お腐れ令嬢は最推し殿下愛されルートを発掘するようです~皆様、私ではなくて最推し殿下を溺愛してください~

風和ふわ

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第4章 ジェイド・サン・エーデルシュタイン編

第28話:ディアの作戦

 番の指輪に導かれるまま、天馬に乗ってクリスを捜索する。
 ジェイドの天馬はとても速く、前回乗った時よりも吐き気が酷かったがディアは必死耐えた。足手まといになるわけにはいかない。

「いました! あれです! あの黒い天馬です!!」

 テルキスが指さした方を見ると前方に確かにクリスを脇に抱える黒い天馬が目に入る。そしてそれに乗っているのは黒い鎧を身に着けた何者か。
 ディアは憤慨する。

(ちょっと!! クリス様をなんて危ない姿勢で抱えているの!? あの黒騎士、なにを考えているのよ!?!?)

 怒りで我を忘れそうになるが、ここは落ち着くために深呼吸。
 ジェイドがグリフォンをさらに速く走らせるが、追走しているジェイド達に気づいたのか黒騎士も加速した。

(駄目、明らかに黒騎士の方が速い。このままでは逃げられてしまう!! 一体どうすれば……!!)

 ディアは何かないかと周りを見渡す。傍で飛んでいる天馬に乗っているテルキスを見てハッとした。

(そういえばジェイドの側近騎士のテルキスは……風魔法の使い手で弓の腕も王国一と謳われるほどだったはず。ゲームでも頼りになるプレイアブルキャラだったし、よく覚えているわ……はっ、そうだ! ここにいる三人で協力すれば、もしかしたらクリス様を救えるかも!)

 ディアはすぐさまテルキスに声をかける。

「テルキスさん!! 今の状況で弓は使えませんか!?」
「ッ!? 無理です! 届きはしますが、威力が全然足りません!!」
「ではジェイド様の黒炎魔法であなたの弓を強化すればどうでしょうか!?」
「なにか策があるのか?」

 ジェイドがディアに問いかける。ディアは頷き、「実は私の使える魔法の一つに……」とある作戦を話し始めた。
 作戦を聞いたジェイドは目を丸くする。

「本当にそんなことができるのか? かなりの精密さを求められるはずだ。こんな不安定な場所で集中できるわけがない」
「いいえ、やってみせます。ここ一年はずっとこの魔法の研究に明け暮れていたのです。絶対にやり遂げてみせます!」

 だって、クリス様を守るためだもの!
 私がそう続けると、しばらくの沈黙の後、「わかった。信じよう」という声が返ってきた。
 その信頼がほのかにディアの心を灯した。

(ゲームでも攻略難易度が高く、簡単にプレイヤーにも心を許さなかったジェイドにそんなことを言ってもらえて嬉しい! だからこそ、絶対に成功させなくては! 最推しを、守るために! やってみせる──!)

 すると、ジェイドがグリフォンをギリギリまでテルキスに寄せる。

「テルキス! 弓を一本、俺に寄越せ!」
「え、えぇ!? 本気ですか!? わ、分かりました!」

 ジェイドはなんとか手渡しで弓を一本受け取る。
 そしてそれをディアに渡した。

「これでいいな。後ろから黒炎魔法をかけるぞ。火傷するなよ」
「はい! 任せてください!」

 ジェイドの妖しい黒炎魔法がテルキスの弓矢に纏われる。

(たしかテルキスの弓矢は特別製で、魔法で壊れることはない魔道具! だから、これにジェイドの黒炎魔法を私の守護魔法で閉じ込める──)

 ディアの守護魔法を弓矢の輪郭ピッタリに宿す。そうすれば、黒炎の魔力が弓矢の中に閉じ込められる。
 しかしその輪郭ピッタリに守護魔法を作るのが大変だ。揺れる環境で集中しなければならない。しかし失敗すればクリスが誘拐されてしまう。
 ディアは冷や汗が頬を伝うのが分かった。それでも、やるしかなかった。
 慎重に弓矢に指を這わせる。魔力には核がある。その核を結界で包み、弓矢に纏わせるのだ。そうすれば、魔道具に魔力を付与することができる。
 
「──ジェイド様! できました!」
「テルキス! 受け取れ!」

 ジェイドが再びテルキスに弓矢を返す。そして、テルキスは「ああもう、分かりました!」と弓を構えた。
 そして──テルキスの風魔法で起こした突風と共に弓矢が放たれる。目にも止まらぬ速さで飛んでいく。黒騎士はそれに気づいたが、何もしない。矢が届いたとしても大した威力ではないだろうと油断していたのだろうか。そして黒騎士の予想通りに矢は徐々に減速し、あと少しのところで勢いが消えてしまう。
 
 だが。

「────ッ!?」
「うわっ!?」

 突如、矢から溢れ出したのは黒炎だ。黒炎は黒騎士が乗っている黒天馬の尾を焼いた。
 驚いた黒天馬が大きく前足を上げる。それによりクリスの身体が空中へ放り投げられた。
 ディアは思わず悲鳴を上げる。

「クリス様!!」
「……任せてください!」

 すかさず動いたのはテルキスだ。テルキスが風魔法でクリスの身体を一瞬浮かせる。その瞬間、彼は見事にクリスの腕を掴んだのだ。そのままクリスを天馬に相乗りさせる。
 クリスの無事を確認したディアは胸を撫でおろす。

「よかった……無事で……」
「おい、安心するのはまだ早いぞ!」

 ジェイドの言葉にハッとするディア。
 目の前にあの黒騎士がこちらを見据えていることに気づいた。黒騎士は剣を引き抜き、ディアに向かってその剣先を向けた。

「ディア・ムーン・ヴィエルジュ……。もしお前に会えたら伝えろと、主人から伝言を預かっている」

 酷くしわがれた声だった。まるで喉が腐っているかのような……。

「──黎明が始まるその時、我ら魔族はこのゲームを破壊するために動き出す。プロローグの舞台でな」
「……えっ?」

 黒騎士はそれだけ言い残すなり、黒天馬で雲の向こうへ消えていった。
 ジェイドはそれを追うことはしない。ただ今のやり取りに眉を顰める。

「今のは何だ? お前、魔族と繋がりがあるんじゃないだろうな?」
「え!?」

 ディアは目を丸くする。「断じて違います!」と慌てて首を横に振った。
 ジェイドはそんなディアを見て、ため息をこぼす。

「……まぁいい。お前がクリスの敵ではないことは理解した。ひとまず降りるぞ。お前には色々と誤解を解いてもらおうか」
「誤解?」

 誤解とはなんの誤解だろうか。ディアは首を傾げたが、ひとまず今はクリスが無事であることを喜ぶことにした……。
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