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第五章 【アンブロシア】
299 薬草園②
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Side:“アンブロシア”咲
小さな身体でめいいっぱい薬草園を堪能する姿を、三人の大人は追いかけながら溜息を吐いていた。
「妃殿下……。姫君は間違いなくこちら側の人間です。研究者肌だという意味で、ですよ。しかもあの口ぶり……姫君には決してポーション類をお見せにならないようにしてください。何か分からなくても使ってみて判別しようとする可能性が——いえ、間違いなくすると思います。所長と同じ気配を感じますので、特に毒物にはお気を付けください。レベル上げをなさってないのでしょう?」
「神様から制限をかけれられてるのよね。レベル上げをするなら、その前に耐性スキルが取れるように摂取させるのはありだと思うけど。レベル5までじゃ耐性スキルも取れないだろうから、毒を取らせる気はないわよ。っていうか、多分アシェルにはスキルが取れないようになってるのよね。ステータスを見る限り、だけど。医師家系とは聞いてたけど、アシェルが躊躇いなく毒草を食べるなんて思ってなかったから、少しびっくりしちゃった。耐性スキルなんてないはずなのに、どうしてたのかしら。医師家系とか研究好きだと割と普通……の感覚なの?」
「えぇ、まぁ。姫君のおっしゃる通り。素材は勿論。理論通りに完成したのか、さらにより良いものが作れないか。試用とそこから得られる情報は重要でございますから。混ぜ合わせることで想定外の効果が出てしまうこともありますしね。そこに関しては、薬だけでなく術式についても同じかと。姫君は恐らく、体質的にスキルに近いものをお持ちだったはずですしね。」
「そうですね。物は違えど、薬も術式も沢山ある選択肢の組み合わせで作り上げますから。時折想定外の動きをすることもありますので、確認は必須ですね。姫君は好奇心も旺盛でいらっしゃいますし、知識も豊富なようですから。許可が出ているかは置いておいて、魔法の練習は専用の部屋があると伝えてあげてくださいませ。一度ご利用になられているので、覚えていらっしゃるかもですが。」
アシェルには一度、魔法用の訓練場があることと、魔法を使うと魔法陣が出現することを説明したことがある。
こちらの魔法がどんなものか実演して見せたので、訓練場自体は覚えているはずだ。
たった一度連れて行っただけでも、全く同じルートを通るのであれば間違いなく覚えている。
それは薫だった時からなので、今も変わりないだろう。
「そうね。制限が無ければもっと色々できるんでしょうけど……神様から預かっているだけだから。預かったうえで、こっちの事情に巻き込んじゃってるのよね。申し訳なくて仕方ないわ。でも解決する可能性があるなら、アシェルに頼らざるを得ないのよね……。レベル上がるのも打ち止めって感じだし。」
「薬でもどうしようもできませんでしたし。」
「術式は未だ実用段階にありませんからな。かれこれうんじゅ——。」
「それ以上言ったら怒るわよ?アシェルに聞こえたらどうするのよ。こっちにゆっくりしに来てるはずなのに、色々鍛錬やら私達への訓練も始めるし。甘やかしてあげたいのに、かといって例の奴は意見が聞けるなら聞いておきたいし。っていうか、鍛錬しないと弱いって言われたんだけど。私も夫も、レベル結構高いのに……。」
「姫君の言わんとすることは、分からないでもないですがね。少し見学しましたが、明らかにお二人を守るための訓練でしたし。基礎技術は大事ですよ。」
「鍛錬を積むのは貴族としては当然のことですし、人間相手となれば駆け引きも必要になりますからね。魔物と人間では対応の仕方や注意する場所も変わりますし。訓練はスキルの選択にも、スキルに頼らない身体捌きにも影響が出ますから。」
咲はこの二人とは何だかんだと長い付き合いだ。
というよりも研究員と魔導士に仲がいい人が多い。あとは一部の護衛騎士達だ。
研究棟と魔導士の塔には神様推薦の記憶持ちが多数所属しているので、境遇は違えど話しやすいのだ。
既に一度人生を終えているからか、精神的にも成熟した人間が多い。
神様推薦の人選は、権力欲が無く仕事にぞっこんな人間が多い。
というよりも、身体を心配するレベルの仕事人間しかいない。
産まれは平民であることが多く、本人が優秀でなければ神様推薦でも王宮には入れなかっただろう。
推薦がある上に優秀だから王宮勤めしているのだ。
