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第三章 王立学院中等部二年生
124 ランクアップ③
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Side:アシェル13歳 春
冒険者エリアの中の、王宮の城壁沿いにある王立病院の更衣室を借りて。
魔道具を外して変装を解き、武器とマント、レッグホルスターは『ストレージ』に仕舞う。
アークエイドはカツラと魔道具を外し、武器と防具、レッグホルスターを『ストレージ』へ。
マリクは防具とベルトホルスターを、エラートは武器と防具、レッグホルスターを『ストレージ』に仕舞いこむ。
全員に『クリーン』をかけて、一応髪型などを整えた。
「服装ってこのままでも大丈夫?ベストが冒険者用のだから、もしこれがまずいなら、刺繍の入ってるやつに着替えるけど。」
騎士団の詰所は王宮の敷地内にあるので、ドレスコード的なものを気にして、メイディーの名前が通じる王立病院で更衣室を借りたのだ。
アシェルはまだいいが、アークエイドのお忍びスタイルが一般市民にバレるのは良くない。
「俺らも上着羽織ったほうが良いなら着るぜ。」
「いちおーストレージに入れてあるしねー。」
今のアシェル達は白シャツにスラックスというシンプルな格好だ。
アシェルだけはホルスター付きの革ベストを着ているが、上質ではあるものの華美とは言い難い。
「騎士団に行くだけだ。別に城の中に入るわけでも謁見をするわけでもない。俺も居るし別にいいだろ。」
それならば準備は完了だ。
王立病院の受付の男性へ礼を告げる。
「更衣室を貸してくれてありがとうございました。助かります。あと、良かったらこれ。三の森で必要になる解毒剤の余剰分です。」
数本ずつまとめて種類をメモしたタグをつけた解毒剤達を、受付に手渡す。
「いえいえ、これくらいお安い御用ですよ。おぉ、メイディー直系の方が作った解毒剤は助かります。やっぱり効果も桁違いですからね。お預かりします。代金はどうしましょうか?いつもの納品分の支払いと一緒で良いですか?今お必要でしたら、計算して準備しますが。」
「いつもと一緒で良いですよ。また何か足りないものがあれば、お父様に言っていただくか、僕に直接の場合は王立学院の4号棟512号室に手紙を出してくださいね。それでは失礼します。」
「はい、いつもありがとうございます。お気をつけて。」
受付とにこやかに会話を終え、待たせていた三人と共に王立病院を出て、王城の東門へ向かって歩く。
王立病院から東門へはすぐそこだ。
「しっかし、やっぱりメイディーって病院系には強いよな。名前と眼の色でほぼ顔パスじゃねぇか。」
「そういうエトだって、騎士団系は顔パスじゃない。一緒だよ。」
「顔パスって言うか、訓練によく混ぜて貰ってたから知られてんだよ。」
そんなことを少し話しているだけで東門に到着する。
「ご苦労。友人達だ。武装解除もしている。通るぞ。」
アークエイドが短く用件を告げると、慌てた門番達が扉を開けてくれる。
「お城はアークが顔パスだねー。」
「言ってしまえば俺の家だからな。締め出されたら困る。」
「ふふっ、確かに。」
王宮の北側にある騎士団の詰所に向かうために、非公式お茶会をしていた北東の離宮の渡り廊下を歩く。
「たった一年だけど、ここも懐かしいな。」
「だねー。非公式お茶会で、皆と友達になれて良かったよー。学院生活も楽しいしねー。」
「そうだね。僕も皆と幼馴染になれて良かったよ。非公式お茶会がなかったら、引きこもりになってた自信がある。」
「アシェが言うと冗談に聞こえないな。本当に実験室に籠って出てこなさそうだ。」
「俺も、アークとこんな風に喋るなんて無かっただろうな。非公式お茶会が無かったら、陛下かグレイニール王太子殿下に剣を捧げてたと思うぜ。今はアークにしか捧げる気はねぇけどな。」
「騎士団に入るんだろう?それは……良いのか?」
エラートの発言に、アークエイドは眉根を寄せる。
「親父に確認したけど、良いらしいぜ。中には嫁さんに剣を捧げてて、陛下には捧げられなかった騎士もいるらしいしな。」
「奥さんへか……凄いね。それでも許されるんだ。じゃあ、アークに捧げても問題ないんじゃない?」
「アークもおーぞくだしねー。」
のんびり会話をしながら歩いていると、騎士団の詰所に到着する。
アークエイドの姿を見た騎士達は、ビシッと敬礼をして通してくれる。
赤青黒、どの色の服を着ていてもだ。
「アークエイド殿下、それに皆様。本日は騎士団までどのような御用件でしょうか。」
「カドラス副団長は居るか?アポなしだが、面会したい。」
「カドラス第一騎士団副団長ですね、今は執務室におられます。ご案内します。」
赤騎士が一人道案内をしてくれるので、その後ろを歩く。
一つの扉の前で立ち止まったところで、背後から駆け足の音が聞こえた。
