死ぬはずだった令嬢が乙女ゲームの舞台に突然参加するお話

みっしー

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第一章

15話

「殿下、本日は何のご用でございましょうか?」

「あぁ、たいしたことではないし、ちょっとした思いつきみたいなものだから前もって連絡もしなかったんだけど……」

 え?普通会ったことのない人に思いつきで会いに来るものなの?殿下の一言一言を追いながら疑問に思った。そうか、この人腹黒だったわ……きっと裏にはちゃんとした意図があったとしてもそれを教えてはくれないでしょうね。

「貴女が散歩をしていると聞いたのでその様子を見に来たんだ」

「はぁ、なるほど」

 物凄く聞いたことのある用件ね。兄弟って考え方まで似るものなのかしら。だいたい散歩の様子を見に来たところで何になるっていうのよ!同い年のはずなのにこの人の考えが全く読めない。でもはぐらかされたままなのも嫌だわ……。もう直接聞いてしまいましょう!

「それで……本当のご用件は何でございますか?」

「ふーん。直球だね」

「探り合いができるほど頭が働かないもので」

「まぁ、最初の用件で流されなかったんだから馬鹿ではないみたいだけど」

 何だかいきなり腹黒が表に出てるわ……。笑顔は爽やかなままなのが余計に怖い。

「でも様子を見に来たっていうのは本当だよ。兄上の婚約者にはしっかりしておいてもらわないとね、僕のためにも、貴女自身のためにも」

「はぁ……」

「あ、話は変わるけど僕のことも兄上のことも『殿下』って呼ぶと紛らわしくない?」

「え?」

「だから、兄上のこと名前で呼んであげてよ。あぁ、でも長いから『ルーク様』とかでいいからね。兄上が驚かないように僕からも言っておくからさ」

「そんな……私ごときが恐れ多いです」

「恐れ多いも何も婚約者でしょ。それくらいは普通じゃない?」

「ですが……」

「それじゃあ僕のことも名前で呼んでもらおうかな?」

 もう何が何だか分からない。ルークベルト殿下をゲームみたいにルーク様って呼んだとして私はきっと殺されるに違いない。しかも何でルカルド殿下のことまで名前で呼ばないといけなくなるの?誰が得するのよ!

「僕のことは『ルカルド様』でいいからね」

「あの……」

「今日はこれくらいにして失礼しようかな。話せてよかったよ。またね、フィリア嬢」

「は、はい。お気をつけてお帰りください」

 ルカルド殿下……ルカルド様のお見送りをして何とか自分の部屋に戻った。



 ……え?何だったの?結局はぐらかされたし、ルカルドで……様のペースにのまれてしまった。本当に何が目的だったのか分からない。ルカルドで……様のためにも私のためにも私がしっかりしておかないといけないってどういうこと?

「……ラナ、お茶を淹れてくれないかしら?」

「かしこまりました。お疲れのようですし今日は早めにお休みになられますか?」

「そうね、そうするわ」

 一度休んですっきりした頭で考えたら少しは何か分かるだろう。……お兄様のことも解決していないっていうのに……私また過労になったりしないかしら?いえ、こんなことを考えられる間はまだ大丈夫ね。
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