が出るのは嫌いだし、エルラムにお願いしてみますよ」
「エルラム……その名を聞いたことがあるわ。古代文明の頃に魔法を極めた賢者という言い伝えがあったり、魔法士の祖とも言われる神話の中に登場する人物よ。まさか、そんな神話級の霊を使役しているの?」
「それは何かの勘違いでしょう。エルラム自身は元賢者とか言っていますけど、ただのオッパイ好きのエロジジイの幽霊ですよ」
エルラムが、自分が霊であることを利用して、浴室へ入っているリアを覗いることを俺は知っている。
あの興奮してニヤニヤしている姿は、ただのエロい爺さんだ。
そんなことを話していると、いきなり背中の後ろからエルラムの声が聞こえてくる。
『女性であれば、誰もよいわけではないぞ。ワシが愛でるのはスタイルの良い美少女と美女だけじゃ』
「変態な主張を大声でするな!」
俺とエルラムが言争っていると、突然に扉が猛烈な勢いで開き、使用人であろう少女が、カクカクと変な動きをしながら、部屋の中へ入ってきた。
「私の体、どうなってるの? どうして勝手に動いてるの? 気持ち悪いから、誰か私を止めて!」
パニックを起こして錯乱する少女を見て、俺はエルラムに声をかける。
「彼女に何をしたんだ?」
『ワシは何もしておらん。アリスが彼女の体に憑依して、この部屋まで連れてきただけじゃよ』
意識まで憑依せずに、体の制御だけを奪ったのか。
自分の意志に反して体が勝手に動くのは、すごく怖いだろうな。
少女の心を挫くにはいいかもしれない。
俺はソファから立ち上がり、少女に向けて人差し指を向ける。
「これはネクロマンサーである俺の魔法だ。死霊魔術を使ってお前の体を乗っ取った。素直に従わなければ、お前をゾンビに変えてしまうぞ。そうなりたくなかったら、素直に従え」
「「「「ヒーーー!」」」」
少女が悲鳴をあげるのはわかるけど、どうしてユーリンさんとエルラムまで悲鳴を上げてるんだよ。
それにアリスちゃんまで泣きながら、少女の体から飛び出してくるなんて、ちょっと脅し過ぎたのかも。
よほど怖かったのか、アリスちゃんはエルラムの体にしがみ付き、頭を撫でられている。
フーっと大きく息を吐いて、気持ちを切り替えた俺は少女に問いかける。
「ユーリさんを裏切り、これまで毒を盛った経緯を話してもらおうか」
「申し訳ありません。母と妹が突然に病で倒れて……治癒師に治療してもらう資金と、薬師に薬を作ってもらう資金がどうしても必要だったんです。家族のためとはいえ、大金に目が眩んでユーリン様を裏切りました。申し訳ありません」
あれ? 家族が病で突然に倒れる?
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俺は首を傾げながら、少女に問いただす。
「大金を貰ったんだから、治療師に診察してもらったんだろ。母親と妹の容体は治ったのか?」
「それが……原因不明の病らしく、治療師でも完治させることは無理だと言われて……」
やはり、そういうことか。
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