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第一幕
ガザードル屋敷にて
しおりを挟む突然、目の前が真っ白になり、眩しくて目を瞑っていたけどそれも治り、突然、感じた浮遊感も無くなった事が分かると、私はゆっくりと目を開けた
「フォルティナ 大丈夫か?」
「っ は、はい………」
目を開けるとシモン様の顔が近くにあり、私は返事を返しながら少し熱くなった頬を触った
「お嬢様 お怪我は?」
「え、えぇ、無いわ アンは?」 「ありません」
アンの声に私は答えながらアンを見た
アンの方も怪我はしていないみたいだから安心して、ホッとした
私の専属メイド、【アン・フェアリー】は私が産まれた日からずっと私の傍に居てくれて、私にとってはもう一人のお母様みたいな人……
元々、アンはエルフだから長寿で私のお母様が二十歳過ぎた頃から、ずっとお母様の元でメイドをしていた
だけど私のお母様は私が5歳の頃に病気で亡くなってしまった……
その頃からアンは、ずっと辛い時も傍に居てくれた……
「ここは?」
シモン様が周りを見渡しているのが分かれば、私も周りを見渡した
「ここは……、私の屋敷です」
そこは私の屋敷で今……、居る場所は忘れたくても忘れられない……
お父様が私を奴隷のように扱った部屋だった
「お嬢様」
上手く息が吸えなくて、体も震えが止まらなくなり、私は自分を抱きしめるとアンが私を抱き寄せてくれた
「つまり、お前が呼んだって事でいいんだな?」
そんな私の様子を知ってか、シモン様がゆっくりと私の前で守るように立ってくれてから部屋の奥を見ていた
「くくく、まさか私の愛するフォルティナだけを転移させたつもりがオマケが付いてくるとはな」
その声を聞き、全身の毛が逆立つくらいの恐怖を感じ、歯がガチガチと小さな音を立てながら震えている
今にも貴族の令嬢であることを忘れて、この場で胃の中のモノを吐き出したいと思った
それでも私はアンに支えられながら立ち上がるとシモン様の隣に立ち、口を開いた
「お父様…………」
今、私達の目の前に立っているのは私の父である【ギャン・ガザードル】……
お母様が亡くなった日からすっかり優しかった父の姿はなく、今では太ってしまい、かつて【剣の腕ならば、国の貴族の中でも居ない】と言われた凛々しい姿は無くなってしまった
幼い私の両手を掴み、宙に浮かせれば、着てた服を破き……、私の体を舐め回し……、今でも嫌がる私を痛ぶり、無理矢理……
「う げ、げぇぇえぇぇ……………!!」
「お嬢様!?」
お父様の姿を見た瞬間、我慢出来ず、私はしゃがみ込み、胃の中のモノを吐き出した
アンは私を心配し、背中を撫でてくれて、ずっと「大丈夫、大丈夫ですから」と声をかけてくれた
だけど、無理……
私はもうお父様を、人として見ることが出来ない……
「お前、何のためにコイツを此処に転移させた?
お前の計画は既に破綻しているぞ」
私の様子を気につつ、シモン様がゆっくりと構えながらお父様に話しかける……
いいえ、問いただしています……
「そうだな 現にフェルストリー家は健在
貴様も生き延びてしまっておる
これでは最高の状態となったフォルティナを犯せないではないか」
お父様はそう言い、立ち上がると自分の椅子の背もたれに掛けてあった剣を取った
(アレは……、お父様が現役の時に使ってた剣……)
その剣は小さい頃からずっとお父様、お母様と一緒に見てきた剣でその時、初めてお母様が、お父様との馴れ初めを少し語ってくださった……
「おいおい、最高の状態?
最低最悪の状態の間違いじゃねぇのか?」
「何を言う?