「アークエイド殿下。お戻りになられたのならば、私に声を掛けてくださいと言っておきましたよね。」
アークエイドの前でビシッと敬礼した白騎士は苦言を呈す。
「ダニエルか。今戻ったところだ。東門から直接ここに来た。別に良いだろう。」
「そう言っていつも私を置いていくでしょう。」
エラート程の長身の白騎士はダニエルと言うらしい。
「ダニエルは近衛騎士で、アークの護衛騎士だ。」
イマイチ状況が呑み込めていないアシェルとマリクに、エラートがこっそり耳打ちしてくれる。
「幼馴染といる時は付いてくるな。それ以外は勝手にしたらいいが、付いてこれないお前が悪い。それより、カドラス副団長に会いに来てるんだ。在室されているか?」
相変わらずの無表情のまま、淡々とアークエイドが述べる。
乱入者に固まっていた赤騎士は、気を取り直して扉を叩いた。
「カドラス第一騎士団副団長、ご在室されておりますでしょうか?アークエイド殿下、他三名が面会を希望されて、会いに来られております。」
「通せ。」
中から短く返答があり、赤騎士が扉を開けてくれた。
執務室の中にはロバートがいて、応接セットのソファへ着席を促される。
ダニエルはアークエイドの後ろに立って控えた。
「急に悪いな。時間は大丈夫か?」
「はい、問題ありません。息子とアシェル殿がいらっしゃるのを見ると、先日の手紙の件ですね。」
「あぁ。どうなった?アシェに説明してやってくれ。」
向かい側に座ったロバートは、いくつかの書類をアシェルに手渡してくれる。
「アークが先に眼を通さなくて良いの?」
「アシェが読んでるのを見るから良い。アシェが報告したんだ。」
アークエイドからの許可ももらったので、資料に目を通す。
資料の中はどのような品を取り扱っていたかや、これを販売していたガンツという男と、ガンツが所属していたグループ、その構成員についてまで詳細に書かれている。
「アシェル殿からの手紙の内容で摘発は急務だと判断して、その日の午前中には調べて取り締まった。本人と構成員達は牢の中だ。」
「牢に……でも、確かにこれは、牢屋行きでも問題ないですね。」
「あぁ。無許可での出店に、販売していた価格も正規の値段より高かった。ダンジョン前広場には他に薬を取り扱う店が無かったので、行きつけの薬屋がない冒険者達が騙されて買っていたようだな。上手く話術で引き込んで販売していた。それに報告があったように、ポーションとしての品質も最悪だった。資料の半分は取り扱っていた薬の分析表だ。そちらは私にはわからない内容だが、アシェル殿なら見たいだろうとアベルが言うので用意させた。」
ロバートの言う分析表に目を通す。
「マナポーションだけじゃなく、ヒールポーションに抗麻痺薬、各種解毒剤。よくもまぁ、揃いも揃って超が付くほど低品質か効果が無いものを作れるものですね。材料が合っているのに……この資料、書き加えても良い奴ですか?ダメなら付箋を貼りますが。」
「書き込んでくれて構わない。奴らの罪状と刑罰を決めるための資料だ。現物を見せることは出来ないが、アシェル殿ならもっと細かいことが分かるだろうとアベルに言われたからな。」
「分かりました。失礼しますね。」
アシェルはぶつぶつと呟きながら、『ストレージ』から取り出した葡萄色のインクを詰めた万年筆で情報を書き足していく。
その間アークエイド達は待つだけだ。
「三の森はどうだった?アシェル殿が居たなら、問題は無かっただろうが。」
ロバートは息子であるエラートに問いかける。
「あー、今回は俺達が頑張ったっていうより、一緒に行ったパーティーがメインで戦闘して、俺達は補助だったから。大してなにもしてねぇんだよな。」
「他の?合同パーティーで依頼を受けたのか。」
「あぁ。【朱の渡り鳥】ってパーティーと、アシェが知り合いだったみたいでな。三泊四日、一緒に行動したぜ。」
「お前達はパーティー名を決めてなかっただろ。アシェル殿に二つ名がついてることは知ってるが。」
「必要だって言われたからつけたよ。俺達四人で【宵闇のアルカナ】だ。冒険者タグにも情報が入ってるって言われた。」
「ふむ。【宵闇のアルカナ】だな。覚えておこう。」
ロバートが厳格そうな顔を笑みで綻ばせる。
その表情を見たエラートが嫌そうな表情をした。
「覚えなくて良いよ。ぜってーなんかあったら、パーティーで呼び出しするだろ。」
「そうは言うがな。最近魔の森の様子がおかしいらしいんだ。魔法庁の奴らの言うことだから、私にはさっぱりだがな。まだ問題が起きたわけじゃないが、起きてからじゃ遅いからな。調査中だ。」
「つまり、それで何か対応が必要だった場合、呼ばれる可能性があるってことだな?」
「あぁ。大したことが無ければ騎士団と魔法庁だけで対応するかもしれないが、お前達を頼る必要があるかもしれん。そうなった場合、出来れば殿下には待機していただきたいのですが。」