平民出身者は大好きな研究に人生を捧げながら、ささやかながら産みの親孝行ができると、給与はほとんど仕送りに回しているのが現実である。
王宮勤めなので給与は平均より高い。
にも関わらず、彼らが求めるのはより高度な資料や実験場、質の良い素材なのだ。
使い道のない私財を、助手を雇うと言う名目で孤児を拾い上げ、慈善事業に使っている姿も見られる。
ベースを“古都”に寄せたからこそではあるが、彼らは咲たちが神様と決めた基本設定だけでは補完出来なかったものをこの世界に還元してくれている。
もちろん“古都”にはなかった術式や、概念は教えてもらったがまだ未発見の魔法なんかもある。それらにはいずれ着手するはずだ。
咲と健斗の住んでいた“地球”では、魔法とはあくまでも空想上のものだったので、どうしたものかと悩んだ結果だ。
貴族の中には彼らと慣れ合うのを良しとしない人間も多いが、貴族たちの上辺だけの付き合いは疲れるのだ。
もしかしたらサラリーマンってこんな感じだったのかなと、咲も健斗も思ったくらいである。自由業と技術職で良かったなと。
三人がこそこそと言葉を交わしながら見守るアシェルは、小さな身体で葉や茎、香りを確認しながら楽しそうに薬草園を見て回っている。
傍から見れば順繰りただ周っているようにしか見えないかもしれないが、咲は断言できる。
あれは間違いなく楽しんでいると。それから味見しないという約束を懸命に守っていると。
本当なら周囲の悪意から遠ざけて、好きなことを好きなだけやらせてあげたかったが、結局は誕生日パーティーという形で貴族たちにお披露目してしまった。
アシェルがこちらに来てから、児童養護施設にいた時に思い描いていた一般家庭に近付くような生活を送っていた。
いつかこの血の繋がらない家族で平穏に過ごしたい。そんなただの夢物語が実現したのだ。
咲も健斗も薫よりマシだっただけで、家庭環境は良くなかったし、結局は児童養護施設に預けられた。
いわゆる一般家庭がどんなものなのか。友人達から見聞きしたことしか分からない。
実際に子育てをして、自分の家族が出来て。それでもその生活が正解か分からなかった。
確実に言えることは、自分達の生家より遥かに良い生活だったということだけだ。
息子も元気にすくすく育ってくれて、本当に良かったと思う。
神様からアシェルを預かるにあたって、魂の傷の治療には愛情が一番の薬だと聞いている。
“古都”でアシェルが辛うじて生活出来ていたのは、元々愛情深い一族であること。魂の伴侶に強い執着を見せる王子様な彼氏が、時間が許す限りアシェルに付きっきりだったこと。それ以外の時間は継母が付きっきりで面倒を見ていたからだと。
そうでなければとっくに寝たきりになっていたそうだ。
一人で過ごす時間がほぼなかったにも関わらず、それすらも時間の問題だったようだが。
母親の愛情は魂に一番影響を与えるのだと言う。
咲達のように転生や転移した魂はある程度成長を終えているし、前世から魂が大きな変質を迎えることは無い。
しかし赤子の場合、産まれたての魂は小さく無垢な場合もある。
記憶があっても無くても転生した赤子は、ある程度育った魂を持っていることもある。一回り縮むらしいが、それでもくすみや歪みは残ったままになる。
世界に降り立った魂は生きていく上で段々と色が淀み、形が不揃いになっていくものらしい。しかし魂そのものの大きさが大きくなるには、愛情が不可欠だというのだ。
魂の大きさは、そのまま生命力にも繋がるとか。
薫にとって、児童養護施設では施設長の奥さんがその役目だった。
アシェルとして産まれた“古都”では、メイディーの家族全員がその役目だった。
直近では継母の影響が一番強かったという。
“アンブロシア”で、咲がその役目を担えているかは分からない。
元々三人は家族だった。家族ではあるが、母親かと言われると違う気もしてしまう。
神様はよく口を滑らせるくせに、肝心なことは教えてくれないのだ。
穏やかな生活を送って欲しいと思っていたのに、お披露目を避けることのできなかったことが悔しくて仕方がない。
お飾りとはいえ、咲と健斗が国の代表でなければ避けられたはずなのだが、変えようがないのもまた事実だ。
「子供は、なんにも気にせずのびのびするのが一番なんだけどなぁ。昔より子供らしくなったけど、子供らしく振舞ってるだけだもん。あれが演技ってことくらい、うちらにはお見通しなのにね。今が一番年相応に見えるけど、頭の中は絶対意味不明なのよ、意味不明。いーっつもうちらには分からん事考えて、何が見えとるかなんて独り言聞いてようやく分かるんだから。……でも、そういう時が一番楽しそうなのも確かなのよね。」