それこそが最高ではないか」
シモン様が警戒心が見て分かるくらいに強くなり、いつでも攻撃を仕掛けれる体勢が出来ていた
そんな中、お父様が淡々と話している
「せっかく婚約という形で私から離れられると希望を持たせ、その希望であるお前達、フェルストリー家を消せば、フォルティナは巻き込んだと深く傷つき、絶望するだろう
そこを私がフォルティナの可憐な処女を奪う事で、私の愛するフォルティナは正真正銘、私だけの可愛い娘になるのだ」
お父様はまるで正気が感じられない眼を泳がせながらまるで自分の夢を大きく話す子供のような無邪気さで語っていた
その内容は……
「お前……、とんだド屑だな」
シモン様は目の前に居るお父様をゴミを見る眼で睨み付けていた
そしてその声に怒りが感じられた
「お、お父様
いえ、ギャン・ガザードル男爵」
その背を見て、今まで感じたことのない程の勇気をもらい、立ち上がるとゆっくりとシモン様の隣に立った
「私は今まで貴方を信じてきました
お母様が居た頃と同じように優しいお父様に、戻ってくれると……
ですが、もう貴方を信じておりません
いいえ、とっくの昔に私は貴方を信じられなくなりました」
震える声でそれでも今、言わなければならないと立ってる足に力を入れ、立っていたけど、ふと、アンが私を支えてくれていた事に気付けば、私は一度、シモン様を見てからギャン男爵を見た
「私はもう貴方の道具でも、奴隷でもない
私はフォルティナと言う一人の人間です
ガザードルと言う性など要らない……
私は貴方を許さない…、貴方は私のお父様ではない」
ずっと我慢してた事がやっと口に出せた……
その事が嬉しくもあり、震えが少し止まった気がした
アンもそんな私の事を尊重してくれるように、隠しナイフを抜けば、シモン様と同じように私を守るため、前に立った
「……………」
ギャン男爵は、私の言葉を聞いて、微笑んでいた顔のまま、動かなくなった
少しの静寂の後……
「あ?」
シモン様の腹にギャン男爵の剣が刺さっていた
「シモン様!?」「嫌!!シモ」
私とアンがシモン様に近付こうとした瞬間、突然、体が動かなくなり、床に倒れた
「な、なん、で ?」 「ま、さか 麻痺!?」
私が体が動けない事を理解できてないが、アンが何かに気付いた
「グハハ、気付いたか?
このダメメイドが!!」 「がふっ!?」
ギャン男爵がアンに近付けば、アンの腹に蹴りを入れた
「貴様らがここに転移してきた時点で、既に麻痺薬はこの部屋に充満していたのだ!!
それも!!魔物に使う!!ヤツをな!!」
「がふっ!?げぼっ!?っが!?」
ギャン男爵は何度もアンの腹を蹴り、蹴る度にアンの苦しむ声が聞こえてくる
(アン!?アン!!?やめて!!お願いだからアンを蹴らないで!!)
体が動かなくて、顔を動かせないからその光景を見えてないが何をされてるかは、理解できた
何とか声に出そうとするが口も、舌も動かなくて声が出せない………
「はぁ、お前は後だ
あとでたっぷり俺ので孕ませてやる」
足音がコチラに近付いてくる……
(嫌!!来ないで!!来ないでぇ!!)
逃げようとしても声を上げようとしても何も出来なくて、ただ涙を流すことしか出来なくて、ついに足音が私の傍に来れば、私は仰向けにされた
「はぁ、はぁ………、さぁ、さっさとやろうか
フォルティナ、私の可愛い娘よ………」
そう言えば、ギャン男爵は私の首元を掴むとドレスに手を掛ける
(嫌ぁぁぁぁ!!?助けて!!アン!!アン!!!)
私はもう恐怖で泣きながら抵抗しようとするが……、それが無駄な事だと理解してしまい、気づけば、私のお尻の下が水浸しになっていて、お漏らしをしてしまったと分かった
(助けて!!! シモン様ぁぁぁぁあ!!!)
