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好敵手
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「ごはん…ごはん…」
【サルヴィ地下迷宮】に入って6時間後
君の聖女の様な儚げな雰囲気はさらに強化され触ったら消えてしまいそうな程に弱々しい。まるで精霊のようだ。
単純に空腹で体に力が入らなくなってきているだけだが。
君は【大食】が【暴食】に進化して以降一日何も食べなければ餓死するほどに燃費が悪くなっている。
このままだと餓死するのも時間の問題だろう。
眼の前に豚面の亜人がいなければだが。
◆◇
ゴブリン戦の直後ここが冒険者の踏破率最下位、死亡率最高の地獄【サルヴィ地下迷宮】であること、踏破するまでは地上に出られない事を【鑑定】で調べて君は絶望で3時間程寝込んだ。
その後ゴブリン達を消化しきってお腹が空いたのと【暴食】スキルを上手く使えば踏破は不可能ではないと気付いた事、未だに【暗視】【毒物精製】【冷気操作】しか得られていないのはあまりにももったいない思った事で新たな獲物を求めて出て言った。
そうして迷宮を徘徊していたもののどんな魔物エサにも会えず餓死寸前のゾンビみたいな状態になっていたわけである。もはやどっちがモンスターだか分からない。
◆◇
君の眼の前に現れた【オーク】、通称性欲豚は君に会うなり異名にふさわしい行動をとった。
最大限濁した表現をするが今の見た目こそアレだが男としての意識がはっきりと残っている君にとってかなり不快な視線を向けてきた。
君はさっさと不快な視線を断ち切り食料を得るべく殺そうとした。
オークも君をさっさと無力化するべく剣を突き出した。
ここで君は勘違いしていた。
アレな面も確かにあるのだがオークの本質は武人だ。
同じ下位亜人でも最悪存在のゴブリンや凶暴極まりないレッドキャップとは全く違う存在だと言う事に。
ここでオークも勘違いしていた。
眼の前にいるのは単なる地上の弱者でなく戦闘力だけは超一級の化け物だということに気づいていなかった
お互いがお互いを敵だと認識していなかったのはお互いにとって不運でありお互いにとって幸運だった。
オークの繰り出した下手な勇者候補にも匹敵する程の斬撃を君はなんとか龍爪で受けた。
その一合で君には分かった、オークの彼がどれほど愚直に真摯に剣の鍛錬に取り組んでいたか、そして相手も君がどれほど愚直に真摯に格闘の鍛錬に取り組んでいたかを理解した。
それによってお互い獲物ではなく敵と判断した。
君はオークの剣で脇腹をえぐられながらも噛みつき肩口をえぐり取って食らった。
君は生前では飯のことしか頭に無いゴリラ扱いされていたが君がもっとも好きなのは強者との戦闘だ。食欲との比率で言ったら49:51くらいはある。
「楽しい!楽しい!」「■■■■!!」君達は笑いながら突き切り殴り喰らいあった。このままいつまでも打ち合っていたい。終わらせたくない。
もはや眼の前のこいつは敵でなく好敵手《友》だ。今回だけでなく何度も何度も何度も何度も戦いたいとお互いに思った。
君もオークも好敵手に仲間になって共に迷宮を脱出しないかと持ちかけようとしたがそれはこの好敵手への最大限の侮辱だと思い辞めた。
そもそも言葉が通じないので言ったところで意味は無かっただろうが。
君は毒物精製で作ることのできる最強の毒を冷気操作で凍らせ作り出した凍結毒槍を前に放った。刺突が刺さった。
刺さった瞬間に冷気操作を解除したため毒槍は毒の塊となりオークの血を巡った。
勝った!君がそう思った瞬間に彼の傷口から鉄砲のように血が飛び出す。彼は自身の毒入りの血を君の目に吹きかけてきた。
彼が使ったのはマジックアイテム【血潮の指輪】
血流操作の効果を持ち主にパンプアップによる身体能力強化に用いるが今回の様に毒を排出したり血で目潰しをできたりもする。
基本的に下位亜人を馬鹿で知恵の回らないものだと考えている人間種、及びに上位亜人はオークがマジックアイテムを使って来るなど考えもしない。