「ははは。研究者肌であれば、ジッとしていることほど退屈なことはないでしょうからね。姫君への情報規制が無ければ、突撃して話を聞きたい。なんならその手技を自分の眼で見たい者が沢山おりますよ。世代までは分かりませんが、間違いなくかの一族ですのでね。」
「研究棟は人族が多いですからねぇ。我々には風の噂程度の知識しかないのですよ。魔導士の塔は、神様推薦の姫君の実力がようやく分かったところです。頂いた質問がどれも的確でしたので。しかもそれすらもまだ全盛期に程遠いと……。あぁ、許されることなら私もじっくりと対話し、議論を交わしたいものです。彼女がどのような術式を組み上げるのか見てみたい。」
「サー……魔導士殿はいいではありませんか。あの術式に共に取り組むのですから。今日の付き添い役は争奪戦でしたよ。我々が姿をお見掛けすることはあっても、言葉を交わす機会となると、恐らくこれが最初で最後でしょうからな。まぁ、私が勝ち抜いたんですけどね。はっはっは。」
二人の男がアシェルへの熱い評価をしているが、咲は苦笑を返すことしかできない。
咲と健斗から見れば、アシェルは姿が代わって世渡りの方法を手に入れた薫だ。
そのアシェルが周囲から認められ求められていることが、不思議な気分で、それよりも嬉しいと感じる。
ほんの少し。知らない姿を寂しいと感じるが、それはお互い様だろう。
アシェルにこの世界のことをどこまで伝えて良いのか、誰なら関わっても良いのか。
割と頻繁に神託で指示される。こちらからの質問への返答という形で指示されることもある。
神様の意図はよく分からないが、あの神様はアシェルの魂がお気に入りのようで、その縁で咲と健斗にコンタクトを取ってきたのだ。
神様とも長い付き合いだが、細々とした指示は全てアシェルを守るためだと分かっている。厳密にはお気に入りの魂を守るためだろうか。
なんにせよ、神様の指示は絶対だ。
アシェルのためにもきちんと決まりは守っている。
「とにかく、アシェルには私達がこっちで長いことは伏せてちょうだいね。」
「分かっておりますよ。ほら、戻ってきますので。故郷のものに言葉遣いを戻しませんと。」
「そうやね。懐かしいけど思い出すのも苦労したばい。アシェルに不思議がられんようにしとかんと。」
よしっと気合を入れ直した咲は、戻ってきたアシェルと手を繋ぐ。
最初の内はじっくりと植物を見ていたのに、途中からは庭園内を散策することに切り替えたようだった。
じっくり見て回るには時間が足りないと判断したのだろう。
「おかえり。お散歩に来て良かったやろ?」
「うん!すごく良かった。薬草園って、派手じゃないけどとても綺麗だよね。」
「気に入ったなら良かった。いっつも連れてきてあげれんのやけどね。」
「ううん、仕方ないよ。看板も全部隠してくれてるし、凄く手間でしょう?」
「あはは、まぁね。やったのは庭師のはずやけどね。じゃあ研究棟に行こうか?いうて、がっつり見学できるっち感じでもないけど。一般的に見学できるフロアを片付けてもらっとるき。どんな設備があるかとかは分かると思うばい。」
研究棟も魔導士の塔も、一応職場見学的なものが出来るフロアを用意している。
王宮で働けるという名誉と給与だけで職に就くには、この二つは少し特殊な環境だ。
ただの研究室という表現が一番正しい。
いずれ職に就く予定の未来の若者たちの為に、王宮に関する仕事は職場見学ができるようになっているのである。
これは部署異動の希望を受け付けるのにも役立っている。
適材適所。
同じ能力や適性があったとしても、人によって細かく得手不得手が違う。興味を持つものも。
職場見学を導入してから離職者も減って、効率も上がって良いこと尽くめだ。
見学用フロアだけでもアシェルは喜んでくれると思っていたのに、アシェルの表情に迷いが浮かぶ。
もしかしてもっとしっかり見学ができると思っていて、がっかりさせてしまっただろうか。
「研究棟、凄く興味があるんだけど。今見ちゃうと、凄く悔しいと思うんだ。だから用意してもらっているのに申し訳ないんだけど、もうお部屋に戻っちゃダメかな?この薬草園だけでも凄くて、ママと色々お喋りしたいんだ。」
「別にママはそれでも構わないけど……。」
ちらりと研究者を見ると、少し残念そうではあるがアシェルの意見に共感も出来るようだ。
「姫君をお招きできないのは残念ですが、おっしゃることもよく分かります。手の届く位置にあるのにオアズケされるのは、何よりも辛いことですからね。……後程、研究棟からの贈り物を贈らせていただきたいのですが、受け取っていただけますかな?」
彼らに限って変なものを送り付けてくることはないだろうが、アシェルは返事をせずに咲に視線を向けた。