ロバートはチラリとアークエイドを見る。
「パーティーでの依頼受注なら俺も出る。バランスのいいパーティーだが、俺が抜けるとアシェの負担が増える。」
「そうおっしゃると思っておりました。というわけで、あくまでも一つの案と言うだけだ。何もないことを祈っていてくれ。」
ロバートの元へ届いている魔法庁からの報告内容は、魔の森の魔物の活性化と、魔素と瘴気のバランスが崩れ始めているので、地殻変動かスタンピードが近々起こる可能性があるというものだ。
何もなければそれに越したことはないが、特にスタンピードが起きた場合は騎士団も総出で、緊急クエスト扱いで冒険者も駆り出さなければならない。
さらに既に魔の森へ出ている冒険者達の、安否確認と救助まで付いてくる。
過去の記録から魔の森ではスタンピードが発生したことは無いとされているが、絶対に起きないとは言い切れないのだ。
地殻変動は魔の森では度々見受けられるが、もし今回の異変で起きるとしたら大きな地形の変化があるかもしれないらしい。
その場合、魔物達の分布や生態も変わるため、特殊固体や今まで魔の森に居なかった魔物が出現する可能性もある。
どちらが起きても、どちらも起きても、それなりに実力のある者を駆り出さねばならない。
【宵闇のアルカナ】は頻度は冒険者に劣るとはいえ、魔の森には何度も足を運んでいて森での動き方も心得ている。
連携も実力も十分だ。
それぞれに得意なことが異なり、パーティーとしてのバランスも非常にいい。
第二王子が混じってさえいなければ、優先的に調査依頼を出していたかもしれないくらいだ。
その第二王子は、今回三の森で何かが起こった場合。一番の戦力になるアシェルに恋をしている。
ロバートは王族の一目惚れ相手へのしつこさを、グリモニアを見て十分に知っている。
依頼を出す場合、アシェルからアークエイドを引き剥がすことが不可能であることは織り込み済みだ。
「カドラス卿、僕が資料を見て分かったことは全て書き加えました。」
「ありがとう、アシェル殿。これですぐに奴らへの処罰も決まるだろう。」
ロバートに書類を返し、アシェルは口を開く。
「今回はたまたま、同行したパーティーのホルスターの薬瓶の色がおかしいことに気付いたので良かったですが。本来はダンジョン前広場で店を出すなら、出店許可証が要るんですよね?」
「広場だけでは無い。路上で出されている屋台など、移動型店舗のモノは全て許可証が必要だ。屋台への許可証の掲示も義務付けられているし、許可された期間と出店場所も記載されている。今回は許可証を偽造されていた。」
つまり偽造した許可証を出していたので、今までチェックが入らず摘発されなかったということだ。
「そうですか……。こういう悪質な薬が出回るのは、僕的に許せないんですよね。その偽造問題もどうにかしないと、また同じような輩が現れる可能性があるんですよね。じゃあ、偽造をされないために……いや、見分けられるようにした方が良いのか。それに好き勝手に出すとチェックもいれにくいよね。許可証は掲示するなら……。」
しばらくぶつぶつと考え込み、一つの提案をする。
「少し手間にはなりますが。日付や時間、出店エリアの記載があるのなら、最初から店舗の並びを指定したらどうですか?許可中でもお休みしてれば出店がないし、逆に申請が無いのに出店があればおかしいですよね。許可証と配置表が一致しない場合は不正出店です。これが提案の一つです。」
つまり新幹線などの座席表と指定席のチケットのようなものだ。
出店できるスペースは限られているだろうし、ある程度並びを指定すれば管理が楽になるような気がする。
今までアシェルが見てきた屋台達は、屋台同士が密接しているところはなかった。
防犯や安全面から一定距離は空けているようなので、指定した位置に屋台を展開できないということにはならないだろう。
「もう一つは、許可証に偽造できない細工をした方が良いですね。念には念を入れて、という感じにはなりますが。見回りの騎士団員に魔力がないと魔法的な隠した印は見えないので、専用に印を見るための魔道具を作るとかですかね。受け付けて許可証を発行する段階で、見えない印を許可証に印字して渡す。見回りでおかしい許可証は、その印を見るための魔道具で確認する。そうすれば、かなり確認作業は早く出来ると思います。この二つが、僕からの再犯防止策としての案です。良かったら検討してください。」
ロバートはさらさらとメモを取りながら、しっかりアシェルの話を聞いてくれた。
「具体案を出してくれるのは助かる。一つ目については、会議を通せば取り組むことが出来るだろう。だが、二つ目の方は魔道具が必要なんだな?構想を伝えても、開発部が開発できるかどうか……それに、開発期間のこともある。」
難しい表情をしてロバートが考え込む。
魔道具さえあれば、導入には前向きだと思っていいのだろうか。