その思い込みを活かしてこのオークはマジックアイテムを利用した不意打ちで何度も勝利を収めてきた。
好敵手を不意打ち気味の戦法で殺す事にオークも躊躇いを覚えたが好敵手だからこそ不意打ち込みの自らの全てを出し切って相手するのが敬意であると思いオークは目潰しを使ったのだった。
さらば我が友、そう思い剣を振ろうとしたオークの足が払われる。それと同時に君の細い背中がオークの顔面にぶつかり鼻と目を破壊する。鉄山靠だ。
【暗視】を持つ君には目潰しは効果を発揮しなかった。
好敵手への郷愁に浸っていたオークの隙は致命傷を与えるには十分な時間だった。
君は恐ろしくアレな人間性をしているが他者の努力へ敬意を払い憧れる。
「お前、称賛、値する、誇れ!」
爪で内蔵を引きずり出してトドメを刺しながらもそう告げた君にニヤリと笑いかけながらオークは死亡した。
言語こそ通らないものの言いたい事は伝わったのだろう。
一片の悔いもなく満足に生き抜いたであろう表情の死体が転がった。
5分と経たずに君の腹の中に送られたが。
オークからは身体能力等の基礎能力ステータスと剣術といった基礎技術アビリティはコピーできたものの特殊能力スキルはコピーできなかった。
まともな人間ならさっき散々好敵手扱いしていたのに食うのかよと思うかもしれない。
しかしそれはそれ、これはこれ、だ。
君のポリシーは弱肉強食だ。
勝った以上その肉を全て食らうのは敬意であり義務と考えている。
それと同時に君は自身も弱者を食らうが強者に食われるときは潔く食われるべきだと心底思っている。
弱肉強食の摂理から自身だけ逃げ出すのは許せない。
それ故にどんな強者相手にも食われないよう君は強くなる研鑽を欠かさない。
勝っている間だけ弱肉強食理論を振りかざし負けている時は弱者であることを盾に卑屈に命乞いをするようなやつ―主に盗賊―を散々見てきてさらにその信念は強化された。
もっともそいつ等は勇者候補時代の君に物理的に食われてもうこの世には残っていないのだが。
【サルヴィ地下迷宮】に入って6時間後
君の聖女の様な儚げな雰囲気はさらに強化され触ったら消えてしまいそうな程に弱々しい。まるで精霊のようだ。
単純に空腹で体に力が入らなくなってきているだけだが。
君は【大食】が【暴食】に進化して以降一日何も食べなければ餓死するほどに燃費が悪くなっている。
このままだと餓死するのも時間の問題だろう。
眼の前に豚面の亜人がいなければだが。
◆◇
ゴブリン戦の直後ここが冒険者の踏破率最下位、死亡率最高の地獄【サルヴィ地下迷宮】であること、踏破するまでは地上に出られない事を【鑑定】で調べて君は絶望で3時間程寝込んだ。
その後ゴブリン達を消化しきってお腹が空いたのと【暴食】スキルを上手く使えば踏破は不可能ではないと気付いた事、未だに【暗視】【毒物精製】【冷気操作】しか得られていないのはあまりにももったいない思った事で新たな獲物を求めて出て言った。
そうして迷宮を徘徊していたもののどんな魔物エサにも会えず餓死寸前のゾンビみたいな状態になっていたわけである。もはやどっちがモンスターだか分からない。
◆◇
君の眼の前に現れた【オーク】、通称性欲豚は君に会うなり異名にふさわしい行動をとった。
最大限濁した表現をするが今の見た目こそアレだが男としての意識がはっきりと残っている君にとってかなり不快な視線を向けてきた。
君はさっさと不快な視線を断ち切り食料を得るべく殺そうとした。
オークも君をさっさと無力化するべく剣を突き出した。
ここで君は勘違いしていた。
アレな面も確かにあるのだがオークの本質は武人だ。
同じ下位亜人でも最悪存在のゴブリンや凶暴極まりないレッドキャップとは全く違う存在だと言う事に。
ここでオークも勘違いしていた。
眼の前にいるのは単なる地上の弱者でなく戦闘力だけは超一級の化け物だということに気づいていなかった
お互いがお互いを敵だと認識していなかったのはお互いにとって不運でありお互いにとって幸運だった。