何が貰えるのか気になるが、本当に貰っても良いのか分からないからだろう。
「別に良いけど、何くれるつもりなん?変なものやったら許さんばい。」
「姫君は毒物がお好きそうですが、流石に違いますよ。我々が長年の研究の果てに作り上げた解毒剤です。それから、その解毒剤に使われた素材の一つを。こちらでしか採れないもののようですので、あちらに影響が出ることは無いでしょうし、味見していただいても大丈夫です。姫君はどんな薬よりもこれを喜ばれると思いますので。」
咲も解毒剤に種類がいくつもあることは知っているが、何故アシェルが喜ぶのかが分からない。
主に冒険者たちが使うのは下級から最高級まで、等級ごとに分かれた解毒剤だ。
それぞれどの程度の毒までなら対処できるという範囲が決まっていて、当然等級が上がれば値段も跳ね上がる。
単独の毒に対する解毒剤の方がコストは安くなるので、個別の解毒剤は病院で使うか、特定の魔物を狩る冒険者が身に着ける程度だ。
「研究者殿。妃殿下には伝わらないと思いますよ。こちらにはあって当たり前のものですから。」
「あぁ、そういえばそうでしたな。妃殿下は分からずとも、姫君には万能解毒剤と言えば伝わりますかな?先程使った魔法のキュアと同等の効果を得られるものです。」
「万能解毒剤!?あるんですか?単独か三種までの解毒剤ではなく??」
「えぇ、こちらにはあります。開発には時間がかかりましたが、概念として必ず存在すると聞いておりましたので、どうにか完成させました。等級によって効果も変わりますが、献上の品として最高級のものを贈らせていただければと。」
パァァっと表情を輝かせたアシェルの期待を籠めた視線が飛んでくる。
欲しいには欲しいが、咲の意見を聞くようだ。
もしダメだと言ったらアシェルは我慢してしまうのだろう。
「別にそれくらいならいいばい。神様の言うダメなことリストにも入っとらんしね。」
「ありがとう、ママ!」
「では後日、研究棟から献上させていただきますね。それよりも三種?我々の時代は二種が限界でしたが、辿り着けなかったことが悔しいですな。妃殿下。神からの許可が頂けたら、姫君から三種混合解毒剤の構成をお聞きしてもよろしいでしょうか?興味が——ゴホン。いえ、もしかしたら新しい着眼点を得ることで、新たな薬の開発に役立つかもしれません。」
咄嗟に取り繕った研究者に苦笑を返す。
間違いなく本音は好奇心から来るものだろうが、新しい知識を得たいと願う理由としては妥当なところだ。
「分かったわ。次の神託で結果を貰えるように、神様に聞いとくき。もしいいよっち言われたら、アシェルに書いてもらうね。日本語から上手く訳せる気がせんき、“古都”の文字でも良い?あっちの知識っち前提やし、それくらいやったら許してくれると思うんよね。」
「えぇ、もちろん!我々のほとんどが読み書きできる言語ですので、全く問題ありません!では、御前を失礼いたします。早速仲間たちに報せて、姫君に献上しても恥ずかしくない渾身のものを作らねば!」
さっと頭を下げた研究者は速足で研究棟への道を歩いて去っていった。
長い付き合いの咲には、いつになく彼のテンションが高かったことが分かる。
いくら王族への献上品とはいえ。
たったこれだけのことで、ストックではなくわざわざ今から作り上げるらしい。
たしか最高級の解毒剤を作り上げるには、その手技も籠める魔力量も多く、一人で作り上げるのは困難だと聞いた事がある。しかも一本作り上げるのに丸二日はかかる作業だったはずだ。
そんな事情から素材も特殊なものはなく効果は素晴らしいが、作り上げることのできる薬師は限られており。どうしても値段が高くなってしまう一品だ。
「別に在庫からでも良いと思うんやけど……。作り方が変わってなければ、あれ、スッゴイ大変やんね?」
「特に変わったとは聞いておりませんね。魔導士の塔から術式図鑑を献上したことを羨ましがっておりましたので、苦に思うことは無いと思いますよ。まぁ、集中するあまり屍が量産されかねませんので、うちからも数名派遣しましょう。魔力の提供者がいるだけでも負担が減るでしょうから。」
仲の良い研究棟と魔導士の塔では、それぞれの得意分野で互いを補うように協力することがある。
派遣を喜ばれることはあっても、嫌がられることは無いだろう。
「そうね。そうしてちょうだい。じゃ、私達も部屋に戻ろっか。」
「護衛がいるのは存じておりますが、私もプライベートエリアまではご一緒させていただきます。変な輩が居ないとも限りませんのでね。」
「お願いね。」
咲はアシェルの手を引いて、共に部屋に戻った。
抱きかかえてしまえば早いのだが、どんな距離であろうとこれはアシェルのための散歩だ。
