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48.ローランド兄上の覚悟
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一度は失敗して竜巻が発生したけど、二回目の実験では魔導車がひっくり返るぐらいの威力に収まった。
それでも人であれば数メートルは吹き飛ぶほどの威力はあるけど。
このぐらいであれば、怪我はあっても致命傷にはならないだろう。
僕はエミーに指示を出して、工房で作っている魔導戦車に、魔法陣の金属板を設置し、風魔法の機能を付与してもらうことにした。
魔導戦車の改良が開始されて一週間後、ローランド兄上に呼び出され、僕は玉座の間へと向かった。
部屋に入ると、ローランド兄上、シルベルク宰相、エミリア姉上、アデル兄上が揃って僕を待っていた。
皆の顔を見回すと、それぞれに厳しい表情をしている。
何かイヤな予感がして、僕はオズオズと訊ねる。
「何かあったの?」
「エルファスト魔法王国から使者が来た。アーリアを引き渡せと言ってきた」
アーリアを匿ってから、何組もの暗殺者が城に忍び込んできている。
暗殺者については、バンベルク騎士団長と近衛兵団長のリシリアが対処してくれたけどね。
その他にも僕達の気づかないうちに間者が城に潜んでいたかもしれない。
どちらにしてもエルファスト魔法王国に知られることは時間の問題だった。
シルベルク宰相は気分が重いのか、深く息を吐く。
「魔法王国側の主張は、魔導士は魔法王国が育成した者であり、その所有権は魔法王国にあると。よってクリトニア王国は速やかに魔導士を引き渡すように言っておりましてな」
魔導士を人扱いしていないところは引っかかるけど、話としては一応の筋道は立ってるよね。
ローランド兄上は両肘をデスクの上に置いて両手を組む。
「魔導士であるアーリアがクリトニア王国に亡命を求め、王宮はそれを認めて城で保護していることを使者には伝えた。すると使者がクリトニア王国が魔法王国の機密を不正に取得していると言い出したらしいんだ」
魔導士の持つ魔法陣の技術や知識は、たしかにエルファスト魔法王国の持つ機密情報だろう。
使者がそう言ってくるもの、想定の範囲内だ。
しかし、アーリアが王国に亡命を求めたとして、それを王国が庇護しただけという立場であれば、人道的視点から、王国のしていることも一概に不正とは言えないと思うんだけど。
アーリアの知識を借りて、魔法陣の研究をしたり、魔法陣を魔導戦車に付与したりしているから、魔法王国に知られれば、不正に機密情報を盗んだと言われても仕方ないよね。
両国の対話が平行線になるのは、交渉を行う前からわかっていたことだから、今更に驚くことでもない。
ローランド兄上は僕達の顔を見回して話を続けた。
「もちろん、こちらの外交官は王国としては亡命を求めた者を庇護しただけと主張した。それを受けて魔法国側の使者は、王国が魔法王国の機密情報を保持し続けること止めなければ、軍事的制裁も視野に入れると言い出したそうだ」
「とうとうエルファスト魔法王国との戦争か。戦への準備はできている。いつでも魔法王国の奴等をギャフンと言わせられるぜ」
「戦争になるかもという話をしているのに、そんなに喜んでどうするの。少しは戦う兵達のことを考えて、ちょっとは自重しなさいよ」
興奮するアデル兄上を、エミリア姉上がたしなめる。
ローランド兄上は苦々しい表情を浮かべて、ポツリと言葉を漏らす。
「ここまではイアンの予想通りだが、全面戦争になると思うかい?」
「魔法王国が強国だからと言って、いきなり全面戦争には出てこないと思うけど。小国のクリトニア王国にとっては大規模な戦になるんじゃないかな」
「魔法王国からの要望を拒否して、戦に勝てるかい?」
「魔法王国の軍を撤退させることならできると思う」
あまりに最初の戦で敵兵の死傷者が増えると、遺恨が残ってエルファスト魔法王国も本気になり、全面戦争へと発展しかねない。
そうなると後に交渉をする機会を失ってしまう。
交渉ができなければ、戦争がズルズルと長期化して、小国であるクリトニア王国のほうが不利になる。
それだけは全力で回避したい。
それに魔法王国と全面戦争になると、背後からバルドハイン帝国に狙われて、クリトニア王国は両国から戦争を仕掛けられて滅亡する可能性だってある。
もしエルファスト魔法王国と戦に突入するとしても、あくまでクリトニア王国が魔法王国と対等な立場であると知らしめる戦いでいい。
今こちらと戦をすれば、莫大な被害が出るぞと匂わせておけば、それで魔法王国は警戒して全面戦争に打って出ることはしないだろう。
そのためには初戦を短期で終わらせ、なるべく敵兵の死傷者を少なくし、圧勝する必要がある。
そうすれば、敵軍の覇気も失せ、撤退をするしか手段はなくなるよね。
シーンとした静けさが室内を覆う。
その中で、アデル兄上が腕をあげて力こぶを見せつける。
「ローランド兄上、父上にも既に決意を報告したんだろ。なんでここで尻ごみをする必要がある。後は自分達を信じてやるしかないだろ」
「そうね。いつまでもクリトニア王国が簡単に従うと思われているのも癪に障るわ。いい加減に対等な立場だってわからせてやらないと」
アデル兄上の言葉に、エミリア姉上が追随する。
僕は胸を片手で押えて大きく息を吐いて、ローランド兄上を真っ直ぐに見る。
「アデル兄上とエミリア姉上のいう通りです。今こそクリトニア王国の立場を取り戻しましょう」