オークの繰り出した下手な勇者候補にも匹敵する程の斬撃を君はなんとか龍爪で受けた。
その一合で君には分かった、オークの彼がどれほど愚直に真摯に剣の鍛錬に取り組んでいたか、そして相手も君がどれほど愚直に真摯に格闘の鍛錬に取り組んでいたかを理解した。
それによってお互い獲物ではなく敵と判断した。
君はオークの剣で脇腹をえぐられながらも噛みつき肩口をえぐり取って食らった。
君は生前では飯のことしか頭に無いゴリラ扱いされていたが君がもっとも好きなのは強者との戦闘だ。食欲との比率で言ったら49:51くらいはある。
「楽しい!楽しい!」「■■■■!!」君達は笑いながら突き切り殴り喰らいあった。このままいつまでも打ち合っていたい。終わらせたくない。
もはや眼の前のこいつは敵でなく好敵手《友》だ。今回だけでなく何度も何度も何度も何度も戦いたいとお互いに思った。
君もオークも好敵手に仲間になって共に迷宮を脱出しないかと持ちかけようとしたがそれはこの好敵手への最大限の侮辱だと思い辞めた。
そもそも言葉が通じないので言ったところで意味は無かっただろうが。
君は毒物精製で作ることのできる最強の毒を冷気操作で凍らせ作り出した凍結毒槍を前に放った。刺突が刺さった。
刺さった瞬間に冷気操作を解除したため毒槍は毒の塊となりオークの血を巡った。
勝った!君がそう思った瞬間に彼の傷口から鉄砲のように血が飛び出す。彼は自身の毒入りの血を君の目に吹きかけてきた。
彼が使ったのはマジックアイテム【血潮の指輪】
血流操作の効果を持ち主にパンプアップによる身体能力強化に用いるが今回の様に毒を排出したり血で目潰しをできたりもする。
基本的に下位亜人を馬鹿で知恵の回らないものだと考えている人間種、及びに上位亜人はオークがマジックアイテムを使って来るなど考えもしない。
その思い込みを活かしてこのオークはマジックアイテムを利用した不意打ちで何度も勝利を収めてきた。
好敵手を不意打ち気味の戦法で殺す事にオークも躊躇いを覚えたが好敵手だからこそ不意打ち込みの自らの全てを出し切って相手するのが敬意であると思いオークは目潰しを使ったのだった。
さらば我が友、そう思い剣を振ろうとしたオークの足が払われる。それと同時に君の細い背中がオークの顔面にぶつかり鼻と目を破壊する。鉄山靠だ。
【暗視】を持つ君には目潰しは効果を発揮しなかった。
好敵手への郷愁に浸っていたオークの隙は致命傷を与えるには十分な時間だった。
君は恐ろしくアレな人間性をしているが他者の努力へ敬意を払い憧れる。
「お前、称賛、値する、誇れ!」
爪で内蔵を引きずり出してトドメを刺しながらもそう告げた君にニヤリと笑いかけながらオークは死亡した。
言語こそ通らないものの言いたい事は伝わったのだろう。
一片の悔いもなく満足に生き抜いたであろう表情の死体が転がった。
5分と経たずに君の腹の中に送られたが。
オークからは身体能力等の基礎能力ステータスと剣術といった基礎技術アビリティはコピーできたものの特殊能力スキルはコピーできなかった。
まともな人間ならさっき散々好敵手扱いしていたのに食うのかよと思うかもしれない。
しかしそれはそれ、これはこれ、だ。
君のポリシーは弱肉強食だ。
勝った以上その肉を全て食らうのは敬意であり義務と考えている。
それと同時に君は自身も弱者を食らうが強者に食われるときは潔く食われるべきだと心底思っている。
弱肉強食の摂理から自身だけ逃げ出すのは許せない。
それ故にどんな強者相手にも食われないよう君は強くなる研鑽を欠かさない。
勝っている間だけ弱肉強食理論を振りかざし負けている時は弱者であることを盾に卑屈に命乞いをするようなやつ―主に盗賊―を散々見てきてさらにその信念は強化された。
もっともそいつ等は勇者候補時代の君に物理的に食われてもうこの世には残っていないのだが。
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