疲れたと泣き喚くことは無いと分かっているので、そこは咲が気を付けてやればいい。
小さな身体でめいいっぱい薬草園を堪能する姿を、三人の大人は追いかけながら溜息を吐いていた。
「妃殿下……。姫君は間違いなくこちら側の人間です。研究者肌だという意味で、ですよ。しかもあの口ぶり……姫君には決してポーション類をお見せにならないようにしてください。何か分からなくても使ってみて判別しようとする可能性が——いえ、間違いなくすると思います。所長と同じ気配を感じますので、特に毒物にはお気を付けください。レベル上げをなさってないのでしょう?」
「神様から制限をかけれられてるのよね。レベル上げをするなら、その前に耐性スキルが取れるように摂取させるのはありだと思うけど。レベル5までじゃ耐性スキルも取れないだろうから、毒を取らせる気はないわよ。っていうか、多分アシェルにはスキルが取れないようになってるのよね。ステータスを見る限り、だけど。医師家系とは聞いてたけど、アシェルが躊躇いなく毒草を食べるなんて思ってなかったから、少しびっくりしちゃった。耐性スキルなんてないはずなのに、どうしてたのかしら。医師家系とか研究好きだと割と普通……の感覚なの?」
「えぇ、まぁ。姫君のおっしゃる通り。素材は勿論。理論通りに完成したのか、さらにより良いものが作れないか。試用とそこから得られる情報は重要でございますから。混ぜ合わせることで想定外の効果が出てしまうこともありますしね。そこに関しては、薬だけでなく術式についても同じかと。姫君は恐らく、体質的にスキルに近いものをお持ちだったはずですしね。」
「そうですね。物は違えど、薬も術式も沢山ある選択肢の組み合わせで作り上げますから。時折想定外の動きをすることもありますので、確認は必須ですね。姫君は好奇心も旺盛でいらっしゃいますし、知識も豊富なようですから。許可が出ているかは置いておいて、魔法の練習は専用の部屋があると伝えてあげてくださいませ。一度ご利用になられているので、覚えていらっしゃるかもですが。」
アシェルには一度、魔法用の訓練場があることと、魔法を使うと魔法陣が出現することを説明したことがある。
こちらの魔法がどんなものか実演して見せたので、訓練場自体は覚えているはずだ。
たった一度連れて行っただけでも、全く同じルートを通るのであれば間違いなく覚えている。
それは薫だった時からなので、今も変わりないだろう。
「そうね。制限が無ければもっと色々できるんでしょうけど……神様から預かっているだけだから。預かったうえで、こっちの事情に巻き込んじゃってるのよね。申し訳なくて仕方ないわ。でも解決する可能性があるなら、アシェルに頼らざるを得ないのよね……。レベル上がるのも打ち止めって感じだし。」
「薬でもどうしようもできませんでしたし。」
「術式は未だ実用段階にありませんからな。かれこれうんじゅ——。」
「それ以上言ったら怒るわよ?アシェルに聞こえたらどうするのよ。こっちにゆっくりしに来てるはずなのに、色々鍛錬やら私達への訓練も始めるし。甘やかしてあげたいのに、かといって例の奴は意見が聞けるなら聞いておきたいし。っていうか、鍛錬しないと弱いって言われたんだけど。私も夫も、レベル結構高いのに……。」
「姫君の言わんとすることは、分からないでもないですがね。少し見学しましたが、明らかにお二人を守るための訓練でしたし。基礎技術は大事ですよ。」
「鍛錬を積むのは貴族としては当然のことですし、人間相手となれば駆け引きも必要になりますからね。魔物と人間では対応の仕方や注意する場所も変わりますし。訓練はスキルの選択にも、スキルに頼らない身体捌きにも影響が出ますから。」
咲はこの二人とは何だかんだと長い付き合いだ。
というよりも研究員と魔導士に仲がいい人が多い。あとは一部の護衛騎士達だ。
研究棟と魔導士の塔には神様推薦の記憶持ちが多数所属しているので、境遇は違えど話しやすいのだ。
既に一度人生を終えているからか、精神的にも成熟した人間が多い。
神様推薦の人選は、権力欲が無く仕事にぞっこんな人間が多い。
というよりも、身体を心配するレベルの仕事人間しかいない。
産まれは平民であることが多く、本人が優秀でなければ神様推薦でも王宮には入れなかっただろう。
推薦がある上に優秀だから王宮勤めしているのだ。
平民出身者は大好きな研究に人生を捧げながら、ささやかながら産みの親孝行ができると、給与はほとんど仕送りに回しているのが現実である。
王宮勤めなので給与は平均より高い。
にも関わらず、彼らが求めるのはより高度な資料や実験場、質の良い素材なのだ。