「皆の意見はわかった。僕も覚悟を決めよう。これより王宮はクリトニア王国が魔法王国との戦に向けて舵を取る。これは国王代理として勅命だ。王国の兵に通達、戦の準備を進めよ」
それでも人であれば数メートルは吹き飛ぶほどの威力はあるけど。
このぐらいであれば、怪我はあっても致命傷にはならないだろう。
僕はエミーに指示を出して、工房で作っている魔導戦車に、魔法陣の金属板を設置し、風魔法の機能を付与してもらうことにした。
魔導戦車の改良が開始されて一週間後、ローランド兄上に呼び出され、僕は玉座の間へと向かった。
部屋に入ると、ローランド兄上、シルベルク宰相、エミリア姉上、アデル兄上が揃って僕を待っていた。
皆の顔を見回すと、それぞれに厳しい表情をしている。
何かイヤな予感がして、僕はオズオズと訊ねる。
「何かあったの?」
「エルファスト魔法王国から使者が来た。アーリアを引き渡せと言ってきた」
アーリアを匿ってから、何組もの暗殺者が城に忍び込んできている。
暗殺者については、バンベルク騎士団長と近衛兵団長のリシリアが対処してくれたけどね。
その他にも僕達の気づかないうちに間者が城に潜んでいたかもしれない。
どちらにしてもエルファスト魔法王国に知られることは時間の問題だった。
シルベルク宰相は気分が重いのか、深く息を吐く。
「魔法王国側の主張は、魔導士は魔法王国が育成した者であり、その所有権は魔法王国にあると。よってクリトニア王国は速やかに魔導士を引き渡すように言っておりましてな」
魔導士を人扱いしていないところは引っかかるけど、話としては一応の筋道は立ってるよね。
ローランド兄上は両肘をデスクの上に置いて両手を組む。
「魔導士であるアーリアがクリトニア王国に亡命を求め、王宮はそれを認めて城で保護していることを使者には伝えた。すると使者がクリトニア王国が魔法王国の機密を不正に取得していると言い出したらしいんだ」
魔導士の持つ魔法陣の技術や知識は、たしかにエルファスト魔法王国の持つ機密情報だろう。
使者がそう言ってくるもの、想定の範囲内だ。
しかし、アーリアが王国に亡命を求めたとして、それを王国が庇護しただけという立場であれば、人道的視点から、王国のしていることも一概に不正とは言えないと思うんだけど。
アーリアの知識を借りて、魔法陣の研究をしたり、魔法陣を魔導戦車に付与したりしているから、魔法王国に知られれば、不正に機密情報を盗んだと言われても仕方ないよね。
両国の対話が平行線になるのは、交渉を行う前からわかっていたことだから、今更に驚くことでもない。
ローランド兄上は僕達の顔を見回して話を続けた。
「もちろん、こちらの外交官は王国としては亡命を求めた者を庇護しただけと主張した。それを受けて魔法国側の使者は、王国が魔法王国の機密情報を保持し続けること止めなければ、軍事的制裁も視野に入れると言い出したそうだ」
「とうとうエルファスト魔法王国との戦争か。戦への準備はできている。いつでも魔法王国の奴等をギャフンと言わせられるぜ」
「戦争になるかもという話をしているのに、そんなに喜んでどうするの。少しは戦う兵達のことを考えて、ちょっとは自重しなさいよ」
興奮するアデル兄上を、エミリア姉上がたしなめる。
ローランド兄上は苦々しい表情を浮かべて、ポツリと言葉を漏らす。
「ここまではイアンの予想通りだが、全面戦争になると思うかい?」
「魔法王国が強国だからと言って、いきなり全面戦争には出てこないと思うけど。小国のクリトニア王国にとっては大規模な戦になるんじゃないかな」
「魔法王国からの要望を拒否して、戦に勝てるかい?」
「魔法王国の軍を撤退させることならできると思う」
あまりに最初の戦で敵兵の死傷者が増えると、遺恨が残ってエルファスト魔法王国も本気になり、全面戦争へと発展しかねない。
そうなると後に交渉をする機会を失ってしまう。
交渉ができなければ、戦争がズルズルと長期化して、小国であるクリトニア王国のほうが不利になる。
それだけは全力で回避したい。
それに魔法王国と全面戦争になると、背後からバルドハイン帝国に狙われて、クリトニア王国は両国から戦争を仕掛けられて滅亡する可能性だってある。
もしエルファスト魔法王国と戦に突入するとしても、あくまでクリトニア王国が魔法王国と対等な立場であると知らしめる戦いでいい。
今こちらと戦をすれば、莫大な被害が出るぞと匂わせておけば、それで魔法王国は警戒して全面戦争に打って出ることはしないだろう。
そのためには初戦を短期で終わらせ、なるべく敵兵の死傷者を少なくし、圧勝する必要がある。
そうすれば、敵軍の覇気も失せ、撤退をするしか手段はなくなるよね。
シーンとした静けさが室内を覆う。
その中で、アデル兄上が腕をあげて力こぶを見せつける。
「ローランド兄上、父上にも既に決意を報告したんだろ。なんでここで尻ごみをする必要がある。後は自分達を信じてやるしかないだろ」
「そうね。いつまでもクリトニア王国が簡単に従うと思われているのも癪に障るわ。いい加減に対等な立場だってわからせてやらないと」
アデル兄上の言葉に、エミリア姉上が追随する。
僕は胸を片手で押えて大きく息を吐いて、ローランド兄上を真っ直ぐに見る。
「アデル兄上とエミリア姉上のいう通りです。今こそクリトニア王国の立場を取り戻しましょう」
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