「許可証を出すのはどこが担当してるんですか?」
「商業ギルドだな。商売に関することになる。」
それを聞いてアシェルも考え込む。
魔道具の開発そのものはアシェルが術式を組んで、形を組み上げればいい。
ただ実用レベルにして数を作るなら、アシェルだけではどうにもならない上に資金も必要になる。
「簡単に言ってしまいましたが、どこに持ち込めば話がスムーズに進むんでしょうか。魔道具自体は僕が術式を書いて、試作までなら馴染みの鍛冶屋と協力すれば作れますけど。量産となると、時間的にも予算的にも僕だけではどうにもならないです。仮に商業ギルドが生産と予算を出して導入を決めたとしても、確認の魔道具は騎士団にいくつかないとダメなので。商業ギルドから買い取る形か、よくて貸与になるでしょうし。」
「かなり現実的な眼で考えてくれているんだな。だが、私の一存でどうにかできるものでもないしな。」
うーんと頭を抱える二人に、新しい意見が飛んでくる。
「アシェの言う商業ギルドのほーは、多分問題ないと思うよー。出店許可ってお金がかかるからねー。ぎぞーされたら、商売あがったりだからー。とーさんなら、間違いなく予算がかかっても導入したいって言うと思うよー。」
「ならその案を会議に持っていくのと、国庫から予算を引っ張ってくるのは俺の役目だな。アシェのことだ。既に術式や魔道具の構造も当たりをつけてるだろ?どれくらいで出来る予定だ?」
マリクとアークエイドの意見で、魔道具の運用が現実的になってきた。
「そっか。ニクス様が許可をくれたら良いんだけど。それに、アーク……そういう執務関係の話聞いたことないけど、これってお願いして大丈夫な案件なの?さすがに王宮の仕事の仕組みまでは分かんないんだけど。あと、魔道具として実際に使える状態にするのに、半月から一か月かかる。鍛冶屋のスケジュール次第かな。」
「大丈夫だ。一応これでも王子だからな。アシェが許せないような輩を野放しにしないためにも頑張るさ。開発にかかった費用も予算から出せるようにするから、鍛冶屋からしっかり領収書をもらうんだぞ。」
試作くらいは自費でも良いと思っていたが、アークエイドに強く念を押されたので頷いておいた。
「アシェの案は二つとも、まずは王宮で話し合ってから、騎士団と商業ギルドに追って連絡をする。実施の可否については、その時に仔細を確認してからでいい。というわけで、カドラス副団長。この件は私が預かっても良いかな。」
「アークエイド殿下の御心のままに。私だけでは荷が重い話でしたので、殿下が携わってくれるのであれば安心できます。」
ロバートが右手を胸に当てた敬礼のポーズで、座ったまま頭を下げた。
「そうか、一応コンラート団長にも概要は伝えておいてくれ。俺はこのまま城に残って、この案件を進める。皆はこのあと商業ギルドに行くんだよな?マリク、テイル卿に今の内容を簡単に伝えておいてくれるか?」
「おっけー。とーさんなら二つ返事だと思うから、アークも頑張ってねー。」
「あぁ。それとアシェ……今日はどこに帰るつもりだ?」
アークエイドの質問にアシェルは首を傾げる。
「え、僕の帰る場所?一旦邸に戻って、お父様やお兄様達に素材を分けてから、寮に戻ろうかなって思ってるよ。直接寮でも良いけど、多分お父様達も素材が欲しいだろうから。」
「やっぱり邸じゃなくて実験室に帰るつもりだな。分かった。遅い時間になるかもしれないが、アシェの部屋に行く。どうせ俺が行っても気付かないだろうし、勝手に入るからな。それだけ伝えとく。」
「そこまで分かってるなら、来る意味ないんじゃ……。まぁいいや。来るなら勝手に過ごしてよね。アークの言う通り、ベルも居ないから来ても気付かないだろうし。」
無事今回の騒動がまとまりそうなので、アシェルは立ち上がる。それに合わせて全員が立ち上がった。
「今回はお忙しい中お時間を頂き、ありがとうございました。」
「いや、どちらにせよ、アシェル殿の意見を仰がなくてはならなかったんだ。こちらこそご足労頂き感謝する。」
ロバートに見送られて執務室を出る。
「ダニエル。アシェ達を東門まで案内してくれ。そこが商業ギルドに一番近い。皆、またな。今回の冒険も楽しかった。」
「承りました。……ですが、一言言わせてください。私はアークエイド殿下の護衛騎士です。東門から出るためには必要な事なので、御命令には従いますが、事あるごとに私を撒かないでください。大人しく警護されてください。」
ダニエルの言葉は最後まで聞かずに、アークエイドはさっさと王宮の方へと歩み去っていく。
その背中を眼で追いながら、ダニエルは大きなため息を吐いた。
若く見えるこの白騎士は、どうやら苦労人のようだ。
白騎士なのでエリートだし、年齢的にもかなり優秀な人材なのだとは思うのだが。
「失礼いたしました。ご案内します。」
ビシッと敬礼して、キリッとカッコイイ顔つきになったダニエルは、先導して東門までアシェル達を案内してくれた。
