上 下
6 / 47

森の主と手合わせってどういうこと!?

しおりを挟む

祠に入り、歩みを進めること、数分が経っただろうか……………
森の主に案内されているが未だに細い通路が続いている
と、言うか………………
明らかに木の面積超えてるよね?
明らかにもうそれ以上の距離は歩いているよね?
俺が疑問を抱いていると森の主は俺の心を読んだのか、「ふふふ………」、と笑みを浮かべた

「驚いてますね?
実はこの中は私が過ごしやすくする為に空間魔法で広げているのです」

「空間魔法だと?
このような事が可能なのか?」

「えぇ、空間魔法とは空間を文字通り操るモノ
広げようと出来れば縮めることも可能です」

森の主はそう言いながら顔をこちらに向け、笑っていた
マジかよ………………
じゃあ俺の棲家、ワザワザ広げる必要がないじゃねぇか!?
マソラの部屋とか作ってあげないととか、考えてたんだけど、かなりの大きさになるからどうしようか、考えてた所だったのに!!
まぁ、使えるなら帰ったら使おう


「さぁ、そろそろ着きますよ」

俺が思考を動かしていると森の主が話しかけてきて、視線を前に向ければ光が射し込んでいた
そのまま奥の方へ向かっていけば次の瞬間、俺は言葉を失った

「ようこそ、私の我が家へ」

森の主はそんな俺を気にせず、そう言っているが俺は目の前の光景に理解が追いついていなかった
先程まで石畳で作られた通路を進んでいたが急に開けたと思へばそこには壮大な草原が広がっていた
上を見上げれば真っ青な空に白い雲が流れ、太陽の日差しが照らし続けていた

「これは………………」

「驚きになられたか?
これも私が住みやすくする為に工夫して作った空間でな
お気に入りなのだ」

森の主はそう言い、誇らしげに言ってるが流石にこれは凄いとしか言えねぇよ…………
だって、ここ祠の中だぜ?
それなのに空があって、太陽があって……………

いや、本当に凄すぎだろ……………

「それで………………、我をここに呼び出したのは一体、何故だ?」

「一つ、感じたのですが…………
貴方はこの世界のモノ、いいえ、人ではありませんね?」

「っ…………」

森の主は俺を真っ直ぐに見つめ、そう告げれば俺の心臓はドキッ、と跳ねた
この世界に来て、まだ数日…………
誰も俺が転生した事は分からないと思っていたが流石は森の主と言われるだけはある
俺を見た時、少しだけその目付きが変わった気がしたんだ…………

「確かに我はこの世界の住人ではない
何故と聞かれれば我にも分からん
気がついたら…………、と言うわけだ」

「そうですか…………
失礼しました  急に聞いてしまって………」

「構わん
貴様は森の主、言わば森を守護する者だ
不審なモノは注意をするのが当たり前であろうて」

「はい
ありがとうございます   では、無礼ついでに」

森の主はそう言えば一気に足を踏み込み、俺に突進してきた
って、次いでって言うな!?
まぁ………………
森の主の角は俺の胸に当たる前に止まった
当たる寸前、森の主が急にブレーキをかけたからだ

「……………何故、避けないのですか?」

「お主からは殺気を感じられなかったからな
本気ではないとすぐに気づいたわ」

帝国の城の時、黒い気配みたいなのが感じたからそれが殺気だとすぐに分かった
そして森の主からはそれが感じられなかった
だから本気で俺を攻撃することはないと分かった

「流石ですね
では、改めて言います
私と手合わせ、お願いします」

「やれやれ…………、森の主よ
貴様、相当、曲者よなぁ?」

「ふふふ♪
さぁ、どうでしょう?」

森の主は笑いながら下がっていけば距離を置いた
俺の了承無しに距離を置くんかい…………
いや、俺が断らないと知ってのことか…………
まぁ、俺も断る理由は無いし、この世界で初めての強者と言える存在との手合わせだ
俺としては今の俺がどの位、身体に馴染んでいるか、知るいい機会だ

