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第一章
46話:別れた過去④
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「ええ?勘違いされたまんま?聞かれた後、あいつと話したりしなかったの?」
霧島が聞く。
霧島は、当時の久遠が保身のために強がり、一織を傷つける発言をしたこと自体に関しては何もコメントしなかった。そこについては、久遠がしつこいほど自分を責めていることが分かっていて、それ以上自分から言う必要はないと思ったのかもしれない。
「そう、なんですよね……。あ、いや……一回連絡したんです」
今の今まで忘れていたが、その後自分から連絡をしたことを思い出した。
「『ごめんなさい。話がしたいです』ってLINEして。向こうも、『わかった。俺もしたい』って返信をくれたんです。けど……約束したところに彼は来なくて」
「約束破ったってこと?あいつが?」
霧島が意外そうに眉を顰める。久遠は首を振る。
あれはたしか──
「約束していたのは、たしか駅の近くだったんですけど……私たち家そんなに近くなかったので、学校の最寄り。けど、行く途中で、高3の人が伝言くれたんです」
緊張の足取りで約束地点に向かっていると、久遠と同じ制服を着た、見知らぬ人に話しかけられて驚いた。どうやら一織と同じクラスの人らしく、
『小島久遠さん……で合ってる?高3の神永から伝言預かってるけど、心当たりある?』
とまず確認された。久遠が困惑しながらも曖昧に頷くと、
『"悪いけどやっぱり行けない。話すことは無いと思うから"。……って伝えてほしいって言われたんだ。なんのことか分かるかな?』
なんの事情も伝えられずに、本当に伝言だけ任されたのだろう。その高3の人は、久遠に伝わるか不安そうにこちらを伺っていた。
久遠には伝わったので、目の前が真っ暗になっていくのを感じながら、辛うじて感謝を告げ、久遠も帰路に着いた。
胸が苦しすぎて、涙はもちろん、泣き声を堪えるのが大変だった。
「ほおーー……そんなことがあったんだ」
「はい。だから、見栄で傷つけてしまったあの日からずっと会ってなくて」
それからはずっと、夢の中だけで会っていた。久遠は、彼が第1志望の大学に進めたのかどうなのか、彼が今の隣を歩いているのかも知らないまま、久遠の夢の中の彼はいつまでも高校の制服姿や入院着姿だった。
オフィスで再会してしまうまでは。
「それで?今日凹んでたのはどういう経緯なの」
霧島がまたグラスを取り替えてくれる。新しく差し出された飲み物は、今度は水になっていた。
「それは――」
水を受け取った久遠が口を開きかけたその時、突然店のドアががちゃりと開いた。
「ねえぇぇ、霧島くん聞いてよ~」
それと同時に、軽い調子の声が店内の空気をぱっと明るくする。
「神永ったらひどいんだよ~?今日はせっかく飲みに行こうって言ってたのにさ、“霧島の店なら行かない”って……振られちゃったの!」
久遠の指先が、グラスの縁で止まった。耳が、その二文字を拾ってしまう。
――神永。
顔を上げた瞬間、久遠は目を疑った。
ドアから入ってきたのは、夕方、受付で見た女性だった。
霧島が聞く。
霧島は、当時の久遠が保身のために強がり、一織を傷つける発言をしたこと自体に関しては何もコメントしなかった。そこについては、久遠がしつこいほど自分を責めていることが分かっていて、それ以上自分から言う必要はないと思ったのかもしれない。
「そう、なんですよね……。あ、いや……一回連絡したんです」
今の今まで忘れていたが、その後自分から連絡をしたことを思い出した。
「『ごめんなさい。話がしたいです』ってLINEして。向こうも、『わかった。俺もしたい』って返信をくれたんです。けど……約束したところに彼は来なくて」
「約束破ったってこと?あいつが?」
霧島が意外そうに眉を顰める。久遠は首を振る。
あれはたしか──
「約束していたのは、たしか駅の近くだったんですけど……私たち家そんなに近くなかったので、学校の最寄り。けど、行く途中で、高3の人が伝言くれたんです」
緊張の足取りで約束地点に向かっていると、久遠と同じ制服を着た、見知らぬ人に話しかけられて驚いた。どうやら一織と同じクラスの人らしく、
『小島久遠さん……で合ってる?高3の神永から伝言預かってるけど、心当たりある?』
とまず確認された。久遠が困惑しながらも曖昧に頷くと、
『"悪いけどやっぱり行けない。話すことは無いと思うから"。……って伝えてほしいって言われたんだ。なんのことか分かるかな?』
なんの事情も伝えられずに、本当に伝言だけ任されたのだろう。その高3の人は、久遠に伝わるか不安そうにこちらを伺っていた。
久遠には伝わったので、目の前が真っ暗になっていくのを感じながら、辛うじて感謝を告げ、久遠も帰路に着いた。
胸が苦しすぎて、涙はもちろん、泣き声を堪えるのが大変だった。
「ほおーー……そんなことがあったんだ」
「はい。だから、見栄で傷つけてしまったあの日からずっと会ってなくて」
それからはずっと、夢の中だけで会っていた。久遠は、彼が第1志望の大学に進めたのかどうなのか、彼が今の隣を歩いているのかも知らないまま、久遠の夢の中の彼はいつまでも高校の制服姿や入院着姿だった。
オフィスで再会してしまうまでは。
「それで?今日凹んでたのはどういう経緯なの」
霧島がまたグラスを取り替えてくれる。新しく差し出された飲み物は、今度は水になっていた。
「それは――」
水を受け取った久遠が口を開きかけたその時、突然店のドアががちゃりと開いた。
「ねえぇぇ、霧島くん聞いてよ~」
それと同時に、軽い調子の声が店内の空気をぱっと明るくする。
「神永ったらひどいんだよ~?今日はせっかく飲みに行こうって言ってたのにさ、“霧島の店なら行かない”って……振られちゃったの!」
久遠の指先が、グラスの縁で止まった。耳が、その二文字を拾ってしまう。
――神永。
顔を上げた瞬間、久遠は目を疑った。
ドアから入ってきたのは、夕方、受付で見た女性だった。
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