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第一章
48話:お人形②
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┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
食べ終わった皿を前に、久遠は小さく息をついた。
「ほんっとに、美味しかったです!」
霧島が提供してくれたのは、生うにのリゾットだった。食べる前は一人で食べきれるか不安だったけれど、完食してしまった今となっては、もっと食べたかったと思うくらい絶品だった。
食べている途中で開店時間となり、ちらほらお客さんが入ってきている。毎日営業しているわけではないのに、しっかりと来客があることに久遠は驚いていた。霧島のインスタを確認して来ているらしき常連の客が多く、霧島と一言交わしてから着席していく。HALTEは本来はビストロなので、久遠みたいなおひとり様はおらず、カップルやグループが多い。
「だろ。生ものはトラックじゃ出せないからな。せっかくならここでしか食べさせらんないもん食べさせてあげたいだろ。お口に合ったんならよかった」
洗い物をしながら、にやりと笑ってくれる。ワンオペで店を回して、色々な客と会話できる余裕まで持っている様子にやっぱり感心してしまう。
「今度は誰かと来い。もっと色々食わせたいから」
「私ももっとたくさんいただきたいです。メニュー、全部魅力的すぎて」
会計をしようとした霧島は、それを止めて「初来店記念」とだけ言って財布をしまわせようとした。久遠も負けじと札を出したが、「俺は拾わないので、久遠が拾わないとここで紙切れと化しちゃうな……」と本当に受け取ってくれなかったので、久遠は食い下がり「また今度絶っ対渡しますから」と言った。ただでさえ恐縮なのに、うになんて高級食材をいただいてしまったのだ。タダ飯食らいでは済ませられない。
「駅まで送ってやれなくてごめんな」
久遠に言ってから、まだ席に座って余った酒を飲んでいるありすの方を見る。
「ありす。久遠送るの頼んでいい?」
「もっちろーん。任せなさい」
あっさりそう言うなり、ありすは荷物をまとめ始めてしまう。
「えっ、そんな!まだ19時ですし、駅も近いし大丈夫です」
2人のやり取りに久遠が慌てて言うと、ありすは肩をすくめて笑う。
「私が久遠ちゃんと一緒に帰りたいだけだよ~ん」
そう言われてしまうと、遠慮して断る隙間もなくなる。ありすの気遣いを申し訳なく思いつつ、久遠は小さくお辞儀した。
「ごめんなさい。じゃあ」
霧島は、久遠が受け入れたのを見届けると、「気をつけてな」と店の外まで送ってくれて、手を振ってくれた。
外に出ると、夜風が少しひんやりしていた。
「ほんと美味しかったねー、さっきのリゾット」
「はい。びっくりしました」
駅までの道を並んで歩く間、ありすは終始明るく、気さくだった。久遠もそれに合わせて、自然に相槌を打つ。
途中、「ね、霧島くんと久遠ちゃんってほんとに何もないの?霧島くん、すごく大事にしてる感じしたけど」と言われて、否定するのに少し難航した。
霧島とは、実はまだ片手で数えられるほどしか会ったことがない。昨日は霧島に、神永のことを話せと言われて、馴れ初めから破局までを語ってしまったけれど、本来はしがない試食係の立ち位置でしかない。
ありすから見れば仲が良さそうに見えたのかもしれないが、それは彼の気さくな態度が2人の関係を成り立たせてくれているだけだ。そう伝えたけれど、ありすは腑に落ちなそうに「えー?」とだけ言っていた。
改札前で足を止め、2人は解散した。
「じゃあここで!合コンのこと、また連絡させてもらうね!ほんっとありがとう!」
ありすの笑顔は相変わらず完璧で、神永の完璧な表情を見ている時と同じ気持ちになった。そして、お似合いの作画の2人だなとも。
笑顔で軽く会釈して、久遠は改札を抜けた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
ありすは、久遠の姿が見えなくなるまで笑顔で手を振り続けた。久遠の背中がとうとうエスカレーターに消えていくと、ありすはスマホを取り出す。
迷いなく、LINEの画面を何度かスクロールし、ある男に行き着くと画面をタップして発信する。
数コールで、すぐに繋がった。向こうから、ありすを責めるような声が飛んでくる。ありすは、口角を上げてそれをいなした。
「もしもし修斗くん?ごめんごめん、返事できてなくて。もーーう許してってば。……うん、あのね、再来週の金曜、合コンでもどうかなって。ふふ、急にごめんね。実はさ、修斗くんのこと教えたら、気になるって言ってる子いてね。久遠ちゃんって言うんだけど、カワイイ子だよ。うん、見た目は清楚っぽいし。だけど案外……押せば結構イケる子だから。うん、タイプでしょ?うんうん、狙って大丈夫系。……あほんと!?日程大丈夫?よかったぁ~。そしたらさ、周りに出会い求めてるお医者さんいる?修斗くんの方も人集められそう?……あほんと?嬉しい~~!そしたらよろしくね!ばいばいっ!」