「では、始めますよ
開始の合図はどうしますか?」

「決まっておろう」

森の主に聞かれ、俺はコインを作れば指で弾いた
コインはクルクルと宙を舞い、ゆっくりと地面に落ちていき、キンっとコイン音が響いた

「参る!!」

落ちた瞬間、森の主は一気に駆け出し、俺に向かってきた
……………馬鹿正直に

「ふぬっ………………」

さて、どうしよう…………
普通ならフェイントを入れるが……………
あの様子じゃ本当に真正面からだよな……………

ならば乗ってやるか

ギリギリまで引きつけてから俺は森の主の角を掴んだ
って、すげぇな
少し衝撃で下がったぞ

「掴むのは不正解だったな」

森の主は不敵な笑みを浮かべれば突然、雷光が走り、俺に雷撃が走った
しばらくして雷撃が止み、森の主がゆっくりと引いていくが突然、表情が変わった

「っ!?  何!?」

「ふぅ、さっぱりしたぞ
お主の電撃、我には丁度いいくらいだ」

俺がそう言い、笑い、森の主の顔を見ればめっちゃ驚いている
いや、正直、これっぽっちも効いちゃいねぇんだが………………
マジであっ、ピリッときた位にしか感じなかったがな………………
俺がそんなことを考えていれば森の主は角を振りはらり、距離をとった

「まさか私の雷撃を浴びても無傷とは……………」

「言うたであろう
我には丁度いいと………」

「なるほど……………
ならば殺す気で丁度いいってわけか」

そう言うと森の主の周りに雷撃が落ち始め、徐々に狭張れば森の主に大量の雷撃が落ちた
顔を庇いながら様子を見れば砂煙が晴れればそこには雷撃を身に纏ったユニコーンがそこに居た

「まさか【雷撃集装】を使わせられるとはな」

森の主はそう言い、身を低くして、構えたが俺は他の事で気が散っていた
お前、それ、どっかで見たことあるぞ!?

心の中でツッコミを入れていれば森の主の姿が消え、既に俺の内側に潜り込んで角を突き立てているのに気付いた
すぐに角を掴めば衝撃で後ろに後退させられたがダメージは受けてねえ

「倍返しだ」

俺は左手で角をしっかり握れば、その無防備な体に何度も拳を叩き込んだ

「ぐぅ!?」

森の主はまた払えば距離を置くが今度は逃すまいと俺も距離を詰める

「なっ!?」

「驚く事ではなかろう
原理がわかれば誰にでも出来るであろう」

そして驚愕してる森の主の顔面を思いっきり殴り飛ばせば手を空に向けて、魔力を練る

「使ってみるか…………
【スター・コメット】」

俺がそう唱えれば…………

「なっ!?」

空から拳型の隕石が無数に落ちてきて、森の主に降り注いだ
岩の陰に避難して、衝撃に備えてた俺は地響きがなくなるのを待って岩の陰から顔を覗かせた
そして森の主が居た所に向かえば…………

「う、うわぁ……………」

そこにはクレーターがデコボコと出来ていてその一番、深いところに森の主が居た
ボロボロで息をしているのがやっとと見える
少しやりすぎたな………
反省をしながら俺は森の主に近づいて、回復魔法をかければ一瞬にして、傷も残らず癒した
うん、やっぱり回復魔法はすごいな

「私の、負けだ………」

「いや、お主もなかなか…………
少しでも油断していれば我が負けていたであろう」

「謙虚ですね」

「事実を言ったまでだ」

そう言って立ち上がれば周りを見渡した

「ここも直すか?」

「いえ、それは私がやります
それよりいい時間なので戻りませんか?」

森の主がそう言い、俺は時計を確認すれば祠に入って三時間、と言ったところか
たしかにそろそろ戻らないとマソラが心配だ

「わかった
マソラを待たせるわけにはいかんからな」

そう言い、俺は入り口へ向け、歩き出した
後ろで何かを考え、微笑んでいる森の主に気づく事なく……………
しおりを挟む

処理中です...