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第一章
35話:展示会③
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彼からの「ありがとう」。
あの声の温度だけが、まだ体の中に残っている。
そのせいで呆けた意識のまま階段を降りて転げ落ちてしまってはまずい。しっかりとした足取りを意識して、ゆっくり階段を下りようとした時だった。
「……っいっ!」
足首のあたりに走った鋭い痛みに、思わず手すりを掴んで立ち止まる。くるぶしの辺りが妙に熱い。
邪魔にならないところまで足を引き摺って移動し、壁で体重を支えてそっと靴を脱いでみた。
うわぁ……。
そのあまりに痛々しい見た目に、我ながら口角が下がった。皮膚がめくれて、赤い皮膚が露わになっている。
展示中も少し痛んではいたけれど、ここまで酷くなっている自覚はなかった。気づかぬふりで歩き回っていたせいで悪化してしまっていたみたいだ。
気づいてしまった途端、もう痛みは誤魔化せない。歩くたびに鋭い刺激が走り、思わず顔をしかめてしまう。
あ、絆創膏……。
バッグを探り、財布の中を確認する。しかし、普段は入れてある絆創膏のストックは、こんな時に限って綺麗になくなってしまっていた。
コンビニに行くしかないか……。
たしか、こちらの路線は、階段を降りてしまえばもうコンビニはないかったはずだ。あるとすれば、3人が向かったJRの方にあるNEWDAYS。
僅かな距離ではあるが、この足で歩くのは想像するだけで気が遠くなる。今日の疲労も重なり、壁にもたれたままそんの少しの間だけ動けなくなる。
覚悟として小さく息を吐き、方向転換をしようとした。――その時だった。
「小島さん」
顔を上げると、神永がいた。久遠は、自分の目が信じられなかった。
さっき解散したばかりのはずなのに。もう帰ったと思っていたのに。
彼がこちらへ差し出している手には、コンビニの小さなレジ袋が提げられていた。
そして袋の中に透けて見えるのは――絆創膏の箱だ。
あの声の温度だけが、まだ体の中に残っている。
そのせいで呆けた意識のまま階段を降りて転げ落ちてしまってはまずい。しっかりとした足取りを意識して、ゆっくり階段を下りようとした時だった。
「……っいっ!」
足首のあたりに走った鋭い痛みに、思わず手すりを掴んで立ち止まる。くるぶしの辺りが妙に熱い。
邪魔にならないところまで足を引き摺って移動し、壁で体重を支えてそっと靴を脱いでみた。
うわぁ……。
そのあまりに痛々しい見た目に、我ながら口角が下がった。皮膚がめくれて、赤い皮膚が露わになっている。
展示中も少し痛んではいたけれど、ここまで酷くなっている自覚はなかった。気づかぬふりで歩き回っていたせいで悪化してしまっていたみたいだ。
気づいてしまった途端、もう痛みは誤魔化せない。歩くたびに鋭い刺激が走り、思わず顔をしかめてしまう。
あ、絆創膏……。
バッグを探り、財布の中を確認する。しかし、普段は入れてある絆創膏のストックは、こんな時に限って綺麗になくなってしまっていた。
コンビニに行くしかないか……。
たしか、こちらの路線は、階段を降りてしまえばもうコンビニはないかったはずだ。あるとすれば、3人が向かったJRの方にあるNEWDAYS。
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覚悟として小さく息を吐き、方向転換をしようとした。――その時だった。
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顔を上げると、神永がいた。久遠は、自分の目が信じられなかった。
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彼がこちらへ差し出している手には、コンビニの小さなレジ袋が提げられていた。
そして袋の中に透けて見えるのは――絆創膏の箱だ。
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