そして不審者扱いされることなく、東門から冒険者エリアに戻ることが出来たのだった。
冒険者エリアの中の、王宮の城壁沿いにある王立病院の更衣室を借りて。
魔道具を外して変装を解き、武器とマント、レッグホルスターは『ストレージ』に仕舞う。
アークエイドはカツラと魔道具を外し、武器と防具、レッグホルスターを『ストレージ』へ。
マリクは防具とベルトホルスターを、エラートは武器と防具、レッグホルスターを『ストレージ』に仕舞いこむ。
全員に『クリーン』をかけて、一応髪型などを整えた。
「服装ってこのままでも大丈夫?ベストが冒険者用のだから、もしこれがまずいなら、刺繍の入ってるやつに着替えるけど。」
騎士団の詰所は王宮の敷地内にあるので、ドレスコード的なものを気にして、メイディーの名前が通じる王立病院で更衣室を借りたのだ。
アシェルはまだいいが、アークエイドのお忍びスタイルが一般市民にバレるのは良くない。
「俺らも上着羽織ったほうが良いなら着るぜ。」
「いちおーストレージに入れてあるしねー。」
今のアシェル達は白シャツにスラックスというシンプルな格好だ。
アシェルだけはホルスター付きの革ベストを着ているが、上質ではあるものの華美とは言い難い。
「騎士団に行くだけだ。別に城の中に入るわけでも謁見をするわけでもない。俺も居るし別にいいだろ。」
それならば準備は完了だ。
王立病院の受付の男性へ礼を告げる。
「更衣室を貸してくれてありがとうございました。助かります。あと、良かったらこれ。三の森で必要になる解毒剤の余剰分です。」
数本ずつまとめて種類をメモしたタグをつけた解毒剤達を、受付に手渡す。
「いえいえ、これくらいお安い御用ですよ。おぉ、メイディー直系の方が作った解毒剤は助かります。やっぱり効果も桁違いですからね。お預かりします。代金はどうしましょうか?いつもの納品分の支払いと一緒で良いですか?今お必要でしたら、計算して準備しますが。」
「いつもと一緒で良いですよ。また何か足りないものがあれば、お父様に言っていただくか、僕に直接の場合は王立学院の4号棟512号室に手紙を出してくださいね。それでは失礼します。」
「はい、いつもありがとうございます。お気をつけて。」
受付とにこやかに会話を終え、待たせていた三人と共に王立病院を出て、王城の東門へ向かって歩く。
王立病院から東門へはすぐそこだ。
「しっかし、やっぱりメイディーって病院系には強いよな。名前と眼の色でほぼ顔パスじゃねぇか。」
「そういうエトだって、騎士団系は顔パスじゃない。一緒だよ。」
「顔パスって言うか、訓練によく混ぜて貰ってたから知られてんだよ。」
そんなことを少し話しているだけで東門に到着する。
「ご苦労。友人達だ。武装解除もしている。通るぞ。」
アークエイドが短く用件を告げると、慌てた門番達が扉を開けてくれる。
「お城はアークが顔パスだねー。」
「言ってしまえば俺の家だからな。締め出されたら困る。」
「ふふっ、確かに。」
王宮の北側にある騎士団の詰所に向かうために、非公式お茶会をしていた北東の離宮の渡り廊下を歩く。
「たった一年だけど、ここも懐かしいな。」
「だねー。非公式お茶会で、皆と友達になれて良かったよー。学院生活も楽しいしねー。」
「そうだね。僕も皆と幼馴染になれて良かったよ。非公式お茶会がなかったら、引きこもりになってた自信がある。」
「アシェが言うと冗談に聞こえないな。本当に実験室に籠って出てこなさそうだ。」
「俺も、アークとこんな風に喋るなんて無かっただろうな。非公式お茶会が無かったら、陛下かグレイニール王太子殿下に剣を捧げてたと思うぜ。今はアークにしか捧げる気はねぇけどな。」
「騎士団に入るんだろう?それは……良いのか?」
エラートの発言に、アークエイドは眉根を寄せる。
「親父に確認したけど、良いらしいぜ。中には嫁さんに剣を捧げてて、陛下には捧げられなかった騎士もいるらしいしな。」
「奥さんへか……凄いね。それでも許されるんだ。じゃあ、アークに捧げても問題ないんじゃない?」
「アークもおーぞくだしねー。」
のんびり会話をしながら歩いていると、騎士団の詰所に到着する。
アークエイドの姿を見た騎士達は、ビシッと敬礼をして通してくれる。
赤青黒、どの色の服を着ていてもだ。
「アークエイド殿下、それに皆様。本日は騎士団までどのような御用件でしょうか。」
「カドラス副団長は居るか?アポなしだが、面会したい。」
「カドラス第一騎士団副団長ですね、今は執務室におられます。ご案内します。」
赤騎士が一人道案内をしてくれるので、その後ろを歩く。
一つの扉の前で立ち止まったところで、背後から駆け足の音が聞こえた。
「アークエイド殿下。お戻りになられたのならば、私に声を掛けてくださいと言っておきましたよね。」
アークエイドの前でビシッと敬礼した白騎士は苦言を呈す。