食べ終わった皿を前に、久遠は小さく息をついた。
「ほんっとに、美味しかったです!」
霧島が提供してくれたのは、生うにのリゾットだった。食べる前は一人で食べきれるか不安だったけれど、完食してしまった今となっては、もっと食べたかったと思うくらい絶品だった。
食べている途中で開店時間となり、ちらほらお客さんが入ってきている。毎日営業しているわけではないのに、しっかりと来客があることに久遠は驚いていた。霧島のインスタを確認して来ているらしき常連の客が多く、霧島と一言交わしてから着席していく。HALTEは本来はビストロなので、久遠みたいなおひとり様はおらず、カップルやグループが多い。
「だろ。生ものはトラックじゃ出せないからな。せっかくならここでしか食べさせらんないもん食べさせてあげたいだろ。お口に合ったんならよかった」
洗い物をしながら、にやりと笑ってくれる。ワンオペで店を回して、色々な客と会話できる余裕まで持っている様子にやっぱり感心してしまう。
「今度は誰かと来い。もっと色々食わせたいから」
「私ももっとたくさんいただきたいです。メニュー、全部魅力的すぎて」
会計をしようとした霧島は、それを止めて「初来店記念」とだけ言って財布をしまわせようとした。久遠も負けじと札を出したが、「俺は拾わないので、久遠が拾わないとここで紙切れと化しちゃうな……」と本当に受け取ってくれなかったので、久遠は食い下がり「また今度絶っ対渡しますから」と言った。ただでさえ恐縮なのに、うになんて高級食材をいただいてしまったのだ。タダ飯食らいでは済ませられない。
「駅まで送ってやれなくてごめんな」
久遠に言ってから、まだ席に座って余った酒を飲んでいるありすの方を見る。
「ありす。久遠送るの頼んでいい?」
「もっちろーん。任せなさい」
あっさりそう言うなり、ありすは荷物をまとめ始めてしまう。
「えっ、そんな!まだ19時ですし、駅も近いし大丈夫です」
2人のやり取りに久遠が慌てて言うと、ありすは肩をすくめて笑う。
「私が久遠ちゃんと一緒に帰りたいだけだよ~ん」
そう言われてしまうと、遠慮して断る隙間もなくなる。ありすの気遣いを申し訳なく思いつつ、久遠は小さくお辞儀した。
「ごめんなさい。じゃあ」
霧島は、久遠が受け入れたのを見届けると、「気をつけてな」と店の外まで送ってくれて、手を振ってくれた。
外に出ると、夜風が少しひんやりしていた。
「ほんと美味しかったねー、さっきのリゾット」
「はい。びっくりしました」
駅までの道を並んで歩く間、ありすは終始明るく、気さくだった。久遠もそれに合わせて、自然に相槌を打つ。
途中、「ね、霧島くんと久遠ちゃんってほんとに何もないの?霧島くん、すごく大事にしてる感じしたけど」と言われて、否定するのに少し難航した。
霧島とは、実はまだ片手で数えられるほどしか会ったことがない。昨日は霧島に、神永のことを話せと言われて、馴れ初めから破局までを語ってしまったけれど、本来はしがない試食係の立ち位置でしかない。
ありすから見れば仲が良さそうに見えたのかもしれないが、それは彼の気さくな態度が2人の関係を成り立たせてくれているだけだ。そう伝えたけれど、ありすは腑に落ちなそうに「えー?」とだけ言っていた。
改札前で足を止め、2人は解散した。
「じゃあここで!合コンのこと、また連絡させてもらうね!ほんっとありがとう!」
ありすの笑顔は相変わらず完璧で、神永の完璧な表情を見ている時と同じ気持ちになった。そして、お似合いの作画の2人だなとも。
笑顔で軽く会釈して、久遠は改札を抜けた。
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ありすは、久遠の姿が見えなくなるまで笑顔で手を振り続けた。久遠の背中がとうとうエスカレーターに消えていくと、ありすはスマホを取り出す。
迷いなく、LINEの画面を何度かスクロールし、ある男に行き着くと画面をタップして発信する。
数コールで、すぐに繋がった。向こうから、ありすを責めるような声が飛んでくる。ありすは、口角を上げてそれをいなした。
「もしもし修斗くん?ごめんごめん、返事できてなくて。もーーう許してってば。……うん、あのね、再来週の金曜、合コンでもどうかなって。ふふ、急にごめんね。実はさ、修斗くんのこと教えたら、気になるって言ってる子いてね。久遠ちゃんって言うんだけど、カワイイ子だよ。うん、見た目は清楚っぽいし。だけど案外……押せば結構イケる子だから。うん、タイプでしょ?うんうん、狙って大丈夫系。……あほんと!?日程大丈夫?よかったぁ~。そしたらさ、周りに出会い求めてるお医者さんいる?修斗くんの方も人集められそう?……あほんと?嬉しい~~!そしたらよろしくね!ばいばいっ!」
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