もう絶望し、目を強く瞑った
だけど、顔の傍を風が走ったと感じ、瞑った目を開けてみると次に見た光景は……
私のドレスを破こうとしたギャン男爵の顔に蹴りを叩き込んでる……、シモン様の姿だった
「《カチコミキック》!!」
ギャン男爵は勢いよく吹き飛べば、壁を破壊しながら飛んでいった
「あっぶねぇ……、《ハンティングビースト》のデメリットで、ステータスダウンを考慮し忘れてた」
「気をつけないとな」と、そう言いながらシモン様は私を抱え起こせば、私の前で液のに入ったビンを目の前で握りつぶすと入ってた液、そしてビンも光の粒となり、私の中に入ってきた
「っ、あ」
光の粒が私の中に入るとさっきまで動かなくなってた体が動くようになり、腕を上げて、確認してしまった
「状態異常を治す《リジェクトポーション》だ
これで体が動」
シモン様が先程の液について、説明をしていたが、私はシモン様に抱きついた
「うわぁぁぁぁぁぁぁ……!!!怖かった…!!怖かったです……!!ぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!」
シモン様にしがみつくように抱きつけば、私は思いっきり泣き叫んだ
シモン様が死んでしまった…、アンが傷つけられて……、もう心が折れそうになった……
でもそんな絶望の中にシモン様が生きていた喜びも混ざってしまい、色々とシモン様に聞きたいのだが、もう頭が真っ白になってしまい、泣き叫んでしまった
「そうだな……、ごめんな
怖い思いをさせて」
シモン様はそう言うと私を強く抱きしめてくれた
もう……、私はそれだけで十分だった……
それだけで安心して、ただ……、シモン様に触れられた所が熱くて、優しくて……
「な、何故だ!?」
少し落ち着いてきたと思った時、吹き飛んで行ったギャン男爵が戻ってきた
体はボロボロで立ってるだけでフラフラしている様子だった
「何故、貴様が生きてる!?
貴様は私の剣で死んだはずだ!?」
ギャン男爵が叫んでいるが、シモン様はゆっくりと私を離せば、上着を脱ぐと私に羽織らせてくれた
どうやら吹き飛んだ時、私のドレスの胸元が破けてしまってたらしい……
シモン様は私に背を向ければ、ギャン男爵を見たがすぐに視線を逸らして、ある場所に向けた
そこには確かにギャン男爵の剣に貫かれたシモン様の体がそこにあった
「おーい 時間稼ぎ、ありがとな
その剣、食っちまえ」
「はいよー やっと食べれる」
シモン様が声を掛けると突然、声が響いてきて、その後に無数の羽音が聞こえれば、剣に貫かれたシモン様の体が真っ黒になり、崩れると剣も黒く染まり、無くなってしまった
そしてその黒い何かが集まり、形を取れば、そこに居たのは蝿の羽が生えた少女だった
「この剣、マズいですねぇ
すっごく錆臭くて、打ち直してないから味が腐っちまってるよぉ」
舌を出して、ゲェーとした表情をしながら少女がそう言うとシモン様は苦笑いを浮かべていた
「な!? そ、ソイツは魔族か!?」
「魔族?
んな玉じゃねぇよ コイツは……
悪魔で俺の誓約獣だ」
シモン様が頭を掻きながらつまらなそうにそう言っているといつの間にか、アンが傍に来ていた
驚いて、怪我を見ようとしたがアンのお腹には痣は無く、蹴られた打撃痕も無かった
「お、お前は!?
お前は何なんだ!?」
ギャン男爵は後退りながらシモン様に叫んだが、シモン様の顔が見えないけど頭を掻いてた手を下ろした
「ただの人間で……、フォルティナと言う一人の女性の婚約者だ」
その声はあまりにも真剣で、とても心に響いて、こんな状況だけど自分の顔が真っ赤になるのが分かった
そして私は心から理解した
(私は……、シモン・フェルストリー様を……、心から惚れている
心から貴方を愛しているんですね……)
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