「ダニエルか。今戻ったところだ。東門から直接ここに来た。別に良いだろう。」
「そう言っていつも私を置いていくでしょう。」
エラート程の長身の白騎士はダニエルと言うらしい。
「ダニエルは近衛騎士で、アークの護衛騎士だ。」
イマイチ状況が呑み込めていないアシェルとマリクに、エラートがこっそり耳打ちしてくれる。
「幼馴染といる時は付いてくるな。それ以外は勝手にしたらいいが、付いてこれないお前が悪い。それより、カドラス副団長に会いに来てるんだ。在室されているか?」
相変わらずの無表情のまま、淡々とアークエイドが述べる。
乱入者に固まっていた赤騎士は、気を取り直して扉を叩いた。
「カドラス第一騎士団副団長、ご在室されておりますでしょうか?アークエイド殿下、他三名が面会を希望されて、会いに来られております。」
「通せ。」
中から短く返答があり、赤騎士が扉を開けてくれた。
執務室の中にはロバートがいて、応接セットのソファへ着席を促される。
ダニエルはアークエイドの後ろに立って控えた。
「急に悪いな。時間は大丈夫か?」
「はい、問題ありません。息子とアシェル殿がいらっしゃるのを見ると、先日の手紙の件ですね。」
「あぁ。どうなった?アシェに説明してやってくれ。」
向かい側に座ったロバートは、いくつかの書類をアシェルに手渡してくれる。
「アークが先に眼を通さなくて良いの?」
「アシェが読んでるのを見るから良い。アシェが報告したんだ。」
アークエイドからの許可ももらったので、資料に目を通す。
資料の中はどのような品を取り扱っていたかや、これを販売していたガンツという男と、ガンツが所属していたグループ、その構成員についてまで詳細に書かれている。
「アシェル殿からの手紙の内容で摘発は急務だと判断して、その日の午前中には調べて取り締まった。本人と構成員達は牢の中だ。」
「牢に……でも、確かにこれは、牢屋行きでも問題ないですね。」
「あぁ。無許可での出店に、販売していた価格も正規の値段より高かった。ダンジョン前広場には他に薬を取り扱う店が無かったので、行きつけの薬屋がない冒険者達が騙されて買っていたようだな。上手く話術で引き込んで販売していた。それに報告があったように、ポーションとしての品質も最悪だった。資料の半分は取り扱っていた薬の分析表だ。そちらは私にはわからない内容だが、アシェル殿なら見たいだろうとアベルが言うので用意させた。」
ロバートの言う分析表に目を通す。
「マナポーションだけじゃなく、ヒールポーションに抗麻痺薬、各種解毒剤。よくもまぁ、揃いも揃って超が付くほど低品質か効果が無いものを作れるものですね。材料が合っているのに……この資料、書き加えても良い奴ですか?ダメなら付箋を貼りますが。」
「書き込んでくれて構わない。奴らの罪状と刑罰を決めるための資料だ。現物を見せることは出来ないが、アシェル殿ならもっと細かいことが分かるだろうとアベルに言われたからな。」
「分かりました。失礼しますね。」
アシェルはぶつぶつと呟きながら、『ストレージ』から取り出した葡萄色のインクを詰めた万年筆で情報を書き足していく。
その間アークエイド達は待つだけだ。
「三の森はどうだった?アシェル殿が居たなら、問題は無かっただろうが。」
ロバートは息子であるエラートに問いかける。
「あー、今回は俺達が頑張ったっていうより、一緒に行ったパーティーがメインで戦闘して、俺達は補助だったから。大してなにもしてねぇんだよな。」
「他の?合同パーティーで依頼を受けたのか。」
「あぁ。【朱の渡り鳥】ってパーティーと、アシェが知り合いだったみたいでな。三泊四日、一緒に行動したぜ。」
「お前達はパーティー名を決めてなかっただろ。アシェル殿に二つ名がついてることは知ってるが。」
「必要だって言われたからつけたよ。俺達四人で【宵闇のアルカナ】だ。冒険者タグにも情報が入ってるって言われた。」
「ふむ。【宵闇のアルカナ】だな。覚えておこう。」
ロバートが厳格そうな顔を笑みで綻ばせる。
その表情を見たエラートが嫌そうな表情をした。
「覚えなくて良いよ。ぜってーなんかあったら、パーティーで呼び出しするだろ。」
「そうは言うがな。最近魔の森の様子がおかしいらしいんだ。魔法庁の奴らの言うことだから、私にはさっぱりだがな。まだ問題が起きたわけじゃないが、起きてからじゃ遅いからな。調査中だ。」
「つまり、それで何か対応が必要だった場合、呼ばれる可能性があるってことだな?」
「あぁ。大したことが無ければ騎士団と魔法庁だけで対応するかもしれないが、お前達を頼る必要があるかもしれん。そうなった場合、出来れば殿下には待機していただきたいのですが。」
ロバートはチラリとアークエイドを見る。
「パーティーでの依頼受注なら俺も出る。バランスのいいパーティーだが、俺が抜けるとアシェの負担が増える。」