使い道のない私財を、助手を雇うと言う名目で孤児を拾い上げ、慈善事業に使っている姿も見られる。
ベースを“古都”に寄せたからこそではあるが、彼らは咲たちが神様と決めた基本設定だけでは補完出来なかったものをこの世界に還元してくれている。
もちろん“古都”にはなかった術式や、概念は教えてもらったがまだ未発見の魔法なんかもある。それらにはいずれ着手するはずだ。
咲と健斗の住んでいた“地球”では、魔法とはあくまでも空想上のものだったので、どうしたものかと悩んだ結果だ。
貴族の中には彼らと慣れ合うのを良しとしない人間も多いが、貴族たちの上辺だけの付き合いは疲れるのだ。
もしかしたらサラリーマンってこんな感じだったのかなと、咲も健斗も思ったくらいである。自由業と技術職で良かったなと。
三人がこそこそと言葉を交わしながら見守るアシェルは、小さな身体で葉や茎、香りを確認しながら楽しそうに薬草園を見て回っている。
傍から見れば順繰りただ周っているようにしか見えないかもしれないが、咲は断言できる。
あれは間違いなく楽しんでいると。それから味見しないという約束を懸命に守っていると。
本当なら周囲の悪意から遠ざけて、好きなことを好きなだけやらせてあげたかったが、結局は誕生日パーティーという形で貴族たちにお披露目してしまった。
アシェルがこちらに来てから、児童養護施設にいた時に思い描いていた一般家庭に近付くような生活を送っていた。
いつかこの血の繋がらない家族で平穏に過ごしたい。そんなただの夢物語が実現したのだ。
咲も健斗も薫よりマシだっただけで、家庭環境は良くなかったし、結局は児童養護施設に預けられた。
いわゆる一般家庭がどんなものなのか。友人達から見聞きしたことしか分からない。
実際に子育てをして、自分の家族が出来て。それでもその生活が正解か分からなかった。
確実に言えることは、自分達の生家より遥かに良い生活だったということだけだ。
息子も元気にすくすく育ってくれて、本当に良かったと思う。
神様からアシェルを預かるにあたって、魂の傷の治療には愛情が一番の薬だと聞いている。
“古都”でアシェルが辛うじて生活出来ていたのは、元々愛情深い一族であること。魂の伴侶に強い執着を見せる王子様な彼氏が、時間が許す限りアシェルに付きっきりだったこと。それ以外の時間は継母が付きっきりで面倒を見ていたからだと。
そうでなければとっくに寝たきりになっていたそうだ。
一人で過ごす時間がほぼなかったにも関わらず、それすらも時間の問題だったようだが。
母親の愛情は魂に一番影響を与えるのだと言う。
咲達のように転生や転移した魂はある程度成長を終えているし、前世から魂が大きな変質を迎えることは無い。
しかし赤子の場合、産まれたての魂は小さく無垢な場合もある。
記憶があっても無くても転生した赤子は、ある程度育った魂を持っていることもある。一回り縮むらしいが、それでもくすみや歪みは残ったままになる。
世界に降り立った魂は生きていく上で段々と色が淀み、形が不揃いになっていくものらしい。しかし魂そのものの大きさが大きくなるには、愛情が不可欠だというのだ。
魂の大きさは、そのまま生命力にも繋がるとか。
薫にとって、児童養護施設では施設長の奥さんがその役目だった。
アシェルとして産まれた“古都”では、メイディーの家族全員がその役目だった。
直近では継母の影響が一番強かったという。
“アンブロシア”で、咲がその役目を担えているかは分からない。
元々三人は家族だった。家族ではあるが、母親かと言われると違う気もしてしまう。
神様はよく口を滑らせるくせに、肝心なことは教えてくれないのだ。
穏やかな生活を送って欲しいと思っていたのに、お披露目を避けることのできなかったことが悔しくて仕方がない。
お飾りとはいえ、咲と健斗が国の代表でなければ避けられたはずなのだが、変えようがないのもまた事実だ。
「子供は、なんにも気にせずのびのびするのが一番なんだけどなぁ。昔より子供らしくなったけど、子供らしく振舞ってるだけだもん。あれが演技ってことくらい、うちらにはお見通しなのにね。今が一番年相応に見えるけど、頭の中は絶対意味不明なのよ、意味不明。いーっつもうちらには分からん事考えて、何が見えとるかなんて独り言聞いてようやく分かるんだから。……でも、そういう時が一番楽しそうなのも確かなのよね。」
「ははは。研究者肌であれば、ジッとしていることほど退屈なことはないでしょうからね。姫君への情報規制が無ければ、突撃して話を聞きたい。なんならその手技を自分の眼で見たい者が沢山おりますよ。世代までは分かりませんが、間違いなくかの一族ですのでね。」
