【完結】僕ら二度目のはじめまして ~オフィスで再会した、心に残ったままの初恋~

葉影

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第二章

98話:帰宅後のベッド③

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 なんのことやら分からず神永を見上げると、神永はまた水を口に含んだ。喉仏が大袈裟なまでに上下するのを見届けると、神永が続ける。

「久遠ってほんと悪くてさ、言ったじゃん俺に。あなたなら触られてもいいみたいなこと。俺、ただの上司だったのに……」

 そう言われて、久遠の体は硬直した。

 合コンの日に神永が車に乗せてくれた時、助手席のドアを閉めてもらう時に浅慮のままに飛び出た言葉。

『怖くありません!』
『チーム長になら、触られても、怖くありません』

 久遠もよく覚えている。なにせ、言ってすぐ反省したのだ。忘れたくても、残念ながら印象深く残ってしまっている。

「あっ、あれは! いや……はい、たしかにあれは私もやらかしたなと思ってて」

 恥ずかしさで顔を隠そうとしたけれど、神永にまた片頬を摘まれ、逃げ場を塞がれる。

「大やらかしすぎ。間違っても俺以外に言わないでね」 

「いっ、言わないよ!」

「ほんとかなぁ、久遠って勢いに任せて変なこと言うじゃん案外」

 図星を突かれてぎくりと喉が固まった。神永はそんな久遠を見透かすように目を細めてから、また小さく息を吐いて目線を落とした。

「男としては堪んないこと言われて、自制心のテストかと思った」 

「それは、ごめんなさい……」

 久遠の知らない世界で、神永がそんな葛藤を抱えていたと聞き、気の毒に感じた。けれど次第に、それを超えるほどの割合で、喜びも湧いてくる。

 いつも、情緒を崩されているのはこちらだけだと思っていた。自分も知らないうちに彼を振り回せていたのかと思うと、良くないと分かっていても、なんだか満足感を感じてしまうのだ。そんなこと、とても言えないけれど。

「あの日、悔しかったな」

 不意に、彼がさっぱりとした声色で言った。

「え?」

「あのゴミに襲われた夜。家までは送ったけど……俺が今も久遠の恋人だったら、このまま久遠を一人にしなくて済むのになって」

 その言葉を聞いた瞬間、胸の奥が熱いもので満たされて、少し震えた。あの時神永は、独りきりの家に入っていく久遠をそんな思いで見送り、背を向けて帰っていったのか。

「だから今、すごく嬉しいよ」

 温かな声色に戻った神が、久遠の指の間に自分の指を滑り込ませて、深く深く絡め合わせた。

「これで、久遠を正々堂々守れる立場になったから」

 絡まった指先から、彼の決意のような、静かな情熱が伝わってくる。もう、上司と部下という壁に阻まれて、一人で悔しがったりセーブしたりする必要はない。

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