「そうおっしゃると思っておりました。というわけで、あくまでも一つの案と言うだけだ。何もないことを祈っていてくれ。」
ロバートの元へ届いている魔法庁からの報告内容は、魔の森の魔物の活性化と、魔素と瘴気のバランスが崩れ始めているので、地殻変動かスタンピードが近々起こる可能性があるというものだ。
何もなければそれに越したことはないが、特にスタンピードが起きた場合は騎士団も総出で、緊急クエスト扱いで冒険者も駆り出さなければならない。
さらに既に魔の森へ出ている冒険者達の、安否確認と救助まで付いてくる。
過去の記録から魔の森ではスタンピードが発生したことは無いとされているが、絶対に起きないとは言い切れないのだ。
地殻変動は魔の森では度々見受けられるが、もし今回の異変で起きるとしたら大きな地形の変化があるかもしれないらしい。
その場合、魔物達の分布や生態も変わるため、特殊固体や今まで魔の森に居なかった魔物が出現する可能性もある。
どちらが起きても、どちらも起きても、それなりに実力のある者を駆り出さねばならない。
【宵闇のアルカナ】は頻度は冒険者に劣るとはいえ、魔の森には何度も足を運んでいて森での動き方も心得ている。
連携も実力も十分だ。
それぞれに得意なことが異なり、パーティーとしてのバランスも非常にいい。
第二王子が混じってさえいなければ、優先的に調査依頼を出していたかもしれないくらいだ。
その第二王子は、今回三の森で何かが起こった場合。一番の戦力になるアシェルに恋をしている。
ロバートは王族の一目惚れ相手へのしつこさを、グリモニアを見て十分に知っている。
依頼を出す場合、アシェルからアークエイドを引き剥がすことが不可能であることは織り込み済みだ。
「カドラス卿、僕が資料を見て分かったことは全て書き加えました。」
「ありがとう、アシェル殿。これですぐに奴らへの処罰も決まるだろう。」
ロバートに書類を返し、アシェルは口を開く。
「今回はたまたま、同行したパーティーのホルスターの薬瓶の色がおかしいことに気付いたので良かったですが。本来はダンジョン前広場で店を出すなら、出店許可証が要るんですよね?」
「広場だけでは無い。路上で出されている屋台など、移動型店舗のモノは全て許可証が必要だ。屋台への許可証の掲示も義務付けられているし、許可された期間と出店場所も記載されている。今回は許可証を偽造されていた。」
つまり偽造した許可証を出していたので、今までチェックが入らず摘発されなかったということだ。
「そうですか……。こういう悪質な薬が出回るのは、僕的に許せないんですよね。その偽造問題もどうにかしないと、また同じような輩が現れる可能性があるんですよね。じゃあ、偽造をされないために……いや、見分けられるようにした方が良いのか。それに好き勝手に出すとチェックもいれにくいよね。許可証は掲示するなら……。」
しばらくぶつぶつと考え込み、一つの提案をする。
「少し手間にはなりますが。日付や時間、出店エリアの記載があるのなら、最初から店舗の並びを指定したらどうですか?許可中でもお休みしてれば出店がないし、逆に申請が無いのに出店があればおかしいですよね。許可証と配置表が一致しない場合は不正出店です。これが提案の一つです。」
つまり新幹線などの座席表と指定席のチケットのようなものだ。
出店できるスペースは限られているだろうし、ある程度並びを指定すれば管理が楽になるような気がする。
今までアシェルが見てきた屋台達は、屋台同士が密接しているところはなかった。
防犯や安全面から一定距離は空けているようなので、指定した位置に屋台を展開できないということにはならないだろう。
「もう一つは、許可証に偽造できない細工をした方が良いですね。念には念を入れて、という感じにはなりますが。見回りの騎士団員に魔力がないと魔法的な隠した印は見えないので、専用に印を見るための魔道具を作るとかですかね。受け付けて許可証を発行する段階で、見えない印を許可証に印字して渡す。見回りでおかしい許可証は、その印を見るための魔道具で確認する。そうすれば、かなり確認作業は早く出来ると思います。この二つが、僕からの再犯防止策としての案です。良かったら検討してください。」
ロバートはさらさらとメモを取りながら、しっかりアシェルの話を聞いてくれた。
「具体案を出してくれるのは助かる。一つ目については、会議を通せば取り組むことが出来るだろう。だが、二つ目の方は魔道具が必要なんだな?構想を伝えても、開発部が開発できるかどうか……それに、開発期間のこともある。」
難しい表情をしてロバートが考え込む。
魔道具さえあれば、導入には前向きだと思っていいのだろうか。
「許可証を出すのはどこが担当してるんですか?」
「商業ギルドだな。商売に関することになる。」
それを聞いてアシェルも考え込む。
魔道具の開発そのものはアシェルが術式を組んで、形を組み上げればいい。