「研究棟は人族が多いですからねぇ。我々には風の噂程度の知識しかないのですよ。魔導士の塔は、神様推薦の姫君の実力がようやく分かったところです。頂いた質問がどれも的確でしたので。しかもそれすらもまだ全盛期に程遠いと……。あぁ、許されることなら私もじっくりと対話し、議論を交わしたいものです。彼女がどのような術式を組み上げるのか見てみたい。」
「サー……魔導士殿はいいではありませんか。あの術式に共に取り組むのですから。今日の付き添い役は争奪戦でしたよ。我々が姿をお見掛けすることはあっても、言葉を交わす機会となると、恐らくこれが最初で最後でしょうからな。まぁ、私が勝ち抜いたんですけどね。はっはっは。」
二人の男がアシェルへの熱い評価をしているが、咲は苦笑を返すことしかできない。
咲と健斗から見れば、アシェルは姿が代わって世渡りの方法を手に入れた薫だ。
そのアシェルが周囲から認められ求められていることが、不思議な気分で、それよりも嬉しいと感じる。
ほんの少し。知らない姿を寂しいと感じるが、それはお互い様だろう。
アシェルにこの世界のことをどこまで伝えて良いのか、誰なら関わっても良いのか。
割と頻繁に神託で指示される。こちらからの質問への返答という形で指示されることもある。
神様の意図はよく分からないが、あの神様はアシェルの魂がお気に入りのようで、その縁で咲と健斗にコンタクトを取ってきたのだ。
神様とも長い付き合いだが、細々とした指示は全てアシェルを守るためだと分かっている。厳密にはお気に入りの魂を守るためだろうか。
なんにせよ、神様の指示は絶対だ。
アシェルのためにもきちんと決まりは守っている。
「とにかく、アシェルには私達がこっちで長いことは伏せてちょうだいね。」
「分かっておりますよ。ほら、戻ってきますので。故郷のものに言葉遣いを戻しませんと。」
「そうやね。懐かしいけど思い出すのも苦労したばい。アシェルに不思議がられんようにしとかんと。」
よしっと気合を入れ直した咲は、戻ってきたアシェルと手を繋ぐ。
最初の内はじっくりと植物を見ていたのに、途中からは庭園内を散策することに切り替えたようだった。
じっくり見て回るには時間が足りないと判断したのだろう。
「おかえり。お散歩に来て良かったやろ?」
「うん!すごく良かった。薬草園って、派手じゃないけどとても綺麗だよね。」
「気に入ったなら良かった。いっつも連れてきてあげれんのやけどね。」
「ううん、仕方ないよ。看板も全部隠してくれてるし、凄く手間でしょう?」
「あはは、まぁね。やったのは庭師のはずやけどね。じゃあ研究棟に行こうか?いうて、がっつり見学できるっち感じでもないけど。一般的に見学できるフロアを片付けてもらっとるき。どんな設備があるかとかは分かると思うばい。」
研究棟も魔導士の塔も、一応職場見学的なものが出来るフロアを用意している。
王宮で働けるという名誉と給与だけで職に就くには、この二つは少し特殊な環境だ。
ただの研究室という表現が一番正しい。
いずれ職に就く予定の未来の若者たちの為に、王宮に関する仕事は職場見学ができるようになっているのである。
これは部署異動の希望を受け付けるのにも役立っている。
適材適所。
同じ能力や適性があったとしても、人によって細かく得手不得手が違う。興味を持つものも。
職場見学を導入してから離職者も減って、効率も上がって良いこと尽くめだ。
見学用フロアだけでもアシェルは喜んでくれると思っていたのに、アシェルの表情に迷いが浮かぶ。
もしかしてもっとしっかり見学ができると思っていて、がっかりさせてしまっただろうか。
「研究棟、凄く興味があるんだけど。今見ちゃうと、凄く悔しいと思うんだ。だから用意してもらっているのに申し訳ないんだけど、もうお部屋に戻っちゃダメかな?この薬草園だけでも凄くて、ママと色々お喋りしたいんだ。」
「別にママはそれでも構わないけど……。」
ちらりと研究者を見ると、少し残念そうではあるがアシェルの意見に共感も出来るようだ。
「姫君をお招きできないのは残念ですが、おっしゃることもよく分かります。手の届く位置にあるのにオアズケされるのは、何よりも辛いことですからね。……後程、研究棟からの贈り物を贈らせていただきたいのですが、受け取っていただけますかな?」
彼らに限って変なものを送り付けてくることはないだろうが、アシェルは返事をせずに咲に視線を向けた。
何が貰えるのか気になるが、本当に貰っても良いのか分からないからだろう。
「別に良いけど、何くれるつもりなん?変なものやったら許さんばい。」
「姫君は毒物がお好きそうですが、流石に違いますよ。我々が長年の研究の果てに作り上げた解毒剤です。それから、その解毒剤に使われた素材の一つを。こちらでしか採れないもののようですので、あちらに影響が出ることは無いでしょうし、味見していただいても大丈夫です。姫君はどんな薬よりもこれを喜ばれると思いますので。」
咲も解毒剤に種類がいくつもあることは知っているが、何故アシェルが喜ぶのかが分からない。
主に冒険者たちが使うのは下級から最高級まで、等級ごとに分かれた解毒剤だ。
それぞれどの程度の毒までなら対処できるという範囲が決まっていて、当然等級が上がれば値段も跳ね上がる。
単独の毒に対する解毒剤の方がコストは安くなるので、個別の解毒剤は病院で使うか、特定の魔物を狩る冒険者が身に着ける程度だ。
「研究者殿。妃殿下には伝わらないと思いますよ。こちらにはあって当たり前のものですから。」
「あぁ、そういえばそうでしたな。妃殿下は分からずとも、姫君には万能解毒剤と言えば伝わりますかな?先程使った魔法のキュアと同等の効果を得られるものです。」
「万能解毒剤!?あるんですか?単独か三種までの解毒剤ではなく??」
「えぇ、こちらにはあります。開発には時間がかかりましたが、概念として必ず存在すると聞いておりましたので、どうにか完成させました。等級によって効果も変わりますが、献上の品として最高級のものを贈らせていただければと。」
パァァっと表情を輝かせたアシェルの期待を籠めた視線が飛んでくる。
欲しいには欲しいが、咲の意見を聞くようだ。
もしダメだと言ったらアシェルは我慢してしまうのだろう。
「別にそれくらいならいいばい。神様の言うダメなことリストにも入っとらんしね。」
「ありがとう、ママ!」
「では後日、研究棟から献上させていただきますね。それよりも三種?我々の時代は二種が限界でしたが、辿り着けなかったことが悔しいですな。妃殿下。神からの許可が頂けたら、姫君から三種混合解毒剤の構成をお聞きしてもよろしいでしょうか?興味が——ゴホン。いえ、もしかしたら新しい着眼点を得ることで、新たな薬の開発に役立つかもしれません。」
咄嗟に取り繕った研究者に苦笑を返す。
間違いなく本音は好奇心から来るものだろうが、新しい知識を得たいと願う理由としては妥当なところだ。
「分かったわ。次の神託で結果を貰えるように、神様に聞いとくき。もしいいよっち言われたら、アシェルに書いてもらうね。日本語から上手く訳せる気がせんき、“古都”の文字でも良い?あっちの知識っち前提やし、それくらいやったら許してくれると思うんよね。」
「えぇ、もちろん!我々のほとんどが読み書きできる言語ですので、全く問題ありません!では、御前を失礼いたします。早速仲間たちに報せて、姫君に献上しても恥ずかしくない渾身のものを作らねば!」
さっと頭を下げた研究者は速足で研究棟への道を歩いて去っていった。
長い付き合いの咲には、いつになく彼のテンションが高かったことが分かる。
いくら王族への献上品とはいえ。
たったこれだけのことで、ストックではなくわざわざ今から作り上げるらしい。
たしか最高級の解毒剤を作り上げるには、その手技も籠める魔力量も多く、一人で作り上げるのは困難だと聞いた事がある。しかも一本作り上げるのに丸二日はかかる作業だったはずだ。
そんな事情から素材も特殊なものはなく効果は素晴らしいが、作り上げることのできる薬師は限られており。どうしても値段が高くなってしまう一品だ。
「別に在庫からでも良いと思うんやけど……。作り方が変わってなければ、あれ、スッゴイ大変やんね?」
「特に変わったとは聞いておりませんね。魔導士の塔から術式図鑑を献上したことを羨ましがっておりましたので、苦に思うことは無いと思いますよ。まぁ、集中するあまり屍が量産されかねませんので、うちからも数名派遣しましょう。魔力の提供者がいるだけでも負担が減るでしょうから。」
仲の良い研究棟と魔導士の塔では、それぞれの得意分野で互いを補うように協力することがある。
派遣を喜ばれることはあっても、嫌がられることは無いだろう。
「そうね。そうしてちょうだい。じゃ、私達も部屋に戻ろっか。」
「護衛がいるのは存じておりますが、私もプライベートエリアまではご一緒させていただきます。変な輩が居ないとも限りませんのでね。」
「お願いね。」
咲はアシェルの手を引いて、共に部屋に戻った。
抱きかかえてしまえば早いのだが、どんな距離であろうとこれはアシェルのための散歩だ。
疲れたと泣き喚くことは無いと分かっているので、そこは咲が気を付けてやればいい。
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