ただ実用レベルにして数を作るなら、アシェルだけではどうにもならない上に資金も必要になる。
「簡単に言ってしまいましたが、どこに持ち込めば話がスムーズに進むんでしょうか。魔道具自体は僕が術式を書いて、試作までなら馴染みの鍛冶屋と協力すれば作れますけど。量産となると、時間的にも予算的にも僕だけではどうにもならないです。仮に商業ギルドが生産と予算を出して導入を決めたとしても、確認の魔道具は騎士団にいくつかないとダメなので。商業ギルドから買い取る形か、よくて貸与になるでしょうし。」
「かなり現実的な眼で考えてくれているんだな。だが、私の一存でどうにかできるものでもないしな。」
うーんと頭を抱える二人に、新しい意見が飛んでくる。
「アシェの言う商業ギルドのほーは、多分問題ないと思うよー。出店許可ってお金がかかるからねー。ぎぞーされたら、商売あがったりだからー。とーさんなら、間違いなく予算がかかっても導入したいって言うと思うよー。」
「ならその案を会議に持っていくのと、国庫から予算を引っ張ってくるのは俺の役目だな。アシェのことだ。既に術式や魔道具の構造も当たりをつけてるだろ?どれくらいで出来る予定だ?」
マリクとアークエイドの意見で、魔道具の運用が現実的になってきた。
「そっか。ニクス様が許可をくれたら良いんだけど。それに、アーク……そういう執務関係の話聞いたことないけど、これってお願いして大丈夫な案件なの?さすがに王宮の仕事の仕組みまでは分かんないんだけど。あと、魔道具として実際に使える状態にするのに、半月から一か月かかる。鍛冶屋のスケジュール次第かな。」
「大丈夫だ。一応これでも王子だからな。アシェが許せないような輩を野放しにしないためにも頑張るさ。開発にかかった費用も予算から出せるようにするから、鍛冶屋からしっかり領収書をもらうんだぞ。」
試作くらいは自費でも良いと思っていたが、アークエイドに強く念を押されたので頷いておいた。
「アシェの案は二つとも、まずは王宮で話し合ってから、騎士団と商業ギルドに追って連絡をする。実施の可否については、その時に仔細を確認してからでいい。というわけで、カドラス副団長。この件は私が預かっても良いかな。」
「アークエイド殿下の御心のままに。私だけでは荷が重い話でしたので、殿下が携わってくれるのであれば安心できます。」
ロバートが右手を胸に当てた敬礼のポーズで、座ったまま頭を下げた。
「そうか、一応コンラート団長にも概要は伝えておいてくれ。俺はこのまま城に残って、この案件を進める。皆はこのあと商業ギルドに行くんだよな?マリク、テイル卿に今の内容を簡単に伝えておいてくれるか?」
「おっけー。とーさんなら二つ返事だと思うから、アークも頑張ってねー。」
「あぁ。それとアシェ……今日はどこに帰るつもりだ?」
アークエイドの質問にアシェルは首を傾げる。
「え、僕の帰る場所?一旦邸に戻って、お父様やお兄様達に素材を分けてから、寮に戻ろうかなって思ってるよ。直接寮でも良いけど、多分お父様達も素材が欲しいだろうから。」
「やっぱり邸じゃなくて実験室に帰るつもりだな。分かった。遅い時間になるかもしれないが、アシェの部屋に行く。どうせ俺が行っても気付かないだろうし、勝手に入るからな。それだけ伝えとく。」
「そこまで分かってるなら、来る意味ないんじゃ……。まぁいいや。来るなら勝手に過ごしてよね。アークの言う通り、ベルも居ないから来ても気付かないだろうし。」
無事今回の騒動がまとまりそうなので、アシェルは立ち上がる。それに合わせて全員が立ち上がった。
「今回はお忙しい中お時間を頂き、ありがとうございました。」
「いや、どちらにせよ、アシェル殿の意見を仰がなくてはならなかったんだ。こちらこそご足労頂き感謝する。」
ロバートに見送られて執務室を出る。
「ダニエル。アシェ達を東門まで案内してくれ。そこが商業ギルドに一番近い。皆、またな。今回の冒険も楽しかった。」
「承りました。……ですが、一言言わせてください。私はアークエイド殿下の護衛騎士です。東門から出るためには必要な事なので、御命令には従いますが、事あるごとに私を撒かないでください。大人しく警護されてください。」
ダニエルの言葉は最後まで聞かずに、アークエイドはさっさと王宮の方へと歩み去っていく。
その背中を眼で追いながら、ダニエルは大きなため息を吐いた。
若く見えるこの白騎士は、どうやら苦労人のようだ。
白騎士なのでエリートだし、年齢的にもかなり優秀な人材なのだとは思うのだが。
「失礼いたしました。ご案内します。」
ビシッと敬礼して、キリッとカッコイイ顔つきになったダニエルは、先導して東門までアシェル達を案内してくれた。
そして不審者扱いされることなく、東門から冒険者エリアに戻ることが出来